パニック障がいがあっても、業務の調整や在宅勤務への切り替えをしてもらうことで仕事を続けられる場合もありますが、発作で仕事が手につかなくなったり、ストレスからうつ状態になりかけていたりする場合は、一旦仕事から離れて休む必要があります。

「休職すると、職場に迷惑をかけてしまうのでは…」
パニック障がいは、責任感のある真面目な方がなりやすいので、仕事から離れることに抵抗を感じるかもしれません。しかし、仕事ができないほどの症状が出ているときは、体が助けを求めている時です。そのような場合は、自分のケアを最優先しましょう。
休職したいけれど、なかなか決心がつかないという方へ、
- パニック障がいで休職すべき?
- パニック障がいで休職は職場に迷惑?
- パニック障がいで休職する期間の平均
- パニック障がいで休職する方におすすめの過ごし方
などについて解説していきます。
パニック障がいで休職すべき?
パニック障がいは、治療せずに放置しておくと悪化し、仕事を続けることが難しくなりますし、精神状態にも影響が出てしまいます。自分で休職したいという気持ちが強くなっていたり、周りからも休職を勧められている場合は、休職した方が良いタイミングです。
次の項目で説明するストレスサインも見逃さないようにしましょう。
ストレスサインが出たら危険信号
パニック発作のほかに、ストレスサインは出ていませんか?
次のような症状がいくつも出ていたら要注意です。
- 眠れなくなり、朝起きられない
- 会社に行くことに拒否反応が出ている
- 周りから休職することを勧められている
- 慢性的な体調不良で仕事をする意欲が出ない
- 発作により仕事をすることが困難になってきた
- 食欲がなく食べられない、または過食状態
- 自己価値を認められなくなり、いなくなりたいと思う
眠れないことや意欲の低下は「うつ病」の初期のサインでもあるので、ストレスサインをそのままにしておくと、うつ病を併発してしまい、さらに治療が長引く可能性もあります。
パニック障がいでうつ病を発症している方は、50~60%にも及びます。放置せず、早く治療に取り掛かりましょう。
退職せずに休職を選択しよう
パニック障がいで心身の不調が続いていると、精神的に追い詰められて突然退職をしてしまう方もいます。しかし、後から後悔するケースも多いので、仕事を辞めたいと思っても退職はせずに、休職を選択しましょう。その方が、今後の人生の選択肢を多く残せます。
また、退職したいほど悩んだときは、自分1人で決断せず、かかりつけの医師や、親しい方に相談するなどして、アドバイスをもらうようにしましょう。他にも、会社に直接相談するという方法もあります。とにかく、困ったときは周りの意見も参考にしてみましょう。
パニック障がいに関する会社への相談については、下記の記事で詳しく解説しています。
パニック障がいで休職は職場に迷惑?
パニック障がいで休職するときに、職場に迷惑が掛かってしまうのではないかと心配になる方も多いのではないでしょうか。
しかし、病気になることは誰にでも起こりうることで、たとえパニック障がいのために休職することになったとしても、申し訳ないと悩んだり、職場に対して過度な責任を感じたりする必要はありません。
職場のことを考える気持ちも大切ですが、休職してしっかりと治療を行い、症状を安定させてから復帰することが、周りにとっても自分にとっても一番良い方法でしょう。
業務の引継ぎができなくても大丈夫
パニック障がいになる方は、責任感を感じやすい方が多いので、業務の引継ぎができないと休めないと考えてしまう方もいるでしょう。しかし、困った時はお互い様なので、とりあえず休むことが先決です。
引継ぎを済ませられなくても、なんとか仕事は回っていきますし、普段の頑張りを見てもらえていれば、困った時に周りも手を差し伸べてくれるはずです。
パニック障がいで休職するには
休職する際は、会社の「就業規則」と「雇用契約書」を確認しておきましょう。
職場の方から説明を受ける場合もありますが、休職するにあたって、休職可能な期間、会社のフォロー体制などについて、事前に理解しておくのがポイントです。
休職には医師の診断書が必要
パニック障がいで休職する場合、一般的には「医師の診断書」が必要になります。診断書をもらうには、精神科や心療内科で「休職のための診断書」の作成を依頼してください。
診断書を依頼するときは、会社の「就業規則」と「雇用契約書」を確認しておき、下記の内容を医師に伝えるとスムーズに対応してもらえます。
- 休職可能な期間
- 休職中の規定
- 会社のフォロー体制の有無(勤務時間の変更や、時短勤務が可能かどうかなど)
診察で症状を話し、医師から休職が必要と判断されれば、診断書が作成されます。
診断書は、診断を受けた当日に発行してもらえる場合もありますが、作成に2週間ほどかかる場合もあります。診断書の作成期間は、医療機関によって異なることを理解しておきましょう。
休職理由の伝え方
休職したい旨を上司に伝える時は、医師の診断書を見せて説明すると、休職の必要性や現在の状況が伝わりやすくなります。
パニック障がいの方は、パニック発作が起きない間は問題なく過ごせるため、一見健康そうに見えてしまい、パニック障がいを抱えている本人の悩みや苦しみが、周囲になかなか伝わらない場合があります。そのため、休職したいことを伝える際は、専門家の判断が分かる医師の診断書が非常に有効です。
自分の言葉も加えて、症状を改善させるために休職が必要だということを、丁寧に説明しましょう。
パニック障がいで休職する期間の平均
パニック障がいで休職する場合、休職の期間は個人差がありますが、平均で3~6か月の休職をする方が多いようです。
また、休職できる期間は、企業によって差がありますが3か月~3年までが一般的です。勤続年数によっても休職できる期間が異なるため、会社の就業規則を確認してみましょう。
パニック障がいで休職する方にオススメの過ごし方
休職中は、休み方にもメリハリをつけて、
- しっかりと休む
- リハビリを始める
- 復帰の準備をする
の3つの時期に分けて過ごしてみましょう。
まずはしっかりと休もう
この時期は、とにかくリラックスして、体と心を休めることがポイントです。
十分な睡眠をとる
まず、日ごろから睡眠不足の方は、十分な睡眠をとりましょう。睡眠時間は大人で7~9時間が必要です。睡眠は時間の長さも大切ですが、質を高めることも必要なので、睡眠の妨げになる就寝直前のテレビやスマートフォンの利用はできるだけ避けるようにしましょう。
食事をバランスよくとる
栄養バランスを考えて、体に良い食事をとることも大切です。
普段からパン、麺類などの炭水化物メインの食事が多く、糖質や脂質を多めに取っている方も多いでしょうが、体は食事からできているので、自分を労わるつもりで、健康的な食事を心がけましょう。
自分で作る余裕がないときは、栄養バランスの良いお弁当やお惣菜を購入すると良いでしょう。
嫌なことを考えないようにする
休職中は、かつての嫌な記憶や将来の心配事について、考えないようにしましょう。嫌な記憶を反芻していると、その分気持ちの幸福度も減ってしまいます。心配事についても同様で、考えることで何かが改善されるわけでないときは、考える必要がないときです。
意識を逸らすことは簡単ではないですが、好きな音楽を聴いたり、好きな動画を観たりして、嫌なことから気持ちを切り離していきましょう。
リハビリをはじめよう
休息がしっかりととれるようになったら、少しずつ体を動かしていきましょう。
適度に体を動かす
日中は散歩や軽いランニングをして体を動かし、夜は心地良い疲れで眠る、というリズムを作ることが理想です。
体内時計を整える
また、朝は決まった時間に起きて、日光を浴びて体内時計を整えるのも大切です。体内時計が整うと自律神経のリズムも整うので、体調も良くなり、精神面も安定していきます。
リラックス法を身につける
自分なりのリラックス法をいくつか作っておくのも大切です。調子が悪いとき、疲れたときも自分なりの方法で、心をほぐしたり、疲れを和らげたりすることができると、ストレスから早く回復できるようになります。
リラックスの方法としてはこんな方法があります。
- オンオフの切り替えをはっきりさせ、職場以外では仕事のことを一切考えないようにする
- お気に入りの音楽を聴く、ゆっくりと好きな動画を観る
- 人と会って会話や食事を楽しみ、たくさん笑う
- アロマを焚いて好きな香りに包まれる
- 趣味に没頭して、趣味を極める
- 寝る前にストレッチをする
- 瞑想して心を整える
どんなことしているときに、心がほぐれるのかを考え、幸せを感じる時間を増やしていきましょう。
復帰の準備をしよう
リラックスできるようになったら、職場復帰のための準備を始めます。
復帰後の生活をイメージして生活する
ポイントは、復帰後の生活をイメージして、仕事をしている時と同じようなリズムで一日を過ごすことです。
まず、朝は出勤を意識して午前中に外出し、日中は図書館などの落ち着いた環境で過ごして、生活リズムを整えていきましょう。外出先が近場なら、歩いて移動するようにして、体も動かすのも良いですね。
職場と働き方について相談する
復職の時期に近づいたら、今後どんな働き方をしていくか、職場と話し合っておきましょう。
以前と同じ働き方は難しいという方もいるかもしれません。時短勤務から始めて徐々に慣らしていきたい場合や、業務内容の相談・変更などをしたい場合は、次の内容を職場と相談してみましょう。
- リハビリ勤務で時短勤務からスタートできるか
- 業務内容の変更を希望できるか
- 部署の異動はあるか
もちろん全ての希望に対応してもらえるわけではありませんが、職場にもできるだけ協力してもらうようにして、安心して復帰できるように準備を進めていきましょう。
別の仕事への転職を検討してみる
現在の仕事を続けることだけがすべてではありません。先述したように以前と同じ働き方をするのが難しい場合、もしくは他に働きやすい仕事や職場があった場合は、思い切って転職するのも1つの方法です。
自分の特性と仕事内容、支援制度などを照らし合わせて、自分に合いそうな仕事を探してみましょう。
パニック障がいの方に向いている仕事について、下記の記事で詳しく解説しています。
パニック障がいの方が復職・転職で利用できる就労支援
パニック障がいの方が復職や転職で利用できる就労支援・制度としては、次のものが挙げられます。
- リワーク支援
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 障がい者雇用
支援を利用することでさまざまなサポートを受けながら、無理なく復職・転職を行うことができます。
リワーク支援
リワーク支援とは、うつ病などの精神疾患で休職している方が、職場復帰を目指して取り組むリハビリプログラムです。グループワークなどを通して、対人コミュニケーション、ストレスの軽減方法などを学ぶプログラムや、実際の業務に近い内容のオフィスワークを行うプログラムなどに取り組みます。
リワーク支援は、次の施設で受けることができます。
- 地域障がい者職業センター
- 医療機関(精神科・心療内科)
- 就労移行支援事業所
- 勤め先の企業内(職場リワーク)
施設によってリワーク支援の内容は異なるため、主治医やソーシャルワーカーに相談して、自分に合ったプログラムが受けられる施設を選びましょう。
地域障がい者職業センターについては、下記の記事で解説しています。
就労移行支援
就労移行支援では、定期的に通所することで生活のリズムを整え、ビジネスマナーやスキルを学びながら、就職に向けた準備をすることができます。
パニック障がいの発作が起こる要因など、自己理解を深めて、どんな環境であれば働きやすいかを考えていくことになります。就職活動では、自分に適した求人を見つけるためのサポートや面接練習などが受けられます。
就労移行支援については、下記の記事で解説しています。
就労継続支援A型事業所
就労継続支援A型事業所は、障がいや病気があり、一般企業で働くことが困難な方へ、就労の機会を提供している支援機関です。事業所は利用者と雇用契約を結んでいるため、最低賃金が保証された給与も支払われます。障がいに理解のある職場で、勤務時間も1日4~6時間と短く、パニック障がいの治療をしながら働くことが可能です。
就労継続支援A型については、下記の記事などで解説しています。
障がい者雇用で働く
パニック障がいで障がい者手帳を取得した場合、障がい者雇用で働くという選択肢もあります。
障がい者雇用では、障がいがあることを開示して働くため、職場の方にどんな困りごとがあるのかをあらかじめ説明しておくことができます。業務内容や体調に関して、合理的な配慮が受けられるなど、働きやすい環境であるため、職場の定着率が高い傾向にあります。
障がい者雇用については、下記の記事で解説しています。
まとめ|パニック障がいは休職すべきなのか
- パニック発作により、仕事が手につかない、うつ状態になりかけている、ストレスサインが複数出ている、という場合は一旦休職すべき。
- 休職を職場に申し訳ないと悩まず、体調を整えて復帰することが最善だと考えて、治療に専念しよう。
- パニック障がいでの休職期間は平均3~6か月程度。休職には医師の診断書が必要なので、まずは病院へ。
- 休職中はまず休養優先で、復職の時期に近づいたら職場と今後の働き方について話し合いをしよう。
休職期間は、自分を見つめ直したり、ストレスの対処法を見つけたりと、人生に役立つ経験ができるはずです。
休職することを前向きにとらえて、体調を整えること、治療に専念していきましょう。