「注意しているにも関わらず約束を守れない」という悩みは、大人の発達障がいの中でも特にADHDの方に多い特徴です。
この記事を読んでいるあなたも

「仕事の予定や期限が守れずに、よく上司に怒られる…」
などの経験はありませんか?
自分では約束を守ろうと注意しているのに同じことを繰り返してしまい、上司や友達に怒られてしまうと嫌な気持ちになりますよね。
- 約束が守れないのは発達障がい(ADHD)が原因?
- 約束が守れないADHDの困りごと
- ADHDが約束を守るためにできる工夫
- ADHDの特性による困りごとの相談先
について解説します。
約束を守るためにできる工夫を学び、良好な人間関係を築くための参考にしていただければ幸いです。
ADHD(注意欠如・多動症)とは?
ADHDは「注意欠如・多動症」という別名で呼ばれている通り、不注意(注意力の散漫)、衝動性、多動性などの特性を持つ発達障害の1つです。
具体的な性質としては、
- 仕事の期限が守れない(不注意)
- 複数の仕事を計画的に行えない(不注意)
- 仕事の予定を忘れる(不注意)
- 思ったことをすぐに口に出してしまう(衝動性)
- 体を小刻みに動かしてしまう(多動性)
- 椅子にじっと座っていられない(多動性)
などがあります。
ADHDは生まれつき脳に何らかの機能異常があると考えられており、対人関係や社会生活に困難を抱える方が多いのです。
大人になってからADHDを自覚する方もいる
ADHDは学童期(6〜12歳)までに診断されることが多いです。
一方で、学童期は簡単なコミュニケーションで済むことや周りの方がサポートをしてくれるため、ADHDの特性が見落とされて診断されない場合があります。社会に出て、仕事で複雑なコミュニケーションや自己管理が必要になり困難に直面することで、初めてADHDの性質を自覚する方もいます。
大人になってから医療機関を受診して診断を受けるため、「大人の発達障害」や「大人のADHD」と呼ばれるのです。
ADHDはなぜ約束を守れない?4つの困りごとと併せて解説
「予定の時間に遅れてしまったり、用事を忘れてしまったりする」など、約束を守れなかったという事態は誰しも経験することがあります。
しかし、「どれだけ注意しても約束が守れない」ということを何度も繰り返してしまい、仕事や私生活に支障がでている場合はADHDの可能性が考えられます。
この項目では、ADHDの方に多い約束を守れない4つのシチュエーションと、そのような事態に陥りやすい原因についてご紹介します。
あなたの経験と重なる部分がないか確認してみてください。
約束をドタキャンしてしまう
ADHDの方は、「衝動性」の特性が関係して約束をドタキャンしてしまう傾向があります。
衝動性とは、急に思いついたことや外部の刺激に対して衝動的に行動・反応してしまう特性です。衝動性が強いと気分や興味の対象が移り変わりやすく、行動の制御も難しいため、
「外出中に気になるお店を見つけてしまい、集合時間を忘れて入店してしまった」
などのように、ドタキャンや急な予定変更をしてしまうことが多いのです。
1人で行動している場合は大きな問題にならないことが多い一方で、誰かと一緒に行動していたり予定が控えたりしている時は、他人に迷惑をかけてしまうことがあります。
「また予定をドタキャンしてしまった…」という経験が積み重なることで、周囲の人に申し訳ない気持ちを抱え込んでしまうため、ADHDの方にとって辛い状況ですよね。
重要な予定や締め切りを忘れてしまう
ADHDの方は、
- 資料の提出期限
- 得意先の訪問予定
- 友達との遊ぶ約束
などの、締め切りや重要な予定をうっかり忘れてしまう傾向があります。
これにはADHDの「不注意」の特性からくる、「優先順位をつけるのが苦手」という特性が関係していると考えられています。この特性により、ADHDの方はマルチタスクや計画を立てて行動することが難しく、「明日が締め切りの仕事があるのに、目に入った別の仕事から取り掛かってしまう」という事態に直面しやすくなります。
本人は注意しているにも関わらず、優先しなくてはいけない重要な予定や締め切りが頭から抜け落ちてしまい「ど忘れ」をしてしまうのは、ADHDの方の大きな悩みとなりやすいのです。
やるべきことを先延ばしにして、投げ出してしまう
ADHDの方は、やるべき仕事を先延ばしにしてしまう傾向があります。
後でやろうと考えている間に、やるべき仕事を忘れてしまったり、締め切りは覚えていても「まだ大丈夫だろう」と思ったりして、期間が差し迫るまで作業に手がつけられないのです。
ADHDが先送りしてしまうのは、
- 興味のあることを優先して取り組んでしまう
- 先の見通しをうまく立てられない
- 締め切りは覚えていても、計画的や段取りを考えることができない
など、複数の原因があると考えられます。
先延ばしすると、やるべきことにかけられる時間が減ってしまい、ミスにもつながるのでなるべく避けたいですよね。
約束の時間に遅刻してしまう
ADHDの方は、約束の時間に間に合わず遅刻をしてしまう方も多いです。
先述しているADHDの衝動性や不注意が原因で、
「新着メールを確認した時に、他の未読メールに気付いてさらに行動が遅れる」
などの予定外の行動を取ってしまうことがあり、結果的に遅刻に繋がるのです。
実際に、「予定があることは把握できているのに遅刻してしまう」という困りごとに悩んでいるADHDの方は非常に多いです。遅刻してしまうと、自分だけではなく他の人の迷惑にも繋がるため、しっかりと対策を考える必要があります。
ADHDが約束を守るためにできる工夫3選
ここでは、ADHDの方が約束を守るためにできる工夫を3つご紹介します。
- 「TO DOリスト」を作成する
- 時間のロスを計算して予定を組む
- ご褒美を用意する
順に見ていきましょう。
3つのポイントを意識して「TO DOリスト」を作成する
まずは、メモ帳やスマートフォンのアプリなどを使って、TO DOリストを作成しましょう。TO DOリストとは、「TO DO=やるべきこと」をメモ帳やスマホのアプリにリスト形式で書き出したものです。
進捗 | TO DO(やるべきこと) |
---|---|
✓ | 1 ○○さんに業務連絡を送る |
2 請求業務をする | |
2-1 請求書の確認をする | |
2-2 経理の○○さんに連絡する |
このようにTO DOリストを作ると、パッと見るだけで重要な予定が理解できます。
TO DOリストの書き方としては、
- 1日の予定
- 頼まれている仕事や課題
などを書き出して情報を整理してみると良いです。
また、TO DOリストを作成するときは、下記のポイントを意識してみましょう。
- 優先順位がすぐに理解できる工夫をする
- TO DOリストを細分化する
- 1つの作業が終わったら、チェックする
次の項目で、順に説明します。
優先順位がすぐに理解できるよう工夫をする
重要な予定や締め切りが近いものは
- リストに順番をつける
- 目立つ色のペンで記入する
などの工夫をするようにしましょう。
リストに順番をつけたり、目立つ色のペンで記入したりすることで、予定の優先順位が判別しやすくなります。
TO DOリストを細分化する
TO DOリストを作成するときは、作業内容を細分化すると良いです。
例えば、「請求業務をする」とTO DOリストに書くのではなく
- 1. 請求書の確認をする
- 2. 経理の◯◯さんに連絡する
など、作業内容を細分化するようにします。手順が明確になるのでスムーズに作業を進めることができます。
1つの作業が終わったら、チェックする
1つの作業が終わったらメモ帳にチェックを入れるようにしましょう。
チェックを入れることで、やるべき作業が完了済みかどうか一目で理解できます。
また、チェックを入れることで「やるべき作業を終わらせた」という達成感も味わうことができ、自己肯定感が高まるのでオススメです。
時間のロスを計算して予定を組む
時間のロスを予定に組み込んで出発時間を計算するなど、時間に十分な余裕を持って行動することで遅刻を減らす工夫です。上の項目でも述べましたが、ADHDの方は衝動性や不注意が原因で、目的地に着くまでに色々な情報に気が取られて遅刻してしまうことがあります。
そのため、はじめから時間のロスを計算し、時間に余裕を持たせて予定を組みましょう。少し面倒な方法ではありますが、遅刻して相手との信頼を失うよりは、良い方法と言えます。
具体的な対策としては、遅れる時間を考慮して時計やスマートフォンのアラームの通知設定をします。
また、目的地の経路までに自分の興味のあるものが存在する場所は避けるなどの工夫も大切です。あらかじめ時間のロスを計算しておくことで、遅刻するリスクを減らせるでしょう。
ご褒美を用意する
仕事や勉強が終わったときのご褒美を用意して、先延ばしを減らす工夫です。
ADHDの方は、長期的な利益のために我慢をするよりも、すぐに報酬が得られる行動に移りやすいことがわかっています。そのため、興味のあることはモチベーションが高まりますが、興味のないことに対しては体が動かずに先延ばしにしてしまう傾向があります。
興味のないことに対してモチベーションが下がる対策として、あらかじめご褒美を用意して、意図的にモチベーションを高めるのです。
具体的には、
- この仕事が終わったら、アイスを食べよう
- この勉強が終わったら、ゲームをしよう
など、自分のモチベーションが高まるご褒美を設定すると良いです。
ADHDの方は、自分のモチベーションをコントロールする術を見つけることで、先延ばし癖を減らせるようになるでしょう。
ADHDの特性で困ったときの相談先6選
「ADHDかもしれない」と思った場合は、専門家や専門機関への相談も検討しましょう。専門家や専門機関に相談することで、ADHDの生きづらさを軽減できる可能性があります。
この項目で紹介する相談先を参考にしてみると良いでしょう。
精神科・心療内科
ADHDの診断や心身の困りごとについては、「精神科」や「心療内科」の医師に相談しましょう。
ADHDの特性は、投薬治療で緩和できる可能性があります。
また、ADHDの特性について自己理解を深めることは、状況の改善に効果的な場合もあります。専門医の元で診断を確定させることで、障がいの特性や治療法を知ることができ、自分が悩んでいる困りごとの対策ができます。
精神科と心療内科のどちらを利用するか困ったときは、下記の記事が参考になるかもしれません。
発達障がい者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害がある方とその家族を支援する公的機関です。
障がいに関するあらゆる悩みの相談を受け付けており
- 発達障害の困りごとに対して、生活の中でできる工夫はあるか?
- 福祉制度の紹介と利用までの支援
- 就職するまでの支援や就職後に働き続けるための支援
などのさまざまなサポートを受けることができます。
参考:発達障害者支援センター・一覧|発達障害情報・支援センター
発達障害者支援センターの利用については、下記の記事で解説しています。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターでは、心の健康の関する相談やアドバイスを行っています。うつ病をはじめとする精神疾患の予防や治療に取り組んでいる機関です。ADHDの方は特に二次障害としてうつ病などの精神疾患を発症しやすいため、心の健康に不安がある場合は積極的に利用すると良いでしょう。
地域障がい者職業センター
地域障害者職業センターは、障がいがある方に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設です。
ハローワークや医療機関と連携しており、就職を希望する障がい者をサポートしてくれます。
地域障害者職業センター|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)
地域障害者職業センターについては、下記の記事でも解説しています。
障がい者就業・生活支援センター(なかぽつ)
障害者就業・生活支援センターは、発達障害がある方の就労支援や日常生活に関する相談を行う公共機関です。
障がいによりハンデや課題を抱えている方のサポートとして
- 生活リズムや習慣の改善
- 働くために必要な基礎体力づくり
- 障がいの自己理解や健康維持に関するアドバイス
などを行っています。上記の生活支援を踏まえたうえで、就職先の斡旋などの就労支援も行っていくため、生活面と就労面の両面でのサポートを受けることができます。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)については、下記の記事でも解説しています。
ハローワーク(公共職業安定所)
ハローワークは国が運営する雇用サービス機関で、仕事探しや雇用に関する相談や手続きを行うことができます。
ハローワークには障がい者の専用窓口が設置されているため、障がいに詳しい職員や指導員に就職相談をすることができます。障害者求人を探すこともできるため、社会復帰に向けて悩みを抱えている場合は気軽に訪ねてみると良いでしょう。
まとめ|ADHDは約束を守れない?困りごとやできる工夫
- 注意しているのに約束が守れず、仕事や私生活に支障が出る場合はADHD(注意欠如・多動症)の可能性がある。
- ADHDの方は「衝動性」や「優先順位をつけるのが苦手」、「先の見通しがうまくできない」など複数の特性や性質が原因で約束を守れない方が多い。
- ADHDの方が約束を守るためには、TO DOリストを作成する、時間のロスを計算する、ご褒美を用意する、など障がいの性質に合わせた工夫をすることが大切。
- ADHDの特性による困りごとは、医師や専門機関への相談も検討する。
ADHDの方にとって約束を守るのは簡単なことではないかもしれません。
しかし、障がいの状態に合わせた工夫をすることで、約束を破ってしまう回数を少なくできるでしょう。
この記事が、あなたの生きづらさを減らすための一助になれば幸いです。