障がいや病気により、長く働き続けることに不安がある方は少なくありません。
「なんとか就職できたけど、仕事を続けていくことに自信がない…」
「周囲に自分の障がいについて理解してもらえるか心配…」
といった悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
働き続けることに不安がある方には「ジョブコーチ」による支援の利用がオススメです。
ジョブコーチについて、ネットでは「役に立たない」といった意見もみられます。しかし多くの場合、そのようなことはありません。
障害者手帳がなくても利用できる場合があり、無料で利用できるので、1人で悩むよりも試してみると良いでしょう。
- ジョブコーチの特徴・種類
- ジョブコーチ支援の流れ
- 就労定着支援との違い
について解説していきます。
ジョブコーチ(職場適応援助者)とは?
ジョブコーチとは、障がいのある方が就職するにあたって、職場にうまく適応して働き続けられるように支援を行う人のことです。職場適応援助者とも呼ばれます。
ジョブコーチ支援は、職業リハビリテーションの一つで、ジョブコーチが職場で直接支援を行います。
利用者や職場の方に対して、体調や障がい特性に合ったコミュニケーションの取り方、業務の進め方についてアドバイスをしてくれます。
ジョブコーチを担当するのは、さまざまな障がいやその特性についてよく理解している方なので、適切な援助が期待できるでしょう。
職業リハビリテーションについては、下記の記事で解説しています。
次の項目では、ジョブコーチの特徴について、詳しく紹介していきます。
ジョブコーチが行うサポート
ジョブコーチによるサポートの内容は、大きく分けて下記の3つです。
- 職場に対して:利用者の特性に合った業務内容や関わり方などを共有、働きやすい職場環境を作るための助言を行う。
- 利用者に対して:業務の進め方や職場内でのコミュニケーション、体調、生活リズムの管理方法など、それぞれの状況に合わせたアドバイスを行う。
- 家族に対して:利用者が安定して職業生活を送れるよう、生活を支えるために家庭内でできる援助について助言する。
ジョブコーチが行う障がい者に対する支援は、事業所の上司や同僚による支援に移行していくことを目指しています。
ジョブコーチ支援の対象者
ジョブコーチ支援の対象になるのは、「働き続けることに困難を抱えており、支援が必要な求職者・在職者」です。障害者手帳が無くても問題ありません。
ただし、支援を受けるには下記の条件が必要となります。
- 最終的に、1か月以上・週20時間以上の勤務を目標とすること
- ジョブコーチ支援の利用について、利用者と職場双方の同意があること
ジョブコーチ支援にかかる費用・利用期間
ジョブコーチによる支援は無料で利用することができます。
利用期間については、1〜8か月の範囲で状況に合わせて設定します。標準的な期間は2〜4か月とされており、必要に応じて延長も可能です。
ジョブコーチの支援は永続的に行われるものではなく、あくまで職場内で適切な支援環境の整備を進め、障がい者が職場に定着するまでのサポートを目的としています。
ジョブコーチ(職場適応援助者)の種類
ジョブコーチには3つの種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
訪問型ジョブコーチ
訪問型ジョブコーチは、障がい者向けの就労支援を目的とした社会福祉法人に所属し、利用者の職場に訪問してサポートを行います。
訪問型ジョブコーチとして活動するには、訪問型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修を修了し、就労支援に必要な経験・能力を持つことが必要です。
企業在籍型ジョブコーチ
企業在籍型ジョブコーチは、利用者と同じ職場に所属し、企業内で雇用される障がいがある方のサポートを行っています。
訪問型と同じく、企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修を修了した方が活動しています。
配置型ジョブコーチ
配置型ジョブコーチは、障がい者向けの職業リハビリテーションなどを行う「地域障害者職業センター」に所属しています。
地域障害者職業センターへの依頼に対して直接的な支援を行う他、訪問型・企業在籍型ジョブコーチと連携して間接的にサポートを行います。
ジョブコーチ支援の流れ
ジョブコーチからの支援を受ける際の、主な流れを説明します。
申し込むのは利用者本人の他、職場の方でも問題ありません。ただし、事前に職場からジョブコーチ支援を受けることについて、同意を得ている必要があります。
集中支援期にはジョブコーチが週に3日〜4日訪問し、課題の解決に集中的に取り組みます。移行支援期には訪問が週1日〜2日に減ります。支援のノウハウが職場と共有され、徐々に支援の主体が職場に移っていきます。最終的には、ジョブコーチがいなくても職場内で必要な援助が行われ、利用者が安定して働けるようになるでしょう。
ジョブコーチと就労定着支援との違い
ジョブコーチによる支援とよく似ている「就労定着支援」という福祉サービスをご存じですか?
就労定着支援では、ジョブコーチ支援と同じく「障がいのある方が職場に適応し、継続して働き続ける」ことを目的としたサポートを行うため、どちらを選べば良いかわからない方も多いでしょう。
ジョブコーチ支援との差は主に「対象者」「利用期間」「費用」の3点です。この項目では、それぞれの特徴や違いについて紹介します。
対象者
ジョブコーチ
ジョブコーチ支援の対象は「支援が必要な求職者・在職者」であり、週20時間以上の勤務を目指すことが条件とされます。障害者手帳が無くても利用できます。
就労定着支援
支援の対象は「障害福祉サービスを利用して一般就労した障がい者」であり、障害福祉サービス受給者証が必要です。
障害福祉サービスとは、「障害者総合支援法」に基づいたサービスを指します。就労移行支援・就労継続支援・自立訓練・生活介護などが含まれます。
利用期間
ジョブコーチ
利用できる期間は1~8か月と定められており、「雇用前」「雇用と同時」「雇用後」の好きなタイミングで利用を開始することができます。
集中支援期と移行支援期が支援期間であり、支援終了後も必要に応じてフォローアップを行います。
就労定着支援
期間はジョブコーチ支援よりも長く、就職して7か月目~3年6か月目までの間、サポートを受けられます。利用開始から1年ごとに更新され、最長3年間の利用となります。
なお、就職直後の6か月間はそれまで利用していた障害福祉サービス事業所の支援を受けることも可能です。
費用
ジョブコーチ
ジョブコーチによる支援は、無料で利用することができます。
就労定着支援
就労定着支援は障害福祉サービスの一つであるため、費用は前年の収入によって異なります。
具体的には、下記のようになります。
- 住民税非課税の場合は、無料で利用できます。
- 前年度の年収が204万円を超える場合、毎月約3,500円の費用がかかります。
詳細な自己負担額は地域ごとに異なる場合があるため、各自治体に確認しましょう。
ジョブコーチと就労定着支援の違いのまとめ
ジョブコーチ支援と就労定着支援の違いについて、表にまとめました。それぞれの特徴を把握し、自分に合ったサービスを選びましょう。
ジョブコーチ | 就労定着支援 | |
---|---|---|
対象者 |
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利用期間 |
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費用 |
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まとめ|ジョブコーチ(職場適応援助者)支援とは
- ジョブコーチ支援とは、職業リハビリテーションの一つで、職場に担当のジョブコーチが直接訪問して支援が行われる。
- ジョブコーチは職場と利用者、利用者の家族に対してそれぞれアドバイスを行うことでサポートする。
- ジョブコーチは訪問型、企業在籍型、配置型の3種類あり、それぞれ、
・訪問型:利用者の職場へ訪問支援
・企業在籍型:利用者と同じ職場に在籍して支援
・配置型:地域障害者職業センターで他のジョブコーチと連携支援
とそれぞれの形で支援を行う。 - ジョブコーチ支援と似ている福祉サービスとして、「就労定着支援」がある。対象者、利用期間、費用が異なるため、それぞれの特徴を把握し、自分に合うものを選ぶと良い。
ジョブコーチ支援を利用することで、職場や業務に慣れるまでのサポートを受けることができます。職場の方へも支援のノウハウを共有してもらえるので、利用期間終了後も適切な支援を受けられる環境となっていくでしょう。
結果的に、自分の特性に合う働き方が見つかれば、長く働き続けるための助けとなるはずです。
適切な援助を受け、自分の能力を最大限発揮できる環境をつくっていきましょう。