発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の傾向があるものの判断基準に満たないため発達障害の確定診断がされていない状態のことです。
グレーゾーンだからといって症状が軽いわけではなく、日常生活や仕事をするうえで困難を感じることや、周囲から理解されにくいことも多くあるでしょう。
さまざまな福祉サービスを受けられる障害者手帳を取得したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
「発達障害グレーゾーンでも受けられる支援はあるのかな……?」
と考えてはいませんか?
- 発達障害グレーゾーンの方が確定診断を受けるコツ
- 障害者手帳の申請方法と申請のポイント
- 障害者手帳がなくても利用できる支援サービス
について解説していきます。
発達障害グレーゾーンの方が確定診断を受けるコツ
発達障害グレーゾーンの方は、グレーゾーンのままでは障害者手帳を取得することはできません。障害者手帳を申請するには、医師から発達障害であると確定診断を受ける必要があります。
過去の診断でグレーゾーンだった方が確定診断を受けるには、次のようなコツがあります。
問診で正確な説明をするための準備
発達障害の診断においては、
が重要な判断基準になります。
そのため、状況の説明不足や幼少期の情報不足があった場合、グレーゾーンと診断されてしまう可能性があります。
確定診断を受けるには、現在の困りごとや辛かった状況、幼少期の特性を正確に伝えられるように準備しておくことが重要です。悩みや具体的なエピソードをメモなどに記録しておくと良いでしょう。
また、幼少期の記憶が曖昧な場合や第三者からの客観的な情報がある場合は、親や幼少期を知る方に付き添ってもらったり、母子手帳や連絡帳、通知表などの資料を持参したりするとよいでしょう。
セカンドオピニオン
発達障害の診断には一定の基準がありますが、最終的にはかかりつけ医の判断によるところが大きいです。発達障害の確定診断が受けられなかった場合は、セカンドオピニオンを受けることも検討しましょう。
新たな受診先を探す際は「発達障害者支援センター」に相談することもおすすめです。詳しくは下記の「発達障害グレーゾーンの方が利用できる支援サービス」内で説明しています。
発達障害の方が障害者手帳を申請する方法
障害者手帳には、「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3種類があります。そのうち発達障害のある方が申請できるのは「精神障害者保健福祉手帳」です。
※知的障害を伴う発達障害の場合には「療育手帳」を取得する場合もあります。
精神障害者保健福祉手帳の申請ができる条件は以下の通りです。
- 精神疾患のため長期的に日常生活に制限がある
- 初診日から6か月以上経っている
また、障がいの症状や日常生活への支障の程度により1級から3級までの等級に分けられます。
手帳の有効期限は交付日から2年後の月末までで、続けて利用するには更新手続きが必要です。更新は新規申請の際と同じ書類と現在の手帳の写しを提出後、審査が行われますが、対象外と判断されれば手帳が交付されない場合もあります。
以下の項目で具体的な申請の流れや必要な書類を確認していきましょう。
精神障害者保健福祉手帳の申請に必要な書類
精神障害者保健福祉手帳を申請する際は、以下の書類を用意しましょう。
- 申請書
精神障害者保健福祉手帳の申請書は市区町村の窓口にて受け取ることができます。 - 医師の診断書
診断書は初診日から6か月以上経ってから作成されたものが必要です。自治体によっては「申請日より○か月以内に作成されたもの」と決められている場合もあるので早めに提出しましょう。
障害年金を受給している場合は、年金証書の写しでも有効な場合があります。 - 本人の顔写真
自治体によって異なりますが、縦4cm×横3cmサイズの1年以内に撮影された上半身の写真と定められている場合が多いです。申請書を受け取る際やホームページなどで事前に確認しておきましょう。 - 本人確認書類
運転免許証やパスポートなど、官公署発行の証明書を準備しましょう。パスポートなどの写真付きのものであれば1つ、健康保険証や年金手帳、各種医療受給者証などの写真がない者は2つ提示する必要があります。 - マイナンバーが確認できる書類
マイナンバーカードを所持していなければ、マイナンバー通知カードかマイナンバーが書かれた住民票の写しを提出します。
精神障害者保健福祉手帳の申請手順
精神障害者保健福祉手帳を申請して受け取るまでの主な流れは、次の通りです。
市区町村により差はありますが、手帳の取得には2か月ほどかかるため早めに準備を進めましょう。手帳の更新や書き換えの際も手順はほぼ同じです。
発達障害グレーゾーンの方が利用できる支援サービス
障害者手帳を持っていなくても利用できる支援サービスはあります。
発達障害の確定診断が出なかった方や、これから障害者手帳を取得する方は、以下の支援サービスをうまく活用しましょう。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターでは、発達障害やその可能性がある方、そのご家族を対象として総合的な支援を行っています。
発達障害者支援センターで受けられる支援は、主に以下の3つです。
相談支援
発達障害の方が日常生活を送るうえでの困りごとの相談に応じます。
家族や職場の方など、本人以外からの相談も受け付けており、必要に応じて利用できる福祉サービスや関係機関を紹介します。
発達支援
発達障害の方やその家族、周囲の方の発達支援に関する相談に応じ、家庭での療育方法についてアドバイスします。
必要に応じて医療機関などの関係機関と連携し、発達検査などの実施や、特性に応じた支援計画の作成・助言などを行います。
就労支援
発達障害の方が就労を希望している場合、就労に関する相談も可能です。
ハローワークや障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)などの関係機関と連携し、情報提供を行っています。
上記のほか、発達障害に関する普及啓発・研修も行っています。
発達障害者支援センターでは、発達障害の確定診断がない、グレーゾーンの場合でも発達障害についての情報提供や、必要な医療機関・福祉施設の紹介を受けることができます。まだ診察を受けていない方や、セカンドオピニオンを探している方は相談に行ってみることをオススメします。
発達障害者支援センターについては、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、あわせてお読みください。
地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーションでは、働くことに不安がある15~49歳の方を対象に支援を行っています。
相談のほかに、コミュニケーション訓練やパソコンの基礎講座、履歴書の書き方の指導や面接対策なども実施しています。障がいの有無に関わらず、就労に関することを相談できる場所として全国に設置されているため、気軽に利用できるでしょう。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)では、障がいのある方の就労面と生活面の支援を行っています。スタッフとの面談後、支援計画に沿って関連機関と連携し、就労と生活のサポートを受けることができます。
発達障害の確定診断がなくても、就労や日常生活に困難を抱えている方は利用できる場合もあるので、最寄りの障害者就業・生活支援センターへ確認してみると良いでしょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所では、65歳未満の障がいをもつ方を対象に、就労に向けたさまざまな支援をしています。
一人ひとりの希望や適性に合わせて、就職をするために必要な知識やビジネスマナーなどの勉強、職場実習等の訓練を行います。履歴書の書き方から面接練習まで、就職に向けて必要なスキル・知識を学ぶことができます。
障害者手帳がなくても利用できますが、「障害福祉サービス受給者証」が必要になります。
受給者証の申請には、医師の診断書や自立支援医療受給者証が必要となるため、就労移行支援を利用したい旨を主治医に相談しておきましょう。
発達障害グレーゾーンの方が受けられる就労支援について、以下の記事でも解説しています。
まとめ|発達障害グレーゾーンの方が障害者手帳を取得するには
- 発達障害グレーゾーンだと障害者手帳は取得できない。
- 発達障害の診断をもらうには、問診での正確な説明が重要。事前に伝える内容をメモしておく、親や幼少期を知る方に付き添ってもらう、連絡帳や通知表などの第三者からの資料を持っていくなどが効果的。
- 精神障害者保健福祉手帳を申請するには「精神疾患のため、長期的に日常生活に制限がある」「初診日から6か月以上経過している」ことが条件となる。
- 障害者手帳がなくても利用できるサービスとして、「発達障害者支援センター」「地域若者サポートステーション」「障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)」「就労移行支援事業所」などがある。
発達障害グレーゾーンの方は障害者手帳を持つことができませんが、いくつかの支援を利用することはできます。
まずは手帳がなくても利用できる支援機関へ相談してみてはいかがでしょうか。手帳の有無に関わらずあなたを助けてくれる場所は必ずあります。
この記事を参考にして適切な支援を受けることで、生きづらさや困難が少しでも解消されれば幸いです。