あなたは、就職活動に向き合う中で、
「落ち込んでばかりで、全然前に進めない・・・」
と感じていませんか?
そんなとき、心のどこかで「これは甘えなのかもしれない」と、自分を責めてはいないでしょうか?しかし、そのつらさはあなたが弱いからではなく、誰にでも起こり得る「就活うつ」という心のサインかもしれません。
「就活うつは”甘え”なのか?」という多くの人が抱える疑問に答えながら、
- 就活うつの実態と主な要因
- 就活うつの可能性がある症状とは何か
- 就活うつにならないために必要なこと
- 就活うつのとき、頼れる相談先と支援制度
以上の点を解説します。
この記事が、あなたのつらさの理由を解き明かし、少しでも心を軽くする一助けになれば幸いです。
「就活うつ」とは?経験者の割合とその実態を解説

就職活動は、新卒の学生だけでなく、既卒者や転職を目指す社会人にとっても大きな人生の分岐点です。期待と不安が入り混じるこの時期には、強いプレッシャーを感じることも少なくありません。中には、そのストレスから心のバランスを崩してしまい、「就活うつ」と呼ばれる状態に陥る人もいます。
ここでは、就活うつとは何か、どれくらいの人が経験しているのか、そして「それは甘えなのでは?」というよくある誤解について解説します。
就活うつとは何か?
「就活うつ」とは、就職活動における強いストレスが原因で心のバランスを崩し、抑うつ的な状態に陥ることを指します。これは単なる気分の落ち込みではなく、日常生活に支障をきたすほど深刻で、「適応障がい」や「うつ病」と診断されることも少なくありません。
就活は、結果が見えない中で努力を続けなければならず、面接やエントリーシートといった他者からの評価を常に伴います。そのため、特に真面目で責任感が強い人ほど、内定が出ないことを「自分の努力不足」と捉えてしまいやすく、心を追い詰めてしまう傾向があるのです。
どれくらいの人が就活うつになるのか?
就活うつは、特別な人だけが抱える悩みではありません。実際、多くの就活生が、不安やストレスによって心のバランスを崩しております。
2025年時点では、就活生のうち実に約9割が就職活動に対する不安を抱えている他、自覚できるほどにまで悪化した就活うつを経験した人が、全体の約半数存在します。
このことから、就職活動が心の健康に深刻な影響を及ぼす可能性は、決して低くないことがわかります。
「甘え」と言われる理由とその誤解
就活うつは、その特徴故に一見すると分かりにくく、傍からはただ真剣にやっていないように見られがちです。他にも、自力で結果を出すことを求められやすい就活に対して不安になることを、自ら「心が弱い」「無力だ」と必要以上に責めてしまうケースも存在します。
この背景から「就活うつは甘えだ」という声は根強いですが、これは明確な誤解です。うつ状態は、セロトニンやドーパミンといった、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こる、医学的に根拠のある症状です。つまり、精神的な不調は、単なる気合や意志の強さで改善できるものではありません。
決して「自分が弱いから」と責める必要はありません。まずは「甘えでない」と正しく理解し、適切な支援を求めることが、回復への第一歩になります。
就活うつを引き起こす3つの主な要因

「気分が落ちているけど、原因がはっきりしない」そのように感じている方も多いのではないでしょうか。就活うつを乗り越えるためには、まずなぜ自分の心がそのような状態になっているのか、原因を知ることが大切です。
ここでは、就職活動が精神的な負担になりやすい理由を3つの主な要因に分けて解説します。
プレッシャーと不確実性のストレス
就活うつの大きな要因の一つが、「先が見えない状況で、プレッシャーがかかり続けること」です。就活には明確な「正解」がなく、評価の基準も見えにくいため、結果が出るまで不安な状態が続きます。
「どこまで努力すれば報われるのかわからない」
そうした不確実な状態が長引くことで、心に疲労が蓄積していくのです。
自己否定感と自尊心の低下
面接で落ちるたび、友人が内定を決めるたびに、「自分には価値がないかもしれない」と感じてしまうことはありませんか?
就活では避けがたい「不合格」の通知や、周囲の成功との比較が、自分自身への信頼感(自尊心)を大きく揺るがします。特に、SNSなどで他人のきらびやかな成果が目に入りやすい現代では、なおさら「自分だけが遅れているような気がする」「社会から取り残されている」と感じやすく、自己肯定感がどんどん低下してしまいがちです。
また、自己評価が下がっている人ほど、ストレスに対して脆弱になり、うつ症状を発症しやすくなると言われています。
生活リズムの乱れと体調不良
就活中は、説明会や面接の準備に追われて夜更かしをしたり、ストレスによる食欲不振に陥ったりと、生活リズムが乱れがちです。
自分では気づかないうちに、心身へ大きな負荷がかかっていることも少なくありません。睡眠不足や偏った食事は、体の回復力を奪うだけでなく、ストレスに対する心の抵抗力も損ないます。
実際に、うつ病と睡眠障がいの関連性は医学的に認められており、生活習慣の乱れが心の不調の引き金になることは、決して珍しくないのです。
就活うつの可能性がある症状とは?

「就活に集中できないけど、これって普通のことなのだろうか?」
もしあなたがそう感じているなら、一度立ち止まって自分の心と体の状態を振り返ってみてください。
ここでは、就活うつの可能性がある具体的なサインをご紹介します。ご自身に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
気分の落ち込みが何日も続く
- 朝から気分が重く、起き上がるのがつらい
- 以前は好きだったことにも興味がわかない
- 何をしても楽しいと感じられない
こうした状態が2週間以上続いている場合は、注意が必要です。
これは一時的な疲れや気分の波とは異なり、うつ病のサインの可能性があります。人との会話や就活の準備にさえ、心が追い付かないような感覚があれば、無理をせず立ち止まることが大切です。
集中力の低下や決断力の欠如
- エントリーシートを書こうとしても文章がまとまらず手が止まる
- 企業選びなど、次に何をすべきか決められない
こう感じるときは、集中力や決断力が低下しているサインかもしれません。これは決して怠けているわけではなく、心が疲れている証拠です。
うつ状態になると脳の機能にも影響が出て、普段なら簡単にできることにも時間がかかってしまうのです。焦らず、まずは「できない自分」を責めないようにしましょう。
体のだるさや疲労感が抜けない
- しっかり寝たはずなのに、朝から体が鉛のように重い
- 常にだるさが抜けず、何をやるにも億劫に感じる
- 頭痛やめまい、食欲不振や過食など、身体的な不調がある
このような体の不調も、就活うつに見られる症状です。心の疲れは、体にも密接に影響します。
風邪のような症状がないのに体調が優れない日が続くなら、それは精神的な疲れの表れかもしれません。無理に動こうとせず、一度立ち止まって休息をとることが必要です。
就活うつにならないための対処法4選

就職活動中は、不安や緊張が重なり、心が疲れやすい時期です。そんな中でも気持ちを穏やかに保ち、心の不調を未然に防ぐためには、日々の小さなセルフケアや考え方の工夫がとても重要です。
ここでは、就活うつを防ぐために役立つ4つのポイントを紹介します。
小さな目標を立て、「できた」を積み重ねる
就活では「なかなか結果が出ない」「いつ終わるかわからない」と感じやすく、不安が膨らみがちです。そんなときは、1日単位で達成できる小さな目標を立ててみましょう。
例えば、「今日は企業研究を30分だけする」「履歴書を1社分だけ見直す」など、無理のない範囲で行動するのがポイントです。小さな「できた」に目を向けることで、自己肯定感が少しずつ回復し、「今日も一歩前に進めた」という実感を得られるようになります。
生活リズムを整えて、心の安定につなげる
不規則な生活は、心のバランスを崩す大きな原因になります。特に、睡眠不足や運動不足はストレスへの抵抗力を弱めてしまいます。
- 就寝1時間前からはスマホを控え、リラックスする時間を作る
- 朝起きたら日光を浴び、体内時計をリセットする
- 長時間座りっぱなしを避け、軽いストレッチなどで体を動かす
こうした基本的な習慣を整えるだけで、心は自然と安定し、気力の回復につながります。
完璧を求めすぎず「70点でもOK」と考える
「すべての企業に完璧な対応をしなければ」「一度の失敗も許されない」といった完璧主義は、自分自身を過度に追い詰める原因になります。
就活は長期戦です。まずは、自分なりに一生懸命取り組んでいる、そのプロセス自体に価値があると考えてみましょう。「今回は70点で合格」「面接は本番のための練習の場」と柔軟に捉えることで、心の余裕が生まれ、自然体の自分を出しやすくなるはずです。
SNSや他人との比較から一度距離を置く
SNSで友人の内定報告や順調そうな就活状況を見るたびに、焦りや落ち込みが強くなるという人も多いのではないでしょうか。それらが自分を責める材料になるようなら、意識的にSNSから距離を置くことも大切です。
その代わりに、大学のキャリアセンターや信頼できる先輩など、あなた自身のペースで就活と向き合える情報源を選びましょう。他人と比べるのではなく「自分にとっての一歩」を大切にしてください。
就活うつになった時の4つの心のケア

どれだけセルフケアを心がけていても、「もう無理かもしれない」「就活が辛くて何もできない」と感じることは、誰にでも起こりえます。そんなときは、「がんばらなきゃ」と自分を追い込むのではなく、一旦立ち止まって、自分の心の声に耳を傾けてみてください。
ここでは、就活うつになってしまったときの具体的な心のケアを紹介します。
自分を責めず、まずは「休むこと」を選ぶ
「就活中なのに何もできていない」「自分はただ怠けているのかもしれない」と、自分を責めてしまう人は少なくありません。しかし、心や体が限界のサインを出している時に無理を重ねるのは、かえって回復を遠ざけてしまいます。
まずは「今は回復するための時間」と割り切り、しっかりと休むことを自分に許してあげましょう。気力が戻ってから、改めて今後のことを考えれば大丈夫です。
休むことは”逃げ”ではなく、”次に進むための準備”なのです。
専門家に相談することも選択肢に入れる
無気力な状態が2週間以上続いたり、何をしても心が晴れないと感じたりするなら、勇気を出して専門家に相談することを考えてみてください。
精神科・心療内科、大学の学生相談室、カウンセリング機関など、支援を受けられる場所は数多くあります。専門家と話すことで、自分一人では気づかなかった自分の気持ちの整理ができたり、具体的な回復のステップが見えてきたりします。
必要に応じて適切な治療を受けることは、心と体の負担を軽くするための有効な手段です。
精神科や心療内科については、以下の記事でも詳しく解説しております。
周囲の人に状況を共有し、協力を得る
ひとりで悩みを抱え込むと、心の負担はさらに大きくなります。
もし可能であれば、信頼できる家族や友人に、今のつらい状態を打ち明けてみてください。ただ話を聞いてもらうだけでも気持ちが整理されることがありますし、「自分も同じような経験をしたよ」という共感が、心の支えになることもあります。
一人で抱え込まずに助けを求めることで、現実的な解決策が見つかるかもしれません。
「就活から一時的に離れる時間」をつくる
「SNSや比較から離れる」だけでなく、「就活そのものから、ちょっと離れてみる」ことが、心をほぐすことになる場合があります。
就活うつの状態にあるとき、就職活動のことを四六時中考えてしまい、心が休まらなくなります。「考えないようにしよう」としても、かえって不安や自己否定のループにはまりやすくなる場合もあるのです。
そんなときは、意識的に”就活を完全に忘れる時間”を日常に取り入れてみましょう。
例えば、
- 一日だけスマホをオフにして散歩をする
- 好きな映画やゲームに没頭する
- 信頼できる人と就活以外の話をして笑う
こうした「考えなくていい時間」が、凝り固まった思考をゆるめ、心の余白を取り戻す助けになります。
一見何もしていないように見えても、それは“傷ついた自分を癒すための大切な時間”です。無理に進むより、意識的に距離を取ることが回復への近道になるでしょう。
就活うつのとき、頼れる相談先と支援制度

就活うつかもしれないと感じても「一体どこに相談すればいいのかわからない」と次の行動に移せず悩んでしまうことは少なくありません。
ここでは、実際に利用できる相談窓口や、支援サービスを具体的にご紹介します。5章でお伝えした「相談してもいい」という気持ちを、次の一歩につなげるための情報としてご活用ください。
大学や自治体の就職支援・メンタルサポート
まずは、最も身近な相談先として大学の窓口を活用してみましょう。多くの大学には、学生の就活やメンタル面を支援するためのキャリアセンターや学生相談室(カウンセリング室)が設置されています。
これらは原則、無料で利用でき、就活の進め方はもちろん、気持ちのつらさや不安についても親身に相談に乗ってくれます。また、自治体が運営する「地域若者サポートステーション(サポステ)」などでも、就労支援や心理的なサポートを受けることができます。
予約さえすれば、特別な準備は不要な場合が多く、初めて相談する人にもオススメです。
サポステについては、以下の記事でも詳しく解説しております。
医療機関の専門的な治療やカウンセリング
気分の落ち込みや不眠などの症状が日常生活に支障をきたすほど続く場合は、精神科や心療内科の受診を検討してみましょう。
医療機関では、うつ症状に応じた薬物療法や認知行動療法など、医学的根拠に基づいた治療を受けることができます。いきなり病院に行くのが不安な場合は、「こころの健康相談統一ダイヤル」など、公的な電話相談窓口で、事前に状況を話してみるのも一つの手です。
オンライン相談サービスや支援団体の活用
気力がわかず外に出るのがつらいときや、対面で話すことに抵抗があるときは、オンラインやSNSを活用した相談サービスも有効です。 匿名で相談できるため、ハードルが低く、初めての人にも利用しやすい方法です。
例えば、厚生労働省が運営するメンタルヘルス情報サイト「こころの耳」では、チャットやメールでの相談先、24時間対応の電話相談窓口などを紹介しています。
また、LINEやSNSを使った相談ができる自治体や団体も増えており、全国どこからでも利用できます。こうしたオンラインサービスは、時間や場所にとらわれず、つらい気持ちを吐き出す場として役立ちます。
話すことが難しいと感じるときでも、文字で思いを伝えるだけで心が軽くなることもあります。まずは気軽にアクセスしてみましょう。
こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|厚生労働省
まとめ
- 就活うつの主な原因は、長期的なストレス、自己否定感、将来への不安などがある
- 症状には、気分の落ち込み、無気力、睡眠の乱れなどが含まれる
- 対処法としては、生活リズムの見直し、小さな目標設定、比較からの距離を取ることが有効
- 深刻な場合は、専門家への相談や医療機関の利用をためらわない
本記事では、以上の点について解説しました。
就活うつは、多くの人が経験しうる自然な反応で、決してあなたの弱さのせいではありません。それは、真剣に自分の将来と向き合い、「頑張りすぎたことの証拠」なのです。
焦らずに少しずつ、あなたのペースで進んでいくことが大事です。その第一歩は、自分を責めず「これは甘えではない」と理解することから始まります。
この記事が、あなたが笑顔の日々を取り戻すための一助になれば幸いです。


