「A型を利用してみたいけど、自分に何が向いているのか分からない…」
「A型事業所以外に利用できる支援制度って何がある?」
などの疑問や不安を抱いてはいませんか?
就労継続支援A型を利用するにあたって、メリット・デメリットを知っておくことはとても重要です。
時間や労力をかけてさまざまな手続きを行い、いざ利用してみたら「やっぱり向いてなかった…」などと後悔をしないためにも、利用するデメリットを知っておきましょう。
- 継続支援A型を利用するデメリット5選
- 就労継続支援A型を利用するメリット
- 就労継続支援A型に向いていない方の特徴
- 他に利用できる支援制度
について解説しています。
少しでも参考になれば幸いです。
就労継続支援A型を利用するデメリット5選
就労継続支援A型を利用する上でのデメリットは、「何を目的に利用するのか」「どこを重要視するのか」でも大きく変わってきます。
ここでは主に、就労継続支援A型を利用するデメリット5選を紹介していきます。
- 一般就労を目指す訓練が手厚くない
- 一般就労したい気持ちが低下する
- 安定して通うことが求められる
- 仕事内容が合わないと利用することが苦痛になる
- スキルを求められることがある
順に見ていきましょう。
一般就労を目指す訓練が手厚くない
就労継続支援A型は主に「働く場」を提供しているので、一般就労を目指すための訓練が手厚いとは言えません。
仕事が主軸としてあるので、就労訓練はあくまでプラスαの扱いになります。
よって、「就労訓練をしっかりやりたい」と思っている方が、仕事メインの就労継続支援A型を利用すると、物足りなさを感じてしまうことがあります。
就労継続支援A型からの一般就労については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
一般就労したい気持ちが低下する
就労継続支援A型は、仕事や体調面のサポートが手厚く、給料も出るので、一般就労したい気持ちが低下してしまうことがあります。
さらに、就労継続支援A型は、利用期間の制限もありません。したがって、「絶対に一般就労するんだ」という強い意志がないと、意図せず利用期間が長くなってしまう場合もあるでしょう。
一般就労をするために就労継続支援A型を利用しようと考えている方は、ご自身の年齢や体調などをしっかり考慮していくことが大切になります。
安定して通うことが求められる
就労継続支援A型は、基本的に1日4~6時間、週3~5日の出勤を求められることが多いです。
事業所によっては、体調に配慮して出勤日数を調整してもらえる場合もありますが、就労継続支援A型は雇用契約を結ぶので、体調不良から長期間休むことは難しいとされています。
よって、体調に不安がある方は、「ちゃんと出勤しなければならない」というプレッシャーがかかってしまう場合があります。
無理をして肉体的・精神的なストレスを抱えてしまうのは、良くありません。
あまり体調が安定していない状態での利用を考えている方は、就労継続支援B型など、他の支援制度も視野にいれておきましょう。詳細は後述します。
仕事内容が合わないと利用することが苦痛になる
近年の就労継続支援A型の仕事内容は、多岐に渡るようになってきました。
具体的には、以下のようなものがあります。
- 梱包などの軽作業
- パンやお菓子の製造
- カフェやレストランの厨房や接客
- ビルや公園の清掃
- PCを使ったIT関連の仕事
さまざまな仕事の種類が増えて選択肢が広がる一方で、体調や障がいに合わない就労継続支援A型を選んでしまうと、利用することが苦痛になってしまう可能性があります。
例えば、身体障がいの方が清掃業など肉体労働がメインの事業所を選んだり、発達障がいの方がマルチタスクを求められる接客メインの事業所を選んだりしてしまうと、働く楽しさがなくなってしまう危険性があるでしょう。
就労継続支援A型を選ぶときは、ご自身の体調や障がいと相談して選ぶことが、とても重要になります。
スキルを求められることがある
上で述べた内容にも関連しますが、就労継続支援A型の仕事内容によっては、スキルを求められることがあります。
近年、就労継続支援A型の仕事内容は、一般就労と同じようになっている所も多いので、仕事のやりがいが増える一方、複雑な作業を求められる機会も少なくないです。
未経験からでも丁寧に教えてくれる事業所も、もちろんあります。しかし中には、ある程度のスキルをもっている前提で、仕事が準備されている事業所もあるでしょう。
日々キャパオーバーの状態が続いてしまうと、強いストレスから体調が悪くなってしまったり、自己肯定感が下がってしまったりする可能性があります。
特に、体調や障がいの影響から「できない・極端に苦手」なことがある方は、事業所の仕事内容をよく見極めることが必要になります。
就労継続支援A型を利用するメリット
前の項目では、就労継続支援A型を利用するデメリットを紹介してきました。
ただし、ご自身の目的や、体調や障がいに合った仕事内容を行っている就労継続支援A型を見つけることができれば、利用するメリットは十分にあります。
ここでは主に、利用するメリットを3つ紹介していきます。
- 雇用契約を結ぶので最低賃金が保証される
- 技術や能力を身に付けられる
- 社会との繋がりがもてる
順に見ていきましょう。
雇用契約を結ぶので最低賃金が保証される
就労継続支援A型は、福祉サービスの中でも唯一、雇用契約を結んで働くことができます。よって、最低賃金が保証されるので、近年利用者も右肩上がりになっています。
さらに、月額の給料は、令和4年度で全国平均83,551円に上っており、最低賃金の引き上げの影響もあって、年々増えている現状です。
生活を送っていく上で、金銭面はとても重要な問題ですよね。
さまざまな理由から一般就労で働くことが難しい方にとって、体調や障がいに配慮をしてもらいながら働ける就労継続支援A型は、安定した収入が得られる貴重な場でもあるのです。
より詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
技術や能力を身につけられる
就労継続支援A型を利用することによって、技術や能力を身に付けられることがあります。
特に、パンやお菓子の製造、カフェやレストランなどの接客業は、実践に近い形で働けるので、就職の際に役立つ可能性があります。
また、PCを使いIT関連の仕事をメインにしている事業所では、未経験からでも技術を身に付けることができ、就職の選択肢がぐっと広がります。
特にIT業界は、出社時間など柔軟性が高い働き方を提案している会社が多いです。さらに、技術さえ身に付ければ在宅で仕事ができるので、通勤することに負担や不安がある方にとって、理想的な働き方ができるかもしれません。
社会との繋がりが持てる
病気や障がいの影響から、人と交流することや仕事に行くことが億劫になってしまい、引きこもり状態になってしまう方は少なくないとされています。
社会的な繋がりがないと、家庭内や自分自身の問題を外に出すハードルが高くなってしまい、他者に相談することが難しくなってしまいます。また、代わり映えのない日常に退屈してしまい、精神的にも良くありません。
社会に疲れて距離を取りたいと思っても、いざ完全に遮断してしまうと、結局困ってしまうのは自分自身です。
そこで、就労継続支援A型を利用すると、外出する機会や他者との交流が生まれて、精神的な余裕に繋がる可能性があります。
「働く」ことは、「社会との繋がり」のひとつです。したがって、就労継続支援A型を含む福祉サービスを利用することは、社会からの孤立を防げる側面もあるのです。
就労継続支援A型に向いていない方の特徴
就労継続支援A型の利用を考えていても、「自分に向いているか分からない……」などの不安がある方もいらっしゃると思います。
もちろん全ての方に当てはまるわけではないですが、就労継続支援A型が向いていない方の特徴として、主に以下の2つがあります。
- 一般就労を希望している
- 体調が安定していない
デメリットの中でも解説しましたが、ご自身の利用目的や体調の状態によっては、就労継続支援A型以外の福祉サービスの利用を視野に入れることが大切になってきます。
詳しくは、次の項目で紹介する福祉サービスや支援制度を参考にしてみてください。
就労継続支援A型にも利用できる福祉サービスや支援制度
就労継続支援A型以外にも、さまざまな福祉サービスや支援制度があります。ご自身に合ったものを選んでいけるように、まずは特徴などを知っておきましょう。
この項目では、主に3つ紹介していきます。
- 就労移行支援
- 就労継続支援B型
- 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
順に見ていきましょう。
就労移行支援
就労移行支援は、「就労を希望しているけど、働くことに対して不安がある」という方に対して、就職に向けたサポートをしてくれる福祉サービスになります。
就労継続支援A型よりも就職までの訓練や支援が手厚いので、一般就労を目指す方にとってはメリットが大きくオススメです。
就労移行支援では、主に以下のような訓練や支援が行われています。
- ビジネスマナー
- PCスキル(WordやExcelなど)
- セルフマネジメント
- Webサイト制作(HTML・CSSなど)
- プログラミング
- 就職活動
※訓練・支援の内容は事業所によって異なります。
事業所によっても異なりますが、初めのうちは、体調や生活リズムを安定させるところから始まるので、いきなり難しいことは要求されません。しっかり順を追って就職までのサポートをしてくれます。
また、最近は、実践的なITスキルを教えている事業所も増えているので、身に付けることができれば就職の幅も広がります。
ただし、原則2年間しか利用できないので、利用するタイミングはよく考えるようにしましょう。
詳しくは以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、明確に決められた出勤日数がありません。
多くの就労継続支援B型では、利用者の希望に沿って「午前から・午後から」と選べたり、「週に○回利用する」など、ご自身で決めたりすることができます。
よって、体調などが安定していない方は、就労継続支援B型の利用がオススメです。
ただし、雇用契約を結ばないので、最低賃金は保証されません。金銭面で就労継続支援A型を検討している方にとっては、悩ましい側面もあるでしょう。
厚生労働省によると、令和4年度の就労継続支援B型の平均工賃は、月額17,031円です。就労継続支援A型の平均工賃(賃金)は、月額83,551円なので、どうしても差額は大きくなります。
就労継続支援B型には、利用期限も年齢制限もありません。ご自身にとって、メリット・デメリットのどちらが大きいかを考えることが大切になります。
障がい者就業・生活支援センター(なかぽつ)
障害者就業・生活支援センターでは、障がい者の職業生活の自立を図るために、地域全体でさまざまな機関と連携して就職や生活などの支援を行っています。
生活面の支援もあるので、就職だけではなく、総合的にフォローをしてもらいたい方にオススメです。
障がい者就業・生活支援センターの概要は、下記のようになっています。
<就業面での支援>
○就業に関する相談支援
・ 就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)
・ 障害者の特性、能力に合った職務の選定
・ 就職活動の支援
・ 職場定着に向けた支援
○障害のある方それぞれの障害特性を踏まえた雇用管理についての事業所に対する助言
○関係機関との連絡調整<生活面での支援>
○日常生活・地域生活に関する助言
・ 生活習慣の形成、健康管理、金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言
・ 住居、年金、余暇活動など地域生活、生活設計に関する助言
○関係機関との連絡調整
障害者就業・生活支援センターの概要|厚生労働省
令和6年度時点で全国に337か所あり、比較的アクセスしやすいことが特徴です。
下記は障害者就業・生活支援センターの一覧です。興味のある方は、お近くの場所を確認してみましょう。
まとめ
- 就労継続支援A型を利用するデメリットとして、一般就労を目指す訓練が手厚くなかったり、一般就労をしたい気持ちが低下したりする点がある。他にも、安定して通うことや、仕事内容が合わない・スキルが求められる場合、利用することが苦痛になる可能性もある。
- 就労継続支援A型を利用するメリットは、雇用契約を結ぶので、最低賃金が保証されることや、事業所で技術や能力を身に付けられることがある。また、社会との繋がりをもてるので、社会からの孤立を防げる側面もある。
- 就労継続支援A型に向いていない方の特徴として、一般就労を希望している・体調が安定していないことが挙げられる。
- 就労継続支援A型以外にも、就労移行支援や就労継続支援B型、障がい者就業・生活支援センターなど、利用できる福祉サービスや支援制度はさまざまにある。自分の利用する目的に合った場所を探すことが大切。
この記事では、主に就労継続支援A型を利用するデメリットを紹介してきました。
ただし、就労継続支援A型を利用することは、決してデメリットばかりではありません。ご自身の利用目的がはっきりしていれば、就労継続支援A型はとても魅力的な福祉サービスです。
「一般就労についてどう考えているか」「安定して通える体調か」などを一度じっくりと考えて、利用するかどうかを吟味していきましょう。
就労継続支援A型については、以下の記事でも詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。