「就労を経験してみたいけど、一般就労は難しい…」
などの不安はありませんか?
医療の進歩により、これまで以上に救われる命が増え、合併症に悩まされるダウン症の方も成年者として長く人生を送れるようになってきました。
知的障がい者の生産性や創造性は現状埋没資産に近いですが、作業所という形で就労を経験する場が整備されています。
- 作業所とはどのような場所か
- ダウン症に特化した作業所の探し方
- 作業所で働くダウン症の方の賃金(工賃)
- ダウン症の方が作業所で働くメリット・デメリット
をまとめました。
作業所の利用を検討しているダウン症の方の参考になれば幸いです。
作業所とはどのような場所か
作業所とは就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所、共同作業所(小規模作業所)、地域活動センターの施設などの総称です。
- 就労継続支援A型事業所
- 就労継続支援B型事業所
- 共同作業所(小規模作業所)
- 地域活動センターの施設
共同作業所という法整備以前の旧称の名残で作業所と呼ばれることがありますが、一般的にはA型事業所・B型事業所を指す場合が多いです。
就労継続支援A型事業所とは
利用者と事業所が雇用契約を結びます。そのため所定労働時間の遵守、つまり平日毎日出勤することが求められます。
賃金は労働法に則り、最低賃金が保証され、利益が潤沢な事業所によっては昇給制度がある場合も。
生産活動による利益の創出が必須であるため、病状や障がいの重い利用者からは「厳しい」という印象を持たれることもあるようです。
特別支援学校に通い、生活リズムが整っているダウン症の成年者であれば、知的レベルによってA型で働けるかどうかが決まります。
就労継続支援B型事業所とは
ダウン症の方の多くが利用しているのがB型事業所です。
事業所と利用者は雇用契約を結ばず、福祉サービスとしての特色が強い施設になります。賃金は給与ではなく工賃と呼ばれ、最低賃金以下の金額に設定されている事業所がほとんどです。
体調に応じて比較的自由に通所するかどうか決められるので、ダウン症の方にとっては悪い癖がつくかもしれないリスクもありますが、昼食の提供や送迎など、手厚いサービスを受けられるのも特徴の一つです。
事業所によって、受け入れている障がいは異なります。すべての事業所がダウン症の方に対応している訳ではないので、あらかじめ事業所への確認が必要となります。
ノウハウのある就労継続支援B型であれば、言葉が不自由なダウン症の利用者と連絡ノートのやり取りをしてくれる所もあります。
ダウン症に特化した作業所の探し方
特別支援学校に在籍中の方であれば、学校独自の求人情報が得られます。ダウン症に特化した作業所も、学校のコネクションを利用すれば比較的探しやすいかと思います。
特別支援学校に在籍中でない方の場合、まずは知的障がい者を受け入れてくれる作業所を探しましょう。
自治体でもらえる就労系福祉サービス施設一覧を元に、事業所のHPを一つずつ確認していく、あるいは障がい福祉サービス等情報検索で事業所を検索するなど、地道な下調べが必要になります。
ダウン症の方が多く通う事業所
知的障がいを受け入れている事業所はたくさんあります。中にはダウン症に特化している作業所もあります。
例として、一部の事業所を挙げてみます。
作業所の仕事内容
事業所によって請け負っている作業の内容はさまざまです。
HPだけでは分からないことが多いので、実際に見学へ行くといいでしょう。
例えば、こんな作業があります。
作業所で働くダウン症の方の賃金(工賃)はどれくらい?
令和4年度の調べでは、
B型事業所の全国平均工賃は月額17,031円です。
A型事業所の全国平均賃金は月額83,551円になります。
A型事業所の場合は時給で支払われますが、B型事業所の工賃は作業量に応じて支払われるが多いため、例え金額が少なくても、毎日終日就労すれば少しは増えるかもしれません。
欲しい物を自由に買える金額ではないため、生活費の捻出に回していくのが一般的でしょう。親亡き後の安心のためには、安定した就労が必要です。
例え工賃が低くても、グループホームで障がい者年金と工賃で生活しているダウン症の方の事例があることを考えると、就労の継続こそ大切かもしれません。
ダウン症の方が作業所に通うメリット
経済的自立の一助になる
障がい者にとって経済的自立は重要な課題です。作業所に通えば賃金が貰えるので、一人暮らしを始める方もいます。就労が目標ではなく、離職することなく安定した就労を継続していくことが将来を救います。
ダウン症の方は、自分に合う作業所を探すことが離職を防ぐポイントです。自分が熱中できる仕事内容かどうか、職員の方がダウン症に対して理解があるか、仲の良い他の利用者はいるかどうかなど、さまざまな観点を考慮しつつ柔軟に動いていきましょう。
コミュニケーションの相手が増える
ダウン症の方は、社交的で人懐っこい方が多いと一般的に言われています。そのため、特別支援学校には楽しい思い出を持つ方が多く、仕事中喋ったりふざけたりしてはいけない労働の場では物足りなさを感じることがあるかもしれません。
休み時間は自由ですから、その時間が対人関係面で充実すると、通所のモチベーションになるでしょう。
自分と同程度の知的障がい者が通っていると仲良くなりやすいのではないでしょうか。
ダウン症の方が作業所に通うデメリット
収入が乏しい
作業所で得られる収入は一般就労と比較すると低くなってしまします。特にB型事業所に通うとなると、月1万~2万円程度の工賃しか期待できません。
収入がすべてではありませんが、生活面のことを考えると一般就労した方がいいでしょう。
作業所であっても、地域の高齢者との農作業など、生きがいに繋がるような作業を提供する事業所もあります。家庭の状態を加味して、判断していきましょう。
自由に休める環境は将来に悪影響
無理するのは良くないですが、仕事を自由に休める環境だと悪い甘えが出てしまうかもしれません。
本来は毎日通所して終日働く能力があるにも関わらず、みんな休んでいるから自分も休んでいいんだ、という思いに至るリスクもあります。
働く環境を選ぶ際は、他にどんな方が利用しているかチェックしておくことも重要です。
そして休めない鬱憤が溜まらないよう、家庭での話し合いの場も必要かもしれません。
まとめ|ダウン症の方が作業所を利用する
- 作業所とは就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所、共同作業所(小規模作業所)、地域活動センターの施設などの総称。ダウン症の方の多くはB型事業所で就労する方が多い。
- ダウン症に特化した作業所は、特別支援学校のコネクションを利用すれば探しやすい。特別支援学校に在籍していない場合、知的障がい者を受け入れてくれる作業所を探すところから始めよう。
- 賃金(工賃)は働いた分だけ支払われることがほとんどなので、安定した就労を続けることが重要。
- 作業所に通うメリットとして、経済的自立の一助になることや、コミュニケーションの相手が増えることがある。
- 作業所に通うデメリットとしては、一般就労と比較すると収入が低いことや、自由に休める環境は将来に悪影響となる場合があることが挙げられる。
以上が、ダウン症の方が作業所を利用するにあたり考慮すべき事項でした。
いかがでしたでしょうか。障がい者の法定雇用率は少しずつ引き上げられ、ダウン症の方が活躍する場もこれからどんどん増えていくかもしれません。
さまざまな事例の蓄積データにより、職業訓練の方法も進化していくことでしょう。
最適な生涯就労の場を見つけるために、情報収集を頑張っていきましょう。