「障がい者手帳を持ってなくても利用できるの?」
このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
- 就労継続支援の利用対象者
- 障害者手帳を持っていなくても利用できるのか
- 障害者手帳を取得するメリット
について解説していきます。
本記事を読めば、ご自身がA型事業所やB型事業所を利用できるのかが明確になります。
就労継続支援の利用条件
就労継続支援には、雇用契約を結んで利用する「就労継続支援A型事業所」と雇用契約を結ばずに利用する「就労継続支援B型事業所」があります。どちらも就労の機会を提供する福祉サービスですが、対象となる方に違いがあります。
ここでは、就労継続支援A型・B型それぞれの利用対象者について説明します。
就労継続支援A型の利用条件
A型事業所の利用対象者は、障がいや難病により一般企業での就労は困難であるものの、適切な支援があれば雇用契約に基づく就労が可能な方です。
具体的には、下記のような方が利用できます。
- 就労移行支援事業を利用しても、企業での就労に結びつかなかった方
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行っても、企業での就労に結びつかなかった方
- 就労経験のある方で、現に企業等との雇用関係がない方
A型事業所を利用できるのは、原則18歳以上65歳未満の方になります。ただし、所定の条件を満たす場合は65歳以上の方も利用可能です。
就労継続支援B型の利用条件
B型事業所の利用対象者は、障害や難病により一般企業での就労と雇用契約を結んでの就労が困難な方です。
具体的には下記のような方が利用できます。
- 企業や就労継続支援A型事業所での就労経験がある方で、年齢や体力面で雇用されることが困難となった方
- 50歳に達している方または障害基礎年金1級を受給している方
- 1及び2に該当しない方で、就労移行支援事業者等により就労面に係る課題等の把握が行われている方
B型事業所の利用には年齢制限がないので、高齢の方も利用できます。
どんな障害のある人が利用できるの?
就労継続支援は下記のような障がいや難病のある方が利用できます。
身体障がい | 視覚障がい、聴覚障がい、肢体不自由、内部障がい |
---|---|
精神障がい | うつ病、双極性障がい、統合失調症、てんかん、パニック障がい、適応障がいなど |
発達障がい | ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障がい)、知的能力障がい(知的発達症) |
難病 | *神経・筋疾患、消化器系疾患、循環器系疾患など障害者総合支援法の対象疾病として指定されている疾病に該当するもの(366疾病) |
身体障がい | 視覚障がい、聴覚障がい、肢体不自由、内部障がい |
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精神障がい | うつ病、双極性障がい、統合失調症、てんかん、パニック障がい、適応障がいなど |
発達障がい | ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障がい)、知的能力障がい(知的発達症) |
難病 | *神経・筋疾患、消化器系疾患、循環器系疾患など障害者総合支援法の対象疾病として指定されている疾病に該当するもの(366疾病) |
就労継続支援事業所では、様々な障がいに対応できるよう支援体制を整えていますが、事業所の設備等の状況によっては対応できる障がいに制限がある場合もあります。ご自身の障がいが対象になるか心配な方は、事業所に相談してみましょう。
*障害者総合支援法の対象疾病として指定されている疾病に該当するものは、厚生労働省のサイトより確認できます。
厚生労働省|対象疾病一覧
厚生労働省|障害者総合支援法の対象疾病の見直しについて
就労継続支援は障がい者手帳がなくても利用できる?
就労継続支援は障がい者手帳がなくても利用できます。その代わり、就労継続支援など福祉サービスを利用には「障がい福祉サービス受給者証」が必ず必要になります。
障がい福祉サービス受給者証を発行してもらうには、病気や障害を証明できる書類を申請時に提出する必要があります。
ここでは、障がい福祉サービス受給者証とは何か、申請時に必要な書類について説明します。
障がい福祉サービス受給者証とは
障がい福祉サービス受給者証は、就労継続支援を含めた福祉サービスを利用するために必要な証明書で、一般的に「受給者証」と呼ばれています。この受給者証は、各自治体から発行されます。申請は、お住いの地域の障がい福祉課窓口で行います。
自治体によって発行までの期間に差がありますが、就労継続支援を利用する場合は申請から2週間~1か月程度で発行されることが多いです。発行まで1か月以上かかる場合もあるので、事業所の利用を決めたら早めに申請しておきましょう。
申請は事業所がサポートしてくれるため、手続きが不安な方も安心して申請できます。
受給者証の申請に必要な書類
障がい者手帳があれば障がいを証明できるので、申請手続きがスムーズに行えます。
しかし、障がい者手帳を持っていない方も「主治医の診断書」や「自立支援医療受給者証」があれば、就労継続支援の利用申請ができます。
主治医の診断書
主治医の診断書によって病気や障がいの状況を証明できるので、診断書を提出することで受給者証を申請できます。
診断書の費用は病院・クリニックによって異なりますが、約2,000円~3,000円程度で作成してもらうことができます。
主治医に就労継続支援を利用したいことを伝え、就労継続支援を利用しても問題ないか相談してみましょう。
自立支援医療受給者証
自立支援医療受給者証によっても病気や障害を証明できるので、受給者証の申請に使用できます。自立支援医療とは、障害や病気の治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度で、通常3割の医療費負担が1割になります。
自治体によっては申請書類が異なる場合もあるので、受給者証を申請する際に確認しておきましょう。
障がい者手帳を取得すると利用できるサービス
障がい者手帳を取得しておくと福祉サービスを利用できるだけでなく、割引サービスや優遇措置があります。
ここからは、障がい者手帳を取得するメリットをいくつかご紹介します。
障がい者枠で就職できる
事業所で安定して就労できるようになったら、一般企業への就職を考える方もいらっしゃるかと思います。
障がい者枠で就職するためには、障害者手帳が必要になります。障がい者枠での就労は、一般枠で働くよりも障がいへの配慮が受けやすいので、仕事に集中できるよう環境調整をしてもらえたり、通院のために勤務時間を調整してもらえます。
障がい者手帳を持っていることで、一般枠と障がい者枠どちらの求人にも応募できるため、選択の幅が増えます。
障がい者枠で就職するかは、ご自身の意思で自由に決めることができるので、クローズでの就労を考えている場合には障がい者手帳は必要ありません。
公共交通機関の割引が受けられる
身体障がい者手帳・療育手帳を持っている方は、電車やバスなど公共交通機関の運賃が割引になるので、事業所への通所に電車やバスを利用する方は交通費の負担を軽減できます。
精神障がい者保健福祉手帳の場合は対象にならないことが多いですが、一部の鉄道やバスでは割引の対象になる場合もあります。その他にも、映画鑑賞料やテーマパークの入場料、携帯電話料金の割引など様々な割引サービスが受けられます。
また、美術館や博物館など地方公共団体が運営する施設は無料で利用できることが多いです。
公共交通機関関係や映画関係については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、併せて読むことをオススメします。
雇用保険の失業給付の日数が増える
失業したときに受け取れる失業給付の受給期間が延長されます。
障害者手帳を持っている場合、就職困難者に該当するので給付を最大360日まで受けることができます。
一般の離職者より長期間失業給付が受け取れるので、自分に合った仕事を焦らず探すことができます。
所得税や住民税の「障がい者控除」が受けられる
課税対象になる所得から一定額が控除されるので、所得税や住民税の納税額を減らすことができます。
納税者の区分が「障がい者」の場合は27万円(住民税26万円)、「特別障がい者」に該当する場合は40万円(住民税30万円)が、確定申告において所得金額から控除されます。
他にも「相続税の障害者控除」や「贈与税の非課税」、「少額貯蓄の利子等の非課税」など税制面で優遇されます。
障がい者手帳は発行まで約2か月程度かかるので、利用したいサービスがある場合は、期間に余裕をもって申請しておくことをおすすめします。
障がい者手帳を取得するデメリット
障がい者手帳持つことに対して抵抗感を感じたり、ご家族から理解を得られない場合があることがデメリットとしてあります。その他には、申請・更新時の診断書の費用や手続きの手間がかかることが挙げられます。
心理的に負担を感じる場合は、無理に障がい者手帳を持つ必要はありません。障がい者手帳は取得しても使用するかどうかをご自身で決めることができますし、必要がなくなったときは、いつでも返却できます。
まとめ|就労継続支援A型・B型の利用条件
ここまで、就労継続支援の利用対象者と障がい者手帳がない場合の利用方法について解説してきました。
- 就労継続支援は障がい者手帳がなくても、診断書など障がいや病気を証明できる書類があれば利用できる
- 就労継続支援などの福祉サービスを利用するには「受給者証」が必要
- 障がい者手帳を持っていると受けられる割引サービスや優遇措置がある
就労継続支援では、働きながら一般就労を目指すためのトレーニングができます。
障がい者手帳がなくても利用できるので、利用を検討している方は気軽に事業所に問い合わせてみましょう。