今の日本では、引きこもりが社会問題となっています。
引きこもりといえば「男性の問題」というイメージを持っている方も多いでしょう。ですが、近年の調査では全国の引きこもりのうち半数近くを女性が占めており、女性にとっても他人ごとではないことが分かっています。
最近注目され始めた「女性の引きこもり」について、あなたは次のような疑問を持っていませんか?
「専業主婦は引きこもりに含まれるの?」
「私も引きこもりだけど、どこに相談すればいいの?」
そんなあなたに向けて、
- 女性の引きこもりが注目され始めた経緯
- 女性が引きこもりになる理由
- 専業主婦が引きこもりになりやすい理由
- 引きこもりの女性が利用できる支援サービス5選
を解説していきます。
女性の引きこもりとは?
「引きこもり」と聞くと、男性をイメージされる方も多いと思います。しかし近年の調査では、引きこもり状態にある方のうち4割以上が女性であると分かっています。実は性別にそこまで差はありません。
まずは引きこもりの定義や、女性の引きこもりが注目され始めた経緯を紹介します。
引きこもりの定義
厚労省のガイドラインでは、引きこもりは次のように定義されています。
様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者を交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。引用:2.ひきこもりの定義・出現率・関連要因|ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン|厚生労働省
引きこもりのイメージとして、「家や部屋から一歩も出ない」状態を思い浮かべる方もいるかもしれません。ですが最近では、「近くのコンビニには行ける」「趣味の用事には出かける」など、必ずしも全く家から出られない方だけが引きこもりではないと定義され始めています。
引きこもりの長期化や、高齢の親が自立できない子供を支える「8050問題」も出てきており、ますます支援が必要な分野になっています。
なぜ「女性の引きこもり」が注目され始めたのか
最近まで「女性の引きこもり」があまり注目されてこなかったのは、引きこもりの調査対象に「専業主婦」が入っていなかったことが原因とされています。「専業主婦は家に居るのが当たり前」という社会の共通認識があったからです。
近年の調査では専業主婦も対象となったことで、潜在的な女性の引きこもりが可視化されるようになり、注目を集めました。
まだまだ女性には、家事や育児、介護など、長時間家に居なければならない役割が課せられているケースも多いです。家の中での役割を果たすために引きこもり状態となり、孤独感や閉塞感が強くなってしまった方には、実は適切な支援が必要なのです。
女性が引きこもりになる理由
女性が引きこもりになる要因には、さまざまなものがあります。
その中には、女性特有の問題や困りごとも含まれています。例として下記の4つが挙げられます。
- 精神疾患になりやすい
- 性被害やDVの被害に遭っている
- 社会復帰がしにくい
- ホルモンバランスの影響を受ける
順に詳しく見ていきましょう。
精神疾患になりやすい
内閣府のホームページによると、精神障害者の性別ごとの割合は下記のようになっています。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
20歳未満 | 60.7% | 39.3% |
20歳以上 | 41.0% | 59.0% |
65歳未満 | 48.0% | 52.0% |
65歳以上 | 31.9% | 68.1% |
20代未満を除くほとんどの年代で、女性の方が精神疾患になりやすいことが分かります。
また、女性は男性の2倍程度うつ病になりやすいとも言われています。月経や妊娠出産などのホルモンバランスの影響もあるでしょう。詳しくは後述します。
性暴力やDVの被害に遭っている
性暴力は「魂の殺人」とも呼ばれており、DVも同じく心身ともに大きなダメージを受ける重大なできごとです。
内閣府の調査によると、女性の約14人に1人は無理矢理に性交などをされた経験があり、そのうち6割程度の方が、性暴力被害について誰にも相談していないとされています。実際は数字よりかなり多い可能性もあります。
DVについても、女性の約4人に1人は配偶者から暴力を受けたことがあり、また約10人に1人は何度も被害を受けているとされています。こちらも性暴力と同じく、被害者の方は数字よりもかなり多いと考えられます。
性暴力やDVの被害者は女性の割合が多く、結果として長期的に引きこもらざるを得ない状況になってしまうケースがあります。
出産後に社会復帰しづらい
女性が妊娠を機に退職し、出産後に仕事に復帰したいと思っても、社会復帰へのハードルは高いのが現状です。近年は、育児休暇や産休制度が充実してきており、数字で見れば出産前後の継続就業率は7割近くになってきました。
しかし、子育てが一段落して仕事を探したいと思っても、ブランクがあるとみなされ採用されないケースがあります。また、就職できても会社に子育てへの理解がなく、退職を余儀なくされることもあるでしょう。
他にも、預け先の保育園が見つからない待機児童の問題もあります。育児と仕事のバランスをうまく取りながら社会復帰をすることは、とても難しく負担があると言えます。
ホルモンバランスの影響を受ける
女性の体は、常にホルモンバランスの影響を受けています。
心身ともに強く影響を受ける月経は、初潮を迎えてから閉経するまで平均で35~40年間続きます。さらに月経が起こる期間だけでなく、生理前症候群(通称:PMS)という、月経の前から精神的・肉体的に不調が現れる症状があります。
女性の体はホルモンバランスの影響で、毎月少なくとも2週間弱は不調が起こっていることになります。月経が終わったと思っても、閉経前後で更年期に入ります。更年期の症状は、下記のように多岐にわたります。
- 頭痛
- めまい
- 動悸息切れ
- ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)
- イライラ感
- 不安感
年齢を重ねると、こうした更年期の症状からくる体調不良に悩まされることになります。
専業主婦の女性が引きこもりになりやすい理由
先述したように、女性の引きこもりが注目され始めたのは、専業主婦が引きこもりの調査対象になったことがきっかけです。
もちろん「専業主婦は全員引きこもり状態にあり、支援を受けなければならない」ということでは決してありません。しかしながら、家事や育児、介護などの役割を担っている専業主婦は、実際に引きこもりになりやすい環境にあります。自分でも知らず知らずのうちに、社会との繋がりがなくなってしまう方も多いのです。
専業主婦の方が引きこもり状態に陥りやすい原因について、解説していきます。
人とのつながりが減る
女性は、結婚、出産や子育てなど、ライフステージの変化により人とのつながりを減らしてしまうことが少なくありません。専業主婦は特に、「結婚後に知らない土地に引っ越した」「育児や介護などで家に長時間拘束される生活になった」などの事情から、孤独感を感じやすい環境にいることが多いです。
家以外に自分の居場所があると実感することは、とても大切です。身体的、精神的なストレスから他者とコミュニケーションをとることが面倒になってしまい、引きこもり状態が長期化してしまうこともあるでしょう。
やりがいを感じづらい
家事はやりがいを感じづらいです。仕事では、分かりやすい成果や具体的な報酬がありますが、家事にはそれがありません。特に元々仕事をしていた方にとって、その状態が毎日続くことは苦痛になる可能性があります。
実は、家事を給与に換算すると、年間で200万円前後に相当すると言われています。
多くの専業主婦は、家政婦や家事代行サービス、保育士や介護士など、専門の職業の方が担っている仕事を毎日行っています。しかし、給料がもらえるわけではないため、やりがいを感じづらく、結果として無気力な引きこもり状態になってしまいやすいのです。
引きこもりの女性が利用できる支援サービス5選
「仕事を探してみたいけど、一人だと心配…」
引きこもりの女性には、このような不安を抱えている方も多いでしょう。
そんな方には、次のような支援サービスがオススメです。これらを利用することで、悩み事の相談に乗ってもらうことや、就労へ向けたサポートを受けることができます。
- つながりサポート
- ひきこもり地域支援センター設置運営事業
- ハローワーク(マザーズハローワーク事業)
- 地域若者サポートステーション
- 就労移行支援
上記の5つの支援機関について紹介していきます。
つながりサポート
つながりサポートは、NPOが運営している支援機関です。さまざまな不安を抱えた女性への相談対応や支援に特化しており、全国84の自治体に設置されています。
興味をもった方は、こちらからお近くの場所を探してみてください。
ひきこもり地域支援センター設置運営事業
ひきこもり地域支援センターとは、全都道府県・指定都市の67か所に設置されている相談・支援機関です。
社会福祉士や精神福祉士などの資格をもった専門家が中心となり、地域と連携してさまざまなサポートを行っています。相談は、ご本人の他、ご家族の方も利用できます。
詳しくはこちらをご覧ください。
ハローワーク(マザーズハローワーク事業)
ハローワークとは、職業紹介をしている雇用サービス機関です。全国に500か所以上設置されているので、最も身近な相談機関と言えます。
年齢制限はないので、就職を望む方であれば、誰でも利用できます。就職活動の他にも、職業訓練などを行っている場所もあります。まずは、お近くのハローワークを確認してみましょう。
また、子育てと仕事の両立を考えている方には「マザーズハローワーク事業」という相談機関もオススメです。
マザーズハローワークにはキッズコーナーが併設されており、お子様を連れて相談することもできます。全国に200か所以上設置されているので、就職活動を考えている方は一度相談してみるといいでしょう。
地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーション、通称「サポステ」は、働くことに不安や問題を抱えている15~49歳までの方が利用できる支援機関です。こちらも全国に177か所設置されているので、比較的利用しやすい環境にあります。
サポステでは、就労支援から職場定着するまでのサポートや、職業訓練などのさまざまなプログラムが行われています。あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、厚生労働省委託の支援機関なので安心です。
詳しくは、下記のサイトや記事を参考にしてください。
就労移行支援
就労移行支援とは、「就労を希望しているけど、働くことに対して不安がある」という方に対して、就職に向けたサポートを行う福祉サービスです。就職活動をする前の準備ができるため、「いきなり就職活動をするのは不安…」という方にオススメです。
就労移行支援を利用すると、人とのつながりを作ることや、生活リズムを整えることができます。他にも、多くの場所でPCスキルを勉強することができます。
詳しくは下記の記事を参考にしてみてください。
まとめ|女性の引きこもりの特徴
- 現在、引きこもりは社会的な問題になっている。男女比はそこまで差が無く、近年は「女性の引きこもり」も注目され始めている。
- 女性が引きこもりになる理由として、ホルモンバランスの影響からくる体調不良や、妊娠出産後に社会復帰することの難しさがある。性暴力やDVなどを受け、引きこもり状態にならざるを得ないケースもある。
- 女性の引きこもりの多くは専業主婦と言われている。育児や介護などの役割を担うことが多く、長時間家に居ることが当たり前になり、引きこもり状態になりやすい。他者との繋がりが少なくなり、孤独感を感じやすい環境でもある。
- 引きこもりの女性が利用できる支援制度はたくさんある。女性支援に特化した機関もあるので、まずは相談してみよう。
今回の記事では、女性の引きこもりが注目され始めた経緯や、女性が引きこもり状態になる理由、利用できる支援機関などを紹介しました。
引きこもりの問題は、とても複雑です。複数の原因が絡み合い、10人いれば10通りの悩みがあるからです。引きこもりが長期化すればするほど、その原因を一人で対処することはとても困難になるでしょう。
同じような引きこもり相談支援でも、老若男女関係なく支援をしてくれる機関や、若者向け、女性支援に特化した機関など、さまざまな特徴があります。少しずつでも現状を変えたいと思っている方は、ぜひ気軽に頼ってみてください。
少しでもこの記事が参考になれば幸いです。