就労移行支援は失業保険(雇用保険)をもらいながら利用できる?

KAORUKO

「就労移行支援に行きたいけど、失業保険をもらいながら利用できるのかな?」
「失業保険を受給しながら就労移行支援に通いたい…」

という疑問や不安はありませんか?

就職に向けた訓練や就職活動のサポートが受けられる就労移行支援。

しかし、就労移行支援の利用中は働くことができないため、生活費が心配になりますよね。

就労移行支援事業所の利用を検討されている方の中には、失業保険を受け取りながら就労移行支援に通うことができるのか、不安に思っている方もいらっしゃるでしょう。

  • 失業保険を受給しながら就労移行支援を利用できるのか
  • 失業保険の概要と申請方法
  • 退職後に申請できる国民健康保険の軽減制度、国民年金の免除制度

について解説します。

就労移行支援は失業保険を受給しながら利用できる

失業保険

就労移行支援は、失業保険を受給しながら利用できます。

失業保険により、離職後の生活が保障されるので、生活を安定させながら就職に向けた準備をすることが可能です。障がいのある方は一般の離職者よりも、失業保険の給付日数が長く設定されているので、無理せず、時間をかけて就職先が探せます。

※ハローワークによって見解が異なる場合があるので、失業保険の申請前に確認していただくと安心して給付が受けられます。

失業保険とは

労働者が退職・失業した際に必要な給付を行うことで、生活の心配をすることなく、再就職に向けた活動ができるようサポートしてもらえる制度です。

失業保険、失業手当、失業給付など複数の呼び名がありますが、正式には雇用保険と呼びます。

※本記事では、わかりやすいように失業保険と表記しています。

障がいがある方は就職困難者として優遇される

就職困難者とは、障がいなどが理由で就職が難しい方のことを指します。

障害者手帳を持っていると、就職困難者として認定されるので、被保険者期間の要件の緩和や所定給付日数の優遇を受けることができます。

また、「2か月間の給付制限期間がないため、失業保険の給付が早く受けられる」「認定日までに必要な求職活動実績が1回でいいため、認定日にハローワークに行くだけで失業認定してもらえる」というメリットもあります。

障がいがあると就職までに時間がかかってしまうことも多いので、長い期間、生活費をサポートしてくれる制度があるのはとても心強いですよね。

障害者手帳がなくても精神障害の場合、てんかん、そううつ病(そう病、うつ病を含む)、統合失調症等に該当する方は、「主治医の意見書」があれば就職困難者として手続きしてもらえる可能性があります。

お住まいの地域のハローワークによって判断が異なるので、事前にどのように対応しているのか確認してみましょう。

失業保険をもらうための条件

就職困難者に該当する方は、下記の要件を満たすことで失業保険の受給申請ができます。

  1. 雇用保険に加入していた期間が、離職日以前の1年間に通算6か月以上あること
  2. ハローワークで求職申込を行うこと
  3. 働く意思と能力はあるが失業している状態であること

失業保険は働ける状態でなければ受給できません。

しかし、フルタイムでの就労は難しくても、雇用保険の加入条件の一つである週20時間以上の就労が可能な状態であれば、働く能力があるとみなされるので、失業保険を受給することができます。

受給期間

失業保険の受給期間は原則、離職日の翌日から1年間です。

この期間を過ぎると所定給付日数が残っていても、失業保険は支給されません。

ただし、

  • 所定給付日数が330日の方は、離職日の翌日から1年間+30日
  • 所定給付日数が360日の方は、離職日の翌日から1年間+60日
  • までが受給期間になります。

    受給期間満了日は、雇用保険受給資格者証で確認できます。

    所定給付日数

    失業保険の所定給付日数は、年齢や加入期間、退職理由によって決まります。

    就職困難者は、一般の離職者と比べると所定給付日数がかなり長めに設定されています。

    被保険者であった期間 1年未満 1年以上
    5年未満
    5年以上
    10年未満
    10年以上
    20年未満
    20年以上
    一般離職者(全年齢) 90日 120日 150日
    就職困難者 45歳未満 150日 300日
    45歳以上
    65歳未満
    360日

    支給額

    失業保険で受給できる1日あたりの金額(基本手当日額)は、次のように決まります。

    1.賃金日額を計算する

    賃金日額 = 離職日の直前6か月に支払われた賃金(賞与を除く)の合計 ÷ 180日

    【賃金日額の上限額・下限額】

    離職時の年齢 上限額 下限額
    29歳以下 13,890円 2,746円
    30歳~44歳 15,430円
    45歳~59歳 16,980円
    60歳~64歳 16,210円

     2.賃金日額に所定の給付率をかけて基本手当日額を求める

    基本手当日額 = 賃金日額 × 50%~80%(60歳から64歳については45%~80%)

    ※給付率は、賃金日額が低額な方ほど高く設定されています。

    【基本手当日額の上限額・下限額】

    離職時の年齢 上限額 下限額
    29歳以下 6,945円 2,196円
    30歳~44歳 7,715円
    45歳~59歳 8,490円
    60歳~64歳 7,294円

    失業保険の申請

    離職票提出

    失業保険の申請には下記の書類が必要です。

    • 離職票-1、離職票-2
    • 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票)
    • 本人確認書類(1)のうちいずれか1種類、または、(2)のうち異なる2種類(コピー不可)
      (1)マイナンバーカード、運転免許証、官公署が発行した写真付き身分証明書・資格証明書等
      (2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
    • 写真(縦3cm × 横2.4cm)2枚
      ※受給手続きおよび支給申請ごとにマイナンバーカードを提示する場合は省略可能
    • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

    失業保険の受給までの流れ

    失業保険を受給するまでの流れは次のようになります。

    手順
    退職した会社から離職票を受け取る
    退職後1週間~10日程度で受け取ることができます。

    2週間以上経っても届かない場合、会社に確認してみましょう。

    手順
    ハローワークで求職申込(受給資格決定)
    必要な書類が準備できたらハローワークで、失業保険の受給申請と求職申込をします。

    ハローワーク職員により受給資格の決定と退職理由の確認が行われ、「雇用保険受給資格者のしおり」が配布されます。

    このとき、雇用保険説明会の日時の案内があるので忘れずに確認しておきます。

    手順
    ハローワークの雇用保険説明会に参加
    雇用保険説明会に参加すると「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が受け取れます。

    説明を受けたあと、初回の失業認定日の案内があります。

    指定日にハローワークに行って「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を提出し、失業の認定を受けます。

    手順
    認定日ごとにハローワークに行く
    原則4週間に1回、失業の認定が行われます。
    手順
    失業保険の受給
    認定日から1週間程度で、指定口座に失業保険が振り込まれます。

    失業保険と障害年金は両方もらえるの?

    障害年金を受給されている方や障害年金の申請を検討している方は、「失業保険と一緒に受給できるだろうか」と心配になると思います。

    失業保険と障害年金は支給調整がないため、どちらかが減額されたり、支給停止になることはありません。それぞれの支給要件に該当する場合、失業保険と障害年金の両方を受給することが可能です。

    離職後すぐに働けないときは失業保険の延長申請をしておこう

    申請イメージ

    失業保険を受けるためには、働ける状態であることが必要です。そのため、働けない状態で失業保険の申請を行っても、受給資格を認定してもらうことができません。

    失業保険は受給期間を過ぎると、給付日数が残っていても、受給権が失効してしまうので、働ける状態になるまで、受給期間の延長申請をしておきましょう。

    受給期間延長申請とは

    受給期間の延長申請は退職後、病気やケガ、妊娠などやむを得ない理由で働けない方が、働けるようになるまで失業保険の受給期間を延ばしておける制度です。

    失業保険の受給期間は、原則、離職日の翌日から1年間となっています。

    しかし、退職後働けない状態が30日以上続いた場合は、申請をすることで働くことができなかった日数分、受給期間を延長してもらうことができます。受給期間は、離職日の翌日から最長4年以内(本来の受給期間1年と延長期間3年)まで延長できます。

    受給期間の延長申請をしておくと、退職して1年以上経ってから就職活動を始めても失業保険を受給できるので、安心して療養に専念できます。

    受給期間の延長申請はいつからできる?

    受給期間の延長申請は、離職日の翌日から引き続き30日以上、職業に就くことができなくなった日の翌日以降に行えます。申請は、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば可能です。

    ただ、申請期間内でも申請したタイミングが遅いと、延長された期間内で所定給付日数のすべてを消化しきれない可能性があります。申請が可能になったら、なるべく早めに手続きしておきましょう。

    受給期間延長の申請方法

    受給期間延長の申請は、お住まいの地域のハローワーク窓口または郵送で行うことができます。代理人(委任状が必要)による申請も可能です。

    申請には、下記の書類が必要になります。

    • 受給期間延長申請書
    • 離職票-2(複数枚ある場合はすべて提出)
    • 延長の理由を証明する書類

    受給期間延長申請書、委任状についてなど、わからないことがあればハローワークに確認しましょう。

    延長を解除するには

    働ける状態になったら、ハローワークに行き、職員に「延長を解除して失業保険の申請を行いたいこと」を伝えると、延長を解除し、失業保険の受給手続きをしてもらえます。

    延長の解除には、失業保険の必要書類に加え、下記の書類を合わせて提出します。

    • 受給期間延長通知書(受給期間延長申請をした際にハローワークから交付された書類)
    • 延長解除の理由を確認できる書類

    延長申請をしていた方は、特定理由離職者に該当するので、2か月間の給付制限期間はなく、すぐに失業保険を受給できます。

    退職後の保険料を軽減するための手続き

    国民健康保険 背景

    退職後、国民健康保険に加入しなおすと保険料の高さに驚いたり、国民年金保険料の支払いを負担に感じる方も多いのではないでしょうか。

    ここからは、失業によって受けられる国民健康保険と国民年金保険の制度をご紹介します。

    収入がない状態だと保険料の支払いが大きな負担になってしまうことがあるので、必要に応じて活用しましょう。

    国民健康保険料の軽減制度

    体調不良による自己都合退職でも特定理由離職者に該当する場合、申請により、国民健康保険料の軽減措置を受けることができます。申請は、雇用保険受給資格者証が発行されてから行えます。

    軽減措置を受けると、給与所得を100分の30に減額して保険料が計算されるので、保険料の負担を減らせます。軽減措置の適用期間は、離職した日の翌日の属する月から、翌年度末までの期間となります。

    失業保険の延長申請をしているとき

    失業保険を延長申請をしている場合、雇用保険受給資格者証を発行してもらえないため、一旦は通常の保険料を支払うことになります。

    国民健康保険の軽減措置は、軽減対象期間内であれば遡って適用してもらうことができるので、失業保険の申請後に手続きしましょう。

    余分に支払った保険料は、後日返還してもらえます。

    国民健康保険料の軽減措置についての詳細は、市町村の国民健康保険担当窓口にお問い合わせください。

    国民年金保険料の免除申請

    退職後、国民年金保険料の納付が困難な場合、申請によって国民年金保険料の納付が免除される特例免除があります。(配偶者・世帯主に一定額以上の所得があるときは免除が認められない場合があります。)

    承認されると、退職した月の前月から翌々年6月まで保険料の支払いが免除されます。保険料の支払いが負担になる方は、お住まいの市町村または年金事務所に申請しましょう。

    免除された保険料は、10年以内であれば追納できます。収入が安定したら、将来の老齢基礎年金が減額されないよう追納することをおすすめします。

    障害年金を受給している方

    障害基礎年金や障害厚生(共済)年金の2級以上を受給している場合は、法的に国民年金保険料の支払いが全額免除されます。免除は法律上当然に受けられますが、届出が必要です。保険料は通常通り支払うこともできます。

    日本年金機構|国民年金保険料の法定免除制度

    まとめ|就労移行支援と失業保険

    • 就労移行支援は失業保険を受給しながら利用できる
    • 障がいがある方は就職困難者として優遇される
    • 失業保険と障害年金は両方を受給することが可能
    • 離職後すぐに働けないときは失業保険の延長申請をしておく

    就労移行支援を利用しながら就職を目指す方は、就職困難者として認定してもらうと長期間、失業保険が受給できるので、自分に合った職場をじっくり探せます。

    失業保険は延長申請が可能なので、体調が回復していない方は、まずは療養に専念しましょう。

    生活の不安から、早く就職しなければと焦る気持ちになることがあるかと思いますが、安定した生活を送るために、まずは体調を整えることが大切です。

    社会保障制度を活用しながら無理のないペースで就職に向けた準備を進めていきましょう。

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