あなたは、「ひきこもり」と「ニート」の違いを知っていますか?
「どちらも働かないで家にいるんでしょ?」
と考えている方も多いのではないでしょうか。
「ひきこもり」という言葉と「ニート」という言葉には近いイメージがあり、混同されがちです。どちらも近年大きな社会問題として取り上げれられる言葉ですね。
この二つは重なっている部分もありますが、それぞれ別で定義づけられています。したがって、ひきこもりやニートを脱して働きたい方が受けられるサポートも、それぞれ異なることがあるので注意が必要です。
- ひきこもりとニートはどう違うのか
- ひきこもりやニートを続けるとどうなってしまうのか
- ひきこもりやニートを脱したい方はどんなサポートが受けられるのか
についてお伝えします。
この記事を読んで、ひきこもりとニートの違いについて一緒に学んでいきましょう。
ひきこもりとニートの違い
「ひきこもり」と「ニート」の違いは、「社会参加の有無」と「年齢」がポイントになります。
それぞれ詳しくみていきましょう。
ひきこもりの定義とは?
「ひきこもり」は、厚生労働省では次のように定義されています。
様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者を交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。2.ひきこもりの定義・出現率・関連要因|ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン
具体的には、下記のような方のことです。
- 学校や仕事に行っていない
- 家族以外の人とほとんど交流がない
- 6か月以上継続して自宅に引きこもっている状態である
- 家族同伴や一人で出かけることがあってもよい
- 年齢は問わない
「社会活動に参加していない」ということがポイントであるため、趣味の買い物やドライブに出かけるような方でも「ひきこもり」に含まれます。
ニートの定義とは?
「ニート」は、「Not in Education, Employment or Training」の頭文字を取ったイギリスの造語「NEET」を日本語読みした言葉です。直訳すると「就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人」になります。
1990年代にイギリスが労働政策を行う中で「支援が必要な人たち」という意味合いでこの言葉がつくられました。
厚生労働省のホームページには、次のように書かれています。
総務省が行っている労働力調査における、15~34歳で、非労働力人口のうち家事も通学もしていない方を、いわゆるニートとして定義しています。よくあるご質問について その他|厚生労働省
具体的には、下記のような方のことです。
- 15歳~34歳
- 通学も仕事もしていない
- 家事もしていない
- 求職活動をしていない
- 社会参加はある
ひきこもりとは違い、ニートには年齢のくくりがあるのです。さらに、社会参加はするものの働く意思がないか、病気や障がい、家族の介護などといった事情によって働くことができない人のことを指します。
ニートは別の言い方をすると「若年無業者」です。ちなみに、35歳~44歳の無業者は「ニート」ではなく「中年ニート」「中年無業者」と呼ばれ、近年増加の傾向にあります。
フリーターとの違い
もう一つ、似通ったイメージの言葉に「フリーター」があります。こちらも混同されがちですが、「ひきこもり」や「ニート」とどう違うのでしょうか。
フリーターとは、このような方のことをいいます。
- 15~34歳
- 男性は卒業者、女性は卒業者で未婚
- アルバイトやパートとして働いている
- 無職だが求職活動をしていてアルバイトやパートを希望している
先述の2つとフリーターとの決定的な違いは、「働いている」もしくは「働く意思があり求職活動をしている」ということです。
ひきこもりやニートの人数
では、ひきこもりやニートの方は現在どれくらいいるのでしょうか。
ひきこもりは全国に146万人
内閣府が2023年3月31日に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査」によると、2022年度の全国のひきこもりの人数は、約146万人と推計されています。
ニートは全国に59万人
総務省統計局の「労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、全国のニートの数は、2023年平均で59万人となっています。
ひきこもりやニートを続けるとどうなる?
ひきこもりやニートになってしまう原因は、次のように人それぞれです。
- 受験や就職に失敗して心が折れてしまった
- 学校や職場でのいじめ、人間関係のトラブルがトラウマになっている
- コミュニケーションを取るのが苦手で自分の殻に閉じこもってしまう
- 親の援助があり働く必要がないと考えている
- やりたいことがなく、将来の夢や希望もないので働く意欲がわかない
- 病気やケガ、家族の介護など、理由があって働けない
しかしどんな事情があるにせよ、「ひきこもりやニートのままでいるわけにはいかない」と思っている方が多いのではないでしょうか。
ひきこもりやニートを続けることで、次で述べるような問題が起こります。
ひきこもりやニートを続けると陥る当事者の問題
ひきこもりやニートでいられるということは、親や親族に生活を頼っていると言えるでしょう。今はいいかもしれませんが、いつまでもそうした状況が続くとは限りません。
今後、親や親族が亡くなることや、身体的・経済的な事情で援助できなくなることも出てくるでしょう。そうなった場合、金銭的に困窮してしまいます。家事なども頼っているとしたら、生活も立ち行かなくなってしまいます。
ひきこもりやニートを続けると、何もせず歳だけを重ねてしまいます。生活に困り始めてから働こうとしても、ブランクと年齢がネックになって思うように就職できないという悪循環に陥ります。
こちらの記事も参考にしてください。
ひきこもりやニートの社会的な問題
社会に与える影響には、どういったものがあるでしょうか。
まず、少子化の問題です。金銭的事情によって晩婚・未婚の方が増え、少子化がますます進む恐れがあります。また、生活保護受給者が増え続け、現在の生活保護のしくみが破綻する恐れもあります。
さらに、少子高齢化社会における生産年齢人口の減少が進む中、大切な労働者人口の担い手を失っているともいえるでしょう。
ひきこもりやニートの方が受けられる支援
ここまでみてきたように、ひきこもりやニートの問題は個人だけのものではありません。社会にとっても大きな問題なのです。裏を返せば、ひとりで抱え込む必要はないのです。社会でもひきこもりやニートの方の社会復帰を願っていて、さまざまなサポート窓口や機関が存在します。
ここでは、ひきこもりやニートの方が利用できる支援制度を紹介いたします。
仕事をしたい方に向けた窓口
ハローワーク(全ての年齢のひきこもり・ニート向け)
ハローワークは行政が運営する代表的な就職支援機関で、幅広い年齢層の求職者が利用しています。求人の紹介、就職活動の相談、職業訓練の相談、履歴書の書き方や面接の指導などのサポートが受けられます。
詳しくは、こちらの記事もご覧ください。
わかものハローワーク(34歳までのひきこもり・ニート向け)
わかものハローワークは、正社員就職を目指す35歳未満の方が利用できます。専門の職員がマンツーマンで就職活動をサポートしてくれます。
ハローワークの中に「わかもの支援コーナー」「わかもの支援窓口」として設けられている場合もあります。
地域若者サポートステーション(49歳までのひきこもり・ニート向け)
地域若者サポートステーションとは、働くことに悩みを抱えている15歳~49歳の方を対象に、就労に向けた支援を行う機関です。「サポステ」という愛称で親しまれています。
厚生労働省が委託した、若者支援の実績やノウハウがある民間団体などが運営しており、全国全ての都道府県に設置されています。働きたいけど自信がなく、一歩を踏み出せない方にオススメです。
詳しくは、こちらの記事もご覧ください。
ジョブカフェ(34歳までのひきこもり・ニート向け)
「ジョブカフェ」とは通称で、正式名称は「若年者のためのワンストップサービスセンター」といいます。対象年齢は原則15歳~34歳です。
都道府県が主体的に設置していて、各地域の特色を活かした就職セミナーや職場体験、カウンセリングなど、若者が自分に合った仕事を見つけるためのさまざまなサービスが受けられます。
興味のある方は、ぜひ利用してみてください。
まずは悩みを相談したい方に向けた窓口
ひきこもり地域支援センター
ひきこもり地域支援センターは行政が運営するひきこもりに特化した相談窓口で、すべての都道府県・指定都市にあります。社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、公認心理師、臨床心理士等の資格を持った支援コーディネーターが相談支援を行い、ひきこもりの状態にある方やその家族を適切な支援に結び付けています。
電話や来所による相談のほか、同じ悩みを持つ方が集まる居場所の提供もしています。
ひきこもり支援にかかわる情報の幅広い提供も行い、地域におけるひきこもり支援の拠点としての役割を担っています。
電話やSNSでの相談窓口
働く意欲や勇気はまだ湧いてこないけど、ひきこもりやニートでいるのはつらい。でも何をどうしていいか分からなくて、精神的に追い詰められてしまっているときは、電話やSNSでの相談窓口を頼っても良いでしょう。
話を聞いてもらうだけでも心が軽くなり、一歩踏み出すためのヒントが得られるかもしれません。
まとめ|ひきこもりとニートの違い
- 「ひきこもり」と「ニート」の違いは、主に「社会参加の有無」と「年齢によるくくり」の2点。
- ひきこもりとは、社会参加(就学、就労、家庭外での交遊など)をせず6か月以上続けて自宅に引きこもっている、すべての年齢の人。
- ニートとは、社会参加はするものの、働く意欲がないか事情があって就業・求職活動をしていない15歳から34歳までの人。
- ひきこもりやニートを続けることで問題になるのは、当事者としては生活の困窮、社会としては少子化や労働者人口不足が挙げられる。
- 社会問題となっているひきこもりやニートのために、さまざまな支援窓口がある。ひとりで抱え込まず、こうした支援を頼ることが大切。
ひきこもりやニートでいることは、当事者にとっても家族にとっても、良い状況とは言えないでしょう。つらい現実から逃避するための手段であるかもしれませんが、いつか現実から逃げられなくなるかもしれません。
社会には支援の手がいくつも存在しています。少しずつでも状況が良くなるよう、適切な支援と繋がれることを願っています。