ADHDの特性があり、障害者手帳の取得を考えている方もいらっしゃると思います。
ですが、障害者手帳について詳しく知らなかったり、取得するメリットが分からなかったりすると、本当に必要かどうか疑問に思われますよね。
「障害者手帳を取得するメリット・デメリットって何?」
「障害者手帳はどうやって申請するの?」
などの疑問を抱いている方に向けて、
- 障害者手帳について
- 障害者手帳を取得するメリット・デメリット
- 障害者手帳を取得できる条件
- 障害者手帳の申請方法
を紹介していきます。
少しでも参考になれば幸いです。
障害者手帳について
障害者手帳とは、
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
の3種類の総称です。
発達障害専用の手帳はないので、ADHDの方は、3つ目の精神障害者保健福祉手帳を申請しましょう。また、障害者手帳は申請してから2年に1回の更新が必要になります。
また、障害者手帳はカードとしても持つことができます。
ADHDは障害者手帳何級になる?
精神障害者保健福祉手帳には、1~3級までの等級があります。では、ADHDだと何級になるになるのでしょうか?
等級は、下記のような判断基準になります。
1級 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
引用:障害者手帳について│厚生労働省
文字だけ見ると曖昧な感じを受けますが、審査は、各自治体の精神保健福祉センターでしっかりと行われます。
簡単に要約すると「ADHDの特性によって、日常生活を送る上でどれくらい影響を受けているのか、診断書などから総合的に判断します」ということなので、「ADHDの方は〇級」のように決められているわけではないと分かります。
また、等級によって受けられる控除の額や福祉サービスなどが変わってきます。ただし、更新の時に等級は変わる可能性もあるので、「一度〇級と判断されたらずっと同じ等級になる」というわけでもありません。
ADHDの方が障害者手帳を取得するメリット
障害者手帳を取得するメリットはさまざまありますが、主に金銭面でのメリットが大きいです。知っておくと、生活面で助かる場面もあるでしょう。
ここでは主に、下記の3つを紹介していきます。
- 税金などが控除・免除される
- さまざまな場面で割引を受けられる
- 障害者雇用枠で働ける
順に見ていきましょう。
税金などが控除・免除される
障害者手帳を取得すると、所得税や相続税、贈与税などの税金が控除・免除されます。控除額は等級によって変わりますが、他にも自動車税や自動車所得税の軽減など、さまざまな税金を減らすことができます。
まずは、ご自分に関する税金について調べてみましょう。一つひとつの減税額は少なくても、複数あったり年単位で考えたりする場合、決して少なくはない額になる可能性があります。
さまざまな場面で割引を受けられる
障害者手帳を取得すると、さまざまな割引を受けることができるようになります。
具体的には、下記のようなものがあります。
他にも、さまざまな場面で割引のサービスが行われています。ただし、各自治体によって割引される額などは変わってきます。気になる方は、お住まいの地域について一度調べてみましょう。
障害者雇用枠で働ける
障害者手帳を取得すると、障害者雇用枠で求人を探せるようになります。障害者雇用枠では障がいをオープンにした状態で働けるので、体調や特性などに配慮してもらいやすくなります。
特に、ADHDなど発達障害の方は得意・苦手なことがはっきりしている傾向があります。クローズ就労(障がいを言わずに就労すること)をした場合、苦手な業務も断ることができず、ストレスや疲労が蓄積してしまうかもしれません。
さらに、発達障害の方は二次障害と言って、さまざまなストレスからうつ病などの精神疾患になる可能性が高くなると言われています。その点では、配慮などを受けられる障害者雇用枠は大きなメリットとなるでしょう。
ただし、一般就労の求人よりは数が少なくなってしまうので、自分にとってのメリットとデメリットをしっかりと考える必要があります。
ADHDの方が障害者手帳を取得するデメリットは特にない
上記で、障害者手帳を取得するメリットを紹介しました。一方、障害者手帳を取得してデメリットになることは「特にない」と言えるでしょう。
障害者手帳を持っていても、常に提示するものでもないので、誰かに見せない限り知られることはありません。また、いつでも障害者手帳は返却することができますし、2年に1回の更新を行わないこともできます。
「一度取得したから、一生持っていないといけない」ということも、決してありません。メリットの方が多いので、興味がある方はぜひ障害者手帳を取得することを考えてみてください。
強いてデメリットを挙げるなら、手続きに必要な書類や手順が多く、面倒くさく感じることかもしれません。ですが、全ての手順を一人で行うわけではないので、まずは知ることが大切です。申請の流れは後述します。
障害者手帳を取得できる条件
上記で、障害者手帳を取得するメリット・デメリットを紹介しました。では、障害者手帳を取得するには、どのような条件があるのでしょうか?
主に下記の2つの条件が必須になります。
- 初診日から6か月以上経過していること
- ADHDと確定診断されていること
順に見ていきましょう。
初診日から6か月以上経過していること
障害者手帳を取得するには、初診日から6か月以上が経過していることが条件です。複数転院をされている方は、最初にADHDと診断された病院の受診日が初診日になります。
最初に診断された病院に「受診状況等証明書」を発行してもらえれば正式な証明になるので、連絡を取ってみましょう。
よって、「障害者手帳を貰ってみたいな…」と考えている方は、まず初診日や病院の通院履歴を確認するところから始めてみてください。
ADHDと確定診断されていること
障害者手帳を取得するにあたり、もう一つ重要な条件として「ADHDと確定診断されている」ということがあります。自己診断でADHDだと思っているだけの方や、グレーゾーンの方は、障害者手帳を取得できません。しっかりと専門の機関で診断をされていることが重要です。
ADHDは、精神科や心療内科で診断を受けられます。まずは、お近くの病院を調べてみましょう。
障害者手帳の申請方法
上記で、障害者手帳を取得するメリットや必要な条件を解説してきました。ここでは、障害者手帳の申請方法の手順を紹介していきます。ただし、自治体によって細かい部分が違う可能性があるので、お住まいの自治体のHPで確かめることが確実な方法になります。
障害者手帳の申請方法は、主に下記のような手順になります。
- 申請に必要なものを集める
- 自治体の障害福祉担当の窓口へ持っていく
- 申請が受理されるのを待つ
順に見ていきましょう。
- 精神障害者保健福祉手帳申請書
- 診断書(障害年金を受給している場合、その証明書などの写し)
- 本人写真(縦4㎝、横3㎝で1年以内に撮影されたもの)
- マイナンバーカード(個人番号が分かるもの)
- 本人確認ができるもの(免許証やパスポート)
申請書は、自治体の窓口やWeb上のサイトからダウンロードできます。
また、先述したように、診断書は初診日から6か月以上経過していることが条件です。精神保健指定医(または、精神障害の診断や治療に従事している医師)の記載したものが必要になります。
ただし、家族以外の方に頼む代理人申請の場合、新たに委任状や代理人の本人確認などが必要になります。委任状は窓口などで準備されているので、入手することは難しくありません。詳しくは、障害福祉担当の方に聞いてみましょう。
障害者手帳が必要になる予定がある場合は、余裕をもって申請することが大切です。
また、障害者手帳は、就労移行支援や就労継続支援A型・B型の利用申請に必要となるものです。持っていなくても申請をすることはできますが、手帳に代わる物が必要になります。
これらの利用を考えている方は、下記の記事もあわせて読むことをオススメします。
就労移行支援
就労継続支援A型・B型
まとめ
- ADHDの方は、障害者手帳のひとつである精神障害者保健福祉手帳を申請することができる。等級は1~3級まで。
- 障害者手帳を取得するメリットとして、税金などが控除・免除されたり、さまざまな場面で割引を受けられたりする点がある。また、障害者雇用枠で働けるようになる。
- 障害者手帳を取得するデメリットは特にない。いつでも返すことができる。
- 障害者手帳を取得する条件として、初診日から6か月以上経過していること、ADHDと確定診断されていることが必要。
- 障害者手帳の申請には1~3か月程度かかるので、余裕をもって申請する必要がある。また、自治体によって細かい条件や必要なものが変わってくるので、自治体のHPを確認しておくことも大切。
ADHDの方は障害者手帳を取得できるのか、障害者手帳を取得するメリット・デメリット、取得する条件や申請の流れを紹介しました。
障害者手帳を取得することに抵抗感がある方は、まずは主治医に相談してみましょう。客観的な意見をもらうことで、取得することに対して前向きになったり、メリットを具体的に想像しやすくなったりするかもしれません。
また、申請の流れを見て「興味はあるけど面倒くさいな…」と思った方も、すぐには投げ出さず、さまざまな人の力を借りてみましょう。一人では分からないことも、専門や担当の方が協力してくれます。
障害者手帳を取得することは、主に金銭面での助けになります。決して一人で抱え込まず、誰かに相談して検討してみることが大切です。