「ASDとADHDを併発している私に向いている仕事なんてあるの?」
この記事を覗いたあなたも、このような悩みを抱いているのではないでしょうか?働きたいのに自分に合う仕事が見つからないのは、とてもつらいことですよね。
ASDとADHDを併発し、就職活動に難しさを感じてしまっている方は少なくありません。
実際、ASDとADHDを併発している方は、単独の方よりも社会生活を送ることが難しく、就職活動で躓いてしまうケースも多いです。
しかし、ASDとADHDを併発しているからといって、仕事のなにもかもがあなたに向いていないとは言えません。あなたの中にある特性をしっかりと理解し、活かす方法を見つけることができれば、きっと長くのびのびと働ける仕事が見つかるはずです。
- ASDとADHDを併発している方の特徴
- ASDとADHDを併発している方が向いている仕事を探すときの6つのポイント
- ASDとADHDを併発している方の適職になりうる仕事
- ASDとADHDを併発している方が利用できる就労支援制度
を解説していきます。
ASDとADHDが併発している方に適した就職活動の進め方について、一緒に見ていきましょう。
ASDとADHDを併発している方の特徴
ASDとADHDを併発している方の特徴として、二つの発達障害の特性が影響しあうことによって悩みや困りごとが生まれているケースが多いです。日常生活や社会生活でつらい思いを抱えている方も少なくないでしょう。こうした方が自身に適した仕事を探すためには、まず自分の特性を理解することが必要不可欠となります。
ただし、ASDとADHDはどちらも個人差が大きい障がいです。その上、これらを併発している方の特性はより複雑で、自身でも理解しづらいものになってしまっている場合があります。
この項目では、ASDとADHDの特性を簡単に振り返ったあと、ASDとADHDが併発している方によく起こるであろう困りごとについて解説していきます。
あなたが自身の特性を理解するための参考になれば幸いです。
ASDの方の特徴
ASDの方には、主に下記のような特性が現れます。
- 相手の気持ちを想像することが難しく、表情や身振り手振りのやりとりが苦手
- あいまいな表現が苦手で、暗黙のルールや言葉の裏の意味を理解することが難しい
- こだわりが強いため、自分のルールを曲げることが難しく、予定通りにいかないと不安になる
このような特性のため、主に人とコミュニケーションをとる場面で困難さを感じ、悩みを抱える方が多いです。加えて、聴覚や視覚、触覚などの感覚が過敏になっている方も少なくありません。
ADHDの方の特徴
ADHDは、大きく不注意型と多動・衝動型の二つに分かれています。どちらか一方の特性を持つ場合もあれば、併発する場合もあります。
不注意型の特性は下記のようなものになります。
- 注意力が散漫で、物をなくしやすかったり、ミスが多かったりする
- 一気に集中することができるが、ちょっとしたことで気が散ってしまう
- 段取りを立てて行動することが難しい
このような特性から、仕事でのミスが多かったり、約束の時間を守れなかったりするなど、社会生活で困りごとを抱えていることが多いです。
次に、多動・衝動型の方の特性は下記のようなものがあります。
- 思いつくと我慢できず、すぐ行動したり深く考えず発言をしたりする
- 落ち着きがなく、じっとしていることが苦手
- 初対面の人と喋ることができるが、必要以上に距離感が近くなってしまう
- 一方的に喋ったり、人の発言に割り込んでしまったりする
こちらは、人に話しかけることに抵抗がない分、遠慮がない面も強いため、ASDとは違った形でコミュニケーションに悩みを抱えてしまう方が多いでしょう。
ASDとADHDを併発した方によくある困りごと
では、ASDとADHDの特性が組み合わさると、どのような困りごとが生まれてしまうのでしょうか。
代表的な例としては下記の4つが挙げられます。
- コミュニケーションが難しい
- 人との距離感が近くなりやすい
- 同じミスを繰り返す
- 上手く段取りを立てられない
もしかしたら、あなたにも当てはまっているものがあるかもしれません。自身の生活を振り返りながら、一緒に読み進めていきましょう。
コミュニケーションが難しい
ASDとADHDを併発している方の多くは、双方の特性が影響し合うことで、どちらか単独の特性がある方よりもコミュニケーションに難しさを抱えています。
例えばADHDの方は、深く考えずに言葉を発した結果、相手を傷つけてしまうことがあります。この際、ADHDを単独で持つ方であれば、後から「相手を傷つけてしまったのではないか」と気付ける可能性が高いでしょう。しかし、ASDを併発しており、「相手の気持ちを想像するのが苦手」という特性を併せ持っている場合、相手を傷つけたことを自覚できない可能性があります。
また、ADHDの方は思い付きで話すことが多いため、話にまとまりがなく、相手にうまく伝えることができません。そこにASDが加わっていると、「自分が知っているから相手も知っているだろう」という思い込みから言葉足らずになってしまい、さらにコミュニケーション不全を引き起こしてしまいます。
こうしたことから、ASDとADHDを併発している方は、どちらか単独の方よりも人間関係を悪化させてしまったり、チームワークを乱してしまったりする方が多いです。
人との距離感が近くなりやすい
人との距離感をうまく測れないことも、併発している方にとって困りごとの一つになりやすいです。
まず、ADHDの方は衝動に任せて行動してしまう傾向があります。初対面でも臆せずに人と接することができるという良い面もありますが、人の踏み込んでほしくないところにまで踏み込むようなことをしてしまいがちです。
対してASDの方は、相手の気持ちが想像できないため、人との距離感を測ることが苦手な方が多いです。このため、人付き合いが苦手な方もいれば、逆に距離が近くなってしまう方もいます。
この二つが組み合わさると、自覚なく他人との距離感が近くなってしまい、不快感を抱かれても気づくことができない、といったことが起こりうるでしょう。こうした特性を受け入れられない相手からは避けられてしまう可能性もあります。
同じミスを繰り返す
ASDとADHDが併発していると、どちらか単独の方よりも同じミスを繰り返しやすくなります。
もともと、ADHDの方は物を失くす、うっかり予定を忘れるといったミスをすることが多いです。一方で、ASDの方は強いこだわりを持つため、自身の行動を改めるのが難しいことがあります。この二つの特性が組み合わさると、何かミスをしても行動を改めることができず、同じミスを繰り返してしまう可能性があります。
仕事においては、同じミスを繰り返すために上司からの印象も悪くなり、改善できないことを責められてストレスを感じてしまうでしょう。
上手く段取りを立てられない
ASDやADHD単独でも段取りを立てるのが苦手な方が多いですが、併発していることでさらに難しくなっている場合があります。
ADHDの場合、衝動的な行動や要領の悪さから、段取りを立てることが苦手な方が多いです。段取りを立てようとしても、頭の中がごちゃごちゃしてしまって上手くいかないことも珍しくありません。
ASDの方は柔軟な対応が苦手で、状況に応じた適切な優先順位を決めることが難しいです。加えて、こだわりの強さから一度決めた計画などを変更しようとしたがりません。
このような特性が組み合わさると、「思い付きで行動を起こしてしまい、それがたとえ非効率的なものだったとしても、強いこだわりのせいでなかなか軌道修正できない」といったことが起こることもあります。
ASDとADHDを併発している方が適職を探す6つのポイント
ここまで解説したように、ASDとADHDが併発していると、仕事においてもさまざまな困りごとを抱えることになります。こうした方が自身に適した仕事を探すには、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。
ここでは、下記の6つのポイントについて解説していきたいと思います。
- 自分の特性について理解を深める
- 自分の特性をプラスに考える
- 念入りな企業研究を行う
- 職場や周囲からの理解を得る
- 障害者雇用枠を検討する
- 就労支援制度を利用する
1.自分の特性について理解を深める
前の項目でも解説しましたが、ASDとADHDを併発している方が仕事選びをするときは、自分の性格や興味・関心に加え、自身にどのような特性があるのか、理解を深めていくことがとても重要です。
もともとASDとADHDの特性は個人差が大きいため、併発している方の抱える困りごとは一人ひとり全く異なった形になる傾向にあります。
自身の特性をきちんと把握することで、必要な対策や配慮などが具体的に見えてくるでしょう。
特性の理解を深める方法の一例
特性の理解を深める方法として、まず自分の強みや弱み、困りごと、興味関心を紙に書きだすことをオススメします。目に見える形にすることで、より整理しやすくなるでしょう。
また、どんな時にどのような困りごとが生じているのか、そしてその要因はどんな特性から起こっているのかもしっかり分析していきましょう。困りごとの要因を明確にすることで、自身にどんな特性があるのか分かってきます。
分析する際は、「ASDとADHDが併発しているから」と大雑把にまとめるのではなく、困りごと一つ一つに目を向けて、ASDかADHDのどちらが、あるいは両方のどんな特性が要因となっているのか検討することが大切です。加えて、困りごとに対して自分でできる対策や必要な配慮を考えて、言葉で説明できるようにしておきましょう。面接官の方にも良い印象を抱いてもらえますし、職場の方も必要な配慮を具体的にイメージしやすくなります。
「一人では特性の理解を深めることが難しい」という方も多いでしょう。その場合は、転職サイトの自己分析ツールや、後から紹介する就労支援制度の利用がオススメです。ツールを利用したり第三者に相談したりすることで、客観的な意見をもらえるでしょう。
2.自分の特性をプラスに考える
自身の特性をプラスに考えることも、仕事を探す上で大切になります。
確かに、ASDとADHDを併発している方は、単独の方よりも生活での困りごとでつらい思いをされている場合が多いでしょう。しかし、そうした特性は考え方次第で長所にもなり得ます。
例えば、ADHDの衝動的に行動する特性や好奇心の旺盛さがあれば、思い立ったことをすぐ行動に移せます。さらに、ASDのこだわりの強さが組み合わさることで、作業を根気強く取り組み続けることができるでしょう。
また、ASDを単独で持つ方はコミュニケーションに難しさを抱える場合が多いですが、そこにADHDの特性が加わることで、人とコミュニケーションを取るのに抵抗感が薄れるケースもあります。
このように、特性の見方をプラスにするだけで、仕事にも生かせる強みに変わることがあります。あなたに合った仕事や職場の環境がより具体的に見えてくる場合もあるでしょう。
3.念入りな企業研究を行う
自身の特性と相性の良い環境や仕事内容であるか、念入りに企業研究を行いましょう。そうすることで、長く働き続けられる可能性が上がります。もちろん、あなたがしたい仕事を探すのが一番ですが、特性と職場環境や仕事内容が噛み合わなかった場合、大きなストレスを抱えてしまいます。結果的に、うつ病やパニック障害などの二次障害を引き起こすことも珍しくありません。
また、働き方にも注目しておきましょう。最近ではリモートワークや短時間勤務を取り入れるなど、多様な働き方を推進している企業も多いです。企業によっては、一般枠でも発達障害に対するサポート体制がしっかりとしている場合もあります。無理のない働き方ができる職場を選ぶことも、仕事を長く続けていくためには大切です。
4.職場や周囲からの理解を得る
ASDとADHDを併発している方が仕事を長く続けるためには、職場や周囲からの理解や支援、配慮も必要不可欠です。
面接などの場面では、自身の障がい特性についてきちんと伝えるようにしましょう。自分が行っている対策や必要な配慮を具体的なエピソードを交えて話すようにすれば、より伝わりやすくなります。
上記でも軽く触れましたが、しっかり伝えることができれば面接官からの印象も良くなりますし、職場の方も配慮のイメージがしやすくなります。
また、仕事に就いた後も周りと積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。自分が何に困っているのか、どんなことに難しさを感じているかを周囲に対して素直に伝えられれば、協力も得やすくなるでしょう。
5.障害者雇用枠を検討する
「一般就労で働くのは難しいかもしれない」と感じている場合は、障害者雇用枠を検討することもオススメします。
障害者雇用枠とは、発達障害などの障がい者向けの雇用枠になります。応募には障害者手帳が必要となりますが、就職できた場合は必要な合理的配慮を受けられるため、一般就労よりも働きやすくなるでしょう。求職数も一般就労より少ないので採用率も上がります。
しかし、下記のようなデメリットがあることに注意が必要です。
- 月収が10~20万円と低く、昇給や昇格も少ない
- 仕事がデータ入力や事務職など、単調で限られたものになりやすい
- 企業から配慮を受けられない場合もある
このような要素も頭に入れたうえで、慎重に検討していきましょう。
6.就労支援制度を利用する
就職活動をする際は、就労支援制度を利用することがオススメです。
発達障害を持つ方にとって、一人での就職活動はとても大変なことです。
「一人で就職活動を進めることに自信がない」
という悩みを抱えている方も少なくないでしょう。
就労支援制度を利用すると、悩みや困りごとを相談することができます。施設によっては、エントリーシートの添削や面接対策、スキルを身に付けるための訓練などの就職支援を受けることもできます。
発達障害に関する知見を持つ施設も多いため、仕事探しから普段の生活についても必要なアドバイスがもらえるでしょう。
利用する際は自分の障がいや困りごと、希望についてしっかりと話すことが大切になります。支援機関はあなたの特性を踏まえた上で、専門的な知見からアドバイスを行います。
制度の詳細については、後の項目で紹介していきます。
ASDとADHDを併発している方の適職になりうる仕事
では、ASDとADHDを併発している方の適職には、どんな仕事があるのでしょうか。
ここでは、ASDやADHDの方と相性が良いと言われる仕事を紹介していきます。ただし、ここで紹介する仕事はあくまで一例です。ASDやADHDの特性は個人差が大きいため、必ずしもあなたに向いているとは限りません。もしかしたら、一般的には相性が悪いと言われている仕事があなたに向いている可能性もあります。
そのことを踏まえた上で、どんな仕事があるのか一緒に見ていきましょう。
プログラマー
プログラマーとは、主にコンピュータに命令するためのコードを書く「プログラミング」を行う仕事です。
プログラマーにはコードを書き続けられる集中力と、ミスや不具合と根気強く向き合うための粘り強さが必要になります。また、習得する必要のあるプログラミング言語も多いため、継続的に勉強していくことが大切です。
ADHDの好奇心旺盛で興味を持ったものに対して驚異的な集中力を発揮する特性と、ASDの論理的思考力の高さ、強いこだわりからくる粘り強さを発揮できれば、プログラマーとして大きな強みになるでしょう。
プログラミングは敷居が高いと感じる方が多いでしょうが、最近ではプログラミングスキルを身につけられる就労支援施設も増えてきました。プログラミングに興味がある方は、就労支援制度を利用して挑戦してみることをオススメします。
Webデザイナー
Webデザイナーは、Webサイトをクライアントのイメージに沿ってデザインすることが仕事です。具体的には、まずユーザーが使いやすい色合いや装飾を「Illustrator」や「Photoshop」といったソフトを用いて作成し、大まかな構成が決まった後はWebサイトを構成するプログラミング言語を使ってコーディングを行っていきます。
このため、Webデザイナーにはプログラマーに必要な集中力と粘り強さに加え、創造力や発想力が必要です。
ASDとADHDを併発している方は、物事を斬新な視点から見る能力や発想力、創造性を持っていることがあり、Webデザイナーと相性が良い可能性があります。発想力を養うためには社会のあらゆる分野に興味を持つことが必要ですが、この点においてはADHDの好奇心旺盛な特性が活かされることでしょう。
Webデザインについても、就労支援制度でスキルを学ぶことができるようになってきました。興味があれば、ぜひ挑戦してみると良いでしょう。
ライター
ライターとは、依頼された企画内容に沿って、紙や書籍、Web媒体に文章を書く仕事です。最近は特にWeb媒体での仕事が増えており、企業のWebメディアに乗せる記事の作成が主流になってきています。
ライターは文章を書くだけでなく、読み手のニーズに応えるため幅広い知識や流行に興味を向け、正確な情報収集を行う必要があります。
ADHDの好奇心旺盛な面やASDのこだわりの強さを、「さまざまな情報に目を向けテーマに沿って根気強く調べていく」という形で発揮することができれば、ライターとして大きな強みになるでしょう。
未経験から挑戦することもできますが、スキルを積みたいという方にはプログラマーやWebデザイナーと同様に就労支援制度を利用することをオススメします。
校正・校閲
校正・校閲とは、文章の誤りを発見し訂正する仕事です。校正は主に誤字脱字や誤植などを訂正しますが、校閲は文章の内容にまで踏み込んで誤りや矛盾がないかチェックを行います。
仕事を行う際は、細部への注意力や集中力、一つの文章ととことん向き合う粘り強さが必要とされます。そのため、先ほど解説したプログラマーにおいて強みとなる特性は、校正・校閲でも生かすことができるでしょう。
ただし、勉強を怠らず、正確な知識を得ようとする姿勢が大切になってきます。文章を読むことが好きな方や、言語に興味を持っている方などにおすすめです。
事務職
発達障害者に向いている仕事として、事務職が挙げられることが多くあります。実際、発達障害者の職業別雇用者数の割合においても事務職は22.7%で2番目となっています。
ASDとADHDを併発している方でも、申込書や見積書の処理などルーチンワークが多い入力事務や、名刺作成や会議室の掃除を担当する庶務、総務といった事務であれば、粘り強さと集中力を発揮できるでしょう。また、安定感があるので職場に定着できる可能性も高いです。
しかし、事務職の業務内容は会社によって内容が全く違うこともあります。業務内容にマルチタスクが多かったり、他人と関わることが多い営業事務だったりする場合は、あまり向いていないと言えるでしょう。このように、事務職と一括りにいっても、業務によって向いている場合と向いていない場合があるのです。
もし、事務職を目指したいのであれば、求人票の内容を見てどんな業務内容なのか、その業務内容は自分の特性と相性がいいのか、しっかり照らし合わせることが大切になります。
ASDとADHDを併発している方が利用できる就労支援制度
先ほど紹介した仕事以外にも、あなたに向いている仕事があるかもしれません。この項目では、仕事を探すためのサポートを行ってくれる就労支援制度には、どんなものがあるかを紹介していきます。
ほとんどが無料で利用できる支援・サービスなので、積極的に活用していくことをオススメします。順番に見ていきましょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、ASDやADHDをはじめとした障がいのある方が一般企業に就職し、仕事を長く続けていくための支援や訓練を受けられる支援機関です。
18歳以上、満65歳未満の病気や障がいがある方が対象で、原則として24か月という利用期間が定められています。
主に受けられる支援は、下記の通りです。
- 応募書類の作成
- 面接練習
- コミュニケーションや必要なスキルを身に付けるための訓練
- 障がい理解
- 就職後の職場定着支援
特に、「障がい理解」に関しては、支援員があなたの障がい特性を一緒に整理してくれるので、特性を理解する助けとなってくれるでしょう。
基本的なビジネススキルやコミュニケーションスキルに加え、プログラミング、Webデザインなどの専門スキルを学べる就労移行支援事業所も増えてきました。
就労移行支援事業所を選ぶ際は、自分の興味のある支援を行っているかどうかを指針にして調べることがオススメです。
注意点として、就労支援事業所は就職先を紹介する機関ではありません。就職先を探す際は、この後に紹介するハローワークや転職エージェントなどを並行して利用するようにしましょう。
ほとんどの方が無料で利用できますが、条件によっては利用料がかかることもあります。詳しい内容は下記の記事で解説していますので参考にしてください。
ハローワーク
ハローワークとは、地域の総合的雇用サービス機関として、職業紹介や雇用保険の手続き、雇用対策などの業務を一体的に行う公的な施設です。障がいのある方向けの窓口が設置されており、専門の職員や相談員に就職活動について相談することができます。
特に、発達障害がある方に対しては個々の障がい特性に応じて職業相談を実施しており、福祉・教育等関係機関と連携して、就職を始める前の準備から職場に定着するまで一貫した支援を行っています。
ASDとADHDが併発している方に対しても、理解のある方々が相談に乗ってくれるので、安心して悩みや困りごとを打ち明けることができるでしょう。
また、相談を通じて、ハロートレーニング(職業訓練)につなげていくことも可能です。ハロートレーニングでは、基本的なビジネススキルからプログラミングをはじめとしたITスキルなど、さまざまな訓練が受けられます。
ただし、ハローワークに求人を出していない企業や団体も多いので、後述の転職エージェントを並行しての利用がオススメです。
転職エージェント
転職エージェントとは、キャリアアドバイザーなどの専門家が相談者との面談を通して、その人に合った求人情報を紹介するサービスです。
担当者による面接の対策や履歴書などの必要書類の添削、入社後も長く働き続けることができるようなサポートなど、手厚い支援を受けることができます。
近年では障がいに特化したエージェントも多くなってきました。発達障害にも理解があるので、ASDとADHDの併発による就活上での悩みや相談事にも、専門的な知見から最適なアドバイスがもらえるはずです。
障がい者向けのエージェントの例には、下記が挙げられます。
障がい者向けの転職エージェントを利用する際は、自身の障がい特性や悩みごとなどをしっかりと伝えましょう。より、自分に合った仕事を紹介してもらえるようになります。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターとは、保険、医療、福祉、教育、労働などの関係機関と連携して発達障害者への支援を総合的に行うことを目的としている施設です。すべての発達障害者の方を対象としており、利用できる年齢にも制限がありません。
発達障害者支援センターでは、大きく分けて下記の3種類の支援を受けることができます。
- 相談支援
- 発達支援
- 就労支援
特に「発達支援」では、専門的な知識や経験のあるスタッフがあなたの特性に合わせ、具体的な支援やアドバイスを行ってくれます。自身の特性をより把握し、対策を練ることができるでしょう。
詳しい支援内容については、下記の記事を参考にしてください。
また、全国の発達障害者支援センターの窓口は下記のリンクから参照できます。
発達障害者支援センター・一覧|国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは、障がいのある方を対象にして、それぞれのニーズに応じた専門的な「職業リハビリテーション」を行っています。
職業リハビリテーションとは、障がいのある方が適した職場に就職、定着するための能力を向上させる訓練を通して社会参加することを目的とした取り組みです。
職業リハビリテーションの計画を作成する際は、職員とこれまでの職歴や障がいについて話し合い、適性検査を受けることになります。そのため、自身の特性をより理解することができるでしょう。
ハローワークとも提携しており、障がいのある方の就職や就労継続に関して、職業リハビリテーションの観点から専門的な支援を受けることもできます。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは「なかぽつ」とも言い、障がい者の方に就業面と生活面における支援や相談を行っています。職業訓練や職場定着支援などの仕事に関することだけでなく、生活習慣、健康管理についてのアドバイスをもらうことができるでしょう。
また、就活の面についても、相談内容を基にしてさまざまな連携機関を紹介してくれます。紹介された職業訓練機関で、体力や能力に合わせて個人のプログラムを組んでもらうことも可能です。
生活リズムを整えながら、就職に向けた準備をしたい方にオススメです。
まとめ|ASDとADHDを併発している方の仕事選びのポイント
- ASDとADHDを併発している方は、個人差の大きいそれぞれの特性が影響し合っているため、単独の方よりも特性が複雑に現れることが多い。
- ASDとADHDを併発している方が向いている仕事を探すときは、まず自分の障がい特性を深く理解し、特性をプラスに考えていくことが必要。企業研究をして自身の特性との相性を事前に確かめることも大切。
- 就活では、面接で自身の特性を説明して職場や周囲の理解を得ることがポイントとなる。障害者雇用枠の検討や、一人で就職活動が進めることが難しければ就労支援制度の利用もオススメ。
- ASDとADHDの併発の方の適職の例として、「プログラマー」「Webデザイナー」「ライター」「校正・校閲」「事務」がある。
- 利用できる就労支援制度には、「就労移行支援事業所」「ハローワーク」「転職エージェント」「発達障害者支援センター」「地域障害者職業センター」「障害者就業・生活支援センター」などがある。
就職活動がどうしてもうまくいかないと悩んでいる方は、まず自分の特性を改めて見つめ返すところから始めてみましょう。
自分にどんな特性があるのか、困りごとの要因となっているのは何なのかが明確になることで、自分に合った仕事や職場が具体的に見えてくるはずです。
「一人ではどうしてもまとまらない」「どうしたらいいのかわからない」という方は、この記事で紹介した就労支援制度を利用してみてください。ほとんどが無料で利用できますので、悩みを抱えている方は気軽に相談してみましょう。