「A型事業所ってうまくできなかったらクビになったりするのかな?」
などの不安はありませんか?
2020年に倒産、廃業した障がい者福祉事業が127件もあったことをご存知でしょうか?
中でも就労継続支援A型事業所の倒産、それに伴う利用者の解雇が目立ちました。これからA型事業所を利用する方にとっては非常に心配ですよね。
- A型事業所が倒産する事情
- A型事業所を解雇される理由
- クビになった時の対処法とやるべきこと
を解説します。
安心して利用できるA型事業所を知る事で、安心して社会復帰を目指していきましょう。
就労継続支援A型事業所で約656人がクビになった事実
2017年~2018年で、約656人の障がい者がA型事業所を解雇されました。
この期間に倒産したA型事業所は、合計で46か所もあります。
新型コロナウイルスの影響を受ける前にも関わらず、これだけ多くの事業所が倒産し、突然解雇となった利用者たち。これからA型事業所の利用を検討している方、現在利用している方にとっては、非常に不安な出来事です。
なぜ、これほどの大量解雇が起きてしまったのでしょうか。
まずは、その理由について説明します。
理由1:助成金目的による大量解雇
A型事業所には、国や自治体から助成金や給付金が支給されています。
各事業所での作業をした利益に加えて、この助成金と給付金でA型事業所は運営されてきました。
この助成金と給付金を目当てに、安易な事業計画でA型事業所に参入してくる悪質な経営者たちがいるのです。
その仕組みを、以下のようにまとめました。
補助金を悪用する仕組み
- 障がい者1人につき、1日5,840円の自立支援給付費が支給される。
- 新規の障がい者を雇うと、2年で1人120万円、重度判定が出た場合や精神障がいなど条件を満たすと3年で最高240万円の特定求職者雇用開発助成金が支給される。
- 25人の障がい者を雇い、年間200日開所する。
- 利用者全員が2年間補助金を受けると8,840万円、条件を満たすと3年で最高1億4,760万円の収入になる。
- 1日4時間、時給900円とすると3年間で5,400万円を給料として利用者に支払う。
- 補助金から利用者の給料を引くと、3,440万円~9,360万円が残る。
仮に作業活動での利益が0円だったとしても、3,000万円以上を助成金から得られるのです。
助成金は3年間しか出ないので、3年経ったら事業所を閉鎖し、また新たな事業所を立ち上げれば、同じように利益を得られます。
これを繰り返した経営者がいるために、多くの利用者が解雇されてきました。
もちろん、すべてのA型事業所が助成金目的というわけではありません。ほとんどの事業所は、利用者を解雇することなく運営しています。ですが、一部の悪質な経営者のせいで、このような事態が起こってしまったのです。
政府の対策も裏目に
福祉の知識が無く、助成金目的でA型事業所を開業する経営者が続出しました。これに対して、厚生労働省は2017年に就労継続支援A型事業所の法改正を行います。
その改正の中には、
「賃金の支払いには自立支援給付費から支払うことは原則禁止」
という内容が書かれました。
これは、助成金や給付金で利用者に給料を支払うのを禁止し、利用者が作業をして得た利益で給料を支払いましょう、という内容です。同時に事業所の経営計画や、損益計算書、利用者の個別支援計画などの資料や契約書の提出が義務化されました。
しかし、障がい者の作業活動はどうしても生産性が低く、利益も少ないのが現状です。法改正によって経営が悪化したA型事業所は閉鎖を余儀なくされ、再び利用者が強制解雇となる事例が相次ぎました。
現在でも、障がい者の作業利益が助成金を上回っている事業所は、全体のわずか6%程度しか存在しないのも大きな課題です。
理由2:就労継続支援A型事業所の規約によってクビになる
A型事業所をクビ・解雇になる理由は、事業所の経営悪化だけではありません。利用者側にも問題がある場合は、解雇される可能性があります。
それは、「年齢制限」と「規約違反」です。
ここからは、A型事業所の年齢制限と規約違反について詳しく見ていきましょう。
年齢制限
A型事業所を利用できる年齢は、原則18歳~64歳までと決められています。高齢の方でA型事業所を利用している方や、これから利用したい方にとっては年齢が気になります。
ですが、平成30年4月に年齢に関する項目が見直されました。
65歳になる前日までに、A型事業所の利用者になっていれば、65歳を過ぎても利用出来るようになったのです。この改正によって、年齢を理由にクビや解雇になる可能性は非常に低くなりました。
65歳になってからA型事業所を利用したい場合は、生活支援員や生活相談員と協力して、各自治体に問い合わせてみましょう。あるいは、年齢制限の無いB型事業所を利用する方法もあります。
しかし、注意点もあります。就労継続支援A型事業所は、あくまで「就労」を目的とした場所です。65歳以上で高齢の場合、目的が「就労」なのか「介護」なのかをはっきりさせる必要があります。
例えば、身体障害で食事や排泄など日常生活において介護が必要な方には、「就労」目的のA型事業所は向いていません。介護施設への入所やヘルパーを検討しましょう。
利用する方の健康状態が、サービスの趣旨に合っているかを判断するのも非常に大切です。
規約違反
A型事業所にも一般企業と同じように、事業所独自の解雇になる規約があります。
例えば、
など、事業所によってさまざまです。
この規約に該当する場合は、解雇になる可能性があるので注意しましょう。とはいえ、強制的に即解雇になることは滅多に無いので安心してください。
万が一、障がいの特性によって事業所の規約に違反してしまった場合は話し合いが行われます。自身の障がいを改めて相談することで、解決策を一緒に考えてもらえるかもしれません。
例えば、
と相談してみることで、ご自身も周りの方も快適に過ごすことができます。こういった相談にA型事業所は柔軟に対応してくれるので、積極的に相談しましょう。
ですが、他の利用者と公平性を保つ意味でも、すべての相談に応じられないこともあります。場合によっては、他のA型事業所やB型事業所への移行を検討することも大切です。
就労継続支援A型事業所をクビになった時の対処法とやるべきこと
どんな解雇理由であれ、もしもA型事業所をクビになってしまったら、どうすれば良いのでしょうか。
A型事業所の場合、雇用契約を結んで利用するため、解雇になる時は解雇通知書が渡されるのが一般的です。その解雇通知が本当に正当なのかを見極めましょう。
給料が未払いの場合の相談先や、コミュニケーションが苦手な方向けの相談先も紹介しますので、参考にしてください。
正当な解雇なのか調べる
A型事業所を解雇されたら、その解雇が正当なものか判断しましょう。雇用契約を結んで利用するA型事業所では、労働基準法に従って作業を行います。
その労働基準法の第20条には、解雇について以下のような記載があります。
第二十条(解雇の予告)
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。労働基準法|e-GOV 法令検索
事業所は利用者を解雇する場合、30日前までに解雇予告をしなくてはいけません。万が一、解雇日が通知された日より30日未満の場合は、解雇予告手当を請求することができます。
また、解雇する理由についても、社会一般的な常識があるものでないといけません。
労働契約法の第16条には、解雇をする理由についての記載もあります。
第十六条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。労働契約法|e-GOV 法令検索
利用者が事業所の備品を窃盗した、他の利用者に危害を与える行為が何度もあったという場合は解雇の対象になります。
しかし、助成金目的の解雇は、法律的にも認められないというわけです。不当解雇として、すぐに生活相談員や各自治体の障害福祉課へ相談しましょう。
このように、A型事業所から解雇を受けた時は、本当にその解雇が正当なのかをしっかり見極めてください。
ハローワークに相談
A型事業所をクビになった時に、強い味方になるのがハローワークです。
経営不振で解雇になり、給料の未払いがある場合はすぐに相談してください。経営者が行方不明になると、利用者だけで探し出すのは非常に困難です。場合によっては、警察や弁護士に依頼する場合もあります。
さらに、A型事業所をクビになると収入が減ります。雇用保険に加入していた場合は失業給付の手続きを行いましょう。
また、生活費を稼ぐためにも、なるべく早めに次の事業所を探すのが得策です。この機会に一般企業の障がい者雇用や、B型事業所への移行も検討しましょう。
解雇によって精神的に辛い場合は、専門の相談窓口を紹介してくれる場合もあるので、気軽に利用してみてください。
厚生労働省によって雇用・労働に関する相談窓口がまとめられています。障がいのある方専門ではありませんが、対面や電話だけでなく、メールでの相談も可能なので参考にしてください。
ゆっくりと休む
A型事業所を解雇されてしまったら、まずは落ち込まず、ゆっくりと休みましょう。
仕事を辞める手続きは、健常者であっても非常に気を遣い、疲れるものです。信頼していた事業所から裏切られたような気分になると思います。もっと働きたかった気持ちもありますよね……。
落ち込まないように、自分の好きなことをして気分をリフレッシュしてください。好きな音楽や映画、YouTubeで可愛い動物を見ると心が癒されるのでオススメです。
慌てずに、しっかりと睡眠時間を取って、体を休めてください。少しずつ気分が落ち着いて、「またがんばろう!」と思えた日が再スタートです。
令和4年の時点で、A型事業所は全国で4,196か所、B型事業所は15,354か所あります。ゆっくりと利用できる事業所を探していきましょう。
次の事業所では安心して過ごせるように、ゆっくり体を休めてください。
安心できるA型事業所の選び方
ここまで、A型事業所をクビになる原因や解雇理由について見てきました。不等な解雇や、悪質な経営者のせいで事業所に対するトラウマがある方もいるでしょう。
そこでここからは、安心して過ごせるA型事業所の探し方をご紹介します。
助成金目当てや、経営難によって起こる解雇を防ぐために、国が行っている対策があります。スマホやパソコンで簡単に安心できる事業所を知る方法も載っているので、ぜひ参考にしてください。
A型事業所の経営状況を確認する
厚生労働省が行っている「障害福祉サービス等情報公表制度」を利用して、A型事業所の経営状況を確認しましょう。
障害福祉サービス等情報公表制度とは、福祉サービスの品質向上を目標に、事業所が福祉サービスの内容を各都道府県に報告する制度です。その報告を都道府県がまとめて一般公開しています。
事業所の詳細はもちろん、運営元の法人名、経営状況、職員の人数・保有資格まで、非常に細かい所まで知ることができます。
万が一、事業所が虚偽の報告などをした場合、自治体が調査に入って、その内容も公開されます。厚生労働省が定めた制度なので信頼もあり、都道府県が調査を行うので安心できますね。
ネット環境があればどこでも気軽に検索ができるので、ぜひ活用してみてください。
実際にA型事業所の見学に行く
行ってみたい事業所が決まったら、実際に見学をしましょう。ネットの情報だけでは見えて来なかった部分が、見えるようになります。
A型事業所の求人はハローワークにも掲載されているので、最寄りのハローワークから見学のお願いをしてください。
実際に見学へ行った時は、以下の内容に注目して見るのがオススメです。
見学時に確認するポイント6つ
明るく、清潔感のある雰囲気がオススメです。
室内が広くて作業スペースが窮屈でないことを確認しましょう。
パイプ椅子や折り畳み机など、利用者が使う設備環境が貧弱では無いか確認しましょう。
あまりに低単価な内職業務1本だけではなく、PCスキルや販売業務、調理、製造業など、一般就労に役立つ作業内容が本当に行われているか確認します。
笑顔で対応してくれるか確認します。声のトーンは優しくも、はっきりとした口調で、利用者に合わせた話し方をしている職員がいると安心です。
職員は福祉系出身で、障がいに対してどこまで理解があるか。
また、一般企業に務めた経験のある職員がいるかも確認すると安心です。
明るくキレイで、設備に費用が掛けられていると安心。
快適に過ごせるのはもちろんですが、細かい設備にもお金を掛けるということは、助成金を正しく利用している証拠でもあります。
事業所の見学については、以下の記事でも詳しく解説しております。
まとめ|A型事業所で利用者がクビになる理由と対処法
- 助成金目当ての悪質な経営者によって、大量解雇になる障害者が続出した
- 現在は年齢による解雇は法改正でほぼ無くなった
- 障がいの特性によって規約違反になった時は、面談を行うことで環境を整えてくれる場合もある
- ネットで簡単に全国のA型事業所の経営状況を見ることができる
本記事ではA型事業所でクビになった事例や解雇理由、事業所の選び方まで見てきました。
この記事の内容を参考にして、本当に安心できる就労継続支援A型事業所を見つけてください。