「A型事業所で働いた分の手取りはいくらになるんだろう?」
と疑問に思ったことはありませんか?
就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働くことで、給料を貰うことができます。最低賃金以上が保障されているので、ある程度の収入が見込めます。
そんなA型事業所(作業所)の給料ですが、手取り額はどのくらいなのでしょうか?
- A型事業所の給料からは何が差し引かれて、手取り額はいくらになるのか?
- 少しでも多く手取り額を残す方法はあるのか?
- A型事業所の手取り額で一人暮らしは可能なのか?
という内容を、重要なポイントに絞ってご紹介します。
人それぞれ地域や環境も異なるので、さまざまな条件を想定した手取り額を表にしてまとめました。初めてA型事業所を利用する方でも分かりやすいように書いてみましたので、ぜひ読んでみてください。
就労継続支援A型の平均給料は「約83,551円」手取り額はいくら?
厚生労働省によると、令和4年における、就労継続支援A型の平均月収は約83,551円です。雇用契約を結んで働くA型の事業所なので、一般企業と同じように給料から税金や保険料が差し引かれるのでしょうか?
まずは、A型作業所から出る給料の手取り額について、詳しく解説していきます。
給料から雇用保険料、交通費、利用料を引いた金額が手取り
基本的に働いた分の給料から、「雇用保険料」と「利用料」、「交通費」を差し引いた金額が手取り額となります。
A型事業所の給料は、都道府県毎の最低賃金に設定されていることが多く、給料を受け取る時に税金がかからない場合がほとんどです。
雇用保険料
週に20時間以上働く場合、雇用保険料を支払います。令和6年4月からの雇用保険料率は0.6%となっているので、働いた分の給料から0.6%(6/1000)をかけた金額が雇用保険料となります。
例えば、東京都で20日、4.5時間働いた場合、601円程度となります。
利用料
A型事業所の場合、利用料にも注意しないといけません。本人に限らず、家族や配偶者に収入が多くあって、住民税の対象になっている方は、所得に応じて利用料を負担する必要があります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯であり、所得割が16万円未満 ※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く。 |
9,300円 |
一般2 | それ以外 | 37,200円 |
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯であり、所得割が16万円未満 ※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く。 |
9,300円 |
一般2 | それ以外 | 37,200円 |
利用料が必要になる一般1の場合、収入がおおむね600万円以下の世帯が対象です。しかし、A型事業所を利用している方は低所得に該当する場合が多く、7割以上の方が0円で利用できています。
交通費
自宅から作業所まで、バスや電車を使う場合はお金が掛かります。車を利用する方はガソリン代や駐車場代が必要です。事業所によっては、交通費の一部が支給されることもあります。詳細は利用を検討している事業所に確認しましょう。
A型事業所の手取り額を一覧で確認!
1日の勤務時間をA型事業所の中で最も多いと言われている4.5時間として、1か月の手取りを比較してみましょう。
時給は、A型事業所が多く採用する各都道府県の最低賃金で、勤務日数は土日休みの20日間、利用料は掛からない場合と想定します。交通費はそれぞれの地域によって、おおよその概算で求めています。
東京都、大阪府、愛知県は、電車で都市部から近郊まで3駅~5駅を移動した場合の金額を、障害者割引で5割引にした金額です。静岡県、沖縄県は、バスや月極駐車場を利用した場合を想定しています。
時給 | 勤務 時間 |
勤務 日数 |
雇用 保険 |
利用料 | 交通費 | 手取り | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
東京都 | 1,113円 | 4.5時間 | 20日 | 601円 | 0円 | 9,000円 | 90,569円 |
大阪府 | 1,064円 | 4.5時間 | 20日 | 575円 | 0円 | 6,000円 | 89,185円 |
愛知県 | 1,027円 | 4.5時間 | 20日 | 555円 | 0円 | 6,000円 | 85,875円 |
静岡県 | 984円 | 4.5時間 | 20日 | 531円 | 0円 | 5,000円 | 83,029円 |
沖縄県 | 896円 | 4.5時間 | 20日 | 484円 | 0円 | 5,000円 | 75,156円 |
時給 | 勤務 時間 |
勤務 日数 |
雇用 保険 |
利用料 | 交通費 | 手取り | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
東京都 | 1,113円 | 4.5時間 | 20日 | 601円 | 0円 | 9,000円 | 90,569円 |
大阪府 | 1,064円 | 4.5時間 | 20日 | 575円 | 0円 | 6,000円 | 89,185円 |
愛知県 | 1,027円 | 4.5時間 | 20日 | 555円 | 0円 | 6,000円 | 85,875円 |
静岡県 | 984円 | 4.5時間 | 20日 | 531円 | 0円 | 5,000円 | 83,029円 |
沖縄県 | 896円 | 4.5時間 | 20日 | 484円 | 0円 | 5,000円 | 75,156円 |
しかし、交通費は個人によって大きく異なります。定期券と回数券、どちらが安いかなどを調べることも大切です。行ってみたい事業所を見つけたら、最寄り駅からの交通費を計算しておきましょう。
A型事業所の手取り額を、条件の違う3つのパターンで比較
各都道府県で比較すると、時給が異なるため、手取り額も異なります。ですが、人によっては利用料が必要な方や勤務日数が多い方もいますよね。
そこで、同じ時給、同じ勤務時間でも細かい条件が異なると、手取り額はどのように変わってくるのでしょうか。よりリアルな数字に迫ってみましょう。
Aさん、Bさん、Cさん以下の3パターンの条件で手取り額を比較してみます。
Bさん : 平日のみ出勤、利用料0円
Cさん : 土曜も出勤、利用料0円
東京都(時給:1,113円 6時間勤務)の場合
Aさんの場合
1,113円×6時間×20日-801円-9,300円-9,000円=114,459円
(時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り)
Bさんの場合
1,113円×6時間×20日-801円-9,000円=123,759円
(時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り)
Cさんの場合
1,113円×6時間×22日-881円-9,000円=137,035円
(時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り)
Aさんの場合 | 1,113円×6時間×20日-801円-9,300円-9,000円=114,459円 | (時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り) |
Bさんの場合 | 1,113円×6時間×20日-801円-9,000円=123,759円 | (時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り) |
Cさんの場合 | 1,113円×6時間×22日-881円-9,000円=137,035円 | (時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り) |
それぞれ同じ時給、同じ時間数の事業所でも、手取り額に大きな差が出ました。手取りが最も大きいCさんと、最も少ないAさんでは、22,576円も差があります。
同じことを、全国のA型事業所の平均時給である947円に最も近い、富山県でも検証してみましょう。
富山県(時給:948円 6時間勤務)の場合
Aさんの場合
948円×6時間×20日-683円-9,300円-6,000円=97,777円
(時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り)
Bさんの場合
948円×6時間×20日-683円-6,000円=107,077円
(時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り)
Cさんの場合
948円×6時間×22日-751円-6,000円=118,385円
(時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り)
Aさんの場合 | 948円×6時間×20日-683円-9,300円-6,000円=97,777円 | (時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り) |
Bさんの場合 | 948円×6時間×20日-683円-6,000円=107,077円 | (時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り) |
Cさんの場合 | 948円×6時間×22日-751円-6,000円=118,385円 | (時給×勤務時間×勤務日数-雇用保険料-利用料-交通費=手取り) |
東京都の時と同様に、最も多い手取りのCさんと、最も少ないAさんでは20,608円の差が出ました。
このように、A型事業所で働いた時の手取り額には、かなり個人差があります。気になる事業所を見つけたら、時給や勤務時間、利用料について問い合わせてみましょう。既に利用されている方が、どのような手段で通勤しているかも聞いてみると参考になります。
A型事業所の平均時給は947円!年々増加傾向にある
令和4年のA型事業所の平均時給は「947円」。平均月収は「83,551円」です。この金額は年々増加傾向にあり、最低賃金が上がるため、今後も増えていくと言われています。
時給 | 月収 | |
---|---|---|
平成30年 | 846円 | 76,887円 |
令和元年 | 887円 | 78,975円 |
令和2年 | 899円 | 79,625円 |
令和3年 | 926円 | 81,645円 |
令和4年 | 947円 | 83,551円 |
少しでも多く手取り額を残す方法はある?
ここまで、就労継続支援A型の給料や手取り額の全国平均を見てきました。
手取り額を多いと感じるか、少ないと感じるかは、人それぞれです。そんなA型事業所から貰える給料の手取り額ですが、少しでも多く残せる方法があります。
詳しく見ていきましょう。
交通費の援助を受ける
交通費を作業所が負担する場合もあります。上限を設定している所が多く、2,000~10,000円程度を負担してくれる作業所が多いです。また、地域によっては行政が負担してくれる場合もあります。こちらも全額ではなく、定期代の半額、出勤日数の半分など、条件はありますが負担してもらえるのはありがたいですよね。
しかし、全国の自治体でこのサービスを行っているわけではありません。地域によっては、交通費の援助は実施していない自治体もあるので、注意が必要です。
行政からの支援を受けるには、各役所や自治体で申請する必要があります。福祉課や障害福祉課で扱っている場合がほとんどなので、積極的に問い合わせてみましょう。
利用料の免除・減額
前年度の収入によっては、最大で37,200円の利用料を免除、減額される場合があります。これは、事業所が自治体に対して利用料の減額を申請していることが条件です。この減額された利用料を、事業所が負担している所もあり、実質0円としているA型事業所もあります。
また、利用料が発生する方に対して、自治体が利用料の全額を負担している所もあります。ですが、すべての自治体が負担しているわけではありません。交通費と同様、自治体の福祉課や障がい福祉課で問い合わせてみましょう。
日祝休みのA型作業所は収入が高い
単純に働く日数が多くなると、給料は増えます。カレンダー通りの土日祝休みだと、月に11日前後はお休みです。ゴールデンウイークや、年末年始も入れると、年間休日は120日~130日あります。
一方で、日祝休みの場合は、土曜日も出勤に含まれます。祝日が無くて、平日が5日間ある場合は土曜日がお休み。祝日があり、平日が4日間の場合は土曜日も出勤となります。この場合、年間の休日は96日になるので、土日祝休みよりも多く働くことが可能です。
令和6年のカレンダーで、最も平日が少ない2月で給料の差を比較してみましょう。時給は平均の947円で、1日4.5時間、毎日働いたとします。
土日祝休みの場合
947円(時給)×6時間(勤務時間)×19日(出勤日数)=107,958円
日祝休みの場合
947円(時給)×6時間(勤務時間)×22日(出勤日数)=125,004円
給料の差
125,004円-107,958円=17,046円
土日祝休みの場合 | 47円(時給)×6時間(勤務時間)×19日(出勤日数)=107,958円 |
日祝休みの場合 | 947円(時給)×6時間(勤務時間)×22日(出勤日数)=125,004円 |
給料の差 | 125,004円-107,958円=17,046円 |
3日間の差でも、土日休みより日祝休みの方が、17,046円多く給料が貰えます。
カレンダーによっては、これ以上の差が出る場合もあるので、少しでも多く手取りを残したい方は、日祝休みの事業所をオススメします。
医療費負担の受給者証を取得する
医療費負担の受給者証を取得したからといって、手取り額が増えるというわけではありません。これは医療費の負担を軽くし、出費を抑えることで、間接的にお金を手元に残す方法です。通院しながら働くことも考えたら、診察代や薬代といった医療費が必要ですよね。
この医療費の負担を減らせるのが、「自立支援医療制度」です。精神や身体に障がいがある方を対象に、通常3割負担の医療費を1割負担にできます。指定した病院と調剤薬局でのみ、この制度が適用されます。
また、障がい者手帳を取得している方で、所得要件を満たしている方は、「重度心身障がい者医療費補助制度」があります。これは、どの医療機関で診察を受けても、医療費が無料になります。
どちらも主治医の意見書や、役所での申請、所得の審査など時間と手間が掛かりますし、自治体によって適用範囲がかわります。ですが、高くなりがちな医療費を軽減、無料にできるのは、非常に有難い制度です。
通院しながらA型事業所を利用する方は、ぜひ検討してみてください。
就労継続支援A型の手取りで一人暮らしは可能?
就労継続支援A型を利用しながら、一人暮らしをしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。体調が安定して、自立したいという気持ちは非常に大切です。
ではA型の事業所を利用しながら、一人暮らしをすることは可能なのでしょうか?今まで見てきた、A型事業所の手取り額を参考に見ていきましょう。
障害年金と合わせればギリギリ可能
すでに手取り額の表を見た方なら、なんとなく感じていると思いますが、A型事業所の給料だけで、一人暮らしをするのはかなり厳しいです。
家賃、共益費、食費、光熱費、通信費……。これらの出費を考えると、A型事業所の平均給料である83,551円で生活するには、一切余裕がありません。ですが、障害年金の支給を受けている方であれば、ギリギリ生活することはできます。
障害基礎年金2級を受けている方は、「月68,000円(令和6年4月分から)」が支給されています。
前述した「条件が違う3つのパターンで比較」より、東京都と富山県のCさんの月収に、障害基礎年金を足してみましょう。
東京都(時給1,113円 6時間勤務の場合)のCさん
1,113円×6時間×22日-881円-9,000円=137,035円
137,035円+68,000円(障害年金)=205,035円
富山県(時給948円 6時間勤務の場合)のCさん
948円×6時間×22日-751円-6,000円=118,385円
118,385円+68,000円(障害年金)=186,385円
東京都(時給1,113円 6時間勤務の場合)のCさん | 1,113円×6時間×22日-881円-9,000円=137,035円 | 137,035円+68,000円(障害年金)=205,035円 |
富山県(時給948円 6時間勤務の場合)のCさん | 948円×6時間×22日-751円-6,000円=118,385円 | 118,385円+68,000円(障害年金)=186,385円 |
勤務日数が多い事業所の場合、どちらも月収が180,000円以上となりました。決して余裕があるわけではありませんが、6時間勤務、月22日出勤で、月収が180,000円以上あれば、ギリギリ一人暮らしは可能です。
一人暮らしをする場合、手取り月収の約1/3が適した家賃と言われています。仮に土地の物価が高い東京都で一人暮らしをする時は、余裕を持って家賃が45,000円から50,000円程の所であれば、なんとか生活できる金額です。都心に近い場所では、ほぼ不可能ですが、駅から少し離れた場所であれば、安い物件もあります。
しかし、障がいを抱えながらの一人暮らしは想像以上に大変です。自治体によっては、居住サポート支援や住宅介護、自立支援といった、一人暮らしを支援するサービスもあります。主治医や家族、生活相談支援員と相談しながら慎重に検討しましょう。
お金も大切!それ以上に自分も大切に!
A型事業所では、最低賃金以上の収入を得られるので、買い物や趣味を楽しむことができるでしょう。そのため、少しでも高い時給、長い時間働きたいという気持ちが湧いてきます。しかし、お金ばかりに目が行ってしまい、あなたの体調が悪化してしまったら本末転倒です。
A型事業所は障がいに理解がありますが、ある程度の作業をこなさないといけません。一人暮らしは健常者の方でも、苦労する事はたくさんあります。決して無理はせず、出来ることから始めてください。
お金も大切ですが、1番大切なのはご自身の体だと覚えておきましょう。
まとめ|就労継続支援a型の給料と手取り額を紹介
いかがでしたか?
ここまで、就労継続支援A型の手取り額について見てきました。
- 給料から雇用保険料、利用料、交通費を引いた金額が手取りになる。
- 交通費、利用料は減額や減免制度を利用すれば、手取り額を多く残せる。
- 180,000円以上の月収で、45,000円程度の家賃であればギリギリ一人暮らしは可能。
経済的余裕は、心の余裕に繋がります。A型事業所から少しずつ社会復帰を目指していきましょう。