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「障がい者雇用でも需要がある資格がいいな…」
「資格を取得する時に使える支援制度ってあるのかな?」
など、障がい者雇用と資格について、疑問を抱えていませんか?
障がい者雇用であっても、資格を所有していると自身の能力の証明になり、就職や転職を有利に進めることができます。
- 障がい者雇用でオススメの資格
- 各資格の難易度や実際の求人数
- 障がい者の資格取得を支援する制度
について解説していきます。
障がい者雇用で資格を取るメリットは?
全国の求人を見てみると、障がい者雇用にも学歴や資格が不問の求人が多くありますよね。
資格が無くても就職が可能に見えますが、逆に言えば資格を持たない求職者が多く存在するため、その職種に関する資格を取得することが能力の証明になり、ほかの求職者よりも有利に就職・転職を進められる可能性があります。
また、資格必須となる求人にも応募できるようになるため、仕事選びの幅が広がり、キャリアアップにも繋げられるでしょう。
障がい者雇用でオススメの資格15選!業種別に紹介
資格があることで就職や転職が有利になるといっても、希望する職種とは無関係の資格を取得しても効果は薄いでしょう。本記事では、業種別にオススメの資格を紹介していきます。その資格に関連する求人数の目安※や難易度も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
※求人数の目安は2024年11月21日時点、ハローワークインターネットサービスにて閲覧可能な、その職種の障がい者雇用の求人数を根拠としています。
事務職(全国の求人数目安:約6,000件)
厚生労働省の「令和5年度障がい者雇用実態調査結果報告書」では、障がい者雇用のうち最も多い職種は事務職で、全体の約20%を占めています。ハローワークでの求人数も非常に多く、執筆時点で6,000件以上の障がい者専用求人があります。
事務職は、書類作成やデータ入力などのデスクワークに限らず、電話対応や来客対応など、職場によってさまざまな業務があります。事務職でオススメの資格は比較的難易度が低く、取得しやすいものが多いです。
資格必須としている事務職の求人は少ないですが、持っていると選考で有利に働く可能性があります。
MOS
MOS(モス)とは、Word・Excel・PowerPointなどのマイクロソフト社製オフィスソフトの操作スキルを評価する資格です。全国一斉試験が毎月1~2回行われているほか、認定されたパソコンスクールや専門学校でも個別に実施されており、挑戦しやすい資格と言えるでしょう。
資格の知名度も高く、事務職を目指すなら持っていて損はありません。
勉強時間の目安 | |
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一般レベル | 80時間程度 |
上級レベル | 100時間程度 |
勉強時間の目安 | |
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一般レベル | 80時間程度 |
上級レベル | 100時間程度 |
日商簿記検定
日商簿記検定は、企業の経済活動を帳簿に記録し、財務状況を明らかにする業務である「簿記」の業務スキルを評価する資格です。
社会人としての経済の基礎知識を学べるため、資格としてだけでなく知識としても役に立つ資格でもあります。
勉強時間の目安 | |
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簿記初級 (旧4級) |
70時間 |
3級 | 100時間 |
2級 | 300時間 |
1級 | 1,500時間 |
勉強時間の目安 | |
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簿記初級 (旧4級) |
70時間 |
3級 | 100時間 |
2級 | 300時間 |
1級 | 1,500時間 |
日商PC検定
日商PC検定は、Excelなどを用いたデータ活用や資料作成のスキルを評価する資格で、MOSと比べるとより実践的なスキルを身に付けることができます。
既にMOSの資格を持っている方や、スキルアップを考えている方はこちらの資格を目指すと良いでしょう。
勉強時間の目安 | |
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3級 | 30時間 |
2級 | 60時間 |
1級 | 120時間程度 |
勉強時間の目安 | |
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3級 | 30時間 |
2級 | 60時間 |
1級 | 120時間程度 |
IT系(全国の求人数目安:約800件)
IT系といっても、エンジニアとしての実務経験を必須としている求人もあれば、イラスト制作やWebデザインなどのデザイナー系、一般事務を行いつつ自社サイトの更新などを担当する求人も存在します。
特にエンジニア職は、専門的なスキルや勤務形態の柔軟さが必要となるため障害者雇用が難しい傾向にありますが、その分、IT系の資格や知識の活躍が期待できます。
日本には「情報処理技術者試験」というIT系国家試験があり、4段階の難易度に分けられた12種類の国家資格が存在します。
ITパスポート
ITパスポートは、ITを利用する側としての基礎知識があることを証明する資格で、情報処理技術者試験の中で最も難易度が低い「レベル1」に位置します。知的財産などの法律やセキュリティ対策の基礎知識も学べるため、IT系の仕事に限らず事務やWeb系、営業職などの職種でも幅広く役に立つ資格と言えるでしょう。
近年はどの企業もIT化が進んでおり、学生から社会人まで多くの方がITパスポートを受験しており、認知度も高いのが特徴です。
勉強時間の目安 | |
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IT知識のない方 | 180時間 |
IT知識のある方 | 100時間 |
勉強時間の目安 | |
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IT知識のない方 | 180時間 |
IT知識のある方 | 100時間 |
基本情報技術者試験
ITパスポートの次のステップとして基本情報技術者試験があります。
ITパスポートがITを「利用する側」の資格であるのに対し、「レベル2」である基本情報技術者試験や「レベル3」以上の資格はITを「開発する側」の資格となります。
テクノロジーや経営、マネジメントについても学べるため、これからIT業界への就職や転職を希望する方や、IT業界でのキャリアアップを目指す方にオススメの資格になります。
勉強時間の目安 | |
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IT知識のない方 | 200時間 |
IT知識のある方 | 50時間 |
勉強時間の目安 | |
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IT知識のない方 | 200時間 |
IT知識のある方 | 50時間 |
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、「レベル3」に位置する資格で、ITに関する幅広い知識や応用力などが問われる資格です。
受験条件こそありませんが、出題範囲の広さと読解力が求められる試験であるため、合格率は23%前後という高難度の試験となっています。
予備校や資格スクールなどを活用して挑むことが推奨されます。
勉強時間の目安 | |
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基礎知識のない方 | 500時間 |
基礎知識のある方 | 200時間 |
勉強時間の目安 | |
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基礎知識のない方 | 500時間 |
基礎知識のある方 | 200時間 |
福祉士・心理士
ここでは福祉士や心理士に関する資格を解説をします。
心理士が「心」に対してサポートをしていくのに対して、社会福祉士や精神保健福祉士などのソーシャルワーカーは「環境」をサポートする仕事と言えます。
この項目で紹介する資格は、大学で特定の科目を学ぶか、養成施設などを卒業しなければ受験ができないため注意が必要です。気になる資格があれば、詳しい受験条件については公式Webサイトをチェックしてみましょう。
社会福祉士
社会福祉士は、介護現場から医療、福祉施設などさまざまな場所で活躍しており、生活に困難を抱える人々からの相談を受け、問題解決のための支援を行っています。
相談内容は多岐にわたり、介護保険制度の利用方法や福祉サービスの紹介、生活保護の申請手続きなどがあります。
300時間
(受験条件あり:福祉系大学や養成施設の卒業、実務経験など)
精神保健福祉士
社会福祉士が幅広い方を対象としているのに対して、精神保健福祉士は精神障がい者の支援を専門としたソーシャルワーカーです。社会福祉士の資格と合わせて取得すれば、就職先の選択肢が広がり、職場によっては資格手当の支給も期待できるでしょう。
300時間
(受験条件あり:福祉系大学や養成施設の卒業、実務経験など)
精神保健福祉士国家試験|公益財団法人社会福祉振興・試験センター
児童指導員任用資格
児童指導員は、放課後等デイサービスや児童養護施設などで、保護者の代わりに療育や生活指導を行います。
児童指導員になるためには任用資格が必要ですが、次のいずれかを満たせば申請して取得することができる資格です。
- 社会福祉士、精神保健福祉士、教員免許のいずれかを保有する
- 大学や大学院で所定の専門課程を卒業する
- 児童福祉施設で2年以上の実務経験がある
臨床心理士
臨床心理士は、精神疾患や心理的問題などを抱える相談者を、心理的ケアや医療サービスによる支援を行う職種です。
医療機関や福祉施設のほか、教育機関などにおいても活躍が期待できます。
同じ心理系の資格に「公認心理師」という国家資格がありますが、公認心理師は大学のほかに大学院での科目履修や認定施設での実務経験が必要など、取得に6年ほどかかるため、社会人が転職する場合は臨床心理士のほうが取得しやすいと言えるでしょう。
200時間
(受験条件あり:指定大学院の修了)
産業カウンセラー
産業カウンセラーは、企業で働く従業員に対するカウンセリングの知識や理論、実技試験をクリアしたことを証明する資格です。「産業カウンセラー」という正式な職種はありませんが、心理カウンセラーや心理師として働くときに役立つ資格となります。
200時間
(受験条件あり:産業カウンセラー協会の講座を受講)
介護職(全国の求人数目安:約900件)
日本では高齢化社会が進んでおり、この先も介護職の需要は増え続けると言われています。
また、人材不足を改善するために待遇の改善や賃上げが進む動きが予想されているので、将来性が高い職業と言えるでしょう。即戦力を求めている施設も多いので、介護職の資格を取得すると採用で有利に働くことが期待できます。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護の基礎から応用までを学んだことを証明する資格で、講座を開いている教室へ通学し、試験に合格することで取得できます。
受講スタイルは教室によって異なり、短期間で取得を目指せるコースもあれば、週一回通うことで働きながら取得を目指せるコースもあります。
この資格を必要としている求人も数多く存在するので、介護職を目指すなら特にオススメの資格になります。
130時間
介護職員実務者研修
介護職員実務者研修は、初任者研修のステップアップとして実践的な知識と技術の習得を目的とした資格です。
初任者研修より受講費用が高く学習期間も長いものの、学習内容には初任者研修も含まれるため、介護経験がある方は実務者研修から受けるのも良いでしょう。
なお、既に初任者研修を修了した方は、実務者研修に含まれる初任者研修分の受講が免除されます。
初任者研修を受けていない方:450時間
初任者研修を修了した方:320時間
(そのほか、訪問介護員研修や介護職員基礎研修の修了者にも免除あり)
介護福祉士
介護福祉士は介護系資格の中でも唯一の国家資格で、介護に関わる専門知識と高度な技術を身に付け、利用者のケアや現場の指導を行います。
受験条件はいくつかありますが、3年以上の実務経験と介護職員実務者研修を修了していれば受験することができるため、就職後の目標やキャリアアップとして見据えることもできます。
250時間
(受験条件あり:養成施設や福祉系高校を卒業、実務経験3年以上など)
運転・運輸系(全国の求人数目安:約650件)
最後に紹介するのは、意外と忘れがちな運転免許証です。
運転免許証も立派な資格であり、特に普通自動車運転免許はさまざまな業種で必要とされます。
運転免許証
運転免許証にはさまざまな種類がありますが、その中でもオススメをいくつか紹介します。
一見、車を使わないように見える業種でも普通自動車免許を必須、またはあれば尚可としている求人が数多く存在しています。
普通自動車免許を必要とする理由は事業所ごとにさまざまで
- 備品や書類運び、研修や取引先へ出向くなど、業務上で運転することがある
- 「運転免許を取得できる能力がある」という目安としてみている
- 運転免許証が手っ取り早い身分証明書になるため
などがあるようです。
大型自動車免許は、大型特殊・二輪車を除いた自動車免許をすべて含んだ最上位免許ともいえるものです。
その分費用や技術が必要となる免許ですが、取得すれば運送業で自動車の大きさに関わらず活躍することができます。
取得には、普通自動車免許等での3年以上の運転経験が必要で、普通自動車免許よりテスト項目が多くなっているのが特徴です。
工場や倉庫、建設現場などでの荷物の積み下ろしで重宝されるのがフォークリフトです。
フォークリフトを運転するには、全国各地の教習所で開催している運転技能講習を受け、修了証をもらう必要があります。
運転免許証が無くても18歳以上であれば取得できますが、運転免許の有無で講習にかかる時間が変わります。
資格取得の支援制度4選
障がい者の資格取得を支援する制度としては、経済的支援から資格取得や就職支援など、さまざまな制度があります。
この項目では、資格取得の際に活用できる支援制度を4つ紹介していきます。
- 生活福祉金貸付制度
- 教育訓練給付金
- 障がい者職業能力開発校
- 就労支援サービス
順に紹介していきます。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、生活困窮者や障がい者などを対象に生活資金の貸し付けを行う制度です。資格や免許の取得など、技能習得に必要な費用やその期間の生活費を無利子または低利子で借りることができます。就職のために資格を取得したいものの、資金に余裕がないときに役立ちます。
限度額 | 原則580万円以内 |
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償還期間 | 20年以内 |
連帯保証人 | 原則必要 (立てなくても貸付可能) |
利子 | 連帯保証人ありの場合:無利子 連帯保証人なしの場合:年1.5% |
教育訓練給付金
教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に受講費用の一部が支給されます。利用するには、雇用保険の被保険者であるか、被保険資格を失ってから1年以内であることが求められます。
全ては紹介しきれないので、ここでは本記事で解説した資格を例として挙げてみます。
教育訓練給付制度の対象となる訓練は、下記から調べることができます。
教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム|厚生労働省
一般教育訓練給付金:受講費の20%(上限10万円)
雇用の安定・就職を促す教育訓練が対象で、下記のような資格が該当します。
- MOS
- 簿記検定
- ITパスポート
- など
特定一般教育訓練給付金:受講費の40%(上限20万円)
速やかな再就職や早期のキャリア形成に繋がる教育訓練が対象で、下記のような資格が該当します。
- 基本情報技術者試験
- 介護職員初任者研修
- 運転免許証(全種)
- など
専門実践教育訓練給付金:受講費の50%(上限40万円)
労働者の中・長期的なキャリア形成に繋がる訓練が対象で、下記のような資格が該当します。
- 応用情報技術者試験
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 介護職員実務者研修
- 介護福祉士
- など
専門実践教育訓練のみ、資格取得後かつ訓練終了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合に受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給される制度となっています。
職業能力開発校
障がい者職業能力開発校は、障がい者を対象とした新しいスキルや資格を身に付けるための公的な教育機関です。開発校によってさまざまな科目コースがあり、障がいの特性に合わせたペースで勉強を進めることができます。
基本的に入校選考や試験に合格すれば無料で受講でき、条件を満たせば失業手当の期間延長や受講手当をもらいながら資格取得を目指せます。
障がい者職業能力開発校については、下記の記事でも解説しています。
就労支援サービス
就労支援サービスには、目的や対象者などに合わせて3つの種類に分けられます。
- 就労移行支援
就労を希望する利用者に、就労に向けたトレーニングやスキル習得のサポートをします。
就労継続支援と違い給料や工賃は発生しません。 - 就労継続支援A型
A型事業所は事業所と雇用契約を結び、働いて給料をもらうことが特徴です。
実際に働くことでスキルや資格を身に付け、一般企業への就職を目指します。 - 就労継続支援B型
B型事業所は雇用契約を結ばずに利用します。
主に生産活動などの機会の提供や能力向上の訓練を行い、自立した生活を目指します。
いずれの就労支援サービスについても、利用には障害福祉サービス受給者証の取得が必要になります。ですが、利用することで無料で資格取得の訓練を受けられたり、給料を貰いながら資格取得を目指せたりするため、利用条件や自身の目標を踏まえて利用を検討しましょう。
就労支援については、下記の記事などで解説しています。
まとめ|障がい者にオススメの資格や支援制度
- 資格を取得すると、ほかの求職者より有利に就職・転職を進められる可能性がある。
- 希望する職種に関係する資格取得を目指すことが大切。
- 障がい者が資格を取得する際、生活福祉資金貸付制度や、教育給付金による資金援助の制度がある。
- 職業能力開発校や就労支援サービスなど、資格取得やスキル向上を支援する制度もある。
多くの資格は、一度取得すると長きにわたり効果を発揮します。就職や転職だけでなく、就職後のスキルアップのために資格の勉強をするのも良いでしょう。
この記事を読んだあなたが、無理のない就職、転職ができることを願っています。