あなたは本来やらなくてはいけないことがあるにも関わらず、

「やる気が出たときにやろう」
と予定を先延ばしにしてしまった経験はありませんか?
ADHDの方が抱えやすい悩みの1つに「先延ばし癖」があります。場合によっては、仕事や生活に支障が出たり思わぬ失敗に繋がったりすることもあって、非常に厄介な問題ですよね。
- ADHDの方が物事を先延ばしにしてしまう原因
- すぐにできるADHDの先延ばし対策法3選
- どうしても難しい場合は先延ばしにせず医師に相談
について解説していきます。
ADHDの方が「先延ばし」をしてしまう3つの原因
ADHD(注意欠如・多動症)のある方が物事を先延ばしにしてしまう原因として、
- 不注意性
話を集中して聞き続けることができない、細かいミスが多い など - 多動性
落ち着きがない、じっとしていられない など - 衝動性
○○したいと思ったことを熟考せず行ってしまう、癇癪を抑えられない など
上記のADHD特有の3つの特性がそれぞれ影響することで、計画性に関わる問題が出てくるためだと考えられます。
この項目で詳しく見ていきましょう。
今やりたいことを優先してしまう
ADHDの方が予定を先延ばしにしてしまう理由として特によく見られるのは、
といったように、今やりたいと思っていることを優先してしまうパターンです。ADHDの方の脳は、期待感や欲求に関わる脳内物質「ドーパミン」が不足しやすい特徴を持っています。
ドーパミンは「今やりたいこと」に対して生成されやすく、やる気や集中力を高める効果があります。要するにドーパミンが不足している脳では「やらなければいけないこと」よりも「今やりたいこと」に飛びつきやすくなるのです。
この特性によりADHDの方は衝動性が高まりやすく、やる気や集中力が適切にコントロールできない傾向にあります。結果として予定を後回しにして、スケジュール通りに進まないことが多くなってしまいます。
嫌なことから逃げる心理が働きやすい
「嫌だ」と思ったことからすぐに逃げようとする心理が働きやすい点も、ADHDの先延ばし癖につながっています。
予定を必要とする物事が時間や労力を必要とする場合、「面倒だな」「しんどいな」と思ってしまうことがありますよね。このような負の感情を抑制して行動に移すことを苦手とするのもADHDの特性です。
ADHDの方は「先のことを考えて今頑張ろう」という長期的な視野を持つことが難しいため、「面倒だから後回しにしよう」という気持ちが優先されやすくなります。一度後回しにしたことを行おうとするのはもっと大変なので、更なる先延ばしを繰り返してしまいがちです。
先延ばし癖がつく主な要因の1つと言えるでしょう。
過去の失敗経験で行動のハードルが上がる
ADHDの方は過去にこのような失敗経験を積んでいることが多く、それによって行動のハードルが高くなりやすい傾向があります。
やっかいなことに、一度ハードルが上がってしまうと、
- 特定の物事に対する苦手意識から「後でやろう」という先延ばしに繋がる
- 期限が近づくことでストレスやプレッシャーが増加する
- 焦りや不安からパフォーマンスが低下して、失敗を繰り返してしまう
- 苦手意識がさらに強まり、行動に移すハードルがさらに高くなる
このような悪循環に陥りやすく、多くの場合なかなか抜け出せません。
最初から「できない」と考えてしまう癖がつき、身動きが取れなくなってしまうこともあります。そうならないための対策が必要でしょう。
すぐできる!ADHDの先延ばし対策法3選
ADHDの先延ばし癖は、発達障がいの特性に基づいた難しい問題です。「自覚していても改善できない」からこそ、大きな悩みに繋がってしまいます。
しかし、先延ばし癖は、
- 状況を書き出して整理する
- 「やることリスト」を活用する習慣をつける
- 失敗しても成功と結びつける
上記の3つをきちんと意識すれば大きく改善できる可能性があります。
この項目では、これらの対策方法について詳しく解説していきます。
先延ばしを繰り返してしまう理由を整理する
ADHDの先延ばし癖の対策として、
- 先延ばしにしてしまった理由
- 先延ばしにしないほうがいい理由
の2つを「感情」と「理屈」に分けて紙やアプリなどに書き出すという方法があります。
ADHDの方は、先延ばしを繰り返しやすい物事に対して、
「過去に失敗した経験や苦手意識があるのか?」
などの状況を整理できていない可能性があります。
整理できていないのなら、それらを書き出してしまうことで具体化して、整理してしまいましょう。見返すことで先延ばしの原因を自己分析することもできます。今後どうすればいいのか、道筋を明確にする大きな助けにもなるのでオススメです。
「やることリスト」を作成する
今やりたいことを優先して予定を後回しにしてしまうADHDの方の先延ばし癖には、「やることリスト」の作成が改善に効果的です。「どうやってやればいいのかわからない」「面倒くさそう」と思った方でも大丈夫です。
下記の4つの手順だけ意識してやってみましょう。
- 「やることができた」「何か思いついた」時、すぐに書き出す(紙でもアプリでも可)
- 1つの行動を動詞で、ワンアクションで完了する形に整える
- 優先順位と所要時間を書く
- 「達成した」もしくは「不要だった」と判断したらなるべく気持ちのいい形で消す
このように、やることリストを作成してすぐに見返せる状態にすることで、予定の把握が簡単になると共に、一目でやることの優先順位が分かるようになります。
「何からやるべきか」を把握できれば、先延ばし癖の改善に役立つはずです。ぜひ参考にしてみてください。
「失敗は成功のもと」という価値観を身に付ける
先述の通り、ADHDの方は「失敗するかもしれない」というネガティブな考えやイメージを抱えやすいですが、失敗経験の中から「成功した部分はなかったか?」を見出す習慣を作ることが、先延ばし癖の改善に効果的です。
失敗は成功のもとという言葉の通り、
- 全体の失敗でなく、失敗の中にある小さな成功に注目する
- 失敗を繰り返して改善していくという意識を持つ
- 失敗しても「なぜ失敗したのか」をきちんと理解できたなら成功と考える など
このような価値観を身に付けられると、自然とやるべきことに取り掛かれるようになります。
失敗しない人はいません。失敗を過度に恐れるのではなく、「失敗してもいい」「失敗を楽しもう」と前向きに捉えましょう。それが成功体験を得ることにも繋がり、新しい行動へ移るきっかけになります。
少しずつで良いので参考にしてみましょう。考え方1つで、あなたの行動が大きく変わるかもしれません。
悩みは先延ばしにせず専門の医師に相談しよう
結論として、ADHDの方の先延ばし癖は解決するべき問題だと言えます。先延ばし癖がついてしまうとその改善自体も先延ばしにしやすく、悪循環に陥りやすくなるからです。
しかし、生活に必要な食事や買い物などまで先延ばし癖が浸透していると、自力での改善が難しいこともありますよね。その場合、問題を1人で抱え込まず、早めに専門の医師に相談することが大切です。
ADHDは先天性の障がいであるため完治は難しいですが、近年ではADHDの研究が進んできており、
- 医師と共同でやることリストを作成する
- 意欲や集中力を維持しやすい環境の調整
- ADHDの特性を緩和させる薬の処方
などの対処によって先延ばし癖が改善される場合があります。
ADHDには個人差があります。特性の理解が難しくて「意味がない」と思うこともあるかもしれません。しかし、困っていることをきちんと伝えれば、専門医が悩みへの対処や方法を一緒に考えてくれます。
病院の選び方は、下記の記事が参考になるでしょう。
病院に行くのは不安がある方や、そこまで深刻ではないけど相談したい場合、発達障がい者支援センターでの相談も助けになるはずです。
発達障がい者支援センターについては、下記の記事で解説しています。
先延ばしにせず、一歩踏み出してみましょう。その一歩があなたの救いになるはずです。
まとめ|ADHDの先延ばし癖と対策
- ADHDの方が物事を先延ばしにしてしまう原因は、その特性である「衝動性」「多動性」「不注意性」がそれぞれ影響することで「今やりたいことを優先してしまう」「嫌なことから逃げる心理が働きやすい」「過去の失敗経験で行動のハードルが上がる」などの問題が生じる点にある。
- ADHDの方の先延ばし対策としては「先延ばしにしてしまう理由を整理する」「やることリストを作成する」「失敗は成功のもとという価値観を身に付ける」という3つの対策が有効。
- どうしても自力での改善が難しいと思ったら、絶対に先延ばしにせず、早めに専門の医師に相談することが大切。
ADHDの方は、脳の特徴や過去の経験などから物事を先延ばしにする癖がある方が多いです。
本記事で述べた対策を実践してもうまくいかない、仕事や生活に支障が出るくらい物事を先延ばしにしてしまう、などの困りごとがあれば、医師に相談してみましょう。病院に不安がある場合、発達障がい者支援センターのような相談窓口でも大丈夫。まずは一歩踏み出してみましょう。
この記事があなたの助けになることを願います。