統合失調症とは精神疾患のひとつで、幻覚・幻聴など、人によって異なる症状が現れ、考えがまとまらなくなる、集中力や記憶力が低下するなどの影響が出る病気です。
統合失調症を抱えていると、心身のバランスが崩れて、眠れなくなったり、不安になりやすかったりするため、一人暮らしをすることはハードルが高いと感じる方もいるでしょう。
「一人で家事などをこなす自信がないけれど、大丈夫かな…」
このように、初めての一人暮らしに不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
統合失調症があるけれど、一人暮らしを始めたいと考えている方へ、
- 統合失調症でも一人暮らしはできるのか
- 統合失調症を一人暮らしで悪化させない5つの方法
- 統合失調症の方が一人暮らしをする際に困ったときの相談先
について解説していきます。
統合失調症でも自立した一人暮らしはできるのか
統合失調症を患っていても一人暮らしをしている方はいますが、そのためには日々の体調管理や毎月の生活費の支払い、家事などを一人でこなせることが条件になります。
一人暮らしをするために重要なポイントを見ていきましょう。
体調管理
規則正しい生活を送り、睡眠を十分にとるようにしましょう。
質の良い睡眠をとり、疲れた体と脳を休ませ、毎日のストレスをリセットできるとよいですね。
また、統合失調症の症状が起きた時は自分なりの対処法を決めておくことが大切です。
強い不安や緊張を感じた時も落ち着いて対処し、普段の生活に戻れるようにしておきましょう。
生活費の支払い
一人暮らしには月々の家賃や食費、光熱水道費などの支出がかかります。
収入と支出を比べて実際に生活できるかイメージしておくとよいですね。
生活費の支払いについては、次の項目の「一人暮らしをする際に必要な費用」で詳しく説明していきます。
家事
一人暮らしでは、ちょっとした買い物でも「あれ、買ってきて~。」などと家族に頼むことはできません。
日常の買い物やさまざまな箇所の掃除方法、戸締りなど、暮らすためにはどんなものが必要か、どんなことをやる必要があるのか、家事の内容を知って慣れておく必要があります。
実家にいる間に、一通り家事をこなして練習してみましょう。
生活するうえで自分が得意なことや不得意なことを明確にしておき、不得意なことは周囲からサポートを受けるか、サービスの利用を検討してみてもいいでしょう。
統合失調症の方の一人暮らしの準備について
一人暮らしをする際に必要な費用
2022年の総務省の家計調査報告によると、1か月に一人暮らしで必要な生活費は、平均で161,753円となっています。
この数値はあくまでも平均値のため、住んでいる地域や年齢、環境により異なります。
また、賃貸物件に入居する場合、別途初期費用が必要です。
初期費用とは、賃貸物件を契約する際にかかる費用です。敷金・礼金や仲介手数料、保証料、保険料などがあり、それぞれ家賃をベースに定められていることが多いです。合計金額は基本的に家賃4~6か月分と言われています。
ほかにも、引っ越し費用や家具・家電などの費用も必要になるため、お金に余裕がある状態で一人暮らしを始められるといいでしょう。
生活に困った場合、「生活困窮者自立支援制度」という支援制度があります。お住まいの市区町村にある自立相談支援や生活支援を扱う窓口でご相談ください。
賃貸物件でできる防犯対策
障がいがあってもなくても、初めての一人暮らしを怖いと感じる方は多いでしょう。
防犯対策として、モニター付きインターホンや防犯性能が高い鍵が使われている物件を選ぶと安全性が高められます。他にも、昼と夜の人通りや道の見通しの良さ、明るさなどを確認しておきましょう。
近くに交番や24時間営業のお店があるかなど、周辺環境も事前にチェックしておくと良いですね。
また、アパートやマンションなどの空き巣被害で最も多い原因は、玄関の鍵の閉め忘れです。
日頃から、ゴミ捨てなどの短い外出はもちろん、家にいるときも必ず鍵をかける習慣を身につけるようにしましょう。
一人暮らしで統合失調症を悪化させない5つの方法
片付けや洗濯のルールを決めて習慣化する
片付けは後回しにせず、使ったらすぐに元の場所に戻すようにし、洗濯は曜日と時間を決めるなど、自分なりのルールを作って、習慣付けを心がけましょう。
それでも体調が悪かったり、やる気が起こらなかったりするときもあると思います。
どうしても自分でできない場合はホームヘルプサービスを利用するのも良いでしょう。
バランスの良い食事をとる
偏食により、肥満、鉄分・ビタミン不足などから統合失調症の症状が悪化したり、合併症が併発したりする可能性もあります。
まずは1日3食きちんと食べることを心がけましょう。
毎食自分で作るのは大変かもしれません。スーパーの惣菜や冷凍食品、宅配の弁当などをうまく活用しましょう。
その際、惣菜を買うときは野菜や大豆製品を選び、弁当や外食を選んだときはできるだけ多くの食材を使っているものを選ぶと良いでしょう。
バランスを考えて作ったり、買ったりすることは難しいと感じるかもしれません。自分ができる範囲で行えると良いですね。
家計簿などを使ってお金の管理をする
まずは収入と支出を把握することが大切です。家計簿やアプリを使い、1日にいくら使えるのか計算し、それぞれに必要な額を仕分けして封筒に分けておくなど、自分に合った方法で管理しましょう。
それでもお金のやりくりが上手くいかない場合は信頼できる身近な人に管理を頼むのも一つの方法です。
近所の方との距離感の取り方を身につける
緊急時などにご近所の方と関わることもあるかもしれません。
生活をする中でご近所の方とすれ違ったり、お会いする機会があったときなど、自分から挨拶をするように心がけると良いでしょう。いざというときのためにも日頃からコミュニケーションを取っておくことが大切です。
また、隣人の騒音が気になる場合もあるかもしれません。そんなときは隣人と直接話すのではなく、管理会社を通して伝えるようにしましょう。
お互いが気持ちよく過ごすためにも、自分の生活音にも注意して過ごせると良いですね。
一人での生活に慣れてみる
いきなり一人暮らしを始めてしまうと、不安になる気持ちも大きくなるでしょう。一人の時間が多いと考えこんでしまったり、孤独を感じて不安になってしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな方は、短時間から外泊を行うのがオススメです。日帰りで1日を過ごして、慣れてきたら3日、1週間と、少しずつ連泊してみてください。
一人で自由に過ごせる時間を楽しめるようになれると良いですね。
統合失調症の方が一人暮らしで困ったときの相談先
統合失調症の方が一人暮らしをするためには、周囲からのサポートが必要な場合もあります。困ったときは一人で悩まず、信頼できる家族や友人、主治医など身近な方に相談しましょう。
「具体的な支援を受けたい」と思っている方の場合、ほかにも相談できる場所があるので、順にご紹介します。
なお、各事業内容は自治体ごとに異なるため、詳しく話を聞きたいと思ったときは、お住まいの市区町村に設置されている障害福祉課や保健所(保健センター)へお尋ねください。
相談支援事業所
相談支援事業所では、障がいのある方が仕事や生活についての困りごとなどの相談ができます。
各市区町村や民間の事業に委託されており、障害福祉サービスの利用や支援についてなどの情報提供やカウンセリングを行っています。
特定相談支援事業所
特定相談支援事業所とは市町村が指定する相談支援事業所です。
一人ひとりの希望や状況に合わせて障害福祉サービスの利用計画を作成したり、今受けているサービスが適切かどうかを教えてくれます。
自分に合ったサービスを受けるにはどうしたら良いか悩んでいる方は、特定相談支援事業所に相談することをオススメします。
一般相談支援事業所
一般相談支援事業所は都道府県が指定する相談支援事業所です。
病院や施設で生活してきた方が、地域で生活を始めるための住居の確保などの準備支援(地域移行支援)や、障がいのある方が地域で生活を続けていくための支援(地域定着支援)などを行います。
住宅入居等支援事業(居住サポート事業)
住宅入居等支援事業では、一人暮らしをするためにアパートなどを借りたいが、保証人がいない等の理由で入居ができない障がい者に対して、入居に必要な調整などの支援を行っています。
市町村によっては実施していない場合もあるため、まずはお住まいの市町村に設置されている福祉の窓口で確認しましょう。既に相談支援を利用している方は、相談支援員に尋ねてみるのもいいでしょう。
障がい者の入居支援のほか、家主に対しての相談や助言、入居後の緊急時における対応等も行っています。
自立生活援助事業所
自立生活援助事業所では、障害者支援施設やグループホーム、病院などを利用していた障がい者の方で、一人暮らしをしたい方に対して、定期的な居宅訪問や相談・助言などを行います。
- 施設や病院などから退所・退院した方
- 既に地域で一人暮らしをしており、支援が必要な方
- 障害、疾病などのある家族と同居していて一人暮らしをしようとする方
利用期間は1年間です。
利用者の居宅を訪問し、生活や体調、人間関係などの問題について状況把握や確認を行います。
必要に応じて情報提供や助言をしたり、相談を受けたりするほか、障害福祉サービス事業所や医療機関などの関係機関との連絡・調整など、自立した日常生活を営むための環境整備に必要な支援を行います。
自治体の福祉担当窓口
各自治体の福祉担当窓口では、障害がある方の福祉支援の利用について、相談を受け付けています。
お住まいの地域に設置されている障害福祉課や保健所などが当てはまります。
基幹相談支援センター
基幹相談支援センターは、障がいのある方が自立した生活を送れるよう、総合・専門的な相談支援を行います。
その他、地域の相談支援事業者とも連携し、地域移行・地域定着への働きかけ、権利擁護・虐待の防止業務を実施しています。
統合失調症の方が一人暮らしをする際に受けられる支援制度
統合失調症などの障がいがある場合、国や自治体の支援制度を利用できる場合があります。
困ったときのために、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
生活保護
生活保護制度とは生活に困っている方が、健康で文化的な最低限度の生活ができるよう、支援する制度です。
お住まいの地域の福祉事務所が担当しており、生活するために必要な食費や光熱費、家賃などが扶助されます。
支給される金額は世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準によって決まります。
統合失調症と生活保護に関して、以下の記事でも取り扱っています。
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業では、障がいなどのある方が、日常生活を送るために必要な手続きや金銭管理などの理解や判断が難しい事柄を、専門員や生活支援員に手伝ってもらうことができます。また、定期的に訪問による見守りも行います。
就労支援や外出支援、デイサービスなどの福祉サービスを利用したい場合やどのように手続きをしたらいいかわからない場合、お金の管理に困っている場合などに手伝ってもらうことができます。
が利用できます。障害者手帳がなくても利用できます。
相談は無料ですが、福祉サービスの利用手続きや金銭管理などのサービスを利用する際は料金がかかります。
利用・相談してみたい、という方は、お住まいの市町村に設置されている社会福祉協議会に連絡しましょう。
全国の社会福祉協議会一覧|地域福祉・ボランティア情報ネットワーク
地域活動支援センター
地域活動支援センターは、障がいのある方を対象として、創作的活動、生産活動、社会交流の機会を提供する施設です。
また、日常生活で困っていることの相談や、公的制度を利用するためのサポート、就職、住宅に関する情報提供も行っています。
利用対象は、地域活動支援センターがある市町村に住む、障がいがある方です。施設によっては障害者手帳がなくても、「自立支援医療受給者証」があるなど、他の条件を満たせば利用できる場合もあります。
センターそのものの利用は無料ですが、創作的活動で使用する素材や食事、入浴、イベントへの参加費などがかかる場合があります。
センターによって変わりますが、基本的には窓口で利用したい旨を相談し、見学を経て登録手続きを行ってから利用開始する形式が一般的です。
地域生活支援事業の受給者証が必要なケースなど、自治体等によって手続きの流れなどが異なるため、利用を検討している施設や市町村の福祉支援窓口、障害福祉課などへ相談してみるといいでしょう。
グループホーム(共同生活援助)
はじめから一人暮らしをすることに不安がある方は、グループホーム(共同生活援助)を利用することもおすすめです。
グループホーム(共同生活援助)では、障がいのある方が地域の中で暮らしながら、食事や入浴など、日常生活で必要な支援を受けつつ、共同生活を送ります。
1か所に平均6名が入居しており、専門スタッフが配置されているため、グループホームを出た後の住居についても相談できます。
就労について
一人暮らしをするためには、定期的な収入が不可欠です。一般の方と全く同じように働くことは難しくても、短時間から働く、という方法もあります。
統合失調症の症状によって働きづらさを感じる、今すぐ働くことは難しいという方もいるでしょう。
上の項目で紹介した支援の他にも、障害年金などの制度を利用できる場合があります。
まとめ|統合失調症でも自立した一人暮らしはできるのか?
- 一人暮らしを始める前に必要なお金の把握をしよう。
- 体調を安定させ、家事に慣れておくことが大切。
- 困ったときには身近な人や各相談所へ相談し、必要な支援を受けよう。
統合失調症の方が一人暮らしをすることは可能です。不安を感じるときは、相談できる場や支援制度、施設を利用すれば不安が和らぐかもしれません。一人で暮らすのはまだ早いかも、と悩む場合は、グループホームを利用する、ということもできます。
不安や寂しさを感じることもあるかもしれませんが、周囲からサポートを受け、少しずつ慣らしていきましょう。