発達障害を持つ方は、日常生活を送る上でマルチタスクをこなすことが困難だと感じる瞬間が多いのではないでしょうか。特に仕事をしていると、二つのことを同時に進行しなければならないときがあると思います。
「発達障害だとマルチタスクがこなせないのかな?」
そんな悩みを抱えているあなたのために
- 大人の発達障害の方にマルチタスクができない理由
- 仕事上でマルチタスクができないと困ることと対策
について解説していきます。
大人の発達障害の方が二つのことを同時にできない理由
二つのことを同時にできないのは発達障害を持つ方の特性の一つです。
発達障害は脳の発達の違いによるもので、考えたり判断したりする際に使う脳の働きが通常とは異なっているため、マルチタスクが苦手な方が多い傾向があります。発達障害の中でも、自閉スペクトラム症(ASD)の傾向が強い方はこだわりが強く、目の前の業務にしか集中できません。
また、相手の気持ちやその場の雰囲気を読み取ることや、イレギュラーな業務への対応が難しい特性がマルチタスクを苦手とする理由になります。
注意欠如・多動症(ADHD)の傾向が強い方の場合、タスクや身の回りの整理整頓、優先順位をつけて仕事をこなすことが難しい特性があります。次々と浮かぶ新しい考えに気を取られてしまい、一つの作業に落ち着いて取り組むことができないことも、マルチタスクができない原因のひとつに挙げられるでしょう。
仕事でマルチタスクができないと困ること
マルチタスクができないと、うまく仕事が進められず、不安や焦りを感じて自信を無くしてしまうかもしれません。また、周囲から仕事ができない人だと思われ、人事評価に影響を及ぼす場合もあるでしょう。
仕事を行う上で、マルチタスクができないと困る場面は、
- 電話対応
- 上司や同僚とのやり取り
- 上司や同僚への報連相
- 優先順位をつけられない
といったこと等が主に挙げられます。
電話対応
ADHDを持つ方は、情報を一時的に記憶する能力が低いという特性があります。そのため、電話の内容を記憶できなかったり、別のことを考えているうちに内容を忘れてしまったりすることがあります。
また、電話の内容に集中しているとメモが取れず、かといってメモを取ることに集中していると話を聞き逃してしまうなど、二つのことを同時進行できないことによる困難が生じます。
上司や同僚とのやり取り
発達障害の方は、作業に集中しているときに声を掛けられても上手く対応できないことがあります。話しかけられたことに気づかないこともあるため、無視していると勘違いされてしまう可能性もあるでしょう。
また、「人の話を聞いている最中に、ほかのことに意識が集中してしまって会議の記録が取れない」といった問題も起こります。
上司や同僚への報連相
発達障害の方が報連相をしようとする際、タイミングを見計らっているうちに別のことに意識が集中し、タイミングを逃してしまうことがあります。ほかにも、伝えようとしていた内容を覚えていられないケースもあります。
優先順位をつけられない
仕事をしていれば複数の業務が重なったり、複数の指示を出されたりすることもあるでしょう。しかし、マルチタスクが苦手な方には業務の同時進行ができません。優先順位がつけられずパニックになってしまうこともあります。
大人の発達障害の方が仕事でマルチタスクに対応する方法
ここまで説明してきた通り、大人の発達障害の方はその特性上、マルチタスクをこなすことが困難です。業務は順番にひとつずつ進め、指示もひとつずつ出してもらうことが望ましいです。しかし、マルチタスクが必要になる場面も出てくるでしょう。その場合は、自分自身で対策をとった上で周りからも協力してもらい、業務をこなしていきましょう。
具体的な方法をいくつか紹介していきます。
必ずメモを取る
タスクが増えても忘れてしまわないよう、メモを取ることを習慣付けていきましょう。業務のことだけでなく、あなたが困難に感じたことなどもメモをしておくことで、今後の対処法を考えられるでしょう。
発達障害の特性上、メモを取ることが苦手な方もいると思います。その場合は、スマートフォンや録音機能を使うなど自分が管理しやすい方法を選んでください。ただし、メモした場所を忘れてしまったり、メモ自体を無くしてしまったりすることもあるので、すぐに見返すことができるひとつの媒体で管理し、書いたことを整理する時間もつくりましょう。
ほかにも、自分好みのデザインのメモ帳を選ぶ、メモをするときは記号や絵を取り入れるといった工夫をすることで、楽しく続けられるとより良いですね。
リマインダーアプリやToDoリストを活用する
スマートフォンのリマインダーアプリを使ってのスケジュール管理がおすすめです。リマインダーとは、スケジュールやタスクを設定すると随時メールなどで通知してくれる機能のことです。時間になると通知が来るので、やるべきことを忘れず計画的に業務に取り組むことができるでしょう。
また、ToDoリストを作ると、一つひとつの作業を順番に処理していくことができます。ToDoリストは自分の特性に合わせて作成しましょう。例えば、「作業中に別のことに意識が向いてしまう」「こだわりが強く一つの業務に集中しすぎてしまう」といったこともあるかと思います。
その場合は、作業に遅れが出て時間がかかることもあるので、時間に余裕を持ったスケジュールを組むことを心がけましょう。
整理整頓するだけの時間を作る
大人の発達障害の方は身の回りの環境やタスクを整理することが苦手です。
業務の合間に自分の机や仕事場、メモしたことを整理する時間を意識的に作り、一呼吸置くようにしましょう。職場の環境を整えることで落ち着いて作業に取り組めます。
周囲に協力を求める
自分でできる対策を行った上で、信頼できる上司や同僚など周囲の人にも協力を求めましょう。例えば以下のような対策をお願いしてみましょう。
大人の発達障害の方が相談できる支援機関
マルチタスクができず仕事に支障が出ている方は、客観的なアドバイスをもらうために専門家に相談しても良いでしょう。
以下の支援機関にて相談できます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所では、働く上で必要になるビジネスマナーやスキル向上のためのサポートを行っており、一般就労を目指す65歳未満の障がいを持つ方が利用できます。個別支援計画が作成され、生活や仕事についてスタッフと相談しながら、あなたの希望や適性に合った職場探しのサポートが受けられます。
具体的なサポート内容は事業所によってさまざまなので、気になった事業所へ問い合わせてみてください。
また、以下の記事でも詳しく解説しております。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターでは、発達障害を持つ本人やその家族向けに総合的な支援を行います。発達障害の確定診断がない方も相談できます。
ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどの関連機関と連携し、職業相談やカウンセリングを行い、あなたの特性に合わせて求人の紹介から職場定着までサポートしてもらえます。
詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、障がいがある方の就業や日常生活に関する相談に応じるほか、地域と密着した支援を行います。働く上でのあなたの希望や悩みに合わせて、各窓口や支援機関の紹介、助言が受けられます。
仕事のことだけでなく、生活の面でもサポートが必要な方は障害者就業・生活支援センターへ相談することをおすすめします。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、障がいのある方を対象として、一人ひとりのニーズに合わせた職業評価や職業訓練などの職業リハビリテーションとその助言を行っています。カウンセリングや職業適性検査などを通して、あなたの適性や希望に合わせた職業リハビリテーション計画が立てられ、作業体験や訓練を経て職業紹介をしてもらえます。
ハローワークをはじめとした関連機関と密に連携しており、全国47都道府県に設置されています。
まとめ|マルチタスクができない大人の発達障害
- 二つのことが同時にできないのは、発達障害の特性のひとつ
- マルチタスクができない方は、仕事上で「話を聞きながらメモを取る電話対応」「上司の質問に答えながらの作業」といった業務がうまくこなせない
- できる限りマルチタスクは避け、業務は一つずつ確実にこなすことが望ましい
- マルチタスクが必要になる場合は、メモを取る、リマインダー機能やToDoリストを作成するなど自分でできる対策をし、周囲にも協力を求める
いかがでしたか?
二つのことを同時にできないのは発達障害の特性のひとつです。一つひとつの作業を確実にこなすことを心がけ、マルチタスクを求められるときには自分なりの対策を取り、信頼できる周囲の人に協力してもらいましょう。