双極性障がい(躁うつ)とADHDの違いとは?併発するケースについても解説

双極性障がいとADHDは、それぞれ全く別の障がいです。しかし、併発することが多く、共通する点もみられるため、似ていると言われることがあります。

次のような疑問を抱く方も少なくありません。

KAORUKO

「今まで自分はADHDだと思ってたけど、実は双極性障がいなのかも?」
「思い当たる症状があって調べたけど、どっちに当てはまるのか分からない…」

あなたは2つの違いをしっかり理解できていますか?

  • 双極性障がいとADHDの違い
  • 双極性障がいとADHDは併発するのか
  • 双極性障がいかADHDだと思い当たったらどうすればよいのか
  • 双極性障がいやADHDの方が利用できる支援制度

を解説していきます。

双極性障がいとADHDそれぞれの特徴を理解し、自分の障がいに合った対策をしていきましょう。

双極性障がいとADHDの症状の違い

ADHD

まずは双極性障がいとADHDの特徴や、それによって起こる困りごとを見ていきましょう。

ADHDの特徴

ADHDは「注意欠如・多動症」とも呼ばれる発達障がいです。不注意性、多動性、衝動性の傾向があり、特性によって生活に支障がある場合に診断されます。

「注意力や集中力が低い」「強い衝動性による突発的な行動」などの特徴によって、日常生活に困難があります。

他にも、「順序立てた行動が苦手」「待つことが苦手」などの特性が見られます。

双極性障がいの特徴

双極性障害は気分が高揚し活動的になる「そう状態」と、憂鬱ゆううつで無気力になる「うつ状態」の波が不規則に起こる精神障がいです。

躁状態では、眠らなくても元気、感情が抑制できない、買い物やギャンブルなどによる浪費、多弁などの症状が表れます。軽い躁状態(軽躁けいそう状態)の場合、躁状態より症状は軽いですが、気分が高揚する、短時間の睡眠でも平気、注意が散漫になるなどの症状が表れます。

一方、うつ状態では、不眠、思考や動作が緩慢になる、食欲不振、死にたいと考えるなどの症状が表れます。

双極性障がいとADHDの違い・似ている点

二つの恋で迷う女性

先に述べたように、双極性障がいとADHDは全く別の障がいです。しかし、部分的に似た特徴があるため、これらを混同してしまうケースがあります。自分の障がいを正確に把握し、適切な対応をとるため、似ている特性・症状や見分ける方法、併発する可能性について確認していきましょう。

双極性障がいとADHDの似ている点

双極性障がいのうちそう状態や軽躁けいそう状態で見られる症状には、ADHDの特性と似ている点があります。

具体的には下記のような共通点があります。

  • 衝動的な行動が増える
  • じっとしていられない
  • 集中力が欠ける
  • 不注意によるミスが多い

これらの症状だけでは、双極性障がいとADHDのどちらに当てはまるのか判断することは難しいでしょう。

双極性障がいとADHDの違い

上記のように、双極性障がいのそう状態における症状は、ADHDの特性と似ています。ですが、双極性障がいの場合はADHDにはない「うつ状態」があります。

双極性障がいのうつ状態では次のような症状が見られます。

  • 気持ちがひどく落ち込む
  • 疲れやすくなる
  • 食欲がなくなる
  • 考え方がネガティブになる

このような躁状態とは正反対の症状が表れる場合は、双極性障がいの可能性が高いでしょう。

一方で、ADHDは双極性障がいとは異なり、幼少期に診断されるケースが多いです。そのため、幼い頃から思い当たる特性がある場合、発達障がいであるADHDが疑われます。

双極性障がいとADHDが併発する可能性

双極性障がいとADHDに共通した特徴が表れる場合、必ずしもどちらか一方の障がいだけが該当するとは限りません。成人でADHDを持つ方のうち、およそ2割の方は双極性障がいを併発すると言われています。

双極性障がいとADHDを併発しているケースも大いに考えられるため、自己診断で満足せず、専門家による適切な診断を受けるようにしましょう。

双極性障がいやADHDに思い当たったら?仕事での対応方法

考えるビジネスマンと作業服の男性

双極性障がいやADHDに思い当たる点があった場合や、実際に診断を受けた際、どうすればいいか戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか?これらに該当する方はそれぞれの困りごとに適切に対応し、自分の特性と上手く付き合っていく必要があります。

具体的な対応方法を詳しく解説していきます。

ADHDの場合

ADHDは、発達障がいの1つです。表れる特性は人によって異なり、その強弱も個人差があります。

服薬治療やSST(ソーシャルスキルトレーニング)などの訓練、環境の調整などで困りごとを減らすことができます。

この項目では、対応方法の一例を紹介します。

メモを取る・チェックリストを作る

ADHDの方には「忘れ物が多い」「スケジュール管理が苦手」という特性があります。

これらの特性に対しては「メモを取る」「チェックリストを作る」といった対策が有効です。タスクや持ち物を忘れづらくなり、問題の発生を防ぐことができます。

手遊びをしてみる

ADHDの特性の中に「じっと座って人の話を聞くことが苦手」というものがあります。この特性の対策として、ハンカチや消しゴムなどの小物を手の中で揉む、転がすといった「手遊び」が効果的です。手遊びによって緊張をほぐし、集中力を上げることができます。

ただし、事前に理解が得られていない場合、相手に失礼と思われることが多いです。事前に話をしておくか、相手や状況によっては控える必要があるでしょう。

自分の特性を周囲に伝える

自力で解決しようと対処法を試行錯誤するのも良いですが、周囲に協力してもらうことで、より効果的な方法を取れることもあります。特性や性質、それに付随した仕事上の問題について同僚や上司に伝え、理解を得ることができれば、より快適な職場環境を作っていくことができるでしょう。

ADHDの方が仕事をするときにできる対策は下記の記事でも解説しています。

双極性障がいの場合

双極性障がいはそう状態とうつ状態を不定期に繰り返す精神障がいです。発症する原因は明確には分かっていませんが、ストレスが引き金になっているのではないかと考えられています。

服薬治療で躁状態とうつ状態をコントロールし、気分の波が安定した生活を送ることができます。

服薬し休養を取る

双極性障害の躁状態は、興奮状態になり、攻撃的になることがあります。一方うつ状態では全身に倦怠感けんたいかんがあり、極度の自己嫌悪に陥りやすいです。

こういった状況では、極力外部からの刺激を避けることが重要です。精神科・心療内科のような医療機関を受診して、処方された薬を適切に服用し、休養することに専念しましょう。

働いている方は、仕事を休職することも視野に入れる必要があります。

双極性障がいの方の休職については、下記の記事で詳しく解説しています。

双極性障がいやADHDの方が利用できる支援制度

SUPPORT

双極性障がいやADHDの方は、さまざまな支援制度を利用することができます。

「自分に合った就職先を見つけられるか不安…」「治療に必要なお金が足りない…」などのお悩みをお持ちの方は、この項目で紹介する支援制度を利用しましょう。

精神障がい者保健福祉手帳

「精神障がい者保健福祉手帳」は障害者手帳の一種で、双極性障がいやADHDなどの精神障害、発達障がいがある方が取得できます。

精神障がい者保健福祉手帳を持っていると、次のようなサービスを受けることができます。

  • 公共料金の割引
  • 一部税金の控除
  • 生活福祉資金の貸付
  • 公営住宅の優先入居

 
このほかにも、障がい者枠の求人へ応募できるようになる、さまざまな福祉サービスが受けられるなど、多くのメリットがあります。申請には下記を用意し、お住まいの市区町村役場の担当窓口へ精神障がい者保健福祉手帳を取得したいことを伝えましょう。

  • マイナンバーの記載された申請書
  • 医師による診断書、または障がい年金受給証明書の写し
  • 本人の写真(障がい者手帳貼付用)
  • 身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
  • 印鑑

障がい年金

障がい年金は、ADHDと双極性障がい、どちらの方も利用できる支援制度です。診断を受けた際に国民年金または厚生年金に加入していれば、障がいの程度によって国から一定額が支給されます。

国民年金法施行令では、おおまかに下記のような等級が定められています。

障がいの程度1級

他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。障害基礎年金に該当する状態|障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

障がいの程度2級

必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。障害基礎年金に該当する状態|障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

上記の等級に照らし合わせ、それぞれの等級で下記の金額が支給されます(昭和31年4月2日以後生まれの場合)。

1級 1,020,000円
2級 816,000円
1級 1,020,000円
2級 816,000円

※令和6年度の場合

また、支給額は子供の数に応じて上乗せされます。厚生年金に加入していた場合はさらに上乗せして支給される他、障がい基礎年金では条件に該当しなかった3級相当の方でも受給できるようになります。

支給を希望する際は、年金事務所や市区町村役場の窓口へ直接申請しに行くか、ソーシャルワーカーや社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

自立支援医療(精神通院医療)

自立支援医療制度は、医療費の自己負担を軽減する公費負担の医療制度です。ここでは特に、精神通院医療について解説します。

双極性障がいなどの精神障がいやADHDなどの発達障がいなどによって、通院治療が必要な方を対象としています。障がいや障がいが原因と考えられる症状に対する通院医療で、公的医療保険の範囲内が対象です。

通常、健康保険などを利用して自己負担が3割のところ、自己負担が1割となります。また、1割の負担が過大にならないよう、世帯での所得に応じて、1か月あたりの負担に上限がかかります。医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県・指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」で、受給者証に記載されたものに限られます。

定期的に通院している病院・薬局がある場合、医療費の負担が減らせるため、ぜひ利用したい制度です。

  • 申請書(自立支援医療認定申請書)
  • 医師の診断書
    ・通院している病院で記入してもらう
    ・精神障がい者保健福祉手帳と同時に申請する場合など、診断書が省略できる場合もあるので、要確認
  • 同じ医療保険世帯の方の所得状況等が確認できる書類
    ・課税証明書など
  • 健康保険証(写しなど)
    ・世帯全員の名前が記載されている被保険者証・被扶養者証など医療保険の加入関係を示すもの
  • マイナンバーの確認書類
    ・個人番号カードなど、身元確認ができる書類

必要な書類は概ね上記の通りですが、自治体によって異なる場合があります。お住まいの地域の精神保健福祉センターや、市町村の担当課(障がい福祉課、保健福祉課など)に問い合わせてみましょう。

自立支援医療制度については、下記の記事で解説しています。

障がい者就業・生活支援センター(なかぽつ)

「障がい者就業・生活支援センター」は、障がい者の職業生活における自立を目的として全国に設置されている施設です。「なかぽつ」とも呼ばれており、関係機関と連携し、就業面・生活面の一体的な支援を行っています。

就職に向けた書類作成の補助や面接の対策、ハローワーク等の就労支援機関と連携した職場探しのサポートのほか、就業訓練や生活での自己管理に関する助言など、仕事と生活の両面からサポートを受けることができます。

令和6年4月1日時点で全国に337箇所に設置されているため、気になった方はお近くの施設を探してみるといいでしょう。

障がい者就業・生活支援センターについて、詳しくは下記の記事で解説しています。

まとめ|双極性障がいとADHDの違い

  • 双極性障がいとADHDは全く別の障がい。ただしそう状態で見られる症状とADHDの特性は似た部分がある。
  • 双極性障がいのうつ状態で見られる症状はADHDにはないため、見分けるポイントにはなる。
  • 双極性障がいとADHDはおよそ2割の割合で併発する可能性がある。
  • 双極性障がいが悪化すると生活に支障を及ぼす場合があるため、困りごとがあれば医師による診断・治療を受けること。
  • どちらであっても、精神障がい者保健福祉手帳の取得や、障がい年金の受給、障害者就業・生活支援センターなど、利用できる支援制度や機関がある。

双極性障がいとADHDには似た部分がありますが、精神障がいと発達障がいは全く別の障がいのため、自己診断では誤った結論を出してしまう可能性があります。

これらに思い当たる点があった場合は、きちんと医師による診断を受けることが重要です。双極性障がいでも、ADHDでも、診断が出れば対処法が考えやすくなりますし、支援の仕方も変わってきます。

正しい診断と適切なサポートを受け、自分らしい生き方を探って行きましょう。

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