「自分が話すと空気が悪くなる」
「話し方のせいで人間関係がうまく築けない」
などで悩んでいませんか?
大人のASDの方の話し方には特徴があります。その特徴が原因でコミュニケーションがうまくいがず、悩んでいる方も少なくありません。
- 大人のASDの方の話し方の特徴5つ
- 話し方の改善方法
- 大人のASDに関する悩み事の相談先
について紹介していきます。
ASDとは
ASD(自閉スペクトラム症)とは、生まれつきの脳機能障がいであり、日常生活に困難を生じる発達障がいです。
主な特性として、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」「特定のものや行動における反復性やこだわり」「感覚の過敏さ・鈍麻さ」などがみられます。
大人のASDによる困りごと
大人になってからASDであると気づくケースも少なくありません。大人のASDでは、コミュニケーションや仕事の場面で困ることが多いと言われています。
- 【コミュニケーション】
- 悪気はなくても、発言によって人を怒らせてしまうことがある
- 自分の興味のある分野についてずっと話してしまい、会話が成り立たない
- 身振りやジェスチャーから相手の意図を察することが難しい
- 冗談や皮肉の理解が難しく、言葉通り受け取ってしまう
- 【仕事】
- 面接で面接官の質問の意図がよく分からない
- 「ある程度」「なるべく急ぎで」など曖昧な指示がよく分からない
- 自分の決めた順番に強いこだわりがあり、融通が利かない
- 突然の変更があると混乱してしまう
- 人の出入りが激しいなど刺激が多い場所だと、集中が難しい
ASDの原因
ASDが発症する原因はまだ解明されていません。
最近の研究では、何らかの形で遺伝因子が影響して胎児のときに脳機能の発達に偏りが出るためと考えられています。
大人のASDの話し方の特徴5つ
大人のASDの方は、普段の会話の中で「話が伝わりにくいな」と感じることも多いのではないでしょうか?それには、特徴のある話し方が影響している可能性があります。
一般的に、ASDの方の話し方には下記のような特徴があります。
- 抑揚がない
- 話すタイミングがわからない
- 思ったことをすぐに口にする
- 難しい言葉を使う
- 一方的に話す
順に見ていきましょう。
抑揚がない
ASDの方は抑揚がなく、セリフを棒読みするような話し方をします。
表情を作ることが苦手なため、自分では明るく元気に話しているつもりでも上手く伝わらず、相手を不快にさせてしまうことがあります。
話すタイミングがわからない
ASDの方は相手の動きや表情から感情を読み取ることが難しいため、話すタイミングをつかめないことも多々あります。
例えば、集中して仕事をしている同僚に突然ミーティングを持ち掛けてみたり、帰る支度をしている上司に仕事の質問をしたりと、自分の都合やタイミングで行動してしまいます。
思ったことをすぐ口にする
相手の気持ちを考えないままに、言いたいことや思ったことをストレートに口にするため、悪気はなくても失言になってしまうこともあります。
例えば髪を切った方に対して「髪を切らない方がよかったです」と言ったり、長年大切にしてきた物が壊れてしまった方に対して「物はいつか壊れるよ」と言ってしまいます。
難しい言葉を使う
小説やアニメに出てくる書き言葉や台詞などの、難しい言葉を使う傾向があります。
例えば助けてほしいときに「援助が必要です」と言ったり、やめてと言いたいときに「それは言語道断だから断固拒否します」と言ったりします。
一方的に話す
ASDの方の特徴として、「相手の反応を気にしないで話を続ける」ということが挙げられます。自分が関心のあることで頭がいっぱいになり、相手が迷惑そうな表情をしていても気づきにくいです。
その一方で、ASDの方は言葉をそのまま受け取るという特性もあるため、相手から「やめてください」「興味ありません」などとはっきり伝えられると、話を止めることもあります。
ASDの話し方の改善方法
ASDの方の話し方にはいくつか特徴があり、会話に支障をきたすケースがあるとわかりました。
人によって向き不向きはありますが、改善方法の一例を紹介していきます。
- 句読点で1拍置いてみる
- 相手の目を見て相槌を打つ
- メールを活用する
順に見ていきましょう。
句読点で1拍置いてみる
会話をする際、無理に抑揚をつけようとすると不自然になってしまうでしょう。
そのため、文章の句読点である「、」「。」で1拍置いて話をすることを意識してみてください。
- 【例文】
- 区切らない場合
「おはようございます朝ごはんは何を食べましたか私はパンです」 - 区切る場合
「おはようございます。朝ごはんは、何を食べましたか。私は、パンです。」
このように句読点で間を作ることを意識して会話をするだけでも、不自然さを感じさせづらくなります。
相手の目を見て相槌を打つ
相手が話している時は、目線を合わせて適度に相槌を打ちましょう。話をしっかり聞いているとアピールすることで、良好なコミュニケーションに繋がります。相手と目線を合わせられない場合は、目と目の間を見たり、鼻に目線を移したりすることも有効です。
相槌を打つ際は「そうなんですね」「そういうこともありますね」など、肯定や共感を示す言葉を使うのもポイントです。
メールを活用する
口頭の会話では表情や抑揚のつけ方も情報として伝わるため、そうした表現が苦手なASDの方は相手に誤解を与えてしまう可能性があります。そのため、仕事の報告など正確な情報を伝えたい場合は、メールを活用することも1つの方法です。
文章でのコミュニケーションに慣れた上で対面の会話に移ると、言葉を上手く表現できるようになるケースもあります。
大人のASDに関する相談先
この記事を読んでいるあなたは、大人のASDに関して1人で悩んでいませんか?
1人でストレスを抱え込んでしまうと、うつ病や不安障がいなどの二次障害を引き起こす可能性もあるため、困っている時こそ専門家に相談してみましょう。
病院で相談する
大人の発達障がいについては、「精神科」や「心療内科」で相談できます。
初めての受診は不安に感じる方も多いと思います。しかし、受診が遅れて二次障害が出てきたり、悪化したりしてしまうと、今よりも社会生活を送ることが難しくなりかねません。
病院を受診すると下記のメリットがあります。
- 確定診断が受けられる
- 自分の話し方や行動を分析してもらえる
- 専門的な治療を受けられる
確定診断があれば治療を始めることができ、困りごとを改善できる可能性があります。
発達障がい者支援センターで相談する
発達障がい者支援センターでは、発達障がいでの困りごとやそれぞれのライフステージに合わせて「相談支援」「発達支援」「就職支援」の3つの支援を受けることができます。
【相談支援】
発達障がいが原因で発症している困難や発達障害かもしれないと思った行動・言動など、日常生活におけるさまざまな相談に応じてくれます。また、本人やご家族だけでなく職場の関係者なども相談が可能です。
【発達支援】
発達障がい者とその家族、周囲の方の発達障害に関する相談に応じ、家庭での療育方法についてアドバイスを受けることができます。
【就労支援】
就職を希望する発達障がい者に対して就労に関する相談に応じ、公共職業安定所、地域障がい者職業センター、障がい者就業・生活支援センターなどの機関と連携して情報提供を行います。
発達障害者支援センターについては、下記の記事で詳しく解説しています。
まとめ|大人のASDの話し方の特徴と改善方法
- ASDは生まれつきの脳機能障がいであり、特に対人関係において困難が生じる発達障がい。
- ASDの話し方には、会話に抑揚がなく、難しい言葉を使うなどの特徴がある。他にも思ったことをすぐ口にしてしまうことや、相手の反応を気にしないで一方的に話を続けてしまう特徴がある。
- 改善方法として、文章の句読点で1拍、間を置いて話をすることや、相手の目を見て相槌を打つことが挙げられる。また、精神科や心療内科へ相談することも効果的。
この記事では、大人のASDの方の話し方の特徴や改善方法について紹介しました。
ASDの方は、会話への苦手意識から人とのコミュニケーション自体を絶ってしまうことも少なくありません。しかし、自分の特徴を理解して改善方法を意識するだけでも会話の特性を少しずつ変えることが可能です。
ASDは特性をコントロールしながら生涯付き合っていく障がいです。そのため、困っていることや悩んでいることを自分だけで抱え込むのではなく、信頼できる方や機関に相談してみてください。