職業準備性ピラミッドとは?5つのスキルや職業準備性を高める方法をわかりやすく解説

障がいや難病がある方のなかには「働くためにはどんな力が必要なのか」がわからずに悩んでいる方がいます。

働く前はわからないことが多くて

KAORUKO

「就職するにはどんな能力やスキルが求められているの?」
「就職しても、社会人として働き続ける自信がない…」

このような悩みを解消できずに、怖くなったり不安になったりしますよね。

この悩みに答えるのが「職業準備性ピラミッド」です。

  • 職業準備性ピラミッドとは?
  • 職業準備性の5つのスキル
  • 職業準備性を高める方法
  • 障がい者が利用できる相談窓口や支援制度

について解説します。

職業準備性ピラミッドを理解しスキルを磨くことで、自信を持って働く土台を築くことができます。

この記事を通して、自分にとって最適なキャリアを築いていただけると幸いです。

職業準備性ピラミッドとは?

職業準備性ピラミッドとは、就労に必要な基礎的スキルを5つに分けてピラミッド型に整理したモデルのことです。

職業準備性ピラミッド 全体

職業準備性ピラミッドは重要度順に下から

  1. 健康管理
  2. 日常生活管理
  3. 対人技能
  4. 基本的労働習慣
  5. 職業適性

という5段階に分かれています。

この5つの段階はあらゆる人が働く上での土台となるものですが、特に病気や障がいを抱える方の就労において重要な役割を持ちます。

この項目では、段階ごとの5つのスキルについて詳しく見ていきましょう。

職業準備性ピラミッドの5つのスキル

仕事術

職業準備性ピラミッドを構成する5つのスキルについて、詳しくご紹介します。

5つのスキルとは

「働きたいけれど体調面や生活面が不安…」
「やりたい仕事や向いている仕事が分からない…」

などの、求職者が抱えやすい悩みを細かく分けてリスト化したものと言えるでしょう。

まずは、この5つのスキルを理解し、土台となるスキルから段階的に磨くことが安定して働くために大切です。就労を目標にしている方は、1つずつしっかりと確認していきましょう。

健康管理

就業準備性ピラミッドの土台となる部分が「健康管理」です。健康管理とは、自分自身の健康をコントロールするスキルのことです。

職業準備性ピラミッド 健康管理

具体的には、下記のようなスキルが挙げられます。

  • 食事、睡眠の管理ができている
  • 定期的な通院や服薬管理ができている
  • 自分の障がいや特性について正しい知識があり、理解している
  • 不調なときや困ったときに誰かに助けを求められる

健康管理のスキルが不十分なままに働き始めても、毎日同じ時間に出勤できなかったり、体調を崩したりして離職につながってしまいます。特に「長期的に安定して働いて欲しい」と考える企業側は、健康管理のスキルを重要視しています。

健康管理は働く上で基本のスキルになるため、最優先で身に付ける必要があります。

日常生活管理

日常生活管理とは、規則正しい生活を送るためのスキルです。

職業準備性ピラミッド 日常生活管理

具体的には、下記のようなスキルが挙げられます。

  • 洗顔や入浴をすることで、身なりを清潔な状態に保てる
  • 決まった時間に就寝、起床できる
  • お金の管理ができて、浪費や借金をしない
  • 余暇を楽しく過ごせる

日常生活管理は、安定した生活を送るために必要なスキルです。生活習慣の乱れや余暇時間を楽しめないなどの課題があると、体調を崩したりストレスを溜め込んだりしやすくなります。そのため、働き続けるためにも日常生活管理は大切な要素です。

特にポイントとなるのが「決まった時間に就寝、起床できる」ことです。就寝時間や起床時間が不規則だと毎日決まった時間に出勤することが難しくなります。

生活リズムが不規則という方は、まずは決まった時間に就寝、起床ができるように生活を整えると良いでしょう。

対人技能

職業準備性ピラミッドの真ん中に位置するのが「対人技能」です。

職業準備性ピラミッド 対人技能

対人技能とは、他者との意思疎通に必要なコミュニケーションスキルであり、職場内での良好な人間関係を構築するために不可欠なものです。

具体的には、下記のようなスキルが挙げられます。

  • 感情のコントロールができる
  • 職場の人に挨拶ができる
  • 注意されたときに謝罪ができる
  • 職場の人と協力して仕事ができる
  • 苦手な人に対しても最低限のコミュニケーションが取れる

特に感情のコントロールができないと、注意されたときに怒りが抑えられなくなり上司や同僚とトラブルに発展してしまう可能性があります。

土台となる健康管理や日常生活のスキルが整ってきたら、対人技能のスキルも少しずつ磨いていきましょう。

基本的労働習慣

基本的労働習慣は「実際に働いたらどうなるか?」を想定して、社会人としての基礎が身に付いているかを測る指標と位置付けられています。

職業準備性ピラミッド 基本的労働習慣

具体的には、下記のようなスキルが挙げられます。

  • 報告・連絡・相談ができる
  • 会社の規則に従って勤務ができる
  • TPOに適した挨拶や服装ができる
  • ビジネスマナーが身に付いている
  • 働くための集中力や体力がある

基本的労働習慣は、集団で業務を進めたり効率的に作業をこなしたりする上で大切なスキルです。

あまり難しく考える必要はなく「基礎的なルールを守る意識」「丁寧な挨拶」などから身に付けていくと良いでしょう。

職業適性

就業準備性ピラミッドの頂点の部分が「職業適性」です。

職業準備性ピラミッド 職業適性

職業適性とは、仕事に就くときに、その仕事に必要な能力や適性があるかを指します。

具体的には、下記のようなものが挙げられます。

  • 自分がどんな仕事に興味があり、どんな仕事が得意か理解している
  • 仕事に必要な知識やスキルがある
  • 将来どんな仕事をしたいかプランがある

先述している4つのスキルが身に付いている方は、就職活動を進める段階に移行します。そこで、自身の職業適性を理解していなければ、就職後に「思っていた仕事と違う…」「この仕事は自分に向いていないかも?」というミスマッチが発生しやすく、短期離職の原因にもなります。

あなたが働く上で希望する条件や得意なこと・苦手なことなどを整理して、将来的にどのようなキャリアを積んでいきたいかを考えることが大切です。

職業準備性を高める方法|チェックリストを活用しよう

チェックリスト ピンク系・2

就職活動を成功させて安定して働くためには、就労準備性を高める必要があります。

就労準備性を高めるためには、下記の手順を意識すると良いでしょう。

  1. 職業準備性ピラミッドのチェックリストを参考に、自分自身が身に付いているスキル、身に付いていないスキルを把握する
  2. 身に付いていないスキルを改善する

就労支援のための訓練生用チェックリスト pdf|障害者職業総合センター

特に働くための基盤となる「健康管理」や「日常生活管理」は、家庭での取り組みが大切です。家族と協力しながら日々の基本的な生活スキルを整えていきましょう。

一方で、「対人技能」「基本的労働習慣」「職業適性」などを1人で身に付けることは難しいですよね。

そのような場合は、

  • 医師の診断や服薬治療など、医療の力を借りる
  • 障がい者が利用できる相談窓口や支援制度を利用する

など、周囲のサポートを受けて就労の準備を無理せずに始めていきましょう。

初めは不安なことが多いと思いますが、1人で悩まずに周囲のサポートを受ける方が、働くための準備がスムーズに整いますよ。

障がい者が利用できる相談窓口や支援制度を5つ紹介

相談窓口

先述してきた就労準備性ピラミッドの考え方は、多くの障がい者向け就労支援の現場で取り入れられています。そのため、1人で職業準備性を高めることが難しい方は、この項目で紹介する相談窓口や支援制度を積極的に利用するのがオススメです。

自己評価だけでなく客観的な視点を交えて就労に向けた課題を見つめ直すことで、あなたが就労に向けて抱えている不安を軽減して、自信を持って就職活動を進められるようになるでしょう。

障がい者が利用できる相談窓口や支援制度を見ていきましょう。

発達障がい者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害がある方と、その家族を支援する専門的な機関です。発達障害の方の生活・仕事・教育・医療などに関わるさまざまな相談を受け付けている機関であり、ハローワークなどと連携して就労支援にも取り組んでいる特徴があります。

発達障害の方は「健康管理」「日常生活管理」「対人技能」に課題を抱えやすい傾向があるため「就労に向けて日常生活の基盤を安定させたい」という場合は、発達障害支援センターへの相談がオススメです。

発達障害者支援センター・一覧|発達障害情報・支援センター

発達障害者支援センターについて、下記の記事でも解説しています。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターでは、心の健康の関する相談やアドバイスを行っており、うつ病をはじめとする精神疾患の予防や治療に取り組んでいる支援機関です。

発達障害の方は、障がいの特性から対人関係や仕事で度々失敗してしまい、二次障害としてうつ病などの精神疾患を発症する方がいます。「人間関係で悩んでいる」「心の健康に不安を抱えている」という場合は、精神保健福祉センターに相談してみると良いでしょう。

全国の精神保健福祉センター|厚生労働省

障がい者就業・生活支援センター(なかぽつ)

障害者就業・生活支援センターは、障がいがある方の日常生活に関する相談や就労支援を行う機関です。「・」から「なかぽつ」と呼称されることもあります。

「生活リズムや習慣の改善」「働くために必要な基礎体力づくり」「障がいの自己理解や健康維持に関するアドバイス」を始め、「就職先の斡旋などの就労に向けた支援」など、障がいがある方に対して、生活から就労まで幅広いサポートを行っています。

「日常生活の基盤を安定させたい」「就労に向けた支援を受けたい」など、幅広いサポートを受けたい場合は、障害者就業・生活支援センターの利用を考えてみましょう。

令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 pdf|厚生労働省

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)については、下記の記事で解説しています。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業での就職を目指す障がい者を対象に、働くために必要なスキルや就職活動のサポートを受けることができる障害福祉サービスです。

具体的な支援内容としては、

  • 履歴書の書き方
  • 面接の練習
  • ビジネスマナー
  • 職場でのコミュニケーション方法

などがあり、職業準備性を効率的に高めることができます。

障がい者の就労に関する専門的な知識を持った方のサポートを受けることができるため、「働くことを想定した実践的な訓練を受けてみたい」「自分に向いている仕事や働きやすい労働環境について考えてみたい」などの、「基本的労働習慣」「職業適性」についても手厚い支援が期待できます。

職業準備性を効率的に高めたい方は、利用を検討してみてもいいでしょう。

就労移行支援の詳細については、下記の記事などで解説しています。

就労継続支援A型・B型

就労継続支援とは、障がいや難病があり一般の会社で働くことが困難な方を対象に、一定の支援や配慮を受けながら働ける場所を提供している福祉サービスです。

就労継続支援にはA型とB型があり、大きな違いは下記の表の通りです。

A型事業所 B型事業所
雇用契約 あり なし
収入 月額平均:83,551円
給与として支払い
(最低賃金を保証)
月額平均:17,031円
工賃として支払い
(最低賃金の保証なし)
対象者 一般就労は困難だが
雇用契約を結んで働ける方
雇用契約を結んで
働くことが難しい方
年齢制限 原則18歳以上65歳未満 年齢制限なし

※令和4年度時点の平均工賃(賃金)より記載

将来的に一般就労を目指す方のステップアップとして、負担を少なく働き始めることができる就労継続支援を活用してみるのも良いでしょう。

就労継続支援の詳細は、下記の記事などで解説しています。

まとめ|職業準備性ピラミッドと職業準備性を高める方法

  • 職業準備性ピラミッドとは、就労に必要なスキルを段階的に整理したモデルのこと。
  • 職業準備性ピラミッドは下から、「健康管理」「日常生活管理」「対人技能」「基本的労働習慣」「職業適性」の5段階に分かれており、安定的に働くためには各段階における5つのスキルがバランスよく備わっていることが必要。
  • 職業準備性を高めるためには、自己分析を通して5つのスキルを段階的に磨くことが大切であり、障がいがある方が利用できる相談窓口や支援制度の活用も効果的。

職業準備性ピラミッドを理解し、1つ1つのスキルを磨くことは、安定的に働くために大切なことです。

今回ご紹介した職業準備性を高める方法を実践したり、障がいのある方が利用できるサービスを活用したりして、充実した職業生活を送りましょう。

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