「就労移行支援は意味ないって書いてあるのを見たけど、本当なのかな…」
などの不安・疑問はありませんか?
就労移行支援事業所に通っても就職できない、無意味といった声がネット上でクローズアップされることがあります。
しかし、令和4年に就労移行支援事業所から一般企業へ就職した障がい者の方は約1.5万人と、決して少なくはない現実があります。
役に立たない訓練にそりの合わない福祉職員、皆さんの抱えるストレスフルな現実を想定しながら、当記事では就労移行支援事業所への不満を分析してみました。
- 就労移行支援事業所の意味がないと感じてしまう理由
- 就労移行支援の役立つサポート
- 失敗しない就労移行支援事業所の選び方
を解説します。
もやもやする気持ちをすっきりさせるためにも、是非ご一読ください。
就労移行支援事業所が意味ないと感じてしまう理由5つ
就労移行支援事業所を利用したのに意味がない、無意味だと感じてしまう方はどのような点を不満に感じているのでしょうか。
よく見かける理由は次の5つです。
- 訓練のレベルが低い
- 自力で就職先を見つけないといけない
- 受注作業の賃金がもらえない
- アルバイトの禁止
- 就職したいと思えない(精神障害者退院支援施設加算について)
順に解説していきます。
訓練のレベルが低い
就労移行支援事業所は障がいを理由に離職した方など、社会経験がある障がい者の方が通う場所というイメージがあるかもしれません。
実際には、長い間引きこもりだった方や長期入院経験者、特別支援学校を卒業したばかりの方など、さまざまな背景を持つ方が利用しています。事業所のカリキュラムは、すべての利用者が理解できる内容で、就職活動が難しい方のレベルに合わせた内容を行います。
また厚生労働省から指定されたカリキュラムがある訳でもなく、民間施設の職員がさまざまな事務作業や面談と並行して独自に内容を考えています。
訓練のレベルが合わなくてイライラしている利用者の方は、つい事業所を責めたくなるかもしれませんが、制度上やや無理がある点を留意するだけでなく、自力で就職活動ができる力を持っていると自覚して、前向きに対処していきましょう。
自力で就職先を見つけないといけない
就労移行支援事業所はあくまで就職活動を支援する場所であり、職業斡旋所ではありません。基本的には自分でハローワークへ行き、自分で求人情報を探し就職活動を行っていかなければなりません。
しかし、知的障害をお持ちの方や症状が重い方など、自力で就職先を見つけるのが難しい方もいます。2年間の利用期間で就職に結びつかない方も少なくありません。それとは反対に、障がいがあっても就職活動を成功させ、一般企業で活躍している方も多くいます。
できないことをきちんと相談し援助を求めつつも、自分で一歩を踏み出していくことが障がい者の就職活動にとっては大切です。
受注作業の賃金がもらえない
就労移行支援事業所では、作業訓練として外部企業から受託した内職や軽作業を行うことがあります。
成果物に対して報酬が支払われているはずですが、利用者の方に利益が分配される事業所はごく少数です。簡単な内職や軽作業は作業単価が低く設定されているため、報酬と言っても小さな額面になってしまいます。
また成果物の搬出・搬入、作業指導などの職員の人件費も考慮すると利用者の方だけで利益を享受してよいのかという疑問も生じます。
そもそも訓練の一環で、作業員として雇用契約を結んでいるわけではないので、声高に利益を要求するのは不可能です。
就労移行支援事業所に通所する間、利用者の方は無収入になってしまうので、事業所側も事情を察したい気持ちはあると思いますが、できないこともあるのでしょう。
アルバイトの禁止
就労移行支援事業所に通所している間はアルバイトができないという制度上の規則があります。アルバイトができる方には就職活動のサポートが必要ないとみなされるからです。
しかし、就労移行支援事業所に通う間に無収入では生活が困窮してしまいます。
中には生活保護を受けながら就労移行支援事業所を利用する方もいるほどで、ただでさえ生涯獲得賃金が低くなりがちな障がい者から働くチャンスを奪っている、という見方もできます。
正社員として働く練習をしながらお金を稼げたら一番良いでしょうが、障がい者にとってはアルバイトも就職先の一つとしてカウントされてしまう現状があります。
就職したいと思えない(精神障害者退院支援施設加算について)
精神障害をお持ちの方は、時に入院を経験します。そういった入院患者の退院後の進路としても、就労移行支援事業所は扉を開いています。
しかし、一般社会から隔絶された空間に閉じ込められた体験を経て、就職に対して高い意識を持っている方もいれば、社会に出るのが怖くなってしまった方もいます。
症状が重く通所するのがやっとの状態だったり、日中活動の場として利用せざるを得ない場合もあります。
事業所側としては入院患者を受け入れると算定報酬が増えるため利点もありますが、入院するほど重い病状だった障がい者の方にとって、退院先の進路が少なく仕方なく通う事例も生じてしまっているのが現状です。
就労移行支援事業所の就活に役立つサポート8つ
利用者が不満に思う点がある一方で、就労移行移行支援事業所は就職活動のサポートを行っています。
就職活動はとても緊張しますし、不安でいっぱいですよね。就労移行支援事業所のサポートを受けることで、自分一人で就職活動を行うよりもスムーズに安心して就職活動が行えます。
具体的には下記のサポートを受けられます。
- 履歴書添削
- 職務経歴書添削
- 面接練習
- 企業見学の予約&同行
- 実習・インターンシップの斡旋
- ハローワークへ同行
- 合同面接会同行
- 面接同行
順番に紹介していきます。
履歴書添削
履歴書は専用の用紙に記入する必要がありますが、最近ではパソコンで履歴書を作成することが増えています。
就労移行支援事業所ではパソコンやフォーマットの貸与を通して履歴書作成をサポートする所もあれば、書き方の指導、添削も行っています。
不備があってはいけない書類は、作成するときに知識や経験が豊富な職員からアドバイスがあると安心して提出できます。
職務経歴書添削
職務経歴書は履歴書のように一律の書式が決まっている訳ではないので、作成経験があまりないとどう書いていいのか悩みがちです。
どこまで詳細に書いたら良いのか、何をアピールしたら良いのか、客観的な意見があると非常に助かります。
障がい者の方だと離職理由も、自分の病気の特性などと併せて記述する必要がある場合もあり、沢山の障がい者と出会う専門家だからこその視点は役立つことでしょう。
面接練習
面接は何度経験しても緊張するものです。特に特別支援学校を卒業したばかりの方や引きこもりだった方は、初めての経験になるかもしれません。
そういった方のために面接とはどんなものなのか、どんなことを訊かれるのか、シミュレーションをしておくことで当日の振る舞い方が変わります。
面接同行をしたことがある職員であれば、想定質問もよりリアルになるでしょう。
見学予約&同行
就職活動の最初の段階では、企業見学を行います。選考を受けるか検討中の会社に出向いて、実際の雰囲気を見たり仕事内容の詳しい話を聞いたりします。
求人募集が出ているからといって、自分で忙しい企業に電話をしていきなりアポイントメントを取るのは難易度が高いです。
就労移行支援事業所に通所していれば、事業所の職員が企業同士の話し合いとして見学の日取りを決めてもらえます。
また、当日職員が同行してくれるのも心強いポイントになります。
実習・インターンシップの斡旋
企業見学と同様に、企業内実習や企業内訓練、インターンシップの相談、斡旋を行ってくれるのも就労移行支援事業所の特徴です。
制度を上手に活用すれば実習には公的補助金が出る場合があり、実習やインターンシップの募集をしていない企業でも職員の交渉によっては職場体験ができることもあります。
障がいに悩む方が自力で新しい実習先を開拓するのは難しい場合が多いので、就労移行支援事業所に所属する大きなメリットでもあります。
ハローワーク同行
同じ就労移行支援事業所の利用者であっても障がいによる問題は人それぞれで、例えば知的障害の方など、一人でハローワークへ行って求職者登録をするのが難しい方もいます。
また、就職活動の過程でどうしても就労移行支援事業所とハローワークとの連携が必要になるため、個人の特性や病状について客観的にハローワーク側に伝えてもらえるのは、のちのち非常に助かります。
初めての場所で手間取る失敗をすると何度も思い返して落ち込んでしまうような方は、同行のメリットを大きく享受できるでしょう。
合同面接会同行
障がい者の方のために、地元企業が集まって頻繁に合同面接会を開催しています。
いつどこで開かれるのか、個人の力では情報を入手することが困難なため、やはり就労移行支援事業所に所属する利点と言えます。
面接会でのマナーや振る舞い方なども事前に指導してもらえたり、服装のアドバイスもしてもらえます。
当日、慣れない空間で上手く活動できるよう、同行してもらうことも可能です。
他の利用者の方と一緒に参加することも可能で、事業所としての参加は個人単位よりも心強いでしょう。
面接同行
就職活動の中で最も緊張する面接も、職員が同行し面接官にこれまでのアセスメント内容を説明してくれます。
あくまで本人の選考なので質問に答えアピールするのは自力ですが、答えに詰まってしまったらフォローを入れてくれたり、客観的な意見を述べてくれるため面接官としては判断材料が増えます。
自立した成人なので一人で面接に行きたい、という気持ちも応援してもらえます。
失敗しない就労移行支援事業所の選び方
就労移行事業所とのミスマッチは、自分が就労移行支援事業所にどういうサポートをして欲しいか、どういうレベルを求めるのか、明確になっていないために生じると考えられます。
例えば、デスクワークがしたいのでExcelの操作を学びたい、という場合、就労移行支援事業所では初歩的基本操作しか教えてもらえないところもあり、結果的にパソコン教室に通えば良かったとなる場合もあります。
しかし、自主学習の時間が確保されている事業所であれば、パソコンを借りるなどして自分で用意した書籍を参考に勉強を進めることも可能です。
学習においては自力でなんとかなる部分が多く、それよりも実習先の紹介など、就職活動の面でサポートを受けたい場合であれば、就労移行支援事業所への通所は意味のあるものになります。
障がい者の方が就労移行支援事業所を見極めるためには、やはり就職活動への意欲が鍵になるのかもしれません。
まとめ|就労移行支援事業所は意味がない?
- 就労移行支援事業所には、長期入院していた方や引きこもりだった方など、多様な背景を持つ方が利用しており、すべての利用者が理解できるカリキュラムを組んでいるため、内容によっては意味がないと感じてしまう場合がある。
- 自力で就職先を見つける必要がある、受注作業の賃金がもらえない、などの理由で意味がないと考える方もいる。
- 就労移行支援事業所では、知識やスキルを学ぶ訓練の他にも、履歴書や職務経歴書の添削、面接練習、企業見学の予約・同行、実習・インターンシップの斡旋、ハローワークや面接への同行などのサポートを行っている。
- 就労移行支援事業所とのミスマッチは、自分がどのようなサポートをしてほしいのか、明確になっていないために生じると考えられる。
- 実習先の紹介など、就職活動面でのサポートを求める場合、就労移行支援事業所への通所は意味のあるものになる。
訓練のレベルが低いと感じたからといって、就労移行支援を利用するのは無意味と断定するのは早計な場合が多いでしょう。
最初はつらいかもしれませんが、より良い就職活動のための利点も沢山あります。そして、訓練のレベルが低いと感じるのも、さまざまな要因によるもので、決して詐欺ではありません。
就労移行支援事業所をどのように利用したいのか、主体的に考えてみて前向きに行動していくのがベストではないでしょうか。