「一人暮らしってどれぐらいお金かかるの?」
「それぞれのメリット・デメリットが知りたい!」
「何か利用できる支援制度ってある?」
などの疑問や不安を抱えてはいませんか?
発達障害の方の中には、いつか自立したいと思っていたり、やむを得ない事情で自立しなければならなかったりするなどの理由から、「一人暮らしをするなら、アパートに住むかグループホームを利用するか、どっちがいいんだろう…」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
- アパートに一人暮らしするメリット・デメリット
- グループホームを利用するメリット・デメリット
- 入居する事前準備について
- 利用できる支援制度
- 相談先
について解説していきます。
引っ越しは労力のいるイベントです、知識を身に付けてより良い選択をしていけるようにしましょう。
この記事が自立への参考になれば幸いです。
アパートに一人暮らしとグループホーム利用、どっちがいい?
さまざまな理由から実家を離れると決めた後、アパートなどを借りて一人暮らしをするのか、グループホームを利用するのか迷ってしまう方もいらっしゃると思います。
双方にメリット・デメリットがあるので、ご自身に合った暮らし方を選択していけるようにしましょう。
ここでは、下記について具体的に解説していきます。
- アパートに一人暮らしをするメリット
- アパートに一人暮らしをするデメリット
- グループホームを利用するメリット
- グループホームを利用するデメリット
順に見ていきましょう。
アパートに一人暮らしするメリット
アパートに一人暮らしをするメリットは、自由な時間が増えることです。具体的には、下記の3つがあります。
自分のペースで生活できる
一人暮らしをすると、自分のペースで生活することができます。
家族と同居していると避けられない、食事や入浴のタイミングも、自分で決められるようになります。特に、こだわりが強い特性などがある方は、心地良いと感じられるペースを乱されなくて済むので、大きなメリットとなるでしょう。
気持ちにゆとりが生まれる
職場の近くに住めば通勤時間を短縮できるので、自由時間や睡眠時間を確保することができます。これにより、気持ちにゆとりが生まれる可能性があります。
たとえ数十分の違いだとしても、毎日のことであれば、積み重ねで時間のゆとりに繋がります。現在、通勤時間などに不満がある方は、一度検討してみるのも良いでしょう。
自分の得意なことや資質を発見できるチャンス
一人暮らしをすると、自由な時間が増えるので、自分磨きの機会を設けることができます。また、料理や洗濯などの家事に触れることで、意外とハマって趣味になるなど、自分の新たな面を発見できることもあります。
他にも、SNSを利用すれば同じ趣味の方と繋がって人脈を広げることができたり、その技術が副業としてお金になったりすることもあるので、心機一転新しいことを始めてみたい方にオススメです。
アパートに一人暮らしするデメリット
アパートに一人暮らしをするデメリットは、維持することや管理することが増えることです。具体的には、下記の4つがあります。
金銭管理
発達障害の特性から、計画を立てることが苦手な場合、目先のことや欲しいものへの出費がかさんでしまい、生活費が足りなくなってしまうことがあります。
また、現代はカード支払いや電子決済で現金の流れが掴みにくく、ついついお金を使いすぎてしまう環境でもあります。
お金は生活を送る上でとても重要です。一人暮らしをする前に、一か月に必要なお金を具体的に把握しておくことが大切になるでしょう。
生活管理
発達障害の特性から、こだわりや自分の中のルーティンが強い方は、日時が決まっている地域のゴミ出し等を時間通りに行うことが難しかったり、生活音やマナー等で苦労したりする場合があります。
また、期日を守れず、公共料金の支払いなどの大事な手続きを後回しにしてしまう可能性も考えられるでしょう。その場合、直接的に生活に支障が出てしまうので、自分に合った対策方法を事前に考えておくことがとても重要になります。
健康管理
発達障害の特性から、マルチタスクが多い自炊ができず、インスタント食品や外食など、栄養が偏った食事を続けてしまうと、結果的に体調を崩す可能性があります。
他にも、注意する人がいないので、深夜までゲームやSNS等をしすぎて、生活リズムを乱してしまうかもしれません。疲れがたまっても無理をしたり、薬の服用を適切に行えなかったりする場合、発達障害の特性が強く出てしまい、生活に支障が出てしまうことも考えられます。
私も一人暮らしをしたことがありますが、この時最も苦労したのは、健康管理でした。風邪で高熱が出ても、薬や飲み物など自分で買いに行くしかなく、また、回復するまで一人で辛抱しなければなりません。
このことから、体調不良の時の一人暮らしは、本当に難しいと考えさせられました。
一人暮らしをする時は、体調を崩した時のことを事前に考えておくと良いでしょう。
身の回りの環境の維持
発達障害の特性から、家事の最中に別のことが気になってしまい、片付けや掃除を苦手とする場合が多くあります。他にも、自分自身の整えるべき身だしなみなどを疎かにしてしまうと、周りに不快感を与えてしまうこともあるでしょう。
掃除や身だしなみ整えることが苦手だと分かっている場合は、一人暮らしをする前に自分に合った方法を見つけて、少しずつ実践していくことが大切になります。
グループホームを利用するメリット
グループホームを利用するメリットは、さまざまな支えがあるので、自立に向けた不安を解消できることです。
具体的には、下記の3つがあります。
生活に関するサポートがある
グループホームでは、料理・掃除・洗濯などの生活全体のサポートや、生活リズムの作り方を学ぶことができます。他にも、金銭管理や書類管理、提出・記入などもチェックしてもらえます。
発達障害の特性からさまざまな管理が難しいという方は、苦手な分野を信頼できる他者にやってもらうことができるので、生活を送ることが楽になる可能性があります。
食事の提供と健康管理をしてもらえる
グループホームでは、食事が提供されている施設も多いです。よって、栄養バランスが取れているきちんとした食生活を送ることができます。施設によっては、自炊の機会もあるようなので、料理スキルが身に付く可能性もあります。
また、スタッフが毎日巡回するので、体調を崩してそのまま悪化したり、服薬を忘れてしまったりということはなくなるでしょう。自分だけで食事や薬などの管理をすることが難しいと考える方にオススメです。
月々の支出が抑えられる
グループホームの利用は、無料ではありません。
家賃や食費、光熱費、福祉サービス料等により、月10万円程度はかかります。しかし、アパートに一人暮らしする場合に対して安く抑えられるので、一人暮らしに向けて貯金することもできるでしょう。
また、国や自治体から援助を受けた場合は、さらに支出を抑えられます。
お金に不安がある中で自立を考えている方にとって、大きなメリットになるでしょう。
グループホームを利用するデメリット
グループホームを利用するデメリットは、生活環境が希望と合わない場合があることです。具体的には、下記の2つがあります。
サービスの利用が希望と合わない
グループホームの中で困りごとや不安なことがあった場合、相談や支援などのサービスは、主に夜間において利用が可能になります。よって、困ったときにリアルタイムで相談できるわけではありません。
発達障害の特性から、時間を置くと不安が増してさまざまな症状が出てしまう方は、注意が必要です。
他の利用者と性格が合わない
グループホームは、共用施設の部分があります。静かな場所を好む方にとっては、常に騒々しい人がいることや、生活動線が重なることで自分のペースを保てないことが、ストレスになることも考えられるでしょう。
また、利用者同士の交流を取り入れている施設の場合、馴染めないこともあります。このような日々の小さなストレスから、体調が悪化してしまう可能性もあるので、ご自身の性格をよく知っておく必要があります。
事前準備について
上記で、一人暮らしとグループホームを利用する場合のメリット・デメリットを解説してきました。
ここからは、どちらにするか決めた場合の事前準備について解説していきます。
- 一人暮らしの場合に必要な準備
- グループホームを利用する場合に必要な準備
順に見ていきましょう。
一人暮らしの場合に必要な準備
一人暮らしをする上で、最大の壁は「金銭面をクリアする」ことです。
一人暮らしをする以上、家賃などお金がかかります。また、自分でお金を支払う必要があるので、安定して収入がある状態を作らなくてはなりません。
一人暮らしの1か月あたりの平均支出は、約17万円になっています。しかし、発達障害の方の1か月あたりの平均収入は、約13万円です。収入より支出が多くなる可能性があるため、これをどうクリアするか課題になります。
一人暮らしが決まれば、その後は特別なことをする必要はありません。
まずは初期費用を貯めましょう。初期費用というのは、借りるアパートの敷金・礼金や仲介手数料、生活に必要なものを購入するための費用です。
物件探しは、一般的に1~2か月かかります。物件が決まれば、電気・ガス・水道などのライフラインや住所変更などの諸契約、手続きをして、契約完了になります。地域や立地によっても家賃は大きく変わってくるので、お住まいの地域の相場を調べておくと良いでしょう。
現在、障害年金を受給している方は、下記の記事で詳しく解説しています。知りたい方は参考にしてみてください。
グループホームを利用する場合に必要な準備
グループホームを利用するためには、障害者手帳が必要です。障害者手帳がない場合、事前に準備をしましょう。障害者手帳は、主治医の診断書などを添えて、住んでいる自治体に申請します。交付までに1か月程度かかるので、余裕をもって行動しましょう。
STEP1:グループホームを探す
グループホームの探し方は、インターネットで検索するか、役所の福祉相談窓口に問い合わせて、その自治体にあるグループホームを教えてもらう方法があります。
ご自身に合いそうなグループホームを、複数選んでおきましょう。
STEP2:グループホームの見学
気になるグループホームが見つかったら、見学に行きます。現地を見ておくと、グループホームの雰囲気や入居後のイメージが掴みやすくなるので、積極的に行っていきましょう。
STEP3:面談・個別支援計画作成
入居したいグループホームが決まったら、グループホームのスタッフと面談を行い、詳細な条件を話し合います。この内容を元に「個別支援計画」が作成されるので、障害特性や不安なことについて、事前にまとめておくと良いでしょう。
その後、自治体から障害支援区分の判定と利用の許可をもらい、入居契約をグループホームと結びます。
契約成立までは1~2か月かかります。契約成立後はグループホームからの指示に合わせて、入居に必要なものを準備しましょう。
障害者手帳の交付申請から始めると、最短でも3~4か月はかかります。利用を考えている場合、早めに動き始めましょう。
一人暮らしの発達障害の方が受けられる支援制度
上記で、一人暮らしやグループホームを利用するための事前準備について解説してきました。
新しい環境で生活をすると、自覚がないまま疲労が溜まってしまうことがあります。特に、一人暮らしの場合は、想像していなかった困りごとや不安が出てくることもあるでしょう。
ここでは、発達障害の方が一人暮らししていく上で、利用できる支援制度を4つ紹介していきます。
- 障害年金
- 精神障害者保健福祉手帳
- 自立支援医療制度
- 生活保護
順に見ていきましょう。
障害年金
障害年金とは、病気やケガによって仕事や生活が制限される場合、障害の程度に応じて一定額受け取ることができる年金です。障害基礎年金と障害厚生年金の2種類あります。
障害基礎年金は、障害等級1・2級の方が受け取ることができます。受け取る条件は、初めて病院を受診した日に国民年金に加入しており、これまでに未納になっていないことです。2024年現在保障されている年額は、障害等級1級の場合1,020,000円、2級の場合816,000円です。
障害厚生年金は、厚生年金に加入している(=会社に勤めている)期間に、障害等級1・2級になった場合、障害基礎年金に上乗せで支給される年金です。また、障害等級3級の場合であっても、初診日が厚生年金の加入中であれば受給できます。3級の場合の最低保証されている年額は、2024年現在、612,000円になっています。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳とは、発達障害の方が取得できる障害手帳のことです。
手帳を保有していると
- 公共料金の割引
- NHK受信料の減免
- 各種税金の控除
- 生活福祉資金の貸し付け
といったサービスが受けられます。
一つひとつの減税額は少なくても、複数あったり年単位で考えたりする場合、金銭面での助けになる場合があります。障害等級によってサービスが異なるので、居住する自治体の窓口に確認してみましょう。
自立支援医療制度
自立支援医療制度とは、障がいの治療で支払う医療費の自己負担額が3割から1割となる制度です。世帯所得に応じて上限はありますが、継続的に医療機関にかかっているのであれば、利用できるかどうか確認してみましょう。
生活保護
生活保護とは、生活に困窮する場合に、国が必要な生活を保障し自立を助ける制度です。
他の支援制度、障害年金と併用する場合は、支給額が減少します。
精神障害者保健福祉手帳を持っている場合は、障害者加算がされる可能性があります。グループホームを利用の場合でも、経済的に厳しかったり、働くことが難しかったりする状態のときは、生活保護を受給することができます。
生活保護の受給については下記の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
困ったときの相談先
上記では、発達障害の方が受けられる支援制度について解説してきました。
さらにここでは、発達障害の方が困りごとや不安があるときに利用できる、相談先をご紹介します。
特に、一人暮らしを考えている場合、何もかもを一人で抱え込んで、頑張ろうとするのは危険です。周りを積極的に頼って、サポートを得ながら理想の一人暮らしを実現しましょう。
具体的には、下記の3つがあります。
- 発達障害者支援センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 相談支援事業所
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターとは、発達障害の方への支援に特化した相談窓口です。
保健医療や労働福祉など、多方面な関係機関と連携して、総合的な支援ネットワークを構築しています。日常生活上の相談から、福祉制度の案内と利用方法まで対応しています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、関係機関と連携して、障がいのある方の就業や日常生活の相談支援をしています。
生活習慣や健康管理についてのアドバイスをもらうことや、生活リズムを整えるために通所できる機関を紹介してもらうことが可能です。また、障害年金の手続きについての相談もできます。
相談支援事業所
相談支援事業所は、障がいがある方の生活に関する困りごとに対して幅広く対応し、必要なサービスを案内してくれます。各自治体の窓口で紹介を受けられます。
困ったらまずは、お住まいの自治体の福祉相談窓口に出向いてみましょう。
各自治体の福祉相談窓口では、経済的な困りごとから就労、自立、生活面のことまで多方面に相談ができます。
まとめ|一人暮らしとグループホーム
- 発達障害の方が一人暮らしをするメリットは、自分のペースで生活ができるので、自由な時間が増えること。デメリットは、金銭や健康など、自分で維持しなければいけないことが増えることなどがある。
- 発達障害の方がグループホームを利用するメリットは、生活に関するサポートがあるので、さまざまな管理をしてもらえること。デメリットは、他の利用者との相性や、自分の希望する生活環境が希望と合わない場合、利用することがストレスになることなどがある。
- 一人暮らしをするためには、収入を安定させてお金を準備しておくことが大切。
- グループホーム利用のために、障害者手帳の取得や現地の見学をしておくと良い。時間がかかる場合があるので、早めの行動が大切。
- 発達障害の方が一人暮らしで受けられる金銭的支援には、障害年金や自立支援医療制度、生活保護の受給などがある。
- 生活を送る上で困ったことがあったら、発達障害者支援センターや障害者就業・生活支援センターに相談ができる。
いかがだったでしょうか?
発達障害の方が一人暮らしをする場合とグループホームを利用する場合、双方にメリット・デメリットがあります。
自分が「今後どうなりたいか?」など気持ちも含め、金銭的な余裕も考えて、悔いのない自立方法を考えてみてください。
この記事が自立への参考になれば幸いです。