うつ病からの復職を考える時、期待よりも不安や恐怖が大きく、なかなか前に進めないという方は多いのではないでしょうか。

「周りの人に迷惑をかけてしまうのではないか…」
体調が徐々に回復してきていても、いざ復職を考えると、不安で押しつぶされそうになることもありますよね。しかし、一人で抱え込まないでください。実は、多くの人があなたと同じように、復職に対して不安や恐怖を感じています。
うつ病からの復職が怖いと感じるあなたに向けて
- うつ病からの復職が怖い3つの理由とは?
- うつ病から仕事復帰するまでの流れ
- 不安を軽減するための休職中の過ごし方
- 復職後に気を付ける3つのポイント
- 復職に役立つ制度や支援とは?
- 復職以外の選択肢も検討しよう
について解説します。
この記事が、あなたの不安を軽くする一助となれば幸いです。
うつ病からの復職が怖い3つの理由とは?
うつ病からの復職を考えるとき、真っ先に浮かぶのは「怖い」「不安」という感情かもしれません。これは決して特別なことではなく、多くの人が同じように感じています。
しかし、なぜ「怖い」と感じるのでしょうか?
ここでは、復職を怖いと感じる3つの理由をご紹介します。 復職を怖いと感じる理由を知り、自分の気持ちを整理することで、前に進むためのヒントが得られますよ。
仕事のプレッシャーへの恐怖
仕事のプレッシャーが、復職への恐怖を引き起こす理由の1つです。うつ病の原因が仕事のストレスやプレッシャーだった場合、同じ環境に戻ることで、「再び同じ苦しみを味わうのではないか?」という恐怖が強くなります。
特に、業務量が多く上司や同僚の期待に応えなければならない職場では、そのプレッシャーが増します。「また失敗したらどうしよう」「また追い詰められるのでは?」といった不安が頭をよぎり、復職への一歩が重くなってしまうのです。
人間関係の不安
長期間の休職を経て復職する場合、職場の人間関係が不安材料になることがあります。「休職して迷惑をかけた」と思うと、周りの目が気になったり、接し方がわからなくなったりして、復職すること自体が怖くなってしまうのです。
また、休職中に職場の人間関係が変わっていた場合、復帰後にうまく馴染めるか不安を感じることもあるでしょう。このように、人間関係の不安で頭がいっぱいになると、復職するのが怖いと思う原因になります。
再発の恐怖
うつ病は再発のリスクが高い病気です。「せっかく回復したのに、また同じような症状が出たらどうしよう」という不安が、復職への一歩を躊躇させる原因となります。
特に、職場環境や業務内容がうつ病の原因となっていた場合、同じ状況に戻ることで「うつ病が再発するのではないか?」と復職への恐怖は大きくなります。
うつ病から復職するまでの流れ
うつ病からの復職を考えるとき、「何から始めればいいのか」「どのようなステップを踏めば安心なのか」が分からず、不安を感じることが多いものです。しかし、復職までの流れをあらかじめ知っておくことで、漠然とした不安を軽減できます。
ここでは、休職してから復職するまでの一般的な流れを解説します。
治療・休養期間
休職中は治療と休養が最優先にして、心身を回復させます。無理をして早く復職しようとすると、再発のリスクが高まるので注意が必要です。
この時期は、1日中寝てしまっても全く問題ありません。罪悪感が頭に思い浮かぶことがあっても、「今は休むことに集中する」という気持ちで、焦らずに休養することが大切です。
主治医から薬を処方されている場合は、指示に従い服用し、症状が安定するまで回復を待ちましょう。
復職に向けた準備期間
この期間は、徐々に生活リズムを整え、復職に向けて準備を行います。
休職中に生活リズムが乱れていると、復職後にストレスを感じやすくなるため、規則正しい生活習慣を取り戻すことを意識しましょう。
具体的には、
- 決まった時間に寝る
- 決まった時間に起きる
- 食生活を整える
- 軽い運動をする
- 身なりを整える
このような規則正しい生活を送ることで、復職後の仕事にスムーズに適応しやすくなります。ただし、いきなり規則正しい生活ができなくても、自分を責める必要はありません。
生活リズムを整える目的は、健康的に社会復帰するための準備です。自分のできる範囲でマイペースに整えていきましょう。
主治医に相談して復職する
復職に向けた準備を続けて自信がついてきたら、職場復帰が可能かどうか主治医に判断してもらいます。医師が「可能」と判断した場合は、復職診断書を書いてもらい職場(事業所)に提出します。復職が正式に決まる前に、「試し出勤制度」があれば利用するとよいでしょう。
試し出勤制度は、一定期間、お試しで出社して職場復帰が可能か様子をみる制度です。この制度をうまく活用できれば、休職後に「元のように働けるだろうか」といった復職への不安を和らげることができます。
うつ病の休職期間については、以下の記事でも詳しく解説しております。
不安を軽減するための休職中の過ごし方
休職中の過ごし方を工夫することで、前向きな気持ちを取り戻すことができます。ここでは、不安を軽減するための休職中の過ごし方を3つ紹介します。
生活リズムを整える
休職中でも生活リズムを保つことが復職への不安を和らげるために大切です。
不規則な生活は体調を崩す原因にもなってしまいます。休職をしてすぐに無理をする必要はありませんが、徐々に生活リズムを整えていけると良いでしょう。
生活リズムを保つには
- 朝起きる時間
- 食事の時間
- 寝る時間
などを一定にすることを心がけましょう。
起床や就寝時間、食事の時間を一定にすることで体内時計が整い、体調が安定しやすくなります。
特に、朝起きた時に朝日を浴びるのがおすすめです。朝日を浴びることは体内時計をリセットする効果があり、生活リズムが整いやすくなります。
適度な運動を取り入れる
自分が可能な範囲で、適度な運動を日常に取り入れてみましょう。特に、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、別名「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促し、気分を安定させる効果があります。
つまり、運動をすることで体と心をリラックスできるため、睡眠の質の向上にも繋がるのです。ウォーキングやジョギングが難しい場合は、家でストレッチやヨガをするのも良いでしょう。
症状の安定やストレス解消のために、自分の可能な範囲で運動を取り入れると効果的です。
前向きな気持ちを保つための習慣を作る
休職中に前向きな気持ちを保つためには、無理のない範囲で楽しいことや興味のあることに取り組むことが有効です。好きなことに没頭することでストレスが軽減し、ポジティブな感情を引き出すきっかけになります。
具体的には、
- 読書
- 映画鑑賞
- 手芸
- 料理
- 新しいことに挑戦する
など、自分が楽しめることを無理のない範囲で取り組んでみましょう。
休職期間中の過ごし方については、以下の記事でも詳しく解説しております。
復職後に気を付けるべき3つのポイント
いよいよ復職が決まったとき、気持ちが高まる反面、「本当にやっていけるのだろうか…」という不安が頭をよぎることは少なくありません。
ここでは、復職後に気を付けるべき3つのポイントを紹介します。ポイントをしっかりと押さえることで、うつ病の再発リスクを下げることにつながります。
無理をしない働き方を徹底する
復職直後は、無理をしない働き方を徹底しましょう。張り切りすぎたり、無理をしたりしてしまうと、プレッシャーが増して再発のリスクが高まります。可能であれば、時短勤務などの制度を利用して、徐々に通常の業務量に戻していく工夫ができると良いですね。
また、業務が多すぎると感じたときは、早めに上司に相談して仕事量の調整をお願いすることも大切です。
治療を継続する
うつ病は再発のリスクが高いです。症状が完全に治ったと思わず、医師の指示に従って治療を続けることが必要です。通院の予定は、あらかじめ職場に伝え、無理のないスケジュールで受診を続けていきましょう。
また、体調が優れない場合は無理をせず、早めに休養を取ることで症状の悪化を防ぐことが可能です。
周りに頼る勇気を持つ
復職後に気をつけるポイントとして、一人で抱え込まずに職場の上司や同僚、家族に頼ることも大切です。
「甘えていると思われたくない」
という気持ちから、全てを一人で抱え込んでしまうことがありますが、これは良くありません。無理をして一人で抱え込むと、プレッシャーが増してストレスが溜まり、うつ病の再発のリスクが高まります。
職場での相談相手を見つけたり、家族にサポートをお願いしたりすることで、心の負担を軽減することができます。良い相談相手が見つからない場合は、主治医やカウンセラー、相談窓口に話してみると良いでしょう。
厚生労働省では、以下のような相談窓口を設けています。
働く人の「こころの耳相談」
「こころの耳」は、職場でのメンタルヘルスに関する情報提供と相談窓口を設けることで、働く人の心の健康をサポートすることを目的としています。メンタルヘルスについて相談したいことがあれば、このような相談窓口を活用することで、適切なアドバイスをもらうことが可能です。
復職に役立つ制度や支援とは?
そんな時に頼りになるのが、復職をサポートしてくれる制度や支援です。これらの制度や制度を知っているだけで、「自分一人で頑張らなくていい」という安心感を得られるため、不安が軽くなります。
ここでは、復職をサポートしてくれる制度や支援を詳しく紹介します。
リワーク(リワーク支援)
リワークとは、うつ病や適応障害などの精神疾患によって休職している方が、職場復帰に向けてリハビリを行うプログラムのことです。
リワークの内容は実施機関によって異なりますが、一般的には以下のような内容が含まれます。
- 病気や障害に関する知識の習得
- ストレス対処法やリラクゼーション技法の習得
- 認知行動療法などの心理療法
- 職場復帰に向けた模擬訓練(軽作業、オフィスワークなど)
- 体力づくりや健康管理
- 職場との連携
- 復職後のフォローアップ
などがあります。
リワークでは、グループワークや再発防止のための学習を通じて、職場復帰に向けた準備をスムーズに整えることができます。詳しく知りたい場合は、主治医や地域の相談窓口に相談してみると良いでしょう。
リワーク支援については、以下の記事でも詳しく解説しております。
地域の相談窓口
各都道府県や市区町村には、精神保健福祉センターや保健所など、うつ病に関する相談窓口が設置されています。これらの相談窓口では、専門の相談員が相談者の悩みや不安について、適切な情報提供やアドバイスをしてくれます。
具体的には、
- 日常生活での困りごと(睡眠、食事、人間関係など)に関する相談
- 経済的な問題や仕事に関する相談
- 各種支援制度(自立支援医療、障害者手帳など)に関する情報の提供や利用のサポート
など、幅広い悩みに対応してもらえます。
サービスを利用したい場合は、各自治体のウェブサイトなどで、相談窓口の連絡先を確認し、電話やメールなどで相談を申し込んでみましょう。
全国の精神保健福祉センターは、以下のリンクから調べることができます。
復職以外の選択肢も検討しよう
そんな悩みを抱えている人にとって、必ずしも職場復帰だけが選択肢ではありません。無理に復職するのではなく、自分に合った働き方を見つけることで、少ない負担で社会復帰を目指すことができます。
ここでは、復職以外の選択肢について紹介します。あなたにとって最適な働き方を考えてみてください。
転職を視野に入れる
「職場に戻りたくない……」という場合は、現在の職場にこだわらず、転職も検討してみましょう。うつ病の原因が職場の環境や人間関係にある場合、同じ職場に戻ることで再発のリスクが高まる可能性があります。
実際に転職を考えるときは、メンタルヘルスに理解のある転職エージェントに相談することがおすすめです。メンタルヘルスに理解のある転職エージェントを選ぶことで、うつ病の方の状況に合わせた求人紹介やサポートを提供してくれますよ。
【うつ病の方におすすめの転職エージェント】
atGP(アットジーピー)
障害者雇用に特化した転職エージェントで、うつ病の方の支援実績も豊富です。専門のキャリアカウンセラーが、あなたの状況に合わせた求人紹介やサポートを提供してくれます。
LITALICO仕事ナビ
障害のある方の就職をサポートしている会社です。それぞれの特性にあった仕事探しをサポートしてもらえます。
dodaチャレンジ
パーソルチャレンジ株式会社が運営する、障害者のための転職・就職サービスです。業界最大級の求人数で、一人ひとりに合った求人を紹介してもらえます。
在宅ワークやフリーランスの道を選ぶ
通勤の負担や人間関係のストレスを減らすために、在宅ワークやフリーランスを検討するのも良いでしょう。在宅ワークなら、通勤のストレスがなく働くことが可能です。また、フリーランスは業務内容や仕事量を自分で調整できるため、無理のない範囲で働くことが可能です。
在宅ワークやフリーランスの具体的な職種としては、
- Webライティング
- データ入力
- プログラミング
- グラフィックデザイン
- 動画編集
- オンライン講師
など、様々あります。「未経験だから難しそう…」という場合は、クラウドソーシングサイトの利用がおすすめです。
クラウドソーシングとは、インターネットを通じて、企業や個人が不特定多数の人々に業務を委託する働き方のことです。クラウドソーシングには、スキルや経験がなくても始められる案件がたくさんあります。
初めは少ない報酬かもしれませんが、実績を積むことで収入を少しずつ上げていくことが可能ですよ。初めての方は、大手サイトのクラウドワークスやランサーズから利用してみると良いでしょう。
- クラウドワークス
- ランサーズ
就労移行支援を利用する
就労移行支援の利用を検討することもおすすめです。
就労移行支援は障がいや病気を抱えた状況で、一般企業への就職を目指す方を支える制度であるため、生活面のサポートから職業訓練、就職活動の支援、就職後の定着支援まで、一貫したサポートを受けられます。
障害者手帳がないと利用できないと思われがちですが、なくても医師の診断や自治体の判断により利用できる場合があるので、まずはお住まいの地域の相談窓口や就労移行支援事業所に直接相談してみましょう。
なお、以下では「実際にどんな事業所があるのか知りたい」という方のために、おすすめの就労移行支援事業所をご紹介します。気になる方はぜひチェックしてみてください。
ミラトレ
ミラトレは、企業が求めるスキルを効率的に習得できる実践的なプログラムが魅力の就労移行支援事業所です。
うつ病でブランクがある方も、模擬職場やインターンシップを通じて仕事の感覚を取り戻せます。
NeuroDive
NeuroDiveは、IT・Web分野の専門スキルを身につけ、その道のプロを目指せる就労移行支援です。
うつ病の症状が出にくい静かで集中できる学習環境と、専門知識を持つスタッフが、あなたのキャリアチェンジを力強く後押ししてくれます。
就労継続支援A型・B型を利用する
無理なく社会復帰を目指すために、就労継続支援を活用するのも有効な選択肢です。
就労継続支援とは、障がいや難病があり一般の会社で働くことが困難な人を対象に、一定の支援や配慮を受けながら働ける場所を提供している福祉サービスです。就労継続支援では、サポート体制が整っているため、うつ病の症状に合わせて無理のない働き方が可能です。
就労継続支援にはA型とB型があり、違いは以下の表の通りです。
A型事業所 | B型事業所 | |
---|---|---|
雇用契約 | あり | なし |
収入 | 月額7〜8万円が給与として支払われる (最低賃金が保証されている) |
月額2〜3万円が工賃として支払われる (令和4年度の工賃の全国平均は時間額243円) |
対象者 | 一般就労は困難だが雇用契約を結んで働ける人 | 雇用契約を結んで働くことが難しい人 |
年齢制限 | 原則として18歳から65歳未満 | 年齢制限なし |
A型事業所 | B型事業所 | |
---|---|---|
雇用契約 | あり | なし |
収入 | 月額7〜8万円が給与として支払われる (最低賃金が保証されている) |
月額2〜3万円が工賃として支払われる (令和4年度の工賃の全国平均は時間額243円) |
対象者 | 一般就労は困難だが雇用契約を結んで働ける人 | 雇用契約を結んで働くことが難しい人 |
年齢制限 | 原則として18歳から65歳未満 | 年齢制限なし |
就労継続支援をうまく利用することで、無理なく社会復帰を目指すことができます。就労継続支援について詳しく知りたい方は、お住まいの市区町村の障がい福祉窓口に相談してみると良いでしょう。
また、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、併せて読むことをオススメします。
まとめ
- うつ病からの復職が怖い理由は、仕事のプレッシャー、人間関係の不安、再発の恐怖などがあり、これらを理解することで不安を整理しやすくなる
- 復職は、治療・休養期間、復職に向けた準備期間、主治医への相談を経て復職することで、無理なく復職を目指すことができる
- 復職への不安を軽減するためには、休職中に生活リズムを整え、適度な運動を取り入れ、前向きな気持ちを保つ習慣を作ることが効果的
- 復職後は、無理な働き方をせずに治療を継続し、周りに頼ることでプレッシャーを軽減でき、安定した働き方を維持することが重要
- 復職以外にも、転職、在宅ワークやフリーランス、就労継続支援A型・B型など、自分に合った無理のない働き方も検討することが大切
復職に対して不安があっても制度や支援をうまく活用することで、少ない不安で復職を目指すことができます。
自分に適した選択肢を選んで、少ない負担で社会復帰を目指しましょう。