統合失調症で働いている人の割合は?働けない方の支援制度も解説

KAORUKO

「他の統合失調症の方がどのように働いているのか知りたい。」
「今は働くことができないため、生活のため支援を受けたい…」

と考えている方も多いのではないでしょうか。

統合失調症は、さまざまな要因によって思考をまとめることが難しくなる精神疾患です。およそ100人に1人の割合で発症するとされており、珍しい病気ではありません。

近年では、統合失調症を含む精神障害者の雇用が増加していますが、障がいの程度によっては、就職しても働き続けることが難しいと考えている方もいるでしょう。

統合失調症で働くことができない方に対して、多くの公的な支援制度が用意されています。

安定した生活を手に入れ、病気の治療に専念するため、これらについてよく理解しておきましょう。

  • 統合失調症を含む精神障害者はどのように働いているのか
  • 統合失調症の方が働けなくなる理由
  • 統合失調症で働けない方が利用できる支援制度

について解説していきます。

統合失調症の方はどのように働いているのか?

グラフとスマホとPC(青系)

統合失調症の方にとって、「どのように働いて収入を得ていくか」は重要な問題です。同じような境遇にある方がどうしているのか気になっている方も多いでしょう。

厚生労働省の調査データをもとに、統合失調症の方がどのように働いているのかご紹介します。

働いている障がい者のうち、統合失調症の方の割合

令和4年時点で民間企業にて働いている障がい者の数はおよそ60万人を超え、過去最高となりました。

そのうち、統合失調症などを含む「精神障害者」の就業率は、前年から18.7%増の約13万人と、特に大きく数字を伸ばしています。

また、令和5年時点で働いている精神障害者のうち、疾病別の割合は下記の通りです。統合失調症の方は2番目に多く、12.2%を占めています。

雇用されている精神障害者 疾病別の割合(令和5年時点)

統合失調症
12.2%
躁鬱そううつ
17.0%
てんかん
6.3%
その他
16.6%
不明・無回答
47.9%

精神障害者が就いている職種

統合失調症を含む、精神障害者の方が働いている職種の割合は下記のようになっています。

雇用されている精神障害者 職種別の割合(令和5年時点)

事務
29.2%
専門的・技術的職業
15.6%
サービス
14.2%
運搬・清掃・包装等
11.1%
その他・無回答
30.0%

事務系の職種を選択する方が最も多いことがわかります。

精神障害者の労働時間

こちらは、精神障害者の方が働いている時間のデータです。

雇用されている精神障害者 週所定労働時間別の割合(令和6年時点)

30時間以上
56.2%
20時間以上
29.3%
20時間未満
8.4%
20時間未満
2.7%
無回答
3.3%

一般の方より短い時間で働いている方も多いことがわかります。

統合失調症の方が働けなくなる理由とは

ベンチで頭を抱えるビジネスマン

統合失調症でも、病状が安定し、医師に就労できると判断された方は働くことが可能です。しかし、症状によっては今すぐ働くことが困難な方も少なくありません。

統合失調症の方が働きづらさを感じる、主な理由を見ていきましょう。

物事に集中しづらい

統合失調症でみられる「幻聴」や「幻覚」といった症状によって周囲が気になってしまい、物事に集中しづらくなります。

薬物治療によってある程度は抑えることができますが、体調によってはこれらの症状が表れることがあります。働けなくなる原因の一つです。

意欲が低下しやすい

幻覚や幻聴などが落ち着いた頃にみられやすいのが「意欲の低下」「無気力」の症状です。これにより、就職に向けた活動に意欲的に取り組むことが難しい方も多いでしょう。

就職できても、欠勤や遅刻が増えてしまう可能性があります。

頭が働きづらくなる

統合失調症の後期には、基礎的な思考能力が低下する「認知機能障害」が多くみられます。

認知機能障害とは言葉を記憶したり、物事に注意を向けたり、それに基づいて行動を組織したり、実際の作業を行うことに困難を来す状態です。つまり、知覚機能、記憶機能、注意機能、実行機能などの脳機能における障害と言えます。認知機能障害とは|大森病院 メンタルヘルスセンター(イル ボスコ)|東邦大学医療センター

その影響で、一般的な業務をこなすことが難しくなることがあります。物覚えが悪くなったりミスが増えたりすることに周囲の理解が得られず、やる気がないと勘違いされるケースもあります。

疲れやすい

思考がまとまりづらくなる症状により、統合失調症の方は通常の生活を送るだけでも疲れやすくなります。また、長い療養期間を要するため、体力が低下している方もいるでしょう。

そのため、一般の方と同じ時間・内容で働くことが体力的に難しく、働きづらさの原因となることがあります。

統合失調症で働けない方が利用できる支援制度・もらえるお金は?

サポートイメージ

統合失調症の方に向けて、さまざまな公的支援制度が用意されています。上記のような理由により今すぐ働くことが困難な方は、これらをうまく活用しましょう。

具体的にどのような支援が受けられるか、ご紹介していきます。

生活保護

統合失調症で就労が困難な場合、生活保護を受給することができます。生活保護には「障害者加算」という制度があり、障がいの程度に応じて追加でお金を受け取ることも可能です。

ただし、生活保護の受給には下記のような条件があります。

  1. 収入が最低生活費より少ない
  2. 親族からの援助が受けられない
  3. 持ち家や車などの資産を持っていない

また後述の障害年金と併せて受給することもできますが、その場合はそれぞれ満額ではなく、調整された金額が支給されます。

生活保護に関する詳細は、下記の記事をご覧ください。

障害年金

障害年金は、病気や怪我により日常生活に支障が出ている方にお金を支給する制度です。原則、65歳未満の方が対象となります。

障害年金には2つの種類があります。初めて受診した際、国民年金に加入していた方は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた方は「障害厚生年金」の対象です。

また、障がいの程度によって1級〜3級に分類されます。この分類および年金の種類に応じて支給額が変わります。

障害等級表|日本年金機構

自立支援医療(精神通院医療)

自立支援医療(精神通院医療)とは、統合失調症などの精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。健康保険の自己負担は3割ですが、自立支援医療制度を利用すれば自己負担を1割にまで軽減することができます。

なお、対象となるのは通院による継続的な治療を必要としている方であり、入院する方は対象外となります。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、障がいのある方に交付される「障害者手帳」のひとつです。統合失調症などの精神疾患により、生活に制約がある方が取得することができます。

この手帳を取得することで、下記を始めとしたさまざまなサービスを受けることができます。

  • 公共料金の割引
  • 所得税の控除
  • 住民税の控除
  • など

なお、自治体により受けられるサービスの内容は異なるため、詳しくはお住まいの市区町村にある障害福祉課などの窓口へお問い合わせください。

特別障害者手当

重度の障がいによって日常生活で常に介護が必要な方は、特別障害者手当の支給を受けることができます。20歳以上の自宅で生活する方が対象となります。施設に入所されている方や3か月以上入院している方は受給できません。

支給額は一律で、令和6年4月以降は月額28,840円となっています。

特別障害給付金

特別障害給付金とは、初診日に国民年金に任意加入していなかったため、障害年金を受け取ることができない障がい者の方に向けた制度です。

支給の対象となるのは、次の2つの条件のうち、いずれかを満たした方になります。

  1. 平成3年3月以前に国民年金任意加入対象だった学生
  2. 昭和61年3月以前に国民年金任意加入対象だった被用者等の配偶者

支給額は毎年見直されますが、令和6年度は下記の通りです。

  • 障害基礎年金1級相当の方:月額55,350円
  • 障害基礎年金2級相当の方:月額44,280円

特別障害給付金制度|日本年金機構

まとめ|統合失調症で働く方の割合と利用できる支援制度

  • 障がい者の法定雇用率は年々増加しており、特に精神障害者の就業率が大きく数字を伸ばしている。働く精神障害者のうち、疾病別割合では統合失調症の方は2番目に多い。
  • 労働時間は一般の方より短い時間で働く方も多い。
  • 統合失調症の方が働けなくなる理由はいくつかあり、「幻覚・幻聴によって周囲が気になり物事に集中できなくなる」「幻覚や幻聴が落ち着いても、意欲の低下・無気力になってしまう」「認知機能障害によって基礎的な思考力が低下し、頭が働かず、通常の生活を送るだけでも疲れやすくなる」などがある。
  • 統合失調症で働けない方が受けられる支援としては、「生活保護」「障害年金」「自立支援医療(精神通院医療)」「精神障害者保健福祉手帳」などがある。

統合失調症の症状は人によって大きく異なります。統合失調症を含む精神障害者の雇用が年々増加している一方、症状が重く長期の療養期間が必要となる方も少なくありません。

今すぐ働くことができなくても焦る必要はありません。病状が安定しないうちに無理をして仕事をすることで、心身の調子が悪化するケースが多いです。

ここまでに紹介した支援制度を参考にし、自分に適用する支援を受けながら治療に専念し、将来的な社会復帰を目指しましょう。

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