近年、障害者雇用促進法の改定などもあり、発達障がいのある方と一緒に働く方もいらっしゃるでしょう。
その中でも、自閉スペクトラム症の方と同じ職場で働いている方は、
「指示をしても伝わらず、分かってもらえない…」
「仕事をスムーズに進められるようにするには、今後どうしていけばいい?」
などの悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
- 自閉スペクトラム症について
- 自閉スペクトラム症の方との職場での接し方
- 自閉スペクトラム症の方が働きやすい職場環境
について解説していきます。
自閉スペクトラム症の特性は、知ることで対応できる可能性があります。この記事が少しでも参考になれば幸いです。
自閉スペクトラム症について
自閉スペクトラム症は、発達障がいの一つです。アスペルガー症候群(ASD)や自閉症の総称でもあります。また、発達障がいは脳機能の偏りが原因と言われていますが、詳しいことは未だに解明されていません。
特に、コミュニケーションを取ることが苦手な方が多く、大きく
- 言語的コミュニケーションの障がい
- 非言語的コミュニケーションの障がい
に分けられます。
言語的コミュニケーションの障がい
言語的コミュニケーションの障がいには、具体的に下記のようなものがあります。
- 一方的に話す
- 自分の考えや状況を伝えることが苦手
- 話し相手の言葉や表情などから情報を読み取ることが難しい
- 暗黙のルールやニュアンスなどが理解できない
- 言葉をストレートに言ってしまう、また、言葉をそのままの意味で受け取ってしまい冗談が通じない
- 相手に合わせて言葉使いや話し方を変えることが難しい
- 曖昧な表現を理解することが苦手
- など
日常生活には言葉を交わしてコミュニケーションを取る場面が数多くあるので、特性を知らないと、誤解やすれ違いが生まれやすくなってしまいます。その影響から、仕事上でのトラブルに発展してしまう可能性もあるでしょう。
非言語的コミュニケーションの障がい
非言語的コミュニケーションの障がいには、具体的に下記のようなものがあります。
- 視線や焦点が合わない、定まらない
- 無表情
- 声の抑揚やトーンが変わらず一定
- など
表情や声のトーンが変わらないと、本人が意図しない捉え方をしてしまったり、場合によっては叱ってしまったりする可能性があります。このような特性は、知識として覚えておくことがとても重要です。
その他の特徴
自閉スペクトラム症には、他にも下記のような特徴があります。
- こだわりが強い
- 急な変更やイレギュラーなことが苦手
- 興味や関心が限定的
- 感覚過敏
- など
ただし、特性は個人差が大きいので、柔軟な対応が求められます。
自閉スペクトラム症の方との職場での接し方
上記では、自閉スペクトラム症の特性について紹介してきました。では、特性を踏まえた上で、職場ではどのように接すれば良いのでしょうか?
ここでは主に3つ解説していきます。
- 特性を理解する
- 曖昧な表現で指示することを避ける
- 仕事のミスを強く責めないようにする
順に見ていきましょう。
特性を理解する
自閉スペクトラム症の特性は、上記でも紹介したように数多くあります。よって、特性を理解したり知っておいたりすることで、接し方が分かるようになることがあります。
ただし、特性は個人差が大きいので、「自閉スペクトラム症の特性は○○○だから、□□□の対応を取ろう」ということは避けましょう。その人が何に対して困っているのか、また、周りの方が何に対して困っているのかを分析し、その人に合った対策を取ることが重要です。
曖昧な表現で指示することを避ける
自閉スペクトラム症の特性から、言葉でのコミュニケーションを苦手としている方が多いので、曖昧な表現や指示をすることは避けましょう。「これぐらい言わなくても分かるかな」と判断し、具体的な指示を行わないと、仕事をする上ですれ違いが起こる可能性が非常に高くなってしまいます。
よって、特に優先してほしい仕事などは「これ早めにやっておいて」よりも「〇時までにやってもらえる?」などと、具体的な数字や言語化をして伝えることを意識しましょう。
仕事のミスを強く責めないようにする
自閉スペクトラム症の方は、自分が意図しないところで怒られてしまったり、誤解されてしまったりすることも多いので、自己肯定感が低くなっている方が少なくありません。
よって、仕事のミスは、感情的に強く責めないようにしましょう。
ミスは繰り返さないことが重要です。ミスをしてしまった原因をそのまま放置せず、原因と理由を明確にして、確認する回数を増やすなど、具体的な対策を取ることが大切になります。
自閉スペクトラム症の方が働きやすい職場環境
上記では、自閉スペクトラム症の方との接し方について説明してきました。
ここでは、より自閉スペクトラム症の方が働きやすくなる職場環境について、主な下記の4つを解説していきます。
- 得意なことを任せる
- マルチタスクを振らないようにする
- 感覚過敏に対する対策を取り入れる
- 本人に工夫してもらう
順に見ていきましょう。
得意なことを任せる
自閉スペクトラム症の方は得手不得手がハッキリしているので、苦手な業務よりも、その人が得意な分野の業務を任せてみましょう。苦手な業務を任せ続けるのは、その人にとっても周りの方にとっても、負担が大きくなってしまいます。
自閉スペクトラム症の特性と業務の内容がぴったりと合った場合、とても大きな戦力になる可能性もあるので、改めて業務内容の見直しや配属先を考えることも重要になります。
マルチタスクを振らないようにする
自閉スペクトラム症の特性の影響から、マルチタスクが苦手な方が多いとされています。よって、できるだけマルチタスクを振らないように意識しましょう。
また、具体的な日時を伝えずに仕事を頼んでしまうと、優先順位が分からなくなってしまう可能性があります。その結果、仕事量が増えてマルチタスクにならざるを得ない状況になってしまうこともあるので、しっかり仕事の流れを整理してから頼むなど、工夫をしていくことが大切です。
感覚過敏に対する対策を取り入れる
自閉スペクトラム症の方は、視覚過敏や聴覚過敏などの感覚過敏の性質を抱えている場合があります。何も対策をしないままでは、大きなストレスに繋がってしまうので、可能な限り感覚過敏に対する対策を取り入れていきましょう。
具体的には、視覚過敏の場合はサングラスや遮光カーテンの使用を認めたり、聴覚過敏の場合はイヤーマフやイヤホンの使用を認めたりすることなどがあります。
感覚過敏は個人差が大きいので、その人に合った対策を取り入れていきましょう。
本人に工夫してもらう
自閉スペクトラム症の特性は個人差が大きく、会社側が対策を取ってもなかなかカバーしきれない面もあります。
その時は、本人に工夫をしてもらい、自ら対策を取ってもらうことも選択肢に入れておきましょう。本人の意識や周りの対応などが少しずつでも変化していけば、仕事の効率化にも繋がります。
ただし、本人に任せっぱなしにするのではなく、「どのような業務が苦手なのか」「どういう時に助けてほしいか」など、具体的な対策を一緒に練っていけると、双方にとってより仕事がしやすくなるでしょう。
まとめ|自閉スペクトラム症の方との職場での接し方
- 自閉スペクトラム症は発達障がいの一種。言語的・非言語的のコミュニケーション障がいの影響から、コミュニケーションを取ることが苦手な方が多い。
- 自閉スペクトラム症の方と職場で接する時は、しっかりと特性を理解し、曖昧な表現で指示することを避ける。また、仕事のミスを強く責めないようにすることも大切。
- 自閉スペクトラム症の方が働きやすくなる職場環境として、得意なことを任せたり、本人に工夫してもらったりすると良い。他にも、マルチタスクを振らないようにすることや、感覚過敏に対する対策を取り入れることも重要。
自閉スペクトラム症の特性は、個人差が大きく、多岐に渡ります。また、特性を知っておかないと、仕事やコミュニケーションを取る上で支障が出てきてしまう可能性もあるでしょう。それを防ぐためにも、その人が何に困っていて、何が得意なのかを把握し、働きやすい職場環境をつくっていくことが重要になります。
どうしても部署や会社内で対応できない場合は、外部の「発達障がい者支援センター」のような、発達障がいについての専門機関なども積極的に利用していきましょう。
発達障がい者支援センターについては、下記の記事で詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。