発達障害の方は、「文面なら問題なく理解できる内容も、口頭で説明されると理解が難しくなる」という特性を持っていることが少なくありません。
特に、大人の発達障害を持ちながら働いている方の場合は、こうした特性に悩まされる機会も多いでしょう。この記事を読んでいるあなたも、次のようなお悩みをお持ちではありませんか?
「口頭で、一度に多くの指示されると思考が止まってしまう…」
口頭の指示が理解できないことで働きにくさを感じたり、なぜ理解できないんだろうと思い悩んでしまったりすることもありますよね。
- 口頭での指示が理解できないのは大人の発達障害のせい?
- 口頭での指示が理解できない原因
- 職場で口頭の指示が理解できないことによる困りごと
- 大人の発達障害でも職場で口頭での指示を理解する方法
上記について解説いたします。口頭での指示が理解できずに悩んでいる方や、身近に当事者がいる方は、ぜひ参考にしていただけると幸いです。
口頭での指示が理解できないのは大人の発達障害のせい?
口頭での指示が理解できないのは、大人の発達障害の可能性が高いです。
発達障害と呼ばれる「自閉スペクトラム症(ASD)」や「注意欠陥多動性障害(ADHD)」では、相手の言っていることが理解できない、人の話を理解するのに時間がかかるというような症状がしばしば見られます。
例えば、
- 長い口頭での指示に頭が追いつけない
- 文字では理解できるが、口頭になると何回も聞き返してしまう
- 言葉は聞こえるのに頭に入ってこなくて、理解に時間がかる
というように、発達障害は耳からの情報が苦手という特性があります。職場において口頭の指示が理解しづらく、仕事に支障が出ている方は、大人の発達障害の可能性が高いでしょう。
また、大人の発達障害以外では「聴覚情報処理障害(APD)」の可能性も考えられます。聴覚情報処理障害は、雑音の中での聞き取りが苦手、情報が少なすぎると理解できないというような症状が見られます。
口頭での指示が理解できない原因
口頭での指示が理解しづらい原因となりうる障がいは、いくつかあります。ここでは、下記の3つの症状について解説します。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 聴覚情報処理障害(APD)
順に見ていきましょう。
自閉スペクトラム症(ASD)
ASDの方が、口頭での指示を理解するのに時間がかかる理由のひとつは「共感能力が低い」ことが挙げられます。共感することが苦手なために、相手の言葉から指示を汲み取りにくく、人の話を理解するのに時間がかかってしまうことがあるでしょう。
また「曖昧な表現を理解するのが苦手」という特性もあります。そのため「あれ今日中にやっといて」「あそこにしまっておいて」というような曖昧な表現が含まれる指示は、理解が難しくなります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
ADHDの方が、口頭での指示を理解するのに時間がかかる理由としては「ワーキングメモリが低い」ことが挙げられます。ワーキングメモリとは、作業や動作を一時的に記憶する際の容量のことを指します。
ADHDは、このワーキングメモリが低いことが特性のひとつで、人の話を理解するのに時間がかかることがあります。
また「注意散漫になってしまう」という特性があるため、特定の物事に集中し続けることが難しくなります。そのため、口頭では情報を聞き逃してしまうケースも考えられるでしょう。
聴覚情報処理障害(APD)
聴覚情報処理障害の方が、口頭での指示を理解するのに時間がかかる理由としては「言葉が抜けてしまう」ことが挙げられます。聴覚情報処理障害では、雑音の中や小さな声で話される状況では、相手の言葉が抜け落ちて聞こえてしまうのです。
そのため、こうした状況下では大人の発達障害でなくとも、口頭での指示が理解できないことがあります。
ASDやADHD等をはじめとした発達障害の特徴につきましては、下記の記事でも詳しく解説しております。
職場で口頭の指示が理解できないことによる困りごと
職場で口頭の指示が理解できない場合、本人としては真面目に真剣に取り込んでいるつもりでも、さまざまな困りごとが発生してしまいます。
大人の発達障害で耳からの情報が苦手な場合、どんな困りごとがあるのでしょうか。
何回も同じことを聞き返す
口頭での指示が理解できないことで、何回も同じことを聞き返してしまうことがあります。本人はしっかり聞き取ろうとしているつもりでも、相手の言っていることが理解できずに、何回も同じことを聞き返してしまうようです。
その結果「人の話聞いてるの?」「なんで理解できないんだ!」と、怒られてしまうこともしばしばあり、働きにくさを感じる大きな要因となっています。
怠けていると思われる
口頭での指示が理解できずに作業を進められなかったり、ミスを繰り返してしまったりすることで、怠けていると思われてしまうこともあります。一生懸命頑張っている本人にとっては、とても辛い状況ですよね。
これが原因となって社内で陰口を言われ、人間関係が悪化して職場を退職してしまう、なんてこともあるようです。
仕事に手を付けられない
口頭での指示が理解できずに、何をすべきか分からず、仕事に手を付けられないこともあります。仕事に手を付けられないことで「アイツはいつもサボっている」と、決めつけられてしまうこともあるかもしれません。
大人の発達障害でも職場で口頭での指示を理解する方法
大人の発達障害で人の話が理解できないと診断された方は、なんとか改善したいと強く思っているでしょう。
耳からの情報が苦手でも対策できることはいくつかありますので、次の項目で紹介いたします。
メモをとる
口頭での指示を理解するのに時間がかかる場合は、積極的にメモをとりましょう。メモをとることで、口頭で伝えられた情報を視覚的に整理することができるため、大人の発達障害の方でも理解しやすくなります。
また、ASDの影響でメモをとることに集中して話を聞けなかったり、聴覚情報処理障害で言葉が抜けてしまったりする場合は、ボイスレコーダーを利用することも有効です。
職場の方に事情を伝える
職場の方に事情を伝えることも、口頭での指示を理解する方法として挙げられます。職場の方に事情を伝えることで、指示を分かりやすく伝えてくれるきっかけになるかもしれません。
事情が伝われば、指示をひとつずつくれたり、ゆっくりと指示を出してくれたりと、指示の出し方を変えてくれる可能性もあります。言い出しにくいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一つのきっかけとして、ぜひ試してみてください。
自分なりのマニュアルを作成する
自分なりのマニュアルを作成して、それに当てはめながら指示を聞くという方法もおすすめです。例えば「いつ・どこで・なにをする」というような、一目で指示内容が分かるようなマニュアルも良いでしょう。
そうすればメモをする時間を省けますし、耳からの情報が苦手な場合でもメモをとりやすく指示を理解しやすくなります。マニュアルの作成方法に関しては、自分が必要だと思うものをシンプルにまとめたものを取り入れてみましょう。
情報や予定の視覚化に関する対処法につきましては、下記の記事でも詳しく解説しております。
まとめ|口頭での指示を理解するには
- 発達障害では、往々にして人の話を理解するのに時間がかかる症状がみられる。職場で口頭での指示が理解できず支障が出ている方は、大人の発達障害の可能性が高い。
- ASDの場合は曖昧な表現を理解しづらい特性や共感性の低さ、ADHDの場合はワーキングメモリの低さや注意散漫さが、口頭の指示を理解できない主な原因となる。
- 口頭の指示が理解できない場合、同じことを聞き返さざるを得なくなったり、仕事がスムーズに進められなかったりするため、周りからの評価にも影響してしまう可能性がある。
- 大人の発達障害の方が口頭の指示を理解するためには、メモを取る、職場に事情を説明して配慮を求める、自分なりのマニュアルを作成するといった方法が有効。
発達障害の方の多くは、耳からの情報が苦手で、口頭での指示を理解しにくいという特性を持っています。しかし、対処法を知ることで、多少なりとも口頭での指示を理解しやすくなり、仕事でも力を発揮できるでしょう。
決して後ろ向きに考えてしまわずに、自分のできることをできる範囲内でこなしていくことが大切です。ぜひ、これを機に前向きに仕事に取り組んでみてくださいね。