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「また眠れない夜が続くようになった…もしかして再発?」
「うつ病が再発したかもしれない…対処法はある?」
このような疑問や不安を感じていませんか?
うつ病は一度治ったように見えても、心と体にはまだ小さな傷跡が残っていることがあり、何らかのきっかけで再発を繰り返す場合があります。
心の重さや体が思うように動かない感覚が戻ってきてしまい、不安に感じていらっしゃる方もいらっしゃいますよね。しかし、早めに適切な対処を行い必要なサポートを受けることで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることができます。
- うつ病の再発率
- うつ病再発のきっかけや原因
- うつ病が再発したときのサイン
- 再発したときの対処法
- 利用できる支援制度
について解説していきます。
あなたの心が少しでも軽くなるよう、一緒に考えていきましょう。
うつ病再発率は60%も?繰り返すほど高まるリスク
うつ病は一度発症すると、再発しやすい病気です。
うつ病の再発率は約60%の方に達し、さらに過去に2回うつ病にかかった人は70%、3回かかった人は90%と、うつ病を繰り返すたびに再発率は高くなります。
また、一般的に治療終了後の2年間は再発リスクが高いとされており、通常の生活に戻った際の変化により、ストレスを感じやすい期間でもあります。
うつ病再発のきっかけは?5つの原因と注意点
うつ病の発症や再発の原因についてはまだ不明な部分が多いですが、主に環境や遺伝、脳機能の異常などが関与していると考えられています。
また、うつ病の再発には、次のような要因も関係しています。
- 自己判断による通院や服薬の中止
- うつ病の原因が解決していない
- 生活習慣の乱れ
- 新たなストレス要因
- 季節的要因
以下では、これらについて順に見ていきましょう。
自己判断による通院や服薬の中止
うつ病が再発する原因としてよく挙げられるのが、自己判断で通院や服薬の中止したことによる再発です。
うつ病の治療は「完全寛解」といわれる、うつ病の症状が完全に消失した状態を目指しますが、症状が概ね回復しても、完全寛解に至るまで一部の症状が残り続けることがあります。
この一部の症状を「残遺症状」といい、主に以下のような症状が挙げられます。
- 睡眠障がい(不眠症や途中覚醒など)
- 認知機能障害
- 集中力の低下
- 抑うつ気分や不安感
残遺症状がある状態で自己判断で服薬や通院を中止してしまうと、治りかけていた脳の神経伝達物質のバランスが再び崩れ、うつ病の悪化や再発の原因となるのです。
うつ病の治療は、主治医の判断に従って最後まで治療を続けることが重要です。
うつ病の原因が解決していない
うつ病の原因となった問題が今も解決されていない場合は、同じ理由でうつ病を再発する可能性が高まります。
例えば、職場の労働環境が原因でうつ病を発症したとします。うつ病の治療のため休職制度を利用してしっかりと休養を取ったとしても、復職後に労働環境が改善されていない場合は、再発を繰り返してしまうかもしれません。
困ったときは、まず信頼できる人に相談してみましょう。少し話してみるだけでも気持ちが楽になることがあります。
生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れが体内リズムや神経伝達物質のバランスを崩し、うつ病の再発リスクを高めることがあります。
例として、以下のような生活習慣はうつ病の再発に繋がることがあります。
- 不規則な睡眠
- 栄養バランスの偏り
- 暴飲暴食
- 運動不足
- 飲酒や喫煙
このような生活が続くと、感情や意欲をコントロールする脳内物質「セロトニン」の減少を招き、結果としてうつ病の再発や抑うつ症状を招いてしまうのです。
また、うつ病の治療中や回復後しばらくの期間は、体力的に余裕がなく生活習慣が乱れやすいことがあります。そのため、あなた自身の体調管理を優先して、無理のない生活を送ることが大切です。
新たなストレス要因
うつ病とストレスは密接に関連しているため、症状が回復した後に新たなストレス要因に直面すると、再発することがあります。
主なストレス要因やライフイベントは以下のようなものがあります。
- 転職や引っ越しによる新しい職場環境への適応
- 経済的な問題
- 家族や友人との別れ
- 生活上のトラブル
ストレスを感じると、体の中で「コルチゾール」というホルモンが副腎皮質から分泌されます。
コルチゾールは通常、肝臓で糖を作ったり、筋肉や脂肪を分解してエネルギーを作ったりする役割がありますが、大きなストレスを受け続けるとコルチゾールが過剰に分泌されてしまい、不眠やうつ病の発症を招くことがあります。
また、過剰なコルチゾールは脳の海馬に悪影響を及ぼし、記憶力や判断力を低下させるとも言われています。
季節的要因(季節性うつ)
一見すると無関係に感じる「季節」と「うつ病」ですが、1984年にアメリカで初めて秋ごろに発症して春に治まるうつ病が報告されました。それ以降は「季節性うつ」や「季節性感情障害(SAD)」として知られるようになり、日本の医療でも広く認識されています。現在では、冬に限らず春や梅雨など、季節による周期的なうつ病として認知されています。
季節性うつ病が起こる主な要因は、主に以下のようなものがあります。
- 秋冬の日照時間の減少
- 春の学校や仕事での環境変化
- 梅雨の湿度の高まり
- 暑さや強い日差し
特に日照時間の減少は脳内でセロトニンの分泌が減り、抑うつ症状を引き起こすことがあります。
早めに気付こう!うつ病再発の9つのサイン
うつ病が再発するときのサインや予兆には、重度のものから自覚しにくいものまでさまざまな種類があり、精神的な症状や身体的な症状、またはその両方が現れることがあります。
ここでは、これらのサインを精神的な症状と身体的な症状に分けて詳しく見ていきましょう。
精神的な症状
うつ病が再発するときに現れる精神的な症状には以下のようなものがあります。ご自身の心の状態を注意深く観察し、早期にサインに気付くことが大切です。
気分の落ち込み
常に心が沈んだような感覚に陥り、晴れやかな気持ちになることが難しくなります。また、日常の些細なことに対しても、まるで常にストレスを感じているかのような状態が続くことがあります。
意欲や興味関心の低下
以前は好きだったことや楽しめていた活動に対して、ほとんど興味がわかなくなることがあります。また、新しいことを始めようとする意欲も失われ、外出することにも消極的になりがちです。
集中力や記憶力の低下
仕事や勉強などの能率が著しく低下することがあります。目の前の作業に集中できず、注意が散漫になったり、頭がうまく働かないような感覚に悩まされたりすることがあります。
自尊心の低下や悲観的な思考
自分に自信が持てなくなり、自己評価が低下します。また、物事を無意識のうちに悪い方向に考えてしまうなど、悲観的な思考パターンに陥りやすくなります。
身体的な症状
うつ病の再発は、心の変化だけでなく、体にも様々なサインとして現れます。
例えば、寝つきが悪くなる、疲れやすくなる、原因不明の痛みを感じるなど、普段と違う体の不調が続く場合は、注意が必要です。
睡眠の変化
寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたり、朝早くに目が覚めてしまって眠れないなど、睡眠のパターンが変わることがあります。質の良い睡眠がとれず、朝に起きられない・日中に強い眠気に襲われるなどの症状が現れやすくなります。
疲れやすさとだるさ
少し体を動かしただけでひどく疲れてしまったり、十分に休んでも疲れがとれない、体がだるいといった症状が続いたりすることがあります。意欲も低下し、活動的になれない状態です。
自律神経の乱れ
安静にしている時でも、急に動悸や息苦しさを感じたり、めまいを感じたりすることがあります。これらは自律神経の乱れによって起こる身体症状の一例です。
原因不明の体の痛み
頭痛、肩こり、関節の痛みなど、はっきりとした原因がないのに体のあちこちが痛むことがあります。慢性的な痛みは、日常生活の質を著しく低下させる可能性があります。
胃腸の不調
食欲不振、吐き気、胸やけ、便秘や下痢など、胃腸の調子が悪くなることがあります。食事を楽しめなかったり、消化不良による不快感に悩まされたりすることも少なくありません。
うつ病が再発した時の4つの対処法
うつ病の再発は、早期発見と適切な対処が重要です。もし「再発したかもしれない」と感じたら、一人で抱え込まず、以下のような対処法を試してみましょう。
信頼できる人に相談する
まずは、家族や友人など、信頼できる人に自分の状況を話してみましょう。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがありますし、客観的な意見やサポートが得られることもあるでしょう。
また、身近に相談できる人がいない場合は、後述の支援機関を利用してみてください。
早めに医療機関を受診する
心療内科や精神科を受診し、専門家の診断とアドバイスを受けましょう。早期に適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることができます。
また、再発の場合、以前うつ病の診断を受けた病院に再度かかるのが一般的ですが、状況によってはセカンドオピニオンを検討することも可能です。別の医師の意見を聞くことで、より自分に合った治療法を見つけることができるかもしれません。
生活習慣を見直す
うつ病の再発予防には、生活習慣の見直しが大切ですが、無理にすべてを変えようとすると、かえって負担になることもあります。まずは自分のペースで、段階的に生活習慣を改善していきましょう。
睡眠の質の向上させる
睡眠は、心身の健康を維持する上で最も重要な要素の一つです。毎日一定の時刻に就寝・起床し、十分な睡眠時間を確保するよう努めましょう。例えば、就寝前に軽い読書やマッサージをする、入浴は就寝の1~2時間前に済ませるなどの工夫が考えられます。
バランスの取れた食生活
栄養バランスの偏りは、心身の不調を招く可能性があります。1日3食、規則正しい時間に食事を摂ることを基本とし、主食・主菜・副菜をバランス良く組み合わせるよう心がけましょう。無理なく始められるように、まずは、「朝食にヨーグルトをプラスしてみる」「夕食に野菜を一品増やしてみる」など、できることから始めるのが大切です。
適度な運動の習慣化
適度な運動は、ストレス軽減や気分転換に効果的であり、うつ病の再発予防にも寄与します。ウォーキングやジョギング、ヨガなど、ご自身に合った運動を、無理のない範囲で継続的に行うことを推奨します。運動強度や時間については、専門家(医師や理学療法士など)に相談してみましょう。
ストレスの原因から距離を置く
うつ病の再発には、ストレスが大きく関係していることがあります。症状を悪化させないためには、ストレスの原因を特定し、適切な対処をすることが大切です。
具体的には、仕事の負担が大きい場合は、上司に相談して業務量を調整してもらったり、部署異動を検討したりすることが考えられます。人間関係がストレスの原因であれば、その相手との接触を減らす、または距離を置くための具体的な方法(例えば、メールでのやり取りを最小限にする、会う回数を減らすなど)を考えてみましょう。
また、物理的に距離を置くことが難しい場合は、考え方を変えることも有効です。「~すべき」という考え方を「~できたらいいな」というように柔軟に捉え直したり、相手の言動を個人的な攻撃と受け止めず、「その人にも事情があるのかもしれない」と客観的に考えてみたりすることで、ストレスを軽減できる場合があります。
こういったストレスの要因を対処するための行動や手法のことを「ストレスコーピング」といいます。
ストレスコーピングについては、以下の記事にて詳しく解説しています。
うつ病が再発したときに利用できる3つの支援制度
うつ病が再発したかもしれないと感じたとき、一人で抱え込まずに、利用できる支援を活用することが大切です。早期に適切なサポートを受けることで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることができます。ここでは、うつ病が再発した際に利用できる主な支援についてご紹介します。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、各都道府県・指定都市に設置されている、精神保健福祉に関する専門機関です。うつ病を含む、さまざまな精神疾患や心の健康問題に関する相談、支援、普及啓発活動などを行っています。
センターには、精神保健福祉士や臨床心理士などの専門員が在籍しており、うつ病などの精神疾患に関する不安や悩み、利用できる制度やサービス、社会復帰に向けた具体的なステップなど、さまざまな支援を受けることができます。
また、無料で相談をすることができ、電話相談や直接面談など、ご自身の状況や希望に合わせて相談方法を選ぶことができます。
自立支援医療制度
自立支援医療制度は、精神疾患の継続的な治療にかかる医療費を軽減する制度です。
通常、保険診療では3割の自己負担が必要ですが、この制度を利用すると原則1割に軽減されます。さらに、世帯所得に応じて月ごとの自己負担上限額が設定されているため、継続的な治療が必要な場合でも安心です。うつ病も対象疾患に含まれており、再発時の経済的負担を大幅に軽減できます。
自立支援医療制度の手続き方法や内容は、以下の記事にて詳しく解説していきます。
障害年金
うつ病の再発などで働くことが困難になった場合、生活を支える制度として「障害年金」があります。
障害年金には2種類あり、自営業者や学生など国民年金に加入している方が対象となる「障害基礎年金」、会社員や公務員など厚生年金に加入している方が対象となる「障害厚生年金」があります。
うつ病の場合、どちらの年金も受給できる可能性がありますが、初診日や保険料の納付状況、障害の程度など、いくつかの条件を満たす必要があります。ご自身の状況で受給できるかどうか、まずは主治医に相談し、その後、必要に応じて社会保険労務士や年金事務所に相談することをおすすめします。
まとめ
- うつ病は再発率が6割と高く、繰り返すと重症化や治療長期化のリスクがあるため、早期発見と適切な対処が非常に重要。
- 自己判断による治療の中止や生活リズムの乱れ、過度なストレスなどは、うつ病再発のきっかけになる。
- うつ病が再発したときのサインとして、精神面では気分の落ち込みや意欲、集中力の低下などがあり、身体面では疲労感や睡眠障がい、自律神経の乱れなどの体の不調がある。
- うつ病再発の対処法として、信頼できる人や医療機関に相談することや、生活習慣の改善、ストレスの原因を対処することなどが挙げられる。
- うつ病が再発したときに利用できる支援制度として、精神保健福祉センターや自立支援医療制度、障害年金などがある。
うつ病の再発は、決して珍しいことではありません。そして、適切な対処をすれば、必ず乗り越えられるものです。
もし、「再発したかもしれない」と感じたら、一人で抱え込まず、まずは信頼できる人に話してみてください。話すだけでも気持ちが楽になることがありますし、客観的なアドバイスをもらえることもあります。
また、うつ病の再発を防ぐためには、関係者からの理解も必要になります。
以下の記事でも、伝え方について詳しく解説しております。
異変を感じたら、早めに専門家や医療機関のサポートを受けることが重要です。あなたのペースで、ゆっくりと、そして確実に、回復への道を歩んでいかれることを願っています。