「障がいにある程度理解がある環境で働く訓練をしたい…」
と考えたことはありませんか?
障がいがある方にとって、「仕事を始める」というのは、非常に大きなハードルですよね。
そんな時にオススメしたいのが、A型作業所、B型作業所です。
これらは、どちらも障がい者を対象に、働く場所を提供する福祉サービスの一環です。しかし、初めて利用するのでよく分からない、不安、という方も多いでしょう。
- A型作業所、B型作業所とは何か
- 作業内容や1日の流れ
- 給料と障害年金
の流れで、具体的に解説していきます。
A型作業所・B型作業所とは何か?
A型作業所、B型作業所とは、障がいや一部の難病によって、日常生活に支障が出る方や一般企業で働くのが困難な方が利用する、福祉サービスです。
現在では、「A型・B型作業所」よりも「就労継続支援A型・B型」あるいは、「A型・B型事業所」と言われるのが一般的です。
制度に変わりは無く、「作業所」と「就労継続支援A型・B型事業所」はどちらも同じ意味と覚えておきましょう。
では、なぜ「作業所」という言葉が使われているのでしょうか。
共同作業所(小規模作業所)が作業所の始まり?
共同作業所とは、障がい者が地域と関わりを持ちながら働く場所として、1969年に誕生しました。法人化された障がい者施設ではなく、障がい者の家族や地域の人々、職員を中心に無認可で運営されていました。
また、少人数で運営することから小規模作業所とも呼ばれています。法定外の施設だったので、国や県からの支援は少なく、経営が悪化する作業所も多くありました。
しかし、2006年に施行された障害者自立支援法によって、新たな福祉サービスの体系へと変わっていきます。これによって、今まで無認可、法定外と言われていた作業所が、就労継続支援A型・B型事業所といった法人事業へと移行しました。
かつて全国に6,000か所以上あった共同作業所は、長い年月を経て現在の就労継続支援事業所や就労移行支援施設へと変わっていったのです。
こうした時代背景の影響で、今でも就労継続支援事業所のことを「作業所」と呼ぶ人もいます。
就労継続支援A型・B型とはどんな所? 就労移行支援との違い
共同作業所から就労継続支援A型・B型へと変わりましたが、どちらも昔と変わらず福祉サービスの一環です。しかし、A型とB型では大きな違いがあります。
A型事業所では雇用契約を結びますが、B型事業所では雇用契約を結びません。他にも「作業内容」や「給料」「対象者」の面で違いがあります。
それでは、A型事業所とB型事業所とはどんな所なのか、詳しく見てみましょう。
A型事業所について
A型事業所とは、障がいや難病によって、一般企業で働くのが困難な方や就職が不安な方が、一定の支援を受けながら働くことができる福祉サービスです。事業所と雇用契約を結んで、一般企業と変わらない雇用形態で働きます。
具体的には下記の条件のいずれかを満たす必要があります。
- 就労移行支援事業を利用しても、企業での就労に結びつかなかった方
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行っても、企業での就労に結びつかなかった方
- 就労経験のある方で、現に企業との雇用関係がない方
A型事業所を利用する時点で、18歳以上65歳未満の方、という年齢制限があります。所定の条件を満たせば65歳以上の方も利用可能ですが、注意しましょう。
事業所内には、障がいや病気に理解のある職員が複数名在籍しており、体調に合わせて仕事をすることが可能です。通院が必要な時は、遅刻や早退にも柔軟に対応してもらえます。
給料も最低賃金以上が保障されて、社会保険など福利厚生が充実した事業所もあります。勤務時間は4時間程度の短時間である所が多く、作業内容も簡単な軽作業から接客業務まで豊富です。
ただし、勤務時間や作業内容は、事業所によって大きく異なるので利用を検討する際はよく確認しましょう。
令和4年度時点で、A型事業所は全国に4,196か所あり、年々少しずつ増加しています。ご自身が住んでいる都道府県には、どんなA型事業所があるのか探してみましょう。
B型事業所について
B型事業所とは、障がいや難病のある方が一般企業への就職が困難な時に、職業訓練やレクリエーション活動を行う福祉サービスです。
B型事業所を利用するには、下記の条件いずれかを満たす必要があります。
- 企業やA型事業所での就労経験があり、年齢や体力面で雇用されるのが難しくなった方
- 年齢が50歳に達している方、または障害基礎年金1級を受給している方
- 1、2に該当しない方で、事業所を利用する際に、就労移行支援事業者等によって働くことの課題などが把握されている方
年齢の上限が無いので、条件を満たしていれば高齢者の方でも利用できます。また、B型事業所を利用する際に、どんな配慮が必要か、どんな課題があるか、聞き取りが行われます。
自治体によって条件が異なる場合もあるので、各市町村の障害福祉課で問い合わせてみましょう。
A型事業所との1番の違いは、事業所と雇用契約を結ばないことです。そのため作業内容も簡単な軽作業が中心で、障がいや体調に合わせて無理なく作業ができます。
B型事業所は、令和4年の時点で全国に15,354か所あります。
A型よりも圧倒的に多いので、ゆっくりと自分に合った事業所を見つけていきましょう。
都道府県別障害者施設一覧|厚生労働省
障害福祉サービス等情報検索|WAM NET
【注意】就労移行支援とは全く異なる制度
就労継続支援と似たサービスに、就労移行支援があります。どちらも福祉サービスの一環ですが、内容は大きく異なります。よく似た言葉で、間違える方も多くいるため注意が必要です。
それぞれの違いは表にまとめたので、確認してみましょう。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | 就労移行支援 | |
---|---|---|---|
目的 | 働く場所の提供と支援 | 就職するための スキルを身に着ける |
|
対象者 | 一般企業への就職が難しく、 雇用に結びつかなかった方 |
一般企業への 就職を希望する方 |
|
利用期間 | なし | 原則2年 | |
雇用契約 | あり | なし | なし |
給料 (工賃) |
あり 平均月収約79,000円 |
あり 平均月収約15,000円 |
なし 一部例外 |
年齢制限 | 65歳未満 | なし | 65歳未満 |
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | 就労移行支援 | |
---|---|---|---|
目的 | 働く場所の提供と支援 | 就職するための スキルを身に着ける |
|
対象者 | 一般企業への就職が難しく、 雇用に結びつかなかった方 |
一般企業への 就職を希望する方 |
|
利用期間 | なし | 原則2年 | |
雇用契約 | あり | なし | なし |
給料 (工賃) |
あり 平均月収約79,000円 |
あり 平均月収約15,000円 |
なし 一部例外 |
年齢制限 | 65歳未満 | なし | 65歳未満 |
就労継続支援A型とB型は、障がいによって就職が困難な方や、雇用まで結びつかなかった方が利用します。
一方、就労移行支援は、就職するために必要なスキルを習得する場所です。ビジネスマナーや挨拶、パソコンスキル、履歴書の書き方まで訓練します。A型、B型の事業所よりも、より一般企業への就職に特化した施設です。
A型、B型の事業所では給料や工賃が受け取れますが、就労移行支援だと基本的に給料はありません。ただ、一部例外として、1日300円程度の工賃が貰える所もあります。
また、A型やB型の事業所に通いながら、就労移行支援を同時に利用することは出来ません。就労継続支援と就労移行支援は、全く異なる福祉サービスであり、サービスの対象や支援の目的が異なるためです。
これらの福祉サービスを利用するときは、目的を明確にして、自分に合うサービスはどれなのかをしっかり考えましょう。
A型事業所とB型事業所では何をするの?一日の流れと作業内容
A型事業所とB型事業所について、理解できたでしょうか。
続いては、A型事業所、B型事業所、それぞれ1日の流れや仕事内容について解説します。
雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型では作業内容も異なります。
さらに、A型とB型では障がいの重さや特性によって1日の過ごし方が異なるので、比較しながら見ていきましょう。
A型事業所の1日のスケジュール
A型の場合、1日の勤務時間を4時間程の短時間にしている事業所が多いです。
一般的なA型事業所の1日の流れをご紹介します。
A型事業所の1日の流れ
お弁当を用意してくれる事業所もあります。
始業時間や休憩時間は、各事業所によって異なります。体調が悪くなった時や、困ったことがある時は、すぐに職員に相談してください。また、事業所から最寄り駅などに送迎をしてくれる事業所も多いです。
中には6時間勤務といった長時間働ける事業所もあります。
気になる事業所が見つかったら、詳細を問い合わせてみましょう。
B型事業所の1日のスケジュール
B型事業所は疲れやすい方や、集中力が続かない方のために、午後の休憩をたくさん取ることが多いです。
B型事業所での1日の流れを見てみましょう。
B型事業所での1日の流れ
A型に比べて、休憩時間を長く取るB型事業所は多くあります。
作業中も自分のペースでゆっくりと、出来ることをやるという感じです。A型事業所と同様に、始業時間や休憩時間の配分は、各事業所で大きく異なります。
行ってみたいB型事業所を見つけたら、1日の流れを確認してみましょう。
A型事業所の作業内容
A型事業所とB型事業所では、作業内容に少し違いがあります。それぞれに、どんな作業があるのか代表的な仕事内容を比較してみましょう。
まずはA型事業所でよくみられる作業内容です。
A型事業所の場合、一般企業に近い作業内容をこなします。簡単な軽作業も多いですが、Webデザインやプログラマー、ものづくりといった専門的な業務もあります。
静かに集中して、コツコツとした作業が得意な方は、A型事業所の作業が向いています。
利用者さんの特技や経験、就職に役立つスキルを活かした業務が多いのも特徴です。
B型事業所の作業内容
続いて、B型事業所の作業内容については以下のようなものがあります。
A型に比べて、比較的簡単な作業が多く、自分のペースに合わせてゆっくり作業ができる内容です。
休憩時間が多く、ゆっくりしたペースですが、座って作業をこなすのは大変です。
障がいの程度によっては、「まずは事業所に通う」ということを目標にできるか、事業所に相談してみましょう。
レクリエーション活動などもあり、アットホームな雰囲気の中で過ごせるのもB型の特徴です。
A型事業所・B型事業所のお金について!工賃って何?
就労継続支援A型とB型では、給料にも違いがあります。雇用契約を結ぶA型には時給が発生し、雇用契約を結ばないB型には工賃が発生します。
この具体的な違いとは、一体どんな所なのでしょうか。気になるお金の疑問を、分かりやすく解説します。
A型は働いた給料・B型は頑張った分の工賃
ここからはA型事業所とB型事業所の収入に違いについて解説します。
A型事業所の給料
A型事業所の場合、雇用契約を結んで仕事をするので、最低賃金以上の給料が貰えます。令和4年において、A型事業所の平均時給は947円、月収の平均は83,551円でした。この金額は年々上昇傾向にあり、今後さらに増加していくと言われています。
収入を得ながら、社会復帰を目指せるのがA型の魅力です。しかし、勤務時間中は作業に集中し、ある程度の作業をこなさないといけません。
ノルマや残業はほとんどありませんが、賃金を受け取る以上、それなりの社会性が必要です。
B型事業所の工賃
B型事業所の場合は、事業所と雇用契約を結ばないため、最低賃金は支給されません。その代わり、工賃としてお金が貰えます。
工賃とは、事業所での作業によって、利益が出た時に貰えるお金のことです。A型のように、時間での賃金は発生しません。頑張って作業した分だけが、工賃として受け取れます。
令和4年において、B型事業所の平均工賃は月に17,031円で、時給換算すると243円でした。
A型事業所は、決められた時間内に、ある程度の作業をこなす必要があります。対してB型事業所は、それぞれの障がいの特性に合わせて、ゆっくりと作業を進めるのが特徴。時には作業をやめて、簡単なゲームやレクリエーションをして過ごす事業所もあります。
障がい年金を貰いながらA型事業所・B型事業所に通える?
障がい年金の支給を受けている方は、A型、B型事業所からの収入があると、年金に影響が出ないか心配ですよね。しかし、事業所からの収入があっても、障がい年金に影響はありません。
就労継続支援は福祉サービスの一環なので、収入として判断されないためです。実際、障がい基礎年金2級を受けている方でも、A型事業所に通っている方はたくさんいます。
なので、障がい年金を受けている方も、これから申請される方も、安心して事業所の利用を検討してください。
万が一、事業所を利用中に障がい年金が減額、支給停止となる場合は、金銭の理由以外が考えられます。例えば、特別な配慮や援助を受けず、他者との意思疎通が可能な場合です。
人それぞれ就労環境や、症状は異なるので一概には言えません。
ただ、援助が無いと作業が出来ない、就労によって日常生活や体調が悪化した、といったことがある場合は、しっかりと主治医に報告・相談しておきましょう。
まとめ|A型作業所・B型作業所とは?
- 共同作業所の名残で「作業所」という言葉があるが、現在の就労継続支援と同じ意味である
- A型事業所は雇用契約を結び、B型事業所は雇用契約を結ばない
- 事業所から給料を貰っても、障がい年金には影響しない
本記事では、A型事業所とB型事業所について見てきました。A型は実践的に仕事をする場所、B型はゆっくりと体を慣らして訓練する場所です。どちらも福祉サービスなので、体調に合わせて選択することができます。
ご自身の体と相談しながら、少しずつ社会復帰を目指しましょう。