「障がい者雇用はやめとけ!」は本当?働く本人のメリットとデメリットを詳しく解説

KAORUKO

「障がい者雇用と一般雇用ってどう違うの?」
「障がい者雇用のメリットとデメリットってなに?」

この記事にたどり着いたあなたはこのような疑問を抱えてはいませんか?

障がいがある方が仕事を探す時、選択肢の一つとして「障害者雇用」があります。しかし、「障害者雇用はやめておけ」という話を耳にして、不安を感じている方もいらっしゃいますよね。

障害者雇用とは、単なる雇用の枠を超えて、あなたの人生に新たな可能性をもたらすものです。多くの企業が多様性を重視し、障がい者が持つ独自の視点やスキルを活かせる場所を提供しています。

  • 障害者雇用の内容とメリット・デメリット
  • デメリットは本当のところどうなのか?
  • 障がい者が受けることができる支援サービス

を詳しく解説していきます。

あなたも障害者雇用の制度を利用し、新たな一歩を踏み出すヒントを見つけてみませんか?

障害者雇用とは?やめとけと言われる3つのデメリット

デメリット DEMERIT 悪いところ イメージ

障害者雇用とは、障がいがある方の社会参加を促進させる目的で設置されている特別な雇用枠のことです。障害者雇用求人に応募するには障害者手帳が必須となりますが、一般雇用と比較すると障がいに対して合理的配慮が受けられる環境で働くことができます。

では、なぜ障害者雇用はやめとけと言われるのでしょうか?主に下記の3つの理由が挙げられます。

給料が平均月収よりも低い

平成30年度の厚生労働省の調査を基に、日本人全体の平均月収と障害者雇用の平均月収を比較すると、下記の表のようになります。

区分 平均月収
日本人全体 約277,000円
身体障害者 約215,000円
知的障害者 約117,000円
精神障害者 約125,000円
発達障害者 約127,000円

日本人全体の約277,000円は、給料が高い方が平均を押し上げているため、実際はより少ない23~25万前後と考えて問題ありません。しかし、それでも日本人全体と比較すると倍ぐらいの差があります。

なぜ障害者雇用の給料は低いのか、その原因は次の項目で紹介するデメリットが関係しています。

求人の選択肢が少なく、単純作業が多い

「障害者雇用はやめとけ」と言われる2つ目の理由は、求人の選択肢が少なく、単純作業が多くなってしまうことです。

そもそも障害者雇用とは、一般雇用で働くことが難しい方のための制度です。そのため仕事の内容は、ハンデがある方でもこなせる簡単な作業が中心になる傾向があります。

障害者雇用の仕事には下記のようなものがあります。

  • Excelへのデータ入力作業
  • 書類や備品の整理
  • ゴミの分別
  • 事務所内の清掃
  • 農園や園芸での作業
  • カスタマーサポート(電話での顧客対応)

障がいの種類や症状・特性の程度には個人差があるため、任せられる仕事も人によって異なります。そのため、企業側も「どの仕事を任せて良いのかわからない」と悩んでしまうことも少なくありません。

また、一般雇用よりも障がいに合わせた合理的配慮を受けられる職場環境で働けるため、経験や判断が必要な仕事をいきなり任されることはほぼありません。そういった仕事を任されるのは、単純作業が問題ないと判断してもらえることや、会社と本人がヒアリングを繰り返した後になるでしょう。

つまり、「障害者雇用はやめとけ」と言われる背景には、

  • 単調でつまらない業務が中心になりやすい
  • 働いてもスキルアップやキャリア形成に繋がらない

という先入観があるのです。

配慮を受けられる環境に居心地の悪さを感じることがある

当然ではありますが、障害者雇用に応募して入社すれば、あなたが障がい者であることを会社が把握することになります。そのため、場合によっては配慮されすぎて居づらさ、居心地の悪さを感じてしまうこともあるでしょう。

障害者雇用で働く方が居心地の悪さを感じた事例には、下記のようなものがあります。

  • 与えられる仕事量が少ない。
  • 周りが忙しいのに自分だけ暇だと感じる。
  • 必要以上に配慮される。
  • 仕事を任せてもらえないため、仕事ができない人だと思われていると感じてしまう。

会社側が配慮として良かれと思ってやっていることだったとしても、本人が悲観的にとらえてしまう場合も少なくありません。そのギャップにより自分を追い込んで、居づらさを感じてしまうことがあります。

デメリットは本当のところどうなの?

考えごとをするビジネスウーマン

では、先程紹介したデメリットは本当のところどうなのでしょうか?

少し冷静に考えてみると、障害者雇用に対する先入観からさまざまな誤解が生まれている事実が見えてきます。

下記では、障害者雇用と一般雇用を客観的に比較してみましょう。

なぜ給料が低いのか考えてみる

障害者雇用の給料が低い理由は「障害者雇用だから」というわけではありません。

これには主に3つの理由が関係しています。

  • フルタイムではなく、労働時間が短い
  • 契約社員やパートなど非正規社員である
  • スキル不要で単純な仕事が多い

障害者雇用であっても、一般雇用であっても、非正規社員や単純作業の仕事は、給料が低く設定されていることが多いです。

また障害者雇用ではフルタイムだけではなく、「週30時間以内までの労働」という募集も多くあります。厚生労働省の平成30年度障害者雇用実態調査結果によると、障害者雇用で働く方の労働時間は下記の通りです。

労働時間 割合
フルタイム
(週30時間以上)
79.8%
フルタイム以外
(週20~30時間)
16.4%
フルタイム以外
(週20時間以内)
3.4%
無回答 0.4%

フルタイム以外で働いている方は全体の約20%を占めています。また、残業を免除されている方も多いため、一般雇用と比較すると働く時間が短くなる傾向があり、それに伴い給料も低くなっているのです。

もっとも、体調面を考慮した上で短い時間での働き方を選択して、自分のペースで働いている方も大勢います。自分で働く時間を調整しやすいのは、障害者雇用のメリットでもあるのです。

数字で比較してみよう

一般雇用でも、事務職や軽作業中心の仕事だと年収約200~300万円という条件の求人はよく見かける一般的なものです。これを月収に換算すると、約16~25万円です。年収にボーナスが含まれているのだとしたら、月収はもう少し低くなります。

一方、障害者雇用の場合、給料が時給換算であることが多くあります。仮に時給が1,000円だとしましょう。これを週30時間までの労働でざっくりと計算してみます。そうすると1,000円(時給)×30時間(1週間)×4週となり、月収は約12万円になります。

ではこれを週40時間のフルタイムに当てはめるとどうでしょうか。

1,000円(時給)×40時間(週)×4週となり、月収は約16万円です。年収に変換すると、約200万円程度になることがわかります。

障害者雇用の求人でも、フルタイム募集がないわけでは決してありません。フルタイムで働くとなると、障害者雇用でも16万円以上もらえる求人もあります。

このことから、「障がい」が理由で給料が低く設定されているわけではない、ということがわかるのではないでしょうか。むしろ働く時間が同じなら、職種が同じなら一般雇用の給料とは大きな開きがないと言えるでしょう。

自分がスキルを身に付け、選べる職種の幅を増やす

障害者雇用には、単純作業や軽作業が多いことを紹介しました。しかし、専門的な職種(IT系のエンジニアやデザイナーなど)もあり、スキルを必要とする職種は給料が高めに設定されています。

しかし、そういった職種の求人は応募の段階で資格や経験が必要となることがあり、敷居が高い場合があります。仮に「資格・経験不問」となっていても、経験者が優遇されてしまうため応募しても採用してもらえないケースもあるでしょう。これは一般雇用でも同じことが言えますね。

スキルを身に付ければ、おのずと選択肢は増えます。

まずは資格を取得したり、就労継続支援A型を利用したりして経験を積んでみるのも一つの手です。就労継続支援A型については、後程解説します。

また、就職後であっても出来ることを少しずつ増やしていけば、スキルアップやキャリアアップに繋がる可能性も十分にあります。

障がいの情報をどこまで公表するかは企業と相談できる

障害者雇用で入社すると、

「自分の障がいを受け入れてくれない人もいるのでは?」
「障がいの詳細を知られたら偏見を持たれるかもしれない…」

などの不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

障害者雇用で応募するには、面接や書類選考で障害者手帳の提出を求められます。そのため、少なくとも人事には知られてしまうでしょう。これは業務を行っていくうえで、必要な配慮をするためです。しかし、障がいを抱えていることをどこまで公表するかは、会社側と相談して決めることができます。

上司・教育担当・同じ課や係の方など、どこまで伝えるかは人事と相談して決めましょう。

しかし、障がいを隠して働くことは、「障がいについて理解してもらえない」「障がいについて配慮してもらえない」というデメリットもあります。「怠けている」「能力が低い」と誤解されてしまう場合もあります。

障がいを公表することには不安があるかもしれませんが、障がいを隠している方がリスクが高いことを覚えておきましょう。

「デメリットばかり」は誤解!障害者雇用の4つのメリット

メリット MERIT 良いところ イメージ

これまで障害者雇用のデメリットを紹介してきましたが、逆にメリットもたくさんあります。

次の項目で、具体的に4つ紹介していきます。

障がいの症状や特性に合った配慮を受けられる

障害者の雇用は法律に基づき設置されている制度であるため、

  • 障がい者に対する差別の禁止
  • 職場内での合理的配慮を提供すること

企業側にはこの2点が義務付けられています。

そのため、企業側は障がい者が業務を遂行するにあたり可能な範囲で支援や設備を提供しなければいけません。障害者雇用の制度を利用することで一般雇用よりも働きやすい環境に身を置けるため、安定した長期就労が見込めます。

また、障がいをオープンにすることで周りからの理解を得やすく、困ったことを相談しやすいのも大きなメリットになります。

大手企業で働くチャンスがある

障害者雇用は法定雇用率に基づき運用されている制度です。一定以上の規模を持つ会社は、従業員に占める障がい者の割合が法定雇用率以上になるように、障がい者を雇用する義務があるのです。2024年時点での法定雇用率は2.5%であり、従業員40人につき1人は障がい者を雇用することが定められています。

そのため、障害者雇用に積極的な企業は、従業員が1,000人以上の大企業が多い傾向にあります。

障害者雇用の実績がある大企業であれば、支援のノウハウを持っている場合が多いです。その他にも、「給料や福利厚生が良い」「教育体制がしっかりしている」「業務内容が整備されている」などの障がい者を受け入れる体制が整えられている場合もあります。

一般枠で大企業への就職を目指すのはかなり難易度が高いですが、応募者が限定された障害者雇用枠であれば採用されるチャンスが高まります。

離職率が低い

先述した通り、障害者雇用では働く上でのさまざまな合理的配慮が受けられるため、障がいがあることを開示せずに一般雇用で就職するよりも離職率が低い傾向にあります。

障がい者の就職活動では、給料や待遇面を重視するだけでなく、「仕事を長く続けられるか?」という視点を持って一般雇用と障害者雇用のどちらを選択するかを決めることも大切です。

支援サービスを受けることができる

障害者雇用で就職・転職活動をするにあたり、さまざまな支援サービスを受けることができます。

例えば、ハローワークや職業センターでは障害者雇用専門の「ジョブコーチ」が利用者をサポートしてくれます。その人の症状・特性や現在の本人の状況、どういった職業を希望するかなど、十分なヒアリングを通し、求人の紹介・就職活動のアドバイスを受けることができます。

また、就労移行支援事業所を利用した方は、就職して半年後から利用できる「就労定着支援」など、就職した後も継続して受けることができるサービスもあります。

就職直後からしばらくは、環境が変わり不安やストレスを多く感じやすい時期です。そういった時期に気軽に相談できる支援機関と繋がっておくのは大切なことです。

その他に受けることができるサービス

サポートする声のイメージ

障がい者の就労を支援する障害福祉サービスには、「就労継続支援」や「就労移行支援」などがあります。この2つについて、次の項目で詳しく見ていきましょう。

就労継続支援

就労継続支援とは、障がいや難病などのために一般就労が困難な方を対象として、働く機会や場所を提供する障害福祉サービスです。障がいによる困りごとや体調に合わせて自分のペースで働くことができるほか、就労を通したスキルアップを目指すことができます。

就労継続支援は下記の2つに区分されます。

就労継続支援A型

就労継続支援A型の主な特徴は、利用者と事業所が「雇用契約」を結び、「賃金」を受け取る形で働くことができる点にあります。A型では一般企業と同様の労働条件が適用されるため最低賃金が保証されています。

障がい者が就労を通して経験を積むことで、一般企業への就職を目指すための訓練や実習を受けることが可能です。

就労継続支援B型

就労継続支援B型の主な特徴は、利用者と事業者が「雇用契約」を結ばず作業を行うことで「工賃」を貰う点にあります。「工賃」は「賃金」とは異なるため最低賃金は保証されておらず、令和4年度の工賃の平均時給は「243円」、平均月額は「17,031円」です。

B型では主に、軽作業や手工芸などの作業が行われています。

A型と比較すると障害福祉サービスを受ける場所という意味合いが大きく、B型の利用を通して働く感覚を身に着けて、A型へ移行したり就職を目指したりする、就労のための準備段階と位置付けられています。

支援内容

A型とB型の大きな特徴として「雇用契約」を結ぶか否かが挙げられます。しかし、下記のように共通している支援内容も多くあります。

  • 職業訓練: スキルや知識を身につけるための訓練を提供します。
  • 就労支援: 就職活動のサポートや、職場での適応を助ける支援を行います。
  • 生活支援: 日常生活における支援も行い、社会参加を促進します。

両者のサービスは共に、障がい者が自立した生活を送るための基盤を作り、社会での参加を促進することが目的です。これにより、障がい者が自分の能力を活かし、充実した生活を送ることができるようになります。

就労継続支援A型・B型については、下記の記事などで解説しています。

就労移行支援

障がいのある方の就労を支援する障害福祉サービスとして、就労継続支援のほかに「就労移行支援」もあります。

就労移行支援は、障害者雇用を含む一般就労に向けた就職活動の支援に特化したサービスである点が特徴です。

利用にあたり賃金や工賃は発生しませんが、最大2年間を目安に、

  • 就職のために必要な知識やスキルを身に着ける訓練
  • コミュニケーション講座や障がいに対する理解を深めるための面談の実施
  • 履歴書の添削や面接練習などの就職活動の対策

などを受けることができます。正社員での就職を目指す場合は、先述した就労継続支援A型・B型よりも、就労移行支援を利用する方が近道となるでしょう。

いずれの障害福祉サービスも、障がいがある方の働きたい気持ちをサポートする点は同じであるため、あなたに合った支援を選択することが大切です。

まとめ|障がい者雇用のメリット・デメリット

  • 障害者雇用とは、障がい者の社会参加を促進させる目的で設置されている特別の雇用枠であり、障がいに対して理解や配慮を求めながら働くことができる制度。
  • 障害者雇用のデメリットは「給料が平均月収より低い」「求人の選択肢が少なく、単純作業が多い」「配慮を受けられる環境に居心地の悪さを感じてしまう」点がある。
  • 一見デメリットと感じることでも、一般雇用と比較してみてるとあまり変わらないことや、逆にメリットと感じることも多い。
  • 安心して長期的に働きたいのなら、選択肢の一つとして障害者雇用を利用を検討してみることがオススメ。

障害者雇用と一般雇用どちらでも言えることですが、就職する会社によって環境は変わります。正しい情報を知り、不安や疑問を解消した上で会社選びをすることは重要な事です。

就職したい会社のリサーチもしっかりと行い、無理せず安心して働くことができる場所を探しましょう。

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