大人のADHDの方には、会話に対して苦手意識をもっている方も多いのではないでしょうか?
日常生活はもちろん、ビジネスの場面で“会話をする”というのはとても重要です。特性の影響で難しいこともあるかもしれませんが、コミュニケーションのスキルは、意識をすれば少しずつでも良くなっていく可能性があります。
「一方的に話してしまう自覚がある…」
「少しでも改善したいけど、どうすればいいの?」
などと思っている方に向けて、
- 大人のADHDの話し方の特徴4つ
- 大人のADHDの話し方の改善方法5選
について紹介していきます。少しでも参考になれば幸いです。
そもそもADHDとは?
ADHD(注意欠如・多動症)とは、
- 不注意(集中力が続かない/忘れ物や落とし物が多い)
- 多動性(じっと座っていられない/落ち着きがない)
- 衝動性(突発的に行動したり発言したりする)
などの特徴が目立つ発達障害のひとつです。
前頭葉の働きが弱いとされている
発達障害は、明確な原因は不明とされています。
しかし最近では、ADHDは脳の「前頭葉」の働きが弱いために、様々な特性に繋がっているのではないか?と考えられるようになってきました。前頭葉は、物事を順序立てて考えることや、コミュニケーションを取ることなど、人間らしい行動を担っている部分です。
前頭葉の活性化には「ドーパミン」という神経伝達物質が必須になります。本来は、そのドーパミンを「ニューロン」という神経細胞が前頭葉まで運んでくれる仕組みです。
しかし、ADHDの場合はその連携が上手くいかず、前頭葉がドーパミン不足になってしまうのです。そのため前頭葉の動きが弱くなり、「集中力が続かない」などの不注意や多動性、「突発的に発言してしまう」などの衝動性の特性に繋がると言われています。
前頭葉の働きは、会話をする上でも重要であり、ADHDの方が会話に苦手意識をもちやすい理由も頷けます。
頭の中が騒がしい
ADHDの方は、特性の影響で頭の中が騒がしい状態であるとされています。会話の中でも様々なことが気になり、すぐ反応してしまうので、重要な内容や覚えておかなければならない情報も、すっぽり記憶から抜けてしまうことがあります。
これには、同時に処理をすることや、情報の優先順位をつけることが苦手な特性が影響しています。脳内の情報量が多ければ多いほど、適切な場面で的確に選び取ることは、至難の業になります。
大人のADHDの話し方の特徴4つ
個人差はありますが、ADHDの方の話し方には共通点がいくつかあります。
ここでは主に、以下の4つについて紹介していきます。
- おしゃべりで一方的に話す
- 会話の内容がいきなり変わり、噛み合わなくなる
- 相手を怒らせてしまう
- 会話についていけなくなる
順に見ていきましょう。
おしゃべりで一方的に話す
ADHDの方は、脳内が連想ゲームのようになっているとされています。よって、相手から質問されていること以外にも、自分が興味のあることや今すぐ話したいことなど、優先順位をつけずにバーッと勢いよく話してしまうことがあります。
また、話したい思いが強すぎて、相手が話している途中で割り込んでしまい、相手にとって印象が悪くなってしまうこともあるようです。
専門的な分野について説明する時などはメリットにもなりますが、ちょっとした日常会話や短くまとめなければならない場面において、「話が長い」ことはデメリットになる場合もあるでしょう。
会話の内容がいきなり変わり、噛み合わなくなる
上記の「脳内が連想ゲームのようになっている」ことに関連して、思考が次々と移り変わっていく傾向があります。
具体的には
のような感じです。
この例は少々極端ですが、Q&A以外のことについて、頭の中では同時並行でずっと思考が続いているので、会話の内容が急に変わり、噛み合わなくなってしまいます。
ですが、会話が続いているのは自分の脳内だけなので、当然相手には伝わりません。相手からすると、聞きたいことが早々に切り上げられて、他のことについて話されるという困った状況になってしまいます。
相手を怒らせてしまう
ADHDの特性の中に、「突発的に発言する」ことがあります。その結果、悪意なく思ったことをすぐに口に出してしまい、相手に自分の意図とは違う受け取り方をされてしまう場合が多いです。
私たちが日々交わしている会話は、言葉をオブラートで包んだり、言い方の工夫をしたりして成り立っています。たとえ事実や正しいことであっても、ストレートな言葉では相手を傷付けてしまう可能性があります。
特別ズバズバと言っている自覚はないのに、いつの間にか「空気が読めない」「感じが悪い」などの、あまり良くない印象をもたれてしまうことにも繋がってしまいます。
会話についていけなくなる
ADHDの方は、興味や関心のあることとそれ以外のことについては、集中力の差がある傾向があります。特に、雑談やまだ固まっていない会議などの結論が明確ではない話では、他のことに興味がいってしまい、「ちゃんと話聞いてる?」と言われてしまうことも多いです。
他にも、情報を取捨選択することや優先順位をつけることが苦手なので、会話の流れで何が重要な情報なのかが分からなくなってしまう、ということもあります。
また、大人数の場では集中すべきポイントが分散されるため、自分の意見を言うことが難しくなってしまう場面もあるでしょう。自分の意図しない役回りを任されてしまう可能性も、大いにあります。
大人のADHDの話し方の改善方法5選
先述したように、ADHDの方にとって、会話をする上で様々な大変なことがあると分かりました。どうすれば少しでも改善できるのでしょうか?
もちろん合う合わないなどはありますが、ここでは改善方法5選を紹介していきます。
- 精神科や心療内科に相談をする
- 身近な人に特性を知ってもらう
- 話す時と聞く時を分けるイメージをする
- 同じ言葉を使ってさりげなく確認をする
- 書籍などを参考にする
順に見ていきましょう。
精神科や心療内科に相談をする
会話以外にも、様々な生き辛さを感じているのであれば、一度医療機関を受診することをおススメします。
大人の発達障害については、「精神科」や「心療内科」で相談できます。最近では、「発達障害外来」などを設置している病院も増えているようなので、気になる方はお近くの病院を探してみてください。
先述したように、ADHDは脳内の神経伝達の乱れから、前頭葉の機能が低下している状態です。そうした状態を改善してくれる治療薬があり、保険適用もされています。薬物療法で特性が改善される可能性があるので、まずは相談することが大切です。
また、精神科等には「精神科デイケア」というサービスも存在するため、生きづらさや精神的不調等を抱えている場合にはリハビリを兼ねた通院をすることもできます。
以下の記事で詳しく解説しておりますので、あわせて読むことをオススメします。
身近な人に特性を知ってもらう
会話をする機会が多い身近な人や会社の人には、自分の特性を知ってもらうことが理想的です。
ADHDの特性を知ってもらうことは、自分自身だけでなく周りの人にとっても、日常生活を送る上でとても重要になります。何も知らない状態だと、双方に強いストレスがかかってしまうからです。
もちろん、発達障害はデリケートな問題であり、打ち明けることは人によっては簡単ではないでしょう。しかし、ADHDの特性を知ってもらうことで、双方にとってより快適な環境を作っていくことができます。
話す時と聞く時を分けるイメージをする
会話はよく「キャッチボール」に例えられます。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
どちらかが一方的に話す・聞くのではなく、
のイメージで、会話をすることが大事になってきます。
「○○○が気になるけど、今は聞く時間」などと会話の中で意識してみると、自分の意見を伝えやすくなったり、相手に気持ちよく聞いてもらえるようになったりするかもしれません。
同じ言葉を使ってさりげなく確認をする
会話の中で「復唱をする」ことは、とても有効な方法です。
「○○○ってこういうことなんですね」などとさりげなく再確認をしても、会話の内容をしっかりと記憶している人は少ないので、疑問に思われることもないでしょう。
他にも、適度に相槌を打つことや、相手の言葉を少し借りて反応することも効果的です。会話では、「あなたの言葉をしっかり聞いていますよ」とアピールをすることが大切になります。
全て自分発信のリアクションでなくてもいいと思うと、気持ちにもゆとりが出てくるのではないでしょうか?
書籍などを参考にする
現在ではADHDの認知度も広がり、関連した書籍や当事者の方からの発信も活発になっています。情報はいくらでもネットに転がっていますが、時間をかけて専門家の方が執筆した書籍からは、思わぬ発見があるかもしれません。
サイトのレビューや口コミなどを参考にして、気になる書籍を読んでみましょう。複数ある場合は、図書館を利用してみるのもいいですね。
まとめ
- ADHDの方は前頭葉の働きが弱いとされており、情報の取捨選択や整理整頓が苦手。よって、頭の中が騒がしい状態であるとされている
- 常に脳内で考えている状態なので、おしゃべりで一方的に話す、会話の内容がいきなり変わり噛み合わなくなるなど、話し方に特徴がある。
- 悪気はないのに相手を怒らせてしまったり、結論が決まっていない長い会議や興味のない会話についていけなくなったりする
- 改善方法として、精神科や心療内科に相談をすることや、身近な人に特性を知ってもらうことが大切である
- 具体的な対処法が書かれている書籍などを参考にすることも効果的
この記事では、大人のADHDの方の話し方の特徴や改善方法について紹介しました。
ADHDの特性は個人差が大きいので、人それぞれ苦手な会話の状況や場面があると思います。強いストレスを抱えたまま生活を送っていると、二次障害と言って、うつ病や様々な精神疾患などの病気を引き起こす可能性が高くなってしまいます。
会話は自然と日常的に起こっているものであり、そもそもとても高度なコミュニケーションです。適切な治療や工夫により改善できる可能性があるので、ADHDの特性から日々の会話に困っている方は、まず信頼できる人や機関に相談してみてください。会話に対しての苦手意識が、変わってくるかもしれません。