統合失調症の方に向いている仕事とは?適職を探す方法を詳しく解説!

KAORUKO

「統合失調症があるけれど、自分にはどんな仕事が向いているのかな?」
「仕事探しのポイントや、就職に向けて利用できる支援制度を知りたい…」

あなたはこのような疑問や悩みを抱えていませんか?

統合失調症は人類を苦しめている最悪の病気の一つと言われるほど、非常に多くの方を苦しめている病気です。病気の特性上、症状に個人差が大きく、周囲の方から理解してもらえないことが多いため、あなたにしかわからない辛さや苦しさもあるでしょう。

しかし、諦めてしまうのはまだ早いです。統合失調症の方でも働くことは十分に可能であり、あなたに向いている仕事の選び方があります。

  • 統合失調症とは?主な症状や仕事に与える影響は何なのか
  • 統合失調症を患っていても仕事ができるのか
  • 統合失調症の方の仕事選び、3つのポイント
  • 統合失調症の方にオススメできる仕事とオススメできない仕事
  • 統合失調症の方が利用できる支援機関

について解説していきます。

統合失調症とは?

統合失調症

統合失調症の方が仕事を選ぶには、まずこの病気についての確かな知識が必要です。
統合失調症については、MSDマニュアル家庭版に詳しく記載されています。

統合失調症は、現実とのつながりの喪失(精神病症状)、幻覚(通常は幻聴)、妄想(誤った強い思い込み)、異常な思考や行動、感情表現の減少、意欲の低下、精神機能(認知機能)の低下、日常生活(仕事、対人関係、身の回りの管理など)の問題を特徴とする精神障害です。統合失調症|統合失調症および関連障害群|10.心の健康問題|MSDマニュアル家庭版

簡単にまとめると、気持ちと考えにまとまりを欠き、行動に問題が生じる病気です。

性別を問わずおよそ100人に1人が発症するとされており、決して珍しい病気ではありません。しかしながらその原因とメカニズムについては「遺伝が関わっている」「ストレスが引き金になっている」など、可能性として挙げられる要素はあるものの、未だ不明とされています。

統合失調症の4つの症状

統合失調症の症状は大きく下記の4つに分類されます。

分類 症状
陽性症状 妄想:「誰かに監視されている」など実際にはないこと強く確信する
幻覚:幻聴・幻視したものを現実として知覚する
陰性症状 感情表現の減少:喜怒哀楽を示さなくなり、他者との共感ができなくなる
発言の減少:語彙力が乏しくなり、返答が短くなる
意欲の欠如:趣味嗜好が失われ、新しく何かをする気力がなくなる
自閉:他者との関わりに興味を失い、引きこもるようになる
解体症状 思考障害:思考の一貫性が失われ、言動のとりとめがなくなる
奇行:異常な興奮や緊張が行動に現れる
認知症状 記憶力の低下:映画やテレビ番組等の話の筋を追えなくなる
集中力の欠如:注意力が散漫になり、一つのことに集中できなくなる

この中のどれか1つに当てはまれば統合失調症、というわけではありません。症状の重症度と種類は人によってさまざまで、どれか1つだけということもあれば全ての症状が当てはまるという方もいます。

発症の仕方も人によって個人差があり、突然発症することもあれば、何年もかけて徐々にゆっくりと発症していく場合もあります。

治療法としては主に投薬治療が有効です。治療の開始が早いほど予後が良いとされているので、基本的に他の病気と同じように早期発見と早期治療が望まれています。しかし、病気の性質上、自力での服薬が続かない場合が多く、治療は難しい傾向にあります。

統合失調症の症状が仕事に与える影響は?

統合失調症が仕事に与える影響は症状によってさまざまですが、代表的なものとして下記のようなものがあります。

  • 誰も何も言っていないのに仕事中に自分の悪口を言われた気がして傷つく
  • 会話に一貫性がなくて伝えたいことを上手く伝えられず失敗する
  • 無気力が原因で仕事が進まず周囲に迷惑をかける
  • 集中力不足で聞き逃してはいけない話を聞き逃す
  • なんの脈絡もなく突然怒ってしまいトラブルを起こす

陽性症状による妄想や幻覚があると、周囲を過剰に気にしてしまいます。そうなると目の前の作業に集中できなくなるだけでは済みません。感情的にも落ち込みやすくなり、体力的にも疲れやすくなってしまいます。

解体症状や認知症状があると、集中力は欠け、思考が乱れて判断力を失います。段取りに支障をきたしてしまうので、仕事が上手く進みません。

加えて陰性症状が現れれば、底に穴の空いたバケツのように気力や体力は空のままになり、仕事に対する意欲自体が失われてしまいます。

「なんとかしなければと思っても、身体が上手く動かない」
「考えたくても頭がぼーっとする」

こういった状態に陥った経験のある方も少なくないでしょう。

統合失調症のそれぞれの症状は繋がっており、併発します。放置すれば1つの症状から別の症状を併発し、病気を進行させる悪循環が生まれてしまうのです。仕事どころではなくなってしまうので、発症した時点で適切な医療サポートが必須と言えます。

統合失調症があっても仕事はできるのか?

2人の仲良しビジネスウーマン

前述の通り、統合失調症は非常に難しい病気です。しかしながら、仕事に就くことは十分に可能です。

厚生労働省の「令和5年障害者雇用状況の集計結果」によると、精神障害がある方で雇用されているの総数は130,298人と前年より18.7%増加しており、引き続き増加傾向にあります。

ただし下記の3つの前提をしっかりと押さえていることが大切です。

  • しかるべき休養を取り、統合失調症の症状がある程度安定していること
  • 適切な医療サポートを受け、医師から「就労可能」の判断が下されていること
  • 処方された治療薬の服用をきちんと続けられること

症状が安定しないうちに復帰して、体調を崩してしまっては元も子もありません。医師の指示をよく聞いて、決して焦らずに、統合失調症と向き合いましょう

そうすれば安心して就職できるだけでなく、就職後も安定して仕事を続けることができます。

統合失調症の方の仕事選び、3つのポイント

ポイントの文字と色鉛筆と英字新聞

統合失調症がある方の仕事の選び方は次の通りです。

  1. 仕事を選ぶうえで解消すべき問題点を知る
  2. 問題点の解消方法を考える
  3. 考えた方法に沿って仕事を選ぶ

仕事ができるようになったとしても、仕事選びは慎重に行う必要があります。なぜならば、統合失調症の方の仕事選びには解消すべき問題点があり、解消しなければせっかく就職できたとしても再度失職するリスクを抱えてしまうからです。

先に問題点を洗い出し、それぞれ解消していきましょう。そうすれば自然と方法が見えてきます。

仕事をする上で発生しやすい問題点を知る

統合失調症の方が仕事をする上で発生しやすい問題は、主に下記の三つが挙げられます。

  • 障害者雇用の場合、給与水準が低い
  • どうしても業務に差し障りが出る症状がある
  • 再発の不安

順番に見ていきましょう。

障害者雇用の場合は給与水準が低い

統合失調症の方の就職には、病気の症状に配慮を受けながら働ける「障害者雇用」(詳細は後述しています)という選択肢があります。しかし、障害者雇用で働く場合は一般雇用よりも給与水準が低くなる点に注意が必要です。

令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書によれば、障害者雇用で働く精神障害者の1か月の平均賃金は14万9千円 (超過勤務手当を除く所定内給与額は14万6千円)と、同年の一般労働者の平均月給31万8千円の半分以下に留まっています。

通常の週30時間以上勤務に限定したとしても19万3千円と低い数字です。

生活に必要な額を稼げなければ通院の継続や療養も難しくなってしまうので、大きな問題と言えるでしょう。

どうしても業務に差し障りが出る症状がある

統合失調症の厄介な点として、症状の長引きやすさがあります。そのため、一度は症状が改善したとしても軽度な妄想や幻覚などの陽性症状が続いたり、感覚鈍麻や意欲の欠如などの陰性症状が残ったりすることが多いのです。

医師が就労可能と判断できるラインでも、健常な方と比べて

  • 仕事の速度が遅く、ミスも多い
  • 認知機能が低下して、仕事のパフォーマンスが低下している

などの問題がある場合、業務に支障をきたしてしまうことがあります。

再発の不安

統合失調症は再発率の高い病気です。投薬治療が不十分な場合はおおよそ7〜8割、十分な場合でも3割程度再発の可能性があります。

もちろん十分な医療サポートを受けている場合、再発したとしても軽度な症状に抑えることができますが、就職を焦ったり無理をして仕事を続けたりすると悪化する危険が伴います。

問題点の解消方法を考える

統合失調症の方の仕事選びには難しい問題が多いですが、下記のような方法で解消できます。

  • 障害年金の受給を検討する
  • 症状に合わせて働ける職業を考える
  • 症状への理解と配慮がある職場を選ぶ

順番に見ていきましょう。

障害年金の受給を検討する

実は症状によっては統合失調症の方も精神障害者の枠に入るので、障害年金の受給が可能です。受給のために満たさなければならない条件はいくつかありますが、受給することができれば月収に余裕が生まれ、仕事選びが大幅に楽になります。
Q.障害年金の対象となる病気やケガにはどのようなものがありますか|日本年金機構

詳細はNPO法人障害年金支援ネットワークにて確認できます。一度検討してみると良いでしょう。
統合失調症と障害年金|NPO法人障害年金支援ネットワーク

症状に合わせて働ける職業を考える

「記憶力に問題がある」⇒「記憶力を求められない、もしくはメモの活用が可能な仕事」
「集中力が特に不安」⇒「比較的時間に余裕を持って働くことのできる仕事」

といったように、あなたの現在の不得意をカバーできる仕事は何かを考えてみましょう。万が一問題が出たとしても対応できる仕事であれば、心にゆとりをもって働くことができます。

症状への理解と配慮がある職場を選ぶ

「どうしても体調が悪くて業務が難しい」といった際に休みを取れるかどうか、体調面で困ったことがあった際に職場に相談できる方がいるか、は重要です。我慢を重ねずに体調管理を続けることができれば、再発のリスクを大幅に減らせます。仕事を選ぶ際は必ず職場の環境や福利厚生を意識しましょう。

一般雇用と障害者雇用を比較してみる

先述した通り、統合失調症の方は精神障害者として国からの支援を受けることができます。障害者雇用はそのうちの制度の1つで、障がいのある方が安心して働くための雇用枠です。

一般雇用と障害者雇用のどちらを選ぶかについてお悩みの方は多いのではないでしょうか。下記の表を参考にしてみると良いでしょう。

メリット デメリット
一般雇用
  • 障害者雇用と比べて給料は高め
  • 障害者雇用と比べて応募に手間がかからない
  • 症状に関してオープン(公開)・クローズ(非公開)の選択が可能
  • オープンでも病状への配慮が不十分な可能性が高い(クローズの場合、当然配慮自体が無い)
  • オープンだと選考で弾かれやすい企業も多い
  • 病歴を隠すことが困難なケースもある
障害者雇用
  • 病状に対して合理的配慮が受けられる
  • 職場への定着支援が豊富
  • 求人の信用度が一般雇用と比べて高い
  • 一般雇用と比べて給料が安め
  • 障害者手帳の取得が必須であり、一般雇用と比べて応募に手間がかかる
  • 求人数が限られており職種の幅が少ない

総じて、仕事内容と給料を取るならば一般雇用、合理的配慮による安定と安心を取るならば障害者雇用と言えます。

一般雇用には特段障がいに対する配慮事項は含まれていません。なので病状をオープンにして就職したとしても、どこまで配慮を行うかは職場の判断に委ねられます。

一方で障害者雇用は法律で定められている障がいへの合理的配慮を前提とした雇用枠です。

「働いてみたらイメージしていた仕事と違っていた…」という就職後のミスマッチを防ぐことができるため、一般雇用と比較して障がい者の職場定着率が高い特徴があります。就職後もあなたの体調に合わせた働き方ができるので、安心して仕事を続けやすい点は大きなメリットとなるでしょう。

また、障害年金を受給できる場合、給与水準が低い障害者雇用であっても十分に自立した生活を送ることができます。

もっとも、一般雇用の方が求人数は圧倒的に多いため、あなたにマッチした仕事と出会える可能性も十分にあります。

一般雇用と障害者雇用それぞれのメリット・デメリットを把握した上で、「症状に合わせて働ける職業」「症状への理解と配慮がある職場」という軸を持ちながらさまざまな仕事を探してみることが大切です。

統合失調症の方にオススメできる仕事・オススメできない仕事

パソコンを使う製造業の社員7

次の項目では、統合失調症の方にオススメできる仕事とオススメできない仕事をご紹介していきます。あくまで一例にはなりますが、参考としてご自身の仕事選びに役立ててください。

オススメできる仕事の例3選

症状の程度にもよりますが、概ね「就業時間が規則的」「マイペースで作業ができる」「周囲のサポートを得られる」といった要素のある仕事が統合失調症の方におすすめです。リモートワークが可能であれば、前向きに検討してみると良いでしょう。

統合失調症の症状のなかで主にネックとなる「集中力」「記憶力」「意欲」の低下をカバーしやすく、安心して働くことができます。

下記にオススメできる仕事の例を挙げていきます。

事務職

書類作成やデータ作成がメインの事務職であれば業務がパターン化されているので、妄想や幻聴といった症状の影響が少なくて済みます。

デスクワークが苦にならない方にはおすすめです。

軽作業・製造業

マニュアルが完備されたルーティンワークであることが多いため、順序立てが難しい方でもしっかりと働くことができます。

特別な知識やスキルが不要なので、未経験でも就職しやすい点も魅力です。

イラストレーター・Webデザイナー

どちらも専門的な技術や知識を必要としますが、統合失調症の方にとって負担の少ないリモートワークなどの仕事環境を調整しやすい職種です。

「絵を描くことが好き」「デザインに興味がある」といった方は挑戦してみてもいいかもしれません。

オススメできない仕事の例3選

統合失調症の症状の影響を受けやすい「対人機会が多い」「常にその場での判断を求められる」「勤務時間が不規則」といった要素のある仕事は、統合失調症の方にはあまりオススメできません。

心理的負担によって症状を悪化させるリスクがあるので、できる限り避けたほうが良いでしょう。

下記がオススメできない仕事の例です。

接客業

職場によっては負担が少ないものもあるかもしれませんが、「突然話しかけられる」といったシチュエーションが基本な接客業は統合失調症の幻聴、幻覚症状との相性があまり良くありません。

対人機会も多く、クレーム対応など強いストレスに見舞われる可能性もあるので、統合失調症の方には向いていない仕事と言えます。

医療関係

勤務時間が不規則であり、尚且つその場での判断を常に求められるため、統合失調症との相性が悪い仕事です。難しい対人機会も多く、心理的負担が大きいと言えます。

資格制限の項目に精神障害が含まれる場合が多い分野であることからも厳しいでしょう。

施工管理

建設・工事の現場において、工事が安全かつスムーズに進行するように、工程や品質、予算などを管理する業務が施工管理です。長時間の拘束に耐える体力と厳格なスケジュール管理能力を求められます。

現場での突発的な対応も頻繁に発生するため、統合失調症の方にはオススメできません。

統合失調症の方が利用できる就労支援3選

サポートのイメージ

「仕事探しが自分には難しい」と思ってしまった方もいるかもしれませんが、ご安心ください。統合失調症の方が受けられる就労支援サービスがあります。

さまざまな就労支援サービスがありますが、次の項目ではその中でも特にオススメのものをご紹介します。

支援の内容がそれぞれ異なるため、ご自身に合った就労支援サービスを選びましょう。

就労継続支援事業所A型・B型

就労継続支援事業所は、一般的な企業への就職が現状困難な障がい者の方に働く機会を提供している就労支援サービスです。

雇用契約のあるA型と雇用契約のないB型の2種類があり、A型では最低賃金以上の給料を、B型では事業所ごとに定められた工賃を貰いながら、それぞれ利用者の障がいに配慮した職場で働くことができます。

障害年金の受給が可能な方で、今すぐ一般企業への就職が難しいという場合にはオススメです。

就労継続支援事業所については、下記の記事などで詳しく解説しています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障がいのある方の就職・復職を支援している民間の就労支援サービスです。

就労継続支援A型・B型との大きな違いは目的を「一般企業への就職と職場定着」としている点で、支援内容もそちらに重きが置かれています。

2年間と期間が限定されていますが、就職に必要なスキルアップに加え、就職活動に必要な書類の書き方から面接の練習までさまざまなサポートを受けられます。2年の期間とは別に就職後の長期的な定着支援を受けられる場合もあるので、1人で仕事を探すのが難しい、働き始めるのが心配だという方は利用を考えてみると良いでしょう。

就労移行支援事業所については、下記の記事で解説しています。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

障害者就業・生活支援センターは、障がい者の就業面と生活面の双方の相談支援を行う機関です。間の「・」からなかぽつなどと呼ばれることもあります。

障がい者の自立・安定した職業生活の実現を目的としており、就職活動と職場定着への支援に加え、生活面での相談が行えます。

ハローワークや就労移行支援事業者など、他の支援機関との幅広い連携が特徴です。こちらも1人では心配だという方にはオススメです。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)については、下記の記事で解説しています。

まとめ|統合失調症の方に向いている仕事

  • 統合失調症は症状が長引きやすく再発のリスクも高いため、医療サポートをしっかりと受ける。
  • 自身の症状について理解を深めて、仕事をする上での問題点を整理する。
  • 症状に合わせて働ける仕事を考えると同時に、「会社は統合失調症への理解があるか?」「仕事で困りごとが発生した時、相談できる環境はあるか?」などの職場環境に注目する。
  • 障害年金の受給を検討すると同時に、一般雇用以外にも障害者雇用という選択肢があることを把握しておく。
  • 自分1人での仕事探しが難しいと感じた場合は、就労支援サービスを利用を検討する。

統合失調症の方が働くために最も重要なことは、1人で抱え込まないことです。医療サポートはもちろんのこと、必要であれば支援機関を頼ってみましょう。

その上でこの記事の内容を実践できれば、より無理なく、失敗しにくい仕事選びができるはずです。

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