「分かりやすい冗談を話したのに、相手が真に受けてしまった」
「相手に何か伝えても、言葉通りにしか受け取ってもらえず、自分の意図を汲んでもらえない…」
「伝えたいことが正しく伝わらないのは、自分のせいなのかな?」
現在、職場でアスペルガー症候群の方と一緒に働いているあなたは、上記のような疑問や悩み、経験をお持ちではないでしょうか?
アスペルガー症候群の方は、特性の影響から
「言葉通りにしか受け取れず、相手の意図を汲むことができない」
など、周囲との『認識のズレ』がある方が多いとされています。
コミュニケーションがうまく取れないと、双方の言動に齟齬が生まれ、仕事が進まず困ってしまいますよね。
また、不要な怒りを生み出し、人間関係がこじれてしまうこともあるでしょう。
- アスペルガー症候群の方に冗談が通じない理由
- アスペルガー症候群の方に「冗談が通じない」ことによるトラブル例
- 冗談が通じないアスペルガー症候群の方との接し方6選
を解説していきます。
本記事の内容を理解し、参考にしていただくことで、円滑に仕事を進めていけるようになれば幸いです。
アスペルガー症候群の方に冗談が通じない理由
アスペルガー症候群とは、現在では、アスペルガー症候群の他に、自閉症や広汎性発達障害をまとめて、「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼ばれているものです。
アスペルガー症候群の方は、生真面目で繊細な傾向があり、特性の影響から冗談が通じにくい方が多いとされています。
具体的には、下記のようなものがあります。
- あいまいな指示や説明を理解するのが苦手である
- 非言語コミュニケーション(表情・視線・ジェスチャーなど)の理解が難しい
- 相手の意図や気持ちをイメージするのが苦手である
- その場の空気を読むことが難しい
- 相手が言ったことを文字通り受け取りやすい(冗談か本当か区別がしにくい)
- 他人にあまり興味がない
- 自分の考えや感情を表現するのが苦手
ただし、個人差が大きいので、全ての方が当てはまるというわけではありません。
「アスペルガー症候群の人は○○だから」などと決めつけずに、その人に合った対策や工夫をすることが重要になります。
また、伝えたいことが正しく伝わらないと、普段の会話から仕事をする上でも、支障が出てしまいますよね。
お互いに気持ち良く過ごすためにも、アスペルガー症候群の特性と接し方を正しく理解していきましょう。
アスペルガー症候群の方に「冗談が通じない」ことによるトラブル例
この章では、アスペルガー症候群の方に「冗談が通じない」等の『認識のズレ』が要因で起こるトラブルの具体例を挙げていきます。
- 冗談が通じなかったり、そのまま受け取ったりする具体例
- 比喩や皮肉、あいまいな指示が分からない具体例
順に見ていきましょう。
冗談が通じなかったり、そのまま受け取ったりする具体例
アスペルガー症候群の方には、冗談が通じない傾向があります。
同僚「今日はもう疲れたから、帰ろっかな…」
当事者「え?!」(仕事を途中で投げ出して帰るなんて、なんて無責任な人だ…)
取引先「また機会があれば、食事にでも行きましょう。」
当事者「はい。是非、よろしくお願いします。」
…
当事者「この前の食事に行く件、いつにしましょうか?」
取引先「…」(社交辞令なのに、真に受けるなんて…)
冗談を軽く受け流したり、笑ったりできず、冗談を真に受けてしまいがちです。
また、ビジネスにおける社交辞令に対しても、真に受けてしまいます。
特に、社会人は建前を使うことも多く、アスペルガー症候群の方にとって、会話を理解をする難易度はより上がってしまうでしょう。
他にも、アスペルガー症候群の方は、何かを伝えても言葉をそのまま受け取る傾向があります。
上司「郵便物が届いてないか見てきて。」
当事者「かしこまりました。」
…
当事者「届いてました。」<郵便物は持ってこず。>
上司「なんで郵便物を持ってきてくれないの?」
「見てきて」の言葉には、「もし届いていれば、持ってきてほしい」という意図があるにも関わらず、アスペルガー症候群の方は、その意図を汲み取ることが難しいです。
本人からすると、「言われた通りやったのに、違うと言われる…」と困惑してしまいます。
上司としても、思い通りにならないことに加えて、「自分の伝え方が悪い」のか、「部下の理解が足りない」のか判断ができず、ストレスを貯めてしまう可能性もあるでしょう。
比喩や皮肉、あいまいな指示がわからない具体例
アスペルガー症候群の方は、比喩や皮肉が分からない傾向があります。
<朝>
当事者「遅刻してしまった…」
同僚「君は、重役出勤だな。」
当事者「いいえ。私は平社員です。」
同僚「…」(そういう事じゃないんだけどな…)
上記のように、「重役出勤」というような、比喩や皮肉が分からないことが少なくありません。
比喩や皮肉は、日常会話の中で多くの方が無意識で使っているので、突然会話が噛み合わなくなる要因の一つでもあるでしょう。
他にも、アスペルガー症候群の方は、あいまいな指示や説明を理解するのが苦手な傾向があります。
上司「少し多めに印刷しておいて。」
当事者「かしこまりました。」
…
上司「多過ぎだよ。」
当事者「すみません…」
上司「なんで君は、いつも出勤時間がギリギリなんだ!5分前には席に着いているのが当たり前だろ!」
当事者「すみません…」(遅刻してないのにダメなの?「5分前には席に着け」なんて、言われたこと無かったけど、そういうものなの?)
上記のように、言語化されていなかったり、細かく伝えられていなかったりする暗黙のルールのような、あいまいな表現の理解が苦手で、仕事をする上で『認識のズレ』が起きてしまいがちです。
指示をする側も、無意識で言っていることが多く、日常生活の中で繰り返しこのようなことが起こってしまうと、職場の雰囲気も悪くなってしまいます。
冗談が通じないアスペルガー症候群の方との接し方6選
上記では、『認識のズレ』から起こるトラブルの具体例を紹介してきました。
この章では、アスペルガー症候群の方と、どのように接したら良いか悩んでいる方に、接し方を6つご紹介します。
- アスペルガー症候群は病気ではなく『特性』であると理解する
- なるべく具体的に説明をする
- 作業内容の認識にズレが無いか確認する
- 冗談や社交辞令、皮肉を言うことは控える
- 感情的にならないように気を付ける
- 「ありがとう」という気持ちを「感謝カード」などで伝える
順に詳しくみていきましょう。
アスペルガー症候群は病気ではなく『特性』であると理解する
まず、一番大事なことは、アスペルガー症候群のさまざまな症状は、わがままや病気ではなく、『特性』であると理解することです。
コミュニケーションが難しいと感じる場面があっても、アスペルガー症候群の方は、特性が要因で、他人との適切なコミュニケーションが苦手なことや、対人関係を築くのが難しいということを念頭に置いておきましょう。
たとえ理解はできなくても、「こういうことがあるんだ」と知識を身に付けておけば、具体的な対策が取れる可能性もあります。まずは少しずつでも、アスペルガー症候群の特性を知っていくことが大切になります。
なるべく具体的に説明をする
アスペルガー症候群の方は、「抽象的であいまいな表現」の理解が難しい傾向があります。
仕事を頼む際は、例えば、「この資料を〇枚印刷して」などというように、具体的な数字などを伝えて依頼すると伝わりやすくなります。
また、予め依頼する内容がいくつか決まっている場合は、チェックリストを作り具体的に説明するのもオススメです。
さらに分かりやすくする方法として、説明する際に図や表、写真などを活用すると、より理解が深まる可能性があります。
作業内容の認識にズレが無いか確認する
アスペルガー症候群の方は、「言葉をそのまま受け取りやすい」という特性から、相手の意図を汲むことができず、『認識のズレ』が生じる場合があります。
下記のように<作業前>と<作業中>に、作業内容の確認をして、認識にズレが無いかを確かめると、より良くなるでしょう。
<作業前>
まず、作業内容の具体的な指示書を、紙やデータで作成しておきます。そして、作業前に指示書を読んでおいてもらい、さらに読み上げて伝えると、作業内容の理解が深まります。
例えば、
部下:「かしこまりました。〇〇の作業は、△日の□時までですね。」
というように、復唱と必要に応じてメモを取ってもらい、最後に質疑応答をすると、『認識のズレ』を防げる可能性が高くなります。場合によっては、指示のし忘れの内容などに気づくこともできるので、双方にとってメリットが大きいでしょう。
<作業中>
作業の途中経過を確認します。経過報告のタイミングを予め決めておき、経過報告をしてもらうと良いでしょう。
また、状況に応じて、自分から作業の途中経過を確認することも良いですね。
例えば、
などのように、声掛けをすることで、何かミスなどがあった場合も早めに気づくことができるので、時間と労力の無駄を防ぐことができます。
会話をする上で重要なことは、「○○してくれるだろう」などの先入観を捨てることです。こまめに声掛けをして、確認をしながら進めると良いでしょう。
冗談や社交辞令、皮肉を言うことは控える
アスペルガー症候群の方に、冗談や社交辞令、皮肉を言うことは、『認識のズレ』を生んでしまう可能性が高いので、控えるようにしましょう。
もし、アスペルガー症候群の方に、冗談などを言う場合は、予め、「今から言うことは、冗談だからね。」と前置きをしておくと、コミュニケーションの齟齬が生まれにくくなります。
日常会話の中で普段使いがちな表現も、アスペルガー症候群の方からすれば、嬉しかったり傷ついたりする言葉に変わります。
一度、この機会に、ご自身の会話を見直してみるのも良いですね。
感情的にならないように気を付ける
例えば、アスペルガー症候群の方と話していく中で、「言葉をそのまま受け取る」等の『認識のズレ』が起きてしまったとします。その場合、一方的に感情をぶつけてしまったり、お互いの感情をぶつけ合ったりしてしまうと、建設的な解決に繋がらなくなってしまいますよね。
アスペルガー症候群の方は、悪気があるわけではありません。『特性』により、『認識のズレ』などが起きてしまうのです。
お互いの信頼関係が崩れてしまっては、仕事を円滑に進めることができません。まずは冷静に考え、「なぜ、このような『認識のズレ』が起きたのだろう?」と原因を分析する必要があります。
他にも、「次からは、もう少し具体的に相手に伝えよう」とか「この件は、口頭ではなく、メールで詳しく送って伝えよう」というように、ポジティブに改善策を講じていきましょう。
場合によっては、「相手がどんな認識であったのか」を聞き、さらに「自分が何を伝えたかったのか」をより詳しく説明すると、お互いの納得と今後の改善に繋がり、『認識のズレ』が解消に向かうはずです。
「ありがとう」という気持ちを『感謝カード』などで伝える
アスペルガー症候群の方は、表情などから相手の感情を正確に読み取ることが難しい傾向があります。
せっかく相手に対して感謝の気持ちがあるのに、相手に伝わっていなければ、非常にもったいないですよね。もし、感謝の気持ちが伝われば、仕事のやりがいやモチベーションとなり、成果の向上に繋がることも少なくありません。
よって、「ありがとう」という気持ちは、『感謝カード』に書き記して、月末やプロジェクトの終了時などに渡すようにすると良いでしょう。
「相手も分かってくれている」という思い込みが、すれ違いを生んでしまうこともあります。ポジティブな感情は、積極的にどんどん伝えていくようにしましょう。
まとめ|アスペルガー症候群と冗談
- アスペルガー症候群の方は、生真面目で繊細な傾向があり、特性上、「冗談が通じない」「言葉通りにしか受け取れない」などという『認識のズレ』が起こる方が多い。
- アスペルガー症候群の方に冗談が通じない理由は、対人関係やコミュニケーションにおける『特性』があるため。具体的には「表情・視線・ジェスチャーなどの非言語コミュニケーションの理解が難しい」ことや「相手の意図や気持ちをイメージするのが苦手」ということがある。
- 冗談が通じないアスペルガー症候群の方との接し方として、「アスペルガー症候群は病気ではなく『特性』であると理解する」ことが大切になる。他にも、「具体的に説明をする」「作業内容の認識にズレが無いか確認する」などの方法がある。
アスペルガー症候群の方に冗談が通じない理由や具体的なトラブル例、接し方についてを解説してきました。
まずは、アスペルガー症候群の方の特性を理解し、「冗談が通じないアスペルガー症候群の方との接し方」を実践していただけたらと思います。
アスペルガー症候群の方との間で起こる『認識のズレ』を防ぐことで、一緒に働いているあなたが、ストレスフリーになって、円滑にお仕事を進められるよう祈っております。
職場と発達障害については、下記の記事でも詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。