発達障がいの家族がいる方の中には

「発達障がいがある家族とちゃんとした関係を築けないのは私のせいなの?」
「誰も私の悩みを理解してくれなくてつらい」
といった悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。
大人の発達障がいがある家族と良い関係を築こうと頑張っている方は少なくありません。
しかしながら、どうしても思ったようなコミュニケーションがとれない、支え合いたいのにいつのまにか空回りばかりしている、といった経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか?
大人の発達障がいがある家族とより良い生活をしたいだけなのに、それがうまくいかないことはとてもつらいことです。また、そのことを誰にもわかってもらえないのは苦しいですよね。
- 大人の発達障がいとは
- 大人の発達障がいの方を持つ家族が抱えがちなストレスと原因
- カサンドラ症候群とは
- 大人の発達障がいの家族との接し方
- 大人の発達障がいがある方の家族が利用できる相談先や支援機関
大人の発達障がいがある家族と円滑に日常を過ごしていくにはどうしたらいいのか、一緒に見ていきましょう。
そもそも大人の発達障がいとは
大人の発達障がいとは、大人になってから医師に診断を受けた発達障がいのことを言います。
発達障がいは、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障がい(LD)の3つに大きく分類されます。このうち1つだけ持っている方もいれば複数の特性を併せて持っている方もおり、この個人差は非常に大きく人それぞれです。
まずは、それぞれの発達障がいにどんな特徴があるのか、順番に見ていきましょう。
大人のADHDの特徴
ADHDは不注意型と衝動・多動型に分かれており、どちらかのみの傾向が強い方もいれば、両方の性質を併発している方もいます。
まず、不注意型の傾向が強い方の特徴としては、下記のことが挙げられます。
- 物をなくしやすく、また大事な予定に遅刻したり忘れてしまったりすることが多い
- 計画を立てることが苦手であり、見立てを立てても甘いときが多い
- 気が散りやすく、1つの作業に集中し続けることが難しい
不注意型の特性は大人になってからも表れやすいため、普段の生活や仕事で上記のような困りごとを抱えている方は少なくありません。
一方で、衝動・多動の傾向が強い方は下記の特徴が見られます。
- じっとしていたり、静かにしていたりすることが難しい
- 感情のまま不用意な発言をしてしまう
- 衝動を抑えることができずに行動してしまう
大人の場合、目に見える衝動・多動の特性は収まることが多いですが、手足や内面に落ち着きのなさが残るケースがあります。
大人のASDの特徴
ASDの方に見られる特徴の代表的な例としては、下記のことが挙げられます。
- 日常的な会話のキャッチボールが難しく、表情や身振りなどのやり取りも苦手
- 自分の気持ちを伝えることや、相手の気持ちを読み取ることが苦手
- 例を用いる話や、曖昧な指示を理解することが難しい
- こだわりが強いため同じ行動を繰り返しやすく、変化に弱い面がある
これらの特性のため、主にコミュニケーションにおいて困難さを感じる方が多い傾向にあります。社会人になって、周囲の複雑な人間関係に悩んでしまう方も少なくありません。
大人のLDの特徴
LDの方は、「読み」「書き」「計算(算数、数学)」の分野において、難しさを感じることが多いです。具体的には、下記の特性が挙げられます。
- 文章を読んで理解することが難しい
- 文字を正確に書くことや、論理的な文章を作ることが難しい
- 暗算や筆算などの計算や、数の概念を理解することが難しい
- 論理的に物事を考えたり、結果を予測したりすることが難しい
これらの性質は人によって表れ方や強弱が異なり、個人差も大きいです。
一見しただけでは特性が分かりづらく、「努力不足だ」と誤解されることも少なくありません。しかし、学習障がいは脳の機能障がいが原因であると考えられているため、決して本人の甘えや努力が足りないことが要因ではないと理解することが大切です。
大人の発達障がいの方がいる家族が抱えてしまうストレスと原因
大人の発達障がいがある方が家族である場合、必然的に一緒に過ごす時間が長くなります。その時間の中で、どうしていいのかわからない場面に繰り返し直面してしまうことで、ストレスを抱えてしまう方は少なくありません。
では、いったいどんな場面でストレスを抱えることになってしまうのでしょうか。発達障がいの種類ごとに、原因も併せて見ていきましょう。
ADHDの方がいる家族のストレス
ADHDの家族がいる方の場合、不注意型と衝動・多動型では状況が異なってきます。それぞれ、どのようにしてストレスが生じるのでしょうか。
順番に解説していきます。
不注意型の場合
不注意型の傾向があると、先に解説した特徴から、普段の生活でもいろいろなトラブルが起きてしまうことが多いです。
例えば、家族との大事な用事を忘れたり、買い物を頼んでもうっかり買い忘れたりということも珍しくないでしょう。片付けが苦手で、ごみを貯めたままにしてしまう方も見られます。こうしたことに対して、本人に何度も直してほしいとお願いしたり必死に訴えたりしても、なかなか改善しないことが多いです。そのため、疲弊してストレスを溜めてしまっている方も少なくないのではないでしょうか。
これらの行動はADHDの特性が原因であるため、本人の努力だけでは改善させることは難しいです。
衝動・多動型の場合
衝動・多動の傾向が強い場合、後先を見ない行動で家族を振り回してしまう方が少なくありません。
例えば、何か欲しいという気持ちが抑えられず、貯金を考慮せずにお金を使ってしまうというケースが挙げられます。
自分では貯金をしたいと思っているのですが、欲しいという気持ちを抑えることが本人では難しいため、浪費してしまうのです。結果的に家族と経済的なトラブルを起こすこともあります。
また、怒りの感情をコントロールすることが難しい方も少なくありません。
これも衝動・多動型の特性が原因であり、感情を抑えることが難しいために一度爆発すると本人でも抑えられません。このため、中には会話を大きな声で遮って一方的に終わらせてしまう方もいます。
場合によっては、感情のまま暴言を吐いたり暴力を振るったりする方もいるため、家族が対応に困っている場合もあります。
ASDの方がいる家族のストレス
ASDの方がいる家族の場合、主にコミュニケーションの面でストレスを抱えてしまうことが多いです。
ここでは主に2つの例を見ていきましょう。
共感、支えあいをしてもらえない
ASDの方が家族にいる方の場合、自分の気持ちに共感してもらえなかったり、良い家族関係を築こうと頑張っても支え合いがうまくいかず苦しんでいたりする方も少なくないです。
例えば、何度も同じ話を繰り返しているのに気持ちを理解してもらえなかったり、こちらの話を聞いてくれないのに自分の興味のある話ばかりされたりする、などといった経験をした方もいるのではないでしょうか。
このようにASDの方があなたに無関心な反応を示しているように見えるのは、相手の気持ちを理解したり察したりする能力が低いためです。言葉を表面上でしか捉えることができないため、なぜ今あなたがその話をしているのかわかっていないこともあるのです。
加えて、他人に興味や関心が薄い場合は、こういったコミュニケーションの取りづらさがさらに強く出ている可能性があります。
そのために、自分の話を全く聞いてもらえない、理解してもらえないと悩み、家族であること自体に疑いが生まれてしまう方も珍しくありません。
こだわりを押し付けられる
ASDの方はこだわりが強い方が多い傾向にありますが、中には自分のこだわりを他者にも押し付けようとする方もいます。特に「~すべきだ」「こうあるべきだ」と何か1つの考えに固執している方に多く、周囲とトラブルを引き起こすこともあります。
こだわりの強さは自身の納得できないものに対しての怒りになる場合があります。少しでも納得できないと、それに対し詰めるように言葉を投げかける方も少なくないです。自分の言い分を曲げようとしないため、相手の事情や立場を全く考えることもなく、ひたすら圧のある声で責め立てるように話す方もいます。
そのため、家族の方の中にはコミュニケーションをとるだけで精神的に疲弊し、ストレスを重ねている場合もあります。
LDの方がいる家族のストレス
LDの方は、先に解説したように読み書きや計算に困難を抱えている方が多いです。
メールなどを送っても文字や文章を正確に読めず、理解することに時間がかかる、あるいは間違った理解をすることで、迷惑をかけられてしまうことが考えられます。
また、計算することが困難な方の場合、短期的な記憶も苦手である場合があるため、何か頼み事しても忘れられてしまうこともあります。
このため、日常生活に支障をきたすことが多くなり、本人だけでなく家族もどうしたらいいのかわからなくなってしまうことがあるかもしれません。
第三者に理解や共感してもらえない
発達障がいの方を家族に持つ方にとって、さらにストレスを感じることになる要因として、第三者から理解や共感をしてもらえないことが挙げられます。
発達障がいははっきりと目に見える障がいではありません。家庭では家族との関係がうまく築けていない一方で、社会的には何の問題もなく過ごしている方もいることがあります。
そのようなことから、あなたの悩みを一緒に暮らしていない家族や友人に相談しても、「気にしすぎだよ」「そんな不満を言うのは良くないよ」などと返されて理解してもらえないことも珍しくありません。
大人の発達障害を持つ家族への悩みや苦痛に加え、こうした第三者の無理解に晒され続けることで、ストレスが限界を迎えてしまいカサンドラ症候群になってしまう場合があります。
カサンドラ症候群とは
カサンドラ症候群という言葉を聞き慣れない方もいるかもしれません。
カサンドラ症候群とは、発達障がいの家族と適切なコミュニケーションや関係性を構築することができないことで、溜まったストレスが限界を迎え、心身に不調が起きてしまっている状態のことを言います。
先ほど解説したストレスの中でも、特にASDの方が家族にいる方に見られる、共感や支え合いができずに悩み、またこのことを第三者の方も理解してもらえない状況が続くことが原因となるケースが多いです。
カサンドラ症候群になったら、どのような症状が表れるのでしょうか。詳しく解説していきます。
カサンドラ症候群の症状
カサンドラ症候群になると、心身にさまざまな症状がでてきます。まずは、それぞれにどんな症状が表れるのか見ていきましょう。
身体的な症状としては、下記のような例が挙げられます。
- 不眠
- 片頭痛
- めまい
- 動悸
- 体重の増減
次に、精神的な症状の例として下記のものがあります。
- 自己評価や自尊心の低下
- パニック障がい
- 抑うつ状態
- 不安障害、PTSDなどの精神症状
- 無気力
- 慢性的な疲労感
- 自律神経失調症
もしかしたら、この記事を読んでいる方の中には、上記の症状に心当たりのある方がいるかもしれません。
カサンドラ症候群の症状は、発達障がいの特性によって表れ方が変わってきます。ちょっとした体調不良で済むこともありますが、日常生活が送ることが難しくなり、うつ病などの精神疾患を発症してしまうことも珍しくありません。
また、症状が出ているにもかかわらず理解やサポートがない状況が長期間続くと、より深刻な状態となり治療が必要になってしまいます。場合によっては、積もりに積もったストレスから、発達障がいの家族に向けた暴力などの虐待に発展してしまう恐れもあります。
すでに紹介したような症状が出ている方は、早めに心療内科や精神科を受診するようにしましょう。
カサンドラ症候群になりやすい方の特徴と状況
カサンドラ症候群には、下記のような性格がある方がなりやすいと言われています。
- 真面目
- 几帳面
- 我慢強い
- 面倒見が良い
- 完璧主義
- 責任感がある
- 自分を責めてしまいがち
上記のような性格を持つ方は、発達障がいの家族に対して真正面から向き合おうとします。
時には、コミュニケーションの上手くいかなさや良い関係を築くことができないことに対して「自分の努力が足りないせいだ」「何か自分が間違っているのではないか」と自身を責めている方もいるかもしれません。
こうした状態が続いてしまうとさらにストレスを溜めてしまい、カサンドラ症候群となっていることにも気づかず、症状が重くなってしまっているケースも少なくありません。
また、家族という密接な関係にある場合、上記のような性格に当てはまらない方でも、過ごす時間の長さからストレスを感じるときも多くなり、カサンドラ症候群になってしまう傾向が強くあります。
大人の発達障がいの家族とどう接したら良いのか
では、カサンドラ症候群にならないために、また、あなたと大人の発達障がいを持つ家族が良好な関係を築くためには、どのような接し方をすれば良いのでしょうか。
ここでは、下記に例を挙げてみましょう。
- 大人の発達障がいを持つ家族の特性を理解する
- お互いを理解するために話し合う
- 具体的な生活のルールを決める
- 心の余裕を作る
- 支援機関や自助グループなどの相談先を作る
すでにカサンドラ症候群になっている方はどうすればいいのかも併せて、順番に解説していきます。
大人の発達障がいがある家族の特性を理解する
まずは、大人の発達障がいを持つ家族がどんな特性を持っているのか、理解することが大切です。
発達障がいは個人差が大きく、人によって特性の性質や強弱が全く異なります。あなたの家族がどのような特性を持っているのかしっかりと把握することで、その人に適切な対応ができるようになるでしょう。どのようなことが苦手なのか、言葉や行動をどのように解釈をするのか把握しておくと、今までわからなかったことも理解できるようになるかもしれません。
すでにカサンドラ症候群になっている方にとっても、特性を理解することで妥協すべき点や配慮すべき点が見つかる可能性が高いです。
書籍やインターネットで発達障がいのことを調べ、知識を得ることもオススメします。障がいへの理解を深めることは、適切な対応のための一歩です。ただし、学んだことを無理やり押し付けたり決めつけたりすることは、反発を招き、関係がこじれてしまう可能性があるので注意が必要です。
あくまで発達障がいは、脳機能の発達が関係する障がいであることも理解しておきましょう。育った環境や学習が原因ではありません。このことをしっかりと理解することで、「自分に何か原因があるのでは」と自身を責める必要が無いことが分かります。家族や周囲の方にも理解してもらうことができれば、対応が変わってくる可能性も出てくるでしょう。
お互いを理解するために話し合う
発達障がいの家族と生活するうえでお互いを理解しあうためには、小さなことでも具体的に話し合うことが大切です。
発達障がいがある方とそうでない方では言動の理由が異なる場合が非常に多いです。発達障がいの当事者の行動が家族から見ると理解できない場合もあれば、発達障がいの当事者にとって家族の行動が理解できない場合もあります。
特にASDの方は相手の気持ちを考えることが苦手な方が多く、伝わらないことに対して不満をぶつけると、かえって関係性が悪くなってしまうことがあります。相手の気持ちを察することも苦手なため、あなたがどんな気持ちになっているのかしっかりと言葉にして伝えないと、理解してもらえないこともあります。
このため、話し合いをするときはどうしてそのような行動をするのか理由を伝え、相手の行動に理解を示し合うようにしましょう。
カサンドラ症候群の方だと、面倒見のよさや我慢強さから、相手に合わせすぎたり干渉しすぎたりしているケースもあります。話し合いの際には、自分の関わり方も見直すようにしましょう。
また、改善してほしいことがあれば、冷静に相手に伝えたり、改善するためにどうしたらいいかを話し合いの中でお互いに考えたりすることも重要です。例えば、ADHDの方であればどうしたら浪費や遅刻などの対策を一緒に考え、話し合う方が改善につながります。
具体的な生活のルールを決める
発達障がいの方と安定した生活を送るために、具体的なルールを決めておきましょう。
話し合いの内容を元に、互いに納得のできる生活上のルールを決めておくことも、互いを尊重した生活を送るために大切です。発達障がいの方の中には、一般的な常識であってもよく理解できていない場合があります。細かいことでもしっかりとルールとして定めておくことで、トラブルになる可能性を減らしていけるでしょう。
ルールを作る際は、曖昧な表現は避けるようにしましょう。特にASDの方は「なるべく」「できるだけ」といった曖昧な表現を理解することが苦手です。しっかりと具体的な言葉を使うことで、決められたルールに沿った生活を送れるようになります。ADHDの方であれば、どうしてそのルールが必要なのか理解させることで、しっかりとルールを覚えてくれる可能性が高くなります。
LDの方には、大事なことに関しては声を掛けて確認するといったルールを作ると良いでしょう。
心の余裕を作る
ストレスを抱えすぎないためには、心に余裕を作ることも大切です。
発達障がいの方の中には、特性から感情をコントロールできなかったり、自分の言い分に固執してしまったりする方が少なくありません。時には、衝動に任せて攻撃的な言葉をぶつけることや、頑なにこちらの言葉に耳を傾けてくれないこともあります。
そんな時は、本人の行動を変えようとするより、家族の心の安定を優先してください。心に余裕がなくなってくるほど、発達障がいの方の行動や考えを受け入れることができなくなってしまいます。また、あなた自身の心身も疲弊し、カサンドラ症候群になってしまう可能性も大きくなります。
心に余裕を作るための方法の1つに、発達障がいの家族と別居するなど、一時的に物理的な距離を置くことが挙げられます。生活の中で関わる密度を減らしてみることで冷静になり、自分たちの状況を見つめ返すことができるかもしれません。
支援機関や自助グループなどの相談先を作る
上記のような接し方を心がけても、悩みを打ち明けられる先が無ければストレスを解消することはできません。カサンドラ症候群にならないようにするためにも、相談できる先を作っておきましょう。
相談先には、専門の知識や発達障がいに理解のある機関を選びましょう。客観的な視点で問題を見てもらうことで、疑問や不安の解消につながります。
発達障がいのある家族と一緒に訪れることが難しい場合は、あなた1人でも相談しに行ける機関もあります。電話でも相談を受け付けている支援機関もあるので、気軽に問い合わせてみると良いでしょう。
支援機関のほかにも、大人の発達障がいを家族に持つ方やカサンドラ症候群の方が集まる家族の会や自助グループ、交流会などのイベントがあります。そこで同じ境遇の方々と交流や共感、意見の交換をすることで、治療につながる場合もあります。
大人の発達障がいの方の中には、攻撃性が強く暴力を振るい、それを改善しようとする意識もない方がいます。この場合は家族を守るためにも、警察の介入や医療保護入院など、行政に相談したり頼ったりすることを躊躇わないでください。
大人の発達障がいの方がいる家族が利用できる相談先・支援機関
相談先を作ると言われても、どこに相談すればいいのかわからない方も多いかもしれませんね。また、友人や離れている家族に相談しても理解を得られず、誰かを頼ること自体を諦めてしまっている方もいるでしょう。
しかし、大人の発達障がいの相談に乗ってくれる支援機関は増えてきていますし、先ほども触れたように同じ境遇の持ち主の方で気持ちを共有したいという方はたくさんいます。
ここでは、大人の発達障がいの方を家族に持つあなたが利用できる支援機関や当事者同士の交流会について紹介していきます。自分のつらさをどこにも吐き出せないのは、とても苦しいですよね。
ここで紹介する支援機関などで興味があるものがあれば、ぜひ問合せしてみてください。
市区町村役所の福祉課
発達障がいについてどこに相談していいのかわからないという方は、まず市区町村の役所内に設置されている福祉課に相談に行くことをオススメします。
福祉課では後述する発達障がい者支援センターより専門性はないものの、より身近で適切な支援を受けられる可能性があります。また、場合によっては次の項目で紹介する専門性が強い支援機関を紹介してもらえるでしょう。
自治体によって担当する課の名前が違うことがありますが、役所に出向いて相談したい旨を伝えれば適切な窓口を紹介してもらえます。スムーズに相談したいという方は、事前にホームページで調べたり、電話で問い合わせしたりすると良いでしょう。
発達障がい者支援センター
発達障がい者支援センターとは、発達障害のある方やその家族の支援を総合的に行う専門機関です。保険や医療、福祉、教育、労働などに関する支援ネットワークを構築しており、発達障がいについてさまざまな支援や相談を受け付けています。
家族の方でも、「悩みを聞いてほしい」「大人の発達障害を持つ家族にどう対応すればいいのか」など、日常生活におけるさまざまな困りごとについての相談をしに行くことができます。発達障害者支援センターには専門的な知見を持つ方がいるため、家庭における療育方法についても有益なアドバイスがもらえるでしょう。
障がい者手帳を取得していなかったり、発達障がいの診断を受けたりしていなくても相談をすることが可能です。生活の困りごとの中で「もしかして家族が発達障がいなのでは」と思った方でも相談を受け付けています。
発達障がい支援センターは地域性が強く、各都道府県によって相談・支援内容や体制が異なります。もし発達障がい支援センターを利用したいという方は、事前にどのような支援が受けられるか問い合わせておくと良いかもしれません。
全国の発達障がい者支援センター一覧は、下記のリンクから見ることができます。
発達障がい者支援センターについては、下記の記事でも解説しています。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターとは、発達障がいや精神疾患のある方やその家族に対し、さまざまな相談や支援を行っている公的機関です。
主に、精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家によるカウンセリングや相談、リハビリテーションプログラムの提供、心理検査を行っており、地域の医療機関とも連携しています。
精神保健福祉センターでは、発達障がい者の家族からも積極的に相談を受け付けています。相談できる内容は幅広く「ただ話を聞いてほしい」「病院や支援の情報が欲しい」といったことでも構いません。家庭内で起きている問題や暴力についても相談を受け付けているので、何か困りごとがあれば相談しに行ってみると良いでしょう。
こんな内容でも良いのだろうか、と躊躇っている方は下記の相談事例を参考にしてみましょう。さまざまな困りごとを持った方が相談に訪れていることがわかります。
対面の相談は予約制になっているセンターが多いので、事前に問合せて確認することをオススメします。電話での相談も受け付けており、匿名での相談も可能です。
ただし、センターによって力を入れている活動が異なります。そのため、お住まいの地域にあるセンターがどのような活動をしているか、事前にホームページで確認しておくと良いかもしれません。都道府県及び指定都市に設置されており、下記のリンクから一覧を見ることができるので、参考にしてみると良いでしょう。
基幹相談支援センター
基幹相談支援センターとは、障がい者に向けて地域に適した総合的・専門的な相談支援を行う施設です。発達障がい者の家族の方でも、障がいに関する総合的な相談に応じており、自立した生活を送るために必要な援助や情報提供を行っています。
支援内容には相談のほか、福祉サービスの利用援助や社会資源の活用なども行っており、困ったことがあれば最初に相談する窓口として機能している場合もあります。
ただし、市町村の任意で設置されているため、お住まいの地域によっては基幹相談支援センターが設置されていない場合もあります。下記のリンクから、全国の基幹相談支援センターの設置箇所がわかります。
家族の会や自助グループ、イベントなど
家族の会や自助グループとは、大人の発達障害の方が家族にいる方々が集まり、それぞれの体験や気持ちの共有、情報の発信などを目的に活動する集まりのことです。
大人の発達障がいがある方を家族に持つ当事者が集まっているので、気持ちを分かり合えたり共感し合えたりできるでしょう。また、同じ境遇の方や困難を乗り越えた方から話を聞くことで、新たな気づきや改善のポイントを得られる可能性もあります。
家族の会には地域を基盤とする「地域家族会」、病院を基盤とする「病院家族会」、NPO法人や有志が結成した会などの種類があります。約10~20人が集まる会もあれば、30人以上が一度に集まる会もあります。検索をするとさまざまな家族の会のホームページが出てきますし、発達障がい者支援センターのホームページで交流会の告知が出ていることもあります。気になった方は調べてみると良いかもしれません。
自助グループはそれぞれによって規模や開催頻度、参加する年齢層、発達障がいの種類が異なります。主に公民館や近くのレンタルスペースで交流会が行われることが多いですが、近年はZoomを使ったオンライン開催も行われることも珍しくありません。
下記のリンクから、予定されている自助グループのイベントの一部を調べることができます。カサンドラ症候群の当事者たちのイベントも少なくありません。同じ境遇の方と交流してみたい、気持ちを共有したいという方は、参加してみるのも良いでしょう。
『発達障害家族会』セミナー・勉強会・イベント|こくちーずプロ
『カサンドラ症候群』セミナー・勉強会・イベント|こくちーずプロ
まとめ|発達障がいがある家族との接し方
- 大人の発達障がいとは、大人になってから診断された発達障がいのこと。注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障がい(LD)があり、単独の方もいれば複数の特性を併せ持つ方もいる。特性も個人差がとても大きい。
- 大人の発達障がいの方がいる家族が抱えがちなストレスの要因として、ADHDであれば繰り返される不注意や衝動的な行動、ASDであれば共感や支え合いができないこととこだわりを押し付けられること、LDであれば何か頼みごとをしてもすぐ忘れられてしまうことなどが挙げられる。また、第三者に理解を得られないことも、家族がストレスを抱える要因となる。
- カサンドラ症候群とは、大人の発達障がいを持つ家族との良好な関係を築けないことが原因で、ストレスを限界まで溜めてしまった方に起こる心身の不調のこと。軽い身体、精神的不調である場合もあれば、うつ病などの精神疾患になり治療が必要になることもある。
- 大人の発達障がいの方が家族と接するときは、当人の発達障がいの特性を理解し、互いを理解しあうための話し合いを通して具体的なルールを作ることが大事になる。心に余裕がないときは物理的に距離を取ったり、悩みを打ち明けられる相談先を作ったりすると良い。
- 大人の発達障がいの方を持つ家族が利用できる相談先には、市役所の福祉課や発達障がい者支援センター、精神保健福祉センター、基幹支援相談センターなどがある。同じ境遇の方と交流を深めるために、家族の会や自助グループ、それらが開催するイベントに参加することもオススメ。
いかがでしたでしょうか。
発達障がい者が家族にいる方で特に気を付けてほしいのは、1人で悩みを抱え続けてしまうことです。悩みを打ち明けられず、誰にも理解されないままでは、あなた自身もストレスで体や心が擦り切れ、カサンドラ症候群になってしまう可能性が高いです。
しかし、本記事で紹介したように、相談できる先はたくさんあります。インターネットで検索してみると、自助グループをはじめとする、あなたと同じ境遇の方々も見つかります。
自身の気持ちを誰かと分かち合い共有していくことで、大人の発達障がいがある家族と向きあう支えや力にしていきましょう。