なんらかの障がいがあるあなたは、
「就職だけでなく、生活に関しても支援を受けたいけど、何をしたらいい?」
「まず生活リズムを整えてから、就職に向けて準備をしたい!」
と考えたことはありませんか?
そんなあなたには、「なかぽつ」の利用がオススメです。
「なかぽつ」とは「障害者就業・生活支援センター」のことを指します。名称の真ん中に「・」が入っているため、「なかぽつ」と呼ばれます。不思議な呼び方だなと気になった方も多いのではないでしょうか?
「なかぽつ」こと、「障害者就業・生活支援センター」では、障がいがある方の就職に関するサポートや、生活面においての各種相談・支援を行っています。
就労移行支援事業所や地域障害者職業センターとどう違うの?と思われる方もいるかもしれません。それぞれの違いについても詳しく説明します。
- 「なかぽつ」で受けられる支援の内容
- 「なかぽつ」を利用するには
- 就労移行支援事業所・地域障がい者職業センターとの違い
について解説しています。
「なかぽつ」で受けられる支援の内容は?
「なかぽつ」では、障がいがある方に対して、就業面と生活面の包括的な支援や相談を行っています。
「なかぽつ」単体で独立しているわけではなく、医療機関や福祉事務所、場合によっては就労移行支援事業所など、適切な機関と連携を取った支援を受けることができます。
また、障害者を雇用する企業に対しての支援として、雇用における助言や相談、職場適応支援なども行っています。運営は公益法人(社団、財団)や社会福祉法人、特定非営利活動法人、医療法人が行っており、令和6年4月現在で、全国に337か所設置されています。
障がい者の就業面の支援
そんな想いに対してなかぽつ(障害者就業・生活支援センター)は、障害者が就職して社会と共に生活できるように総合的な支援を行っています。
就業に関する支援の内容として、下記のようなものがあります。
- 就職に向けた準備支援
- 特性・能力に合った職務の選定
- 就職活動支援
- 職場定着支援
「就職に向けた準備支援」は、具体的には「職業準備訓練」や「職場実習の斡旋」です。
「特性・能力に合った職務の選定」は、ハローワークのように直接仕事を紹介されるわけではありません。しかし、ハローワークとの連携が行われているので、選定された職務をもとにハローワークでの求職支援や仕事を紹介してもらうことが可能です。
センター窓口での相談だけでなく、必要に応じて職場・家庭訪問を行います。
就職活動を始める場合は、職業訓練機関で体力や能力にあわせて個人のプログラムを組んでもらうことも可能です。スモールステップで無理なく取り組んでいくことができるので安心ですね。就職活動だけに限らず、就職後も含め、相談内容をもとにハローワークや地域障害者職業センターなどの連携機関を紹介する場合もあります。
また、先に述べた障がいのある方のサポートだけでなく、職場・事業所に対して、障がいのある方それぞれの特性を踏まえた雇用管理についての助言を行う場合もあります。
職場定着支援として、当事者に対する支援を行うだけでなく、職場に対して環境改善を指導する場合もあります。ただし、職場に対して障がいがあることを伝えないクローズ就労を行っている場合、当事者に対する支援に留まることもあります。
障がい者の生活面の支援
なかぽつ(障害者就業・生活支援センター)が行う支援は就業面だけではありません。日常生活・地域生活に関する支援も行っています。
日常生活面、地域生活に関する支援として、下記のようなものを行っています。
- 生活習慣形成、健康管理、金銭管理等、日常生活の自己管理に関する助言
- 住居、年金、余暇活動等、地域生活・生活設計に関する助言
生活が乱れていると、就職してからも仕事を続けていくことが難しくなってしまいます。生活習慣や健康管理についてのアドバイスをもらい参考にしましょう。
助言以外にも、関係機関との連絡調整を行っているため、必要に応じて連携している医療機関や就労移行支援事業所などを紹介される場合もあります。例えば、「朝、決まった時間に起きられない」という相談に対して、生活リズムを整えるために通所できる機関を紹介する、などです。
生活習慣だけでなく、服薬も含めた健康管理のサポートを行います。関係機関と連携して、障がいのある方の就業面・生活面の一体的な支援を行っています。
そのほか、「障害年金の制度を受けたいけど手続きが複雑すぎてわからない」「障害福祉サービスを利用したいがどう手続きしたらいいかわからない」といった場合にも相談が可能です。
職業訓練・求職活動だけでなく、福祉サービス・医療など、就職・生活に関しての総合的な相談窓口となっていると言えます。必要な支援を受けたいけれど、手続きで困ったときは一度相談してみましょう。
雇用主への助言
障がいがある方だけでなく、障がい者を雇用する立場にある企業からの相談も受け付けています。雇用する側としては、障がいのある方を雇用したくても、障がいについて詳しい知識がない場合もありますよね。
障がいといっても人によって特性や性質が異なります。どんな仕事を任せられるのか、指導方法はどうしたら良いのか、など戸惑う場面は少なくありません。
なかぽつ(障害者就業・生活支援センター)では、それぞれの障がい特性を踏まえたアドバイスや、雇用にかかわる助言を行っています。具体的には、採用方法についてや、職場の人間関係等の相談が可能です。先述したような職場定着支援の一つとして、職場環境の改善を指導する場合もあります。
障がい者と雇用主の懸け橋のような役割をしていると言えますね。
「障がい者就業・生活支援センター(なかぽつ)」を利用するには?
実際になかぽつ(障害者就業・生活支援センター)を利用する方法を見ていきましょう。
利用の流れ
なかぽつの利用開始から、就職後までの流れを紹介します。
利用料金
なかぽつ(障害者就業・生活支援センター)の相談・支援にかかる費用は無料です。
ただし、職業訓練等で使用する施設利用料や交通費、職場体験実習等での交通費等、その他の経費は自己負担となる点に注意が必要です。
利用対象者
「就業・生活面」での相談は、原則、障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれか)を取得している「15歳以上65歳未満」の方が利用対象となっています。
具体的には、身体障害・知的障害・精神障害・発達障害がある方や難病の方で、就労を希望する方、または既に就労している方を対象としています。障害者手帳が無い方や診断が下りていない方でも、日常生活や社会生活に困難を感じている方であれば利用できる場合もあります。
まずは事前に利用が可能かどうか、なかぽつ(障害者就業・生活支援センター)に問い合わせてみましょう。
「就労移行支援事業所」「地域障がい者職業センター」との違い
なかぽつ(障害者就業・生活支援センター)から紹介される「就労移行支援事業所」と「地域障害者職業センター」は障がいのある方が就職に向けて職業訓練を行う機関です。なかぽつとの違いがわかりにくいですよね。
請け負っている支援の内容に違いがあります。順番に見ていきましょう。
就労移行支援事業所とは
就労移行支援事業所では、障がいのある方が通所しながら、就職に向けた職業訓練を行っています。就職を目的とした職業訓練機関と言えます。
なかぽつとの違いとしては、相談者からのヒアリングをもとに職業訓練機関を紹介する相談窓口の役割をしている点が異なります。なかぽつは相談者と支援機関をつなぐ役割であり、就職のための訓練はなかぽつではなく、あくまで就労移行支援事業所などの職業訓練機関で行う、というイメージですね。
就労移行支援事業所で受けられる支援として、下記のようなものがあります。
職業訓練
一般企業で働くために必要な知識や職場でのコミュニケーションの方法、ビジネスマナーの基礎、PCスキル等、社会生活に必要な物事を学びます。事業所によっては作業訓練だけでなく、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を行う場合もあります。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)については、下記の記事で解説しています。
職場体験
企業で実際に働き、自分に適性がある業務か確認しながら働くイメージを作っていきます。
実習中は職員が同行してサポートを行う場合もあるので、慣れない環境でも安心して業務に取り組めます。
職場探し
個人の適性や経験に応じた企業求人を探したり、求人の紹介を行ったりします。
ハローワークのような企業と直接の求人紹介はできませんが、適性や経験に応じて、このような求人が出ている、このような求人はどうか、などを教えてもらうことができます。
また、ハローワークに行ったことのない方など、必要に応じてハローワークに同行する場合もあります。ハローワークには「障害者相談窓口」が設置されているところもあるため、専門の職員に相談することも可能です。ハローワーク主催の障害者向け合同面接会が行われる場合もあるので、チェックしておくと良いでしょう。
就職活動のサポート
就職相談や履歴書等の応募書類のチェックや添削、模擬面接を受けることができます。
面接前の身だしなみのチェックだけでなく、面接へ支援員が同行し、事業所での様子を説明する場合もあります。
就労移行支援事業所について、詳しくは下記の記事で解説しています。
就労移行支援事業所を受けられる期間は原則最長2年間と定められています。
しかし、就職してから不安になることもあるでしょう。就労移行支援事業所からの就職後は、就労定着支援を受けることができます。
就労定着支援について
就労定着支援とは、一般就労した障がい者が「職場に定着し長く働く」ための就職後のサポートを目的とした障害福祉サービスです。職員が企業へ訪問してのアドバイスや、困りごとに対する相談を行います。
就職後、業務内容や人間関係など、上司や同僚に相談しづらいことで不安や悩みが生じたときには相談してみましょう。働きやすい職場づくりができるよう、就労定着支援員が間に入って解決をサポートし、会社とも連携を取って動いてもらえます。
就労移行支援事業所から定着支援を受ける場合、利用できる期間は6か月です。
その後も支援を受けたい場合は、なかぽつや就労定着支援事業所が支援を行います。就労定着支援事業所を利用する場合、最長3年間サポートを受けられます。
地域障がい者職業センターとは
地域障害者職業センターは、就労移行支援事業所と同様、就職を目標として活動を行う機関です。障がいのある方に対して、専門的な「職業リハビリテーション」を提供しています。
詳しく見ていきましょう。
職業相談・職業評価
就職の希望などをヒアリングしながら検査・作業を行い、職業能力を分析します。それらを基に職場に適応するために必要な支援内容・方法など、個人の状況に応じた職業リハビリテーション計画を決めていきます。
職業準備支援
個人の状況に応じて、就労場面を想定した環境での作業体験や、職業・就職に関する知識についての講習を行います。
訓練を通じて基本的な労働習慣を身に付け、作業をやり遂げること、職場での対人コミュニケーション能力の向上をサポートします。
職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援
障がいのある当事者が円滑に就職し、職場に適応できるよう、職場にジョブコーチを派遣します。ジョブコーチは本人や事業主に対し、障害特性を踏まえた支援・援助を行います。
就職したのち、およそ2~4か月程度支援を受けることができます。
その他、精神障害者総合雇用支援や、事業主に対する相談・援助、地域における職業リハビリテーションに関する助言・援助なども行っています。
訓練期間は最長12週間、標準的には8週間程度で、就労移行支援事業所と比較すると期間は短めです。
地域障害者職業センター|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)
その他、メンタルの不調で求職している方が、職業リハビリテーションを通して職場復帰を目指す「リワーク支援」も行っています。心と身体を整えつつ、無理なく職場復帰できるように取り組むことができます。
まとめ|なかぽつ(障がい者就業・生活支援センター)で受けられる支援
- 「なかぽつ(障害者就業・生活支援センター)」では障がいがある方に対して、就業面と生活面における支援や相談を受けられる。
- 障がい者と雇用主をつなぐ架け橋として、障がい者を雇用する企業への助言・相談も行っている。
- 「なかぽつ」では職業訓練機関を紹介してもらえる。ただし、なかぽつ内で職業訓練は行っていないのでできない。
- 就労移行支援事業所や地域障害者職業センターとは、請け負う支援の内容が大きく異なる。「なかぽつ」は相談がメイン。
「なかぽつ」こと「障害者就業・生活支援センター」はさまざまな機関と連携しているため、悩みに適切な提案をしてくれます。
障がいがあり日常生活や就職で困っている場合も、雇用する立場で悩んでいる場合も、気軽に相談してみましょう。