
「自分に向いている仕事を見つけられない…」
このような悩みを抱えているASDの方は多いのではないでしょうか。ASDの方は、自身の持つ弱みのために就職活動がうまく進められないことがよくあります。
しかし、ASDの方に向いている仕事は決して少なくはありません。強みを発揮できる仕事や職場環境であれば、周囲の人間以上に活躍ができる可能性もあります。
- ASDの方が持つ長所と短所
- ASDの方が向いている仕事の特徴
- ASDの方が向いている仕事7選
- ASDの方が仕事を探す際のポイント
- ASDの方が利用できる就労支援機関
について解説していきます。
この記事があなたの就職活動の助けになれたなら幸いです。
ASDの方が持つ特徴
この項目では、ASDの特徴について振り返っていきましょう。
ASDとは、日本語で「自閉スペクトラム症」と呼ばれている、発達障がいの1種です。
イギリスの精神科医であるローナ・ウィング氏はASDの代表的な特徴を、下記の3つにまとめました。
- 社会性の特性
社会の常識や暗黙のルールに関心がないため、非常識に見られやすい。また、場の空気や相手の様子を読み取ることができず、共感性が弱い。
そのため、対人関係が上手くいかないことが多く、孤立しやすい傾向にある。 - コミュニケーションの特性
自分の興味のあることや頭に浮かぶことは次々と話すが、相手の話は聞かないため、一方通行になりやすい。知識としての「言葉」は理解できているが、冗談やたとえ話など、言葉の裏がある場合、理解できないことが多い。また、非言語的コミュニケーションの理解が苦手な傾向。
そのため、コミュニケーションに関わる問題が起こりやすく、意思の伝達が上手くいかないことも多い。 - 想像力の特性
興味関心の幅が狭くなりやすい。また、決められた手順やルールに徹底するなど、こだわりが強い。突然のスケジュール変更やルール変更など、自分が予想できないことを想像するのが苦手な傾向。
自分とは異なる立場を想像することが難しいため、こだわりと合わない時など、トラブルの原因となりやすい。
このような特性があるため、職場などの社会的な場面で人と関わったりコミュニケーションをとったりする際に、難しさを感じる方も多いでしょう。
しかし、ASDの方が仕事を選ぶうえでは、長所となる部分も少なくありません。
まずは、ASDの方にはどんな長所があるのか、見ていきましょう。
ASDの方の長所
ASDの方が持っている長所として、下記の要素が挙げられます。
- 関心のある分野に強い集中力を発揮できる
- ルールやマニュアルに従順で規範意識も高い
- 視覚的処理能力に優れている
- 論理的思考が得意
順番に解説していきます。
興味のある分野に高い集中力を発揮できる
ASDの方の中には、興味のある分野において多くの知識を徹底的に収集したり、覚えることができたりするほどに集中力が高い方がいます。また、高い集中力を発揮できれば、一度に向けられる範囲は狭いものの、作業の質が高くなったり細かい見逃しが少なくなったりもします。
ルールやマニュアルに従順で規範意識も高い
明記されたルールや具体的なマニュアルがある業務であれば、その通りに動けることもASDがある方の長所です。
こだわりや厳密性が強い面があるので、仕事によってはその特性を高く評価されることもあるでしょう。
視覚的処理能力に優れている
視覚的な情報であれば理解や把握がしやすく、説明も記憶に残りやすい方が多いです。ここでいう視覚的な情報は、文字や画像、映像などのことを指します。そのため、チャットなどの文字や文章を使ったやり取りであれば、説明されたことが頭に入りやすい方が多いです。
論理的な思考が得意
ASDの方には論理的な思考が得意な方が多いです。ここでいう論理的とは、きちんと筋道を立てて考えを組み立てることを指します。また、これに伴って、一定の規則性に強いこだわりを持つ方もいます。
このように、ASDの方にも仕事で活躍できる強みがあります。しかし、短所が強く表れる場面だと、これらの長所を発揮できません。
次の項目では、ASDの方が持っている苦手や弱みについて解説していきます。
ASDの方の短所
ASDの方が持つ短所としては、下記のことが挙げられます。
- 場の空気を読むことができない
- チームプレイが苦手
- 報告や連絡、相談がうまくできない
- マルチタスクが苦手
こちらも、順番に見ていきましょう。
場の空気を読むことができない
明記されていないルールや、物事の「裏」を読むのが苦手なために、場の空気を読めないことが多くあります。そのため、会議や打ち合わせの中にある空気を察することができず、意見を言えなかったり周囲と摩擦を生じさせてしまったりする場合があります。
また、状況がどんどん変化していき、その場に応じて臨機応変に適切な対応を求められる場合を苦手とする方が多くいます。
チームプレイが苦手
コミュニケーション能力や協調性が低いため、周りと足並みをそろえた作業が難しい場合があります。また、独断で行動してしまうこともあるため、周りを混乱させてしまう場合もあるでしょう。
報告や連絡、相談が上手くできない
業務の指示を誤って理解する場合や、報告時の話が分かりづらく仕事に支障が出る場合があります。相談についても、上司が忙しそうにしている場合、いつ話しかけていいのかタイミングがわからず、結局相談できない、というケースも珍しくありません。
マルチタスクが苦手
1つの仕事に集中して取り組める反面、複数の仕事を同時にこなすことが苦手な方が多いです。これに伴い、複数の仕事の順序立てが難しい方も少なくありません。マルチタスクを強いられると、ストレスや不安を抱え、作業の進みも悪くなってしまう場合もあります。
上記のことから、全体的に他人との複雑なコミュニケーションを求められる場面が苦手なことや、複数の業務を同時にこなすことが難しいことを短所として挙げることができるでしょう。
あくまで一般的な例なので、全てがASDの方に当てはまるわけではありません。上記の例を参考にしつつ、自身にどんな特性があるのか見つめ直すのが、自分に合った仕事を探す上で重要です。
仕事で長所を活かす3つのポイント
ASDの方は、苦手な部分を避けつつ長所が生かせるような仕事であれば、自身に備わった能力を発揮できます。では、どのような仕事であれば、自身の長所を発揮できるのでしょうか。
この項目では、ポイントを3つ紹介していきます。この項目で述べる3つのポイントを押さえた仕事を探していくことができれば、ASDの長所を活かせるでしょう。
➀ 人と接する場面が少なく、自分のペースで仕事ができる
ASDの方が抱えやすい主な悩みは、先述の通り他人とコミュニケーションをとる場面で多く見られます。営業や接客など、他人と関わることが要求される仕事では、大きなストレスを抱えてしまう可能性が大きいです。
集団で足並みをそろえる場面が少なく、自分のペースで黙々と作業を進められる仕事であれば、自身の強みを発揮できるでしょう。在宅勤務やリモートワークを導入している職場であれば、自分が居心地の良い空間で働けます。
オフィスなどの他人と関わることが多い仕事場だと、雑音や周囲の目が気になってしまう方は、このような就労形態が導入されている仕事を探してみると良いでしょう。
➁ ルールやマニュアルに沿った働き方ができる
ASDの方はルールやマニュアルを守ろうとする意識が強いので、原則を適用して処理を行う業務の適正は高いと言えます。逆に言えば、臨機応変さや柔軟性が求められる職場では、適切な対応ができず、大きなストレスを抱えてしまう可能性があります。
仕事を探す際は、その職場に明確なルールやマニュアルがあるかどうかしっかりと確認しておくと良いでしょう。どうしても臨機応変な対応が迫られてしまう仕事の場合は、サポートしてもらえる方やパターンごとにできる対応を確認しておきましょう。
➂ 視覚的処理能力を活かすことができる
先述の通り、ASDの方は文字や画像など、目で見る情報を処理する能力が得意とする場合が多いです。視覚情報のこだわりが活かせる仕事を探してみると良いでしょう。
また、社内における指示やコミュニケーションを、チャットなどの視覚で確認できるツールで行えるかチェックしておくことも重要です。目に見える文章での指示であれば、ASDの特性上頭に入りやすく、誤解やズレも回避できます。
ASDの方が向いている仕事7選
では、先ほど説明した3つのポイントを押さえている仕事にはどのようなものがあるでしょうか。
この項目では、例として7つの仕事を紹介していきます。
- 工場作業員
- 財務・経理
- 事務職
- 校正・校閲
- プログラマー
- Webデザイナー
- Webライター
ASDの長所をどう活かせるかも踏まえながら、順番に見ていきましょう。
工場作業員
主な仕事は、製品の製造や検査、ライン管理などになります。ルーチンワークが多く、1つの作業に集中できる職場がほとんどとなっています。
機械操作など、技術や安全のために細部へ注意を払うことが必要になるため、正確に作業を進める能力とルールを守る重要性が高い仕事です。このことから、ASDの強みである「集中力の高さ」や「ルールに対する強い規範意識」などの長所を活かせる職場と言えるでしょう。
また、細かいところに気がつける特性から、不良品をいち早く見つけたり、飽きずに黙々と続けられたり、と特性を活かせる可能性もあります。
安全のために指示が明確な場合が多いので、意思疎通に関する悩みを最小限にしながら仕事ができるでしょう。
財務・経理
財務・経理の主な仕事は、企業のお金の流れを正確かつ厳密に管理することです。正確な計算と細かなデータの分析力、法規制の遵守、そして責任感が求められます。
財務・経理では多くの業務がパターン化、ルーチン化されています。数字に強く、細かい作業が得意な方であれば、ASDの特性である「ルールに対する規範意識の高さ」や「集中力の高さ」、「数字や文字などの視覚情報に対する処理能力の高さ」などが発揮される可能性が高いでしょう。
細かい明細や数字を黙々と処理していくものもあれば、会計データをもとに企業の経営分析を行うものなど、簡単なものから難しいものまでさまざまな種類の業務があります。そのため、自分のスキルに合わせてステップアップをしていくことも可能です。
財務・経理の仕事は需要が高いため、求人は幅広いです。しかし、中にはまったくマニュアルが整備されていない場合や、会計業務に限らずさまざまな事務作業を担当しなければならない場合もあります。特に中小企業や税理士事務所ではこの傾向が強いです。
もし財務・経理の仕事に就きたいと思う方は、しっかりとマニュアルが整備されているか、仕事が幅広い分野に及んでいないかを確認しておくと良いでしょう。
事務職
事務職の主な仕事は、書類の作成やデータの入力です。
多くの業務に明確なルールやマニュアルが整備されていることがほとんどなので、作業に対する負担は少ないでしょう。正確性を求められる単純作業が多く、ルーチンワークが中心なので、ASDの長所ある「強い集中力を発揮できる」点を活かせる可能性があります。
ただし、オフィスツールを操作するスキルや、日々の業務を円滑に進めるためのコミュニケーション能力が必要です。また、会社の状況によっては、来客や電話対応など、1人でいくつもの業務をこなさなければならない可能性もあります。場合によってはマニュアルすら整備されていない企業もあるでしょう。
事務の仕事を探す際も、財務・経理の仕事と同じく、仕事内容やマニュアルがしっかり整備されているかを確認する必要があります。
校正・校閲
校正では誤字脱字や接続詞の使い方、統一されていない言葉遣いのチェック、校閲では文章の内容にまで踏み込んで確認を行うことで、文章の品質を高めていくことが仕事になります。
この仕事では、同じ文章を繰り返し読み、細かい見落としを見つけるなどの緻密な作業が要求されます。文章に興味を持っている方ならば、ASDの特性である「集中力の高さ」や「視覚情報の処理能力の高さ」を発揮して活躍できるでしょう。
仕事自体が地道かつ、1人で黙々と作業することが多い仕事のため、こうした面からみてもASDの方に向いていると言えます。
プログラマー
プログラマーの主な仕事は、プログラミング言語を用いてエンジニアが設計した仕様書を基にプログラミングを行うことです。Web上において、ASDの方にはプログラミングが向いているという話を見かけた方もいるでしょう。
実際、プログラミングは論理的で規則性に沿ったルールの中で構築していくため、ASDの「論理的な思考が得意」という長所がプログラマーとして向いていると言えます。また、プログラミングに興味を持ち、楽しいと感じられれば、ASDの特性である「高い集中力」を発揮してさまざまな知識や技術を吸収し、素晴らしいプログラマーになれる可能性があるでしょう。
しかし、プログラマーとして仕事を行うには、JavaScriptやPythonなどのプログラミング言語を根気強く学ぶ必要があります。用途によって使用する言語は異なりますし、技術は日々更新されるので、勉強し続けることが重要です。そのため、未経験かつ独学では難しく、そもそもプログラミングに興味がなければ勉強を続けることはできないでしょう。
現在では、企業からの需要が高いこともあり、プログラミングを専門的に学ぶことができる就労移行支援事業所などをはじめとした支援制度が増えています。もし未経験からプログラマーを目指したい方は、就労移行支援事業所などの利用を検討すると良いでしょう。
就労移行支援事業所については、後の項目で解説します。
Webデザイナー
Webデザイナーは、クライアントの要望に沿い、ユーザーにとって使いやすいWebサイトを作ることが主な仕事です。
この仕事では、画像やデザインを扱うため、「視覚的な情報処理能力の高さ」を活かすことができるでしょう。デザイン自体が好きな方、興味がある方であれば、「高い集中力」と「こだわりの強さ」を発揮して、細部までこだわった質の高いものを制作できる可能性があります。
また、HTMLやCSSなど、Webサイトの制作に使用する言語を学ぶことができれば、実際にサイトを組んでいく「コーディング」の作業など、ASDの特性である高い集中力を活かした仕事ができるようになるでしょう。
パソコンに向かって仕事をする場面がほとんどなので、人との関わりを最小限にできることもメリットの1つです。会社によっては在宅で仕事ができる場合もあります。
Webデザインに関する専門的な知識を学べる就労移行支援事業所も増えてきているので、こちらも活用してみるのも良いでしょう。
Webライター
Webライターの主な仕事はWebサイトに掲載する記事を作成することです。文章を扱う仕事なので、「視覚的情報を処理する能力の高さ」の特性があるASDの方に向いていると言えます。
Webライターには、ただ文章を書くだけではなく、1つのテーマを深掘りして読者にわかりやすく伝えることが求められます。そのため、内容が興味関心のある分野であれば、「徹底的に情報を深掘りする集中力の高さ」を活かすことができるでしょう。
Webライターには、ライティングスキルだけでなく、記事を検索の上位に表示させるためのSEOの知識が必要です。こちらも、プログラミングやWebデザインと同様、専門的に学ぶことができる就労移行支援事業所が増えてきており、未経験からでもチャレンジしやすくなっています。
また、Webライターも1日のほとんどをパソコンに向かって過ごします。フリーのライターであれば、在宅での仕事も可能です。
特性・向き不向きには個人差がある
ASDの強みを活かせる可能性がある職種を7つ紹介してみました。
しかし、ASDと一言にまとめても、特性には大きな個人差があります。全てのASDの方が、この項目で紹介した職種に向いているわけではありません。
また、高い集中力や強いこだわりなどASDの長所を発揮するには、本人がその分野に興味を持てるかどうかが重要になってきます。逆に言えば、仕事に関わる分野に興味を持つことができれば、少ない負担で自身の強みを発揮できるはずです。
まずは、自分がどんなことに興味があるのか向き合っていきましょう。そのうえで、この項目で紹介した仕事に興味があれば、思い切ってチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
仕事を探す際の4つのポイント
もしかしたら、先ほど解説した職種以外の仕事があなたの適職である可能性もありますよね。
しかし、「自分に向いている仕事をどう探したらいいのかわからない」とお悩みの方も多いでしょう。この項目では、仕事を探す上でのポイントを4つ解説していきたいと思います。
では、順番に見ていきましょう。
➀ 自分の特性の理解を深める
ASDの方の就職活動では、自分の特性を理解する必要があります。特に、自分が持っている長所や短所、障がいの特性について分析し、理解を深めておくことが重要です。
先ほども述べた通り、ASDの特性には個人差があります。興味や関心をどこに抱いているのかは全く違いますし、ASDの長所や短所がどの程度表れているかも人によって異なります。もしかしたら、一般的にはASDの方には向いていないと言われている仕事があなたには適職だった、という可能性もあるかもしれません。
理解を深めるためには、自分の長所や短所、悩み事、興味関心があることなどを紙に書き出してみましょう。文字という目に見える形にすることで、より整理しやすくなるはずです。
転職サイトで公開されている自己分析ツールを使うのもオススメです。客観的な診断を得ることができたり、自分が短所だと思っていたことの認識が変わったりするかもしれません。
自分の特性を理解し深めたあとは、自身の特性をどう活かしたいかを考えていきましょう。自身の特性を自分の言葉で説明できるようになれば、仕事選びだけでなくエントリーシートの作成や面接の場でも役に立ちます。特に、短所に対する対策や必要な配慮を説明できれば、面接官に良い印象を抱いてもらえますし、配慮のイメージも具体的に考えやすくなります。
就職活動を始めるときは、まず自分の特性理解を深めるところから進めていきましょう。
➁ 自分に合った雇用を検討する
雇用には一般雇用枠だけではなく、障がい者雇用枠があります。障がい者雇用枠では障がいの特徴にあわせた就労条件となっており、ASDの方でも負担が少なく働けるようになっています。
ただし、デメリットとして下記のことが挙げられます。
- 月収が10~20万円と低く、昇給や昇格も少ない
- 仕事がデータ入力や事務職など、単調で限られたものになりやすい
- 企業から配慮を受けられない場合もある
また、障がい者雇用枠を受けるには、障がい者手帳の申請が必要です。
「オープン就労」と「クローズ就労」
一般就労であっても、ASDのことを明かして働く「オープン就労」と隠して働く「クローズ就労」を選ぶことができます。オープン就労であれば、必要な合理的配慮を職場に求めることができることでしょう。ただし、必ずしも望むような配慮が得られるとは限りません。
クローズ就労では障がいを隠しているため、通院や必要な配慮を求めることはできません。しかし、求人数が多く職種や業務内容も幅広いです。
令和2年に発表された「障害者雇用の促進について 関係資料」によると、オープン就労を行った場合の1年後の職場定着率は49.9%、クローズ就労をした場合は30.8%と約2割の差があります。
このような結果を参考に、オープン就労とクローズ就労のどちらで就職するか考えることもオススメです。
自分の特性や経済状況、そして仕事を総合的に考えて、どの働き方が自身に大きなメリットになるか考えて検討すると良いでしょう。
クローズ就労のメリット・デメリットについては、下記の記事で解説しています。
➂ アルバイトから正規雇用を目指してみる
アルバイトから始めて、ステップアップしていく形で正規雇用を目指すのも1つの方法です。
興味のある業界や職種でアルバイトを募集していたら、そこに応募してみましょう。実際に働いてみることで、自身の特性がどのような形で仕事に出るか、その職種が自分に向いているかどうかを経験できます。
アルバイトで失敗してしまっても、自分の不向きを経験できたのだと前向きに捉えると、次の業界にチャレンジしやすくなるでしょう。また、アルバイトを通して、働くこと自体にも慣れていくことができます。
もしなかなか正規雇用に結びつかない場合は、アルバイトで経験を積んでから就職を目指していくことも考えてみてはいかがでしょうか。
➃ 就労支援制度を利用する
1人で就職活動を続けることに限界を感じてきたら、就労支援制度を利用してみると良いでしょう。
就職活動をしているASDの方に向けて福祉サービスを提供している就労支援は数多くあります。
また、1人での特性理解を深めることが難しい、やり方がわからない方も、支援機関の利用がオススメです。面談などでアドバイスをもらえたり、自分が気づいていなかった一面を指摘してもらえたりします。
アルバイトと並行して利用できる支援制度もあるので、就活で悩みや困りごとを抱えている方は相談してみると良いでしょう。
ASDの方が利用できる就労支援制度
この項目では、先述したASDの方が利用できる支援機関を紹介します。支援内容に興味を持った方や、就職活動を有利に進めたい方は、利用してみてはいかがでしょうか。
では、順番に見ていきましょう。
就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指すASDの方に向けて、利用者個人の特性を把握し、
- 働きやすい職場環境や合理的配慮の整理
- 障がい理解
- 書類添削
- 面接練習
など就職活動の支援を行っています。
特に、障がい理解を行うための支援では、面談などで自分の特性に対する理解をより深められるでしょう。
現在は、ビジネスマナーやコミュニケーションをはじめとする、職場で必要なスキルだけでなく、プログラミングやWebデザインをはじめ、専門的なITスキルを学べる事業所も増えてきています。事業所によっては、各種資格の取得支援や、ASDなどの発達障害に特化した支援を受けることもできます。
就職活動の支援以外にも、就職後にも職場定着できるように利用者と職場の間に入って業務調整などのサポートを行っている事業所もあります。
就労移行支援事業所は、利用期間が原則24か月以内と定められています。利用する際には、障害者手帳は必須ではありませんが、障害福祉サービス受給者証が必須なので、専門医による診断書が必要になります。
また、直接求人の紹介は行っていません。仕事探しはハローワークなどで利用者自身が行う必要があります。
相談・見学は無料で行われているので、興味がある支援内容があれば、見学に行ってみると良いでしょう。
ハローワーク
ハローワークでは、一般の雇用と障がい者雇用枠の両方を探すことができます。ハローワークに障がい者として求職登録を行えば、専門の相談員から自身の障害特性や希望職種に応じて、職業相談や職業紹介、職場への適応指導を受けられるようになります。
ハローワークによっては「発達障がい者雇用トータルサポーター」と呼ばれる発達障害専門のスタッフが在籍している場合もあるので、利用すればより自身の特性の理解を深める手助けになるでしょう。
相談を通じて、就労に必要なスキルを身に着けるための職業訓練(ハロートレーニング)につなげていくこともできます。
障がい者トライアル雇用
ハローワークの特徴として、障がいなどを理由に安定した就職が困難な方のために、「障害者トライアル雇用」という制度を実施しています。障がい者トライアル雇用とは、事業主と3か月などの短期間雇用契約を結んで雇用し、利用者と事業主双方の理解を深めたうえで入社を決める制度です。
メリットとして、下記の4つが挙げられます。
- 面接からスタートできる
- 試用期間の間に自分と職場、仕事の相性を体験することで見極めることができる
- スキルを身に付けられる
- 賃金が支払われる
また、障がい者トライアル雇用を利用した方の中で、1年後まで職場定着している方が約8割であることも、魅力的なポイントです。
しかし、必ずしも本採用になるとは限らず、トライアル雇用で不採用になれば職歴にも残ることには注意しましょう。
利用する条件として、「紹介日前の2年以内に2回以上離職、あるいは転職を繰り返している」、「離職している期間が半年を超えている」などがあります。
もし利用条件を満たしていれば、障がい者トライアル雇用の利用を考えてみても良いでしょう。
障がい者トライアル雇用の詳細は、下記の記事で解説しています。
転職エージェント
転職エージェントとは、キャリアアドバイザーなどの専門家が相談者の希望を伺ったうえで、相談者と企業の間をつなぎ、就職活動のサポートを行うサービスです。
専門のスタッフが相談者と企業双方の状況を考慮して、マッチした求人の紹介を受けることができるので、自分に合う職場が見つからない方にオススメできます。
また、求人の紹介を行うだけでなく担当者が面談や手続きの代行などを行うなど、手厚いサービスを受けられることもメリットの1つでしょう。
近年では、転職エージェントの中にもASDなどの障がいのある方に向けたサービスを提供している企業もあり、カウンセリングを通して自身の特性の理解を深めることも可能です。
下記に一例を挙げてみます。
- LITALICO仕事ナビ
- dodaチャレンジ
- ランスタッドチャレンジド
- DIエージェント
- マイナビパートナーズ紹介 など
希望の職場に入社したあとも、安定して働けるように連絡を取り合って相談に応じたり、困ったことがあれば職場に掛け合ったりなどのサポートも行ってくれます。
無料で相談できるので、ハローワークや就労移行支援事業所と併せて利用することをオススメします。
発達障がい者支援センター
発達障がい者支援センターは、発達障がいのある方が安定した生活が営めるよう、総合的な支援を目的として設置されています。就労に関する相談を受け付けており、ハローワークなどの関連機関と連携して、求人に関する情報提供や、就職先への障がい特性に関するアドバイスなどを行っています。
発達障がいについて専門的な知識や経験があるスタッフが相談に乗ってくれることが特徴です。精神保健福祉士や社会福祉士などが在籍しているセンターでは、ASDなどの発達障がいにより特化したサポートを受けることができるでしょう。
発達障がい者支援センターでの相談、利用に障がい者手帳は必須ではありません。
全国の相談窓口の情報が下記のリンクに記載しているので、興味があれば相談に行ってみましょう。
詳しい支援内容については、下記の記事でも解説しています。
障がい者就業・生活支援センター
障がい者就業・生活支援センターでは、就業面と生活面からの一体的な支援を行うために、窓口での相談や、職場・家庭訪問を実施しています。必要に応じて、就労移行支援事業所やハローワークなどの関連機関と連携した支援も受けられます。
こちらも専門の支援員による就職に必要なアドバイスや職場に定着するための相談対応、職場への働きかけなどを行っています。また、就活面だけでなく、金銭管理などの経済面、住居などの生活面など、多岐に渡る相談が可能です。このため、就職のサポートだけでなく、日常生活におけるサポートも受けたい方にオススメできます。
利用したい場合は近くにある障がい者就業・生活支援センターを予約しましょう。その後は、担当者と面談を行い、利用を継続する場合は、支援の内容について話し合うことになります。
障がい者就業・生活支援センターは、令和6年時点で全国に337か所設置されています。お近くのセンターを探してみると良いでしょう。
障がい者就業・生活支援センターについては、下記の記事でも解説しています。
地域障がい者職業センター
地域障がい者職業センターでは、発達障がいに限らず障がいのある方それぞれのニーズに応じた専門的な「職業リハビリテーション」を行っています。
職業リハビリテーションとは、障がいのある方が適した職場に定着できるよう、能力向上を通した社会参加を目的とした取り組みです。働くための専門的な訓練を受けられるともに、就職後もジョブコーチと呼ばれる専門のスタッフを派遣し、業務調整を行うなどの支援を行っています。
また、障がい者職業総合センターでの職業リハビリテーションに関する研究や技法開発の成果を活用し、地域障がい者職業センターでの発達障害者に対する専門的支援も実施しています。
地域障がい者職業センターについては、下記の記事でも解説しています。
まとめ|ASDの方に向いている仕事と就労支援制度
- ASDの方は長所と短所がはっきりと表れることが多い。
- ASDの方が強みを活かすには、人とのコミュニケーションが最低限であり、ルールやマニュアルが明確で、視覚的処理能力が活かせる仕事がオススメ。
- ASDの方が向いている可能性がある仕事には、「工場作業員」「財務・経理」「事務職」「財務・経理」「プログラマー」「Webデザイナー」「Webライター」などがある。しかし、本人の特性によって向かない場合もあれば、それ以外の仕事が適職の場合もある。
- ASDの方が仕事を探すためには、自分の特性を理解すること、自分に合った雇用形態を検討すること、アルバイトから正規雇用を目指すこと、就労支援制度を利用することが必要。
- ASDの方が利用できる就労支援制度には、就労移行支援事業所、ハローワーク、転職エージェントなどがある。
ASDの方であっても、自身の長所と短所を見つめ返すことで自分にどんな仕事が向いているのか、あるいは何がしたいのかわかってくることがあります。自身の特性を理解したうえで、紹介した仕事に興味を持った方は、思い切ってチャレンジしてみると良いでしょう。
また、1人で就職活動を進めていくのが不安、難しく感じる場合は、ここで紹介した支援制度を利用してみてはいかがでしょうか。