あなたは、トライアル雇用という制度を知っていますか?
トライアル雇用とは、職務経験が少ない方や技能不足の方などが早期に就職できるように作られた就職支援制度で、「企業と求職者をつなぐ役割」があります。
「職務経験は少ないけれど、正社員で働きたい…」
と考えたことがあるなら、トライアル雇用を試してみませんか?
トライアル雇用の選考は、書類選考がなく面接のみで行われるため、履歴書に自信がない場合でも気負わずに挑戦することが可能です。無期雇用(正社員)への採用も7割以上と、受かりやすいのが特徴です。
- トライアル雇用の内容・対象者
- トライアル雇用のメリット・デメリット
- 正社員を目指すために利用できる支援制度
について説明していきます。
トライアル雇用とはどんな制度?
トライアル雇用とは、就職が困難な「職務経験が少ない方」や「技能不足の方」が無期雇用されるように支援する就職支援制度です。
トライアル雇用を希望した方はまず面接を受け、合否をもらいます。合格した方は企業と雇用契約を結び、一定の期間、給与をもらいながら働きます。
企業は、トライアル期間中に求職者の能力や適性を見極め、本採用(無期雇用への移行)の判断を行います。
トライアル雇用について、さらに詳しく見ていきましょう。
トライアル雇用には「一般」向けと「障がい者」向けのコースがある
トライアル雇用には、現在3つのコースがあります。
- 就職が困難な方向け
「一般トライアルコース」 - 障がいがある方向け
「障害者トライアルコース」
「障害者短時間トライアルコース」
今回の記事では、一般トライアルコースについて説明していきます。
※令和5年3月31日までは、一般向けコースの中に、コロナ禍で離職を余儀なくされた労働者を対象とした「新型コロナウイルス感染症対応(短期間)トライアルコース」がありましたが、令和5年4月1日以降、廃止となり、一般トライアルコースに統合されています。
トライアル雇用の対象者
トライアル雇用の対象となるのはどんな方なのでしょうか?
対象者の条件を見ていきましょう。
一般トライアルコースの条件
いずれかの項目に該当する方が対象となります。
- 紹介日の前日からさかのぼって2年以内に、2回以上離職や転職がある
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている*1
- 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、1年以上安定した職業*2に就いていない
- 生年月日が1968年(昭和43年)4月2日以降の者で、ハローワーク等で担当者制による個別支援を受けている
- 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する
(生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者など)
*1:パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと
*2:期間の定めのない労働契約を結び、1週間の所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等であること
上記は令和6年11月時点での情報のため、今後変更される可能性があります。
障がい者トライアルコース・障がい者短時間トライアルコースの条件
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの条件は、一般トライアル雇用の条件とは異なっています。下記に記載があります。
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース|厚生労働省
障害者トライアル雇用についての詳細は下記の記事をご覧ください。
トライアル雇用は正社員に採用されやすい?
トライアル雇用を終えて、無期雇用へ移行する方の割合は7割以上です。トライアル雇用における無期雇用は主に正社員のことを指しています。
企業は、正社員として採用するにあたって、「業務とのミスマッチがないかどうか」を重視していますから、採用されるためには知識やスキルを身につけ、業務に順応していくことが必要だと言えますね。
トライアル雇用から正社員になれる確率
トライアル雇用から正社員へ移行する確率は高く、
令和元年度 75.1%
令和2年度 71.6%
となっています。
トライアル雇用のメリット・デメリット
トライアル雇用はメリットの多い制度ですが、デメリットとなる面もあります。
求職者側と企業側、双方のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
求職者側がトライアル雇用を利用するメリット・デメリット
メリット
- 職場の環境・業務内容を事前に把握できる
- 採用される可能性が高い
デメリット
- 解雇になると短い期間で退職した職歴が残ってしまう
- 一度に複数の企業に応募できない
トライアル雇用は就職に不安がある方でも応募のハードルが低く、就職の機会が広がる点が魅力ですが、実際の職場で働いてみて、「職場環境や業務がどうしても合わない」という理由で自分から辞めてしまう方もいます。また、「技術不足のために業務を任せられない」といった場合には企業側の判断で契約終了となる場合もあります。
一般トライアル雇用の期間は原則3か月となっています。
自分で辞めた場合も、企業側の判断で契約終了となった場合も、3か月と短い期間で退職した履歴が残るため、求職者にとってはデメリットと言えます。
企業側がトライアル雇用を行うメリット・デメリット
メリット
- 適性があるか判断して採用できる
- 本採用でないため契約の解除がしやすい
デメリット
- 制度を利用する際の手続きが煩雑
- 人材育成に時間がかかる
企業側にとって、トライアル雇用は適性や能力を見極めたうえで採用ができる制度です。本採用ではないので条件に合わなかった場合の契約解除がしやすいこともメリットです。また、要件を満たせば助成金が支給されるため、コストを抑えながら採用を進めることができます。
ただし、それぞれの段階で対応しなければならない手続きが煩雑であることや、未経験人材の応募も多いため、人材育成に時間がかかる可能性もあるため、体制を整える必要があるのはデメリットと言えます。
トライアル雇用制度を利用したいときは
トライアル雇用を利用したい場合、下記の流れで申し込みます。
- ハローワークの職業相談でトライアル雇用を希望することを伝える
- 求人を紹介してもらい、ハローワークから企業へトライアル雇用を申し込む
- 面接が行われる
- トライアル雇用開始
- トライアル雇用終了
- 本採用、または期間満了
トライアル雇用が利用できる求人は窓口だけでなく、ハローワークインターネットサービスの「詳細検索条件」から「その他」欄の「トライアル雇用併用求人」にチェックを入れて探すか、「フリーワード」欄に「トライアル雇用」と入力して検索することでも探すことができます。
トライアル雇用では書類選考はありません。面接での選考がほとんどですが、面接時に履歴書等の書類が必要とされる場合がある点には注意しましょう。
トライアル雇用の期間と企業への助成金について
トライアル期間中は、採用の負担を軽減するため、企業へ助成金が支給されます。
トライアル雇用の期間と助成金は下記のようになっています。
一般 | 障害者 | 障害者短時間 (精神含む) |
精神障害者 | |
---|---|---|---|---|
トライアル期間 | 3か月 | 3か月 | 3~12か月 | 6~12か月 |
助成金 (月額最大) |
4万円 5万円※ |
4万円 | 4万円 | 3か月8万円+ 3か月4万円 (最大6か月まで支給) |
※労働対象者が母子家庭の母や、父子家庭の父の場合
正社員を目指すうえで利用できる他の支援・サービス
ここまではトライアル雇用についての説明をしてきましたが、「トライアル雇用以外に正社員を目指す方法はあるの?」という疑問があるのではないでしょうか。
この項目ではトライアル雇用以外の支援制度を3つご紹介します。
ハローワーク
ハローワークでは求人検索や職業相談をすることができます。職業相談では求職活動の相談や、履歴書の添削などが受けられます。就職のためにスキルを身につけたいという方は「職業訓練」を申し込むことも可能です。
また、「わかものハローワーク」という35歳未満の方が対象の相談窓口もあります。正社員就職に向けて、専門職員が支援プランを作成し、マンツーマンでのサポートが受けられます。就職活動で役立つセミナーや応募書類の作成支援、面接対策も受けられるほか、通常のハローワークと同様、求人検索も可能です。
ハローワークの利用については、下記の記事で解説しています。
転職エージェント
転職エージェントとは、担当アドバイザーが転職を希望する方にカウンセリングを行い、それぞれに適した企業を紹介するサービスです。
担当アドバイザーによる面接指導や履歴書添削、ビジネスマナー講座などが受けられます。
転職エージェントの中には、就労経験がない方やブランクがある方の就職支援に特化しているものもあります。自分に合ったエージェントを探して相談してみましょう。
地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーションは通称「サポステ」と呼ばれている、厚生労働省委託の就職支援機関です。
サポステは「学生時代に中退して引きこもってしまった方」や、「人間関係で退職しブランクが空いてしまった方」などの悩みに寄り添い、就職に向けて踏み出せるようにサポートを行います。
支援の中で、グループワークや就業体験のほか、PCスキル講座や面接指導なども受けられますし、就職後の相談にも対応しています。対象者は15~49歳までとなっています。
サポステについては、下記の記事でも解説しています。
まとめ|トライアル雇用は正社員に採用されやすい?
- トライアル雇用とは、職務経験が少ない方や、技能不足の方など、就職が困難な方が無期雇用されるよう支援する制度の一つ。
- 障がいのない方向けの「一般トライアルコース」と、障がいのある方向けの「障害者トライアルコース」、「障害者短時間トライアルコース」がある。
- トライアル雇用を受けるには、一定の条件を満たすことが必要。
- トライアル雇用は採用される可能性が高く、職場環境や業務内容を事前に把握できるメリットがある。しかし、一度に複数の企業へ応募することはできず、解雇になると短い期間で退職した経歴が残ってしまうデメリットもある。
- トライアル雇用の他にも、ハローワークや転職エージェント、地域若者サポートステーションのような支援・サービスが受けられる。
トライアル雇用は、職務経験が少ない方が正社員を目指すための就職支援制度の一つだとお分かりいただけたでしょうか。
トライアル雇用を利用することで、意外な適職を見つけることができるかもしれません。
自分に合った支援制度を就職活動に取り入れてみてはいかがでしょうか。