この記事を開いているあなたは、
「うつ病の人に在宅ワークは本当に向いているの？」
このような悩みや疑問を抱えていませんか？
近年、「在宅ワーク」は働き方改革の推進によって広く普及しつつある勤務形態になりましたよね。在宅ワークは、会社へ出勤せずに自宅で働けることに大きなメリットがあるため、うつ病の方にもオススメされている働き方の1つです。
- うつ病の方が在宅ワークで働くメリットとデメリット
- うつ病の方にオススメの在宅ワークの仕事
- うつ病の方が利用できる就労支援サービス
について解説していきます。
うつ病の診断を受けて、在宅で働きたいと考えているあなたの仕事探しに役立てていただければ幸いです。
うつ病の方が在宅ワークで働く3つのメリット
うつ病とは、
- 気分の落ち込み
- 意欲がわかない、楽しくない
- 眠れない、眠り過ぎる
- 思考力・集中力の低下
- 食欲が無い、食べ過ぎる
などの症状が表れる精神障がいです。うつ病は単なる一時的な気分の落ち込みとは異なり、これらの症状が長期的に続くため、仕事はもちろん日常生活にも大きな支障を与えてしまいます。
うつ病が仕事へ与える影響はさまざまですが、
- 仕事への興味や意欲が低下して、達成感を感じなくなる
- 思考力や集中力の低下により、作業効率が悪化したりミスが増えたりする
- 対人関係にストレスを感じやすくなり、些細なことでも落ち込みやすくなる
- 疲れやすくなり、遅刻や欠勤が増えて持続的に働けなくなる
などの支障が表れることで、これまで通りに働けなくなることは珍しくありません。
この項目では、うつ病の方に在宅ワークがオススメされている理由を3つ解説していきます。
通勤が不要で朝に余裕を持てる
うつ病の方の中には、1日の中で症状が大きく変化する「日内変動」が表れることがあります。
起床後から午前中に症状が重くなり、午後にかけて症状が回復していく場合が多いため、うつ病の方にとって「朝は体が動かない」という日は珍しくありません。
このようなうつ病特有の朝の辛さは、
「朝に体が動かず遅刻したらどうしよう…」
などのプレッシャーや不安を生み出してしまい、うつ病の悪化や睡眠障がいの併発につながる場合もあります。
そのため、
- 起床後の倦怠感を抱えながらすぐに動く必要がない
- 通勤が不要で、渋滞や満員電車のストレスを避けられる
- 身支度や仕事の準備にかかる負担が少なくなる
- 仕事の前にコーヒーを飲むなどのリラックス時間を確保できる
などのメリットから、朝の時間に余裕を持ちやすくなる在宅ワークはうつ病の方にオススメの働き方といえます。
自分のペースに合わせて働きやすい
在宅ワークには、
- 体調や気分に合わせて仕事のスケジュールを調整しやすい
- 集中しやすい時間帯に働き、疲れたらこまめに休憩が取れる
- 「照明や空調を調整できる」「好きな音楽を流せる」など、仕事環境を自由に整えやすい
- 「上司や同僚の視線」「社内の人間関係」などのストレスが少ない
などのメリットから、自分のペースに合わせて働きやすいという特徴があります。
うつ病の方は、日常の些細な出来事でも敏感に反応してストレスを感じることがあります。また、職場の環境に適応したり、人間関係に合わせたりしなければならない状況も過剰な負担となりえます。
「職場の迷惑にならないよう、頑張って働かなければいけない…」
など、自分を追い込みやすいうつ病の方にとって、在宅ワークは人目を気にせず自分のペースで働ける形態でしょう。
働き方の選択肢が広い
在宅ワークが可能な会社では、従来のフルタイム労働よりも、
- 始業時刻や終業時刻、労働時間などを自分で調整できる「フレックスタイム制」
- 勤務時間ではなく仕事の成果に応じて給料を支払う「裁量労働制」
- フルタイムよりも労働時間が少ない「時短勤務」や「週〇日勤務」
などの制度が導入されていることが多く、働き方の選択肢が広く準備されている傾向にあります。
そのため、在宅ワークでは「うつ病でも働ける」と思える条件の仕事に出会える可能性が高いです。短時間でも働くことができたら、それはうつ病の方にとって大きな自信となるでしょう。
「いきなりフルタイム勤務は厳しいから、段階的に社会復帰を目指したい」
このように考えている方にとって、在宅ワークは始めの一歩として踏み出しやすい働き方といえます。
うつ病の方が気を付けたい在宅ワークのデメリット2つ
先述した通り、在宅ワークはうつ病の方にオススメの働き方ではありますが、デメリットも存在します。そのため、あなたにとって「在宅ワーク」が「理想的な働き方」となるかは、慎重に考える必要があります。
この項目では、うつ病の方が気をつけたい在宅ワークでのデメリットを2つ解説していきます。
自己管理が求められる
上司や同僚の目が行き届かない環境で働く在宅ワークでは、あなた自身が仕事のスケジュールや進捗を自己管理することが求められます。ですが、うつ病による意欲や判断力の低下は自己管理能力に深刻な影響を与えてしまう場合があります。
そのため、在宅ワークで働くうつ病の方は、
- 出勤が無いため仕事とプライベートの切り替えが難しい
- 労働時間が決まっていないことが、昼夜逆転などの生活リズムの悪化を招く
- 気分の落ち込みや体調不良によって、仕事が全く進まない日がある
- 仕事の効率やクオリティは自己責任になりやすく、プレッシャーが大きい
このような問題に直面しやすいのです。
実際に、在宅ワーク経験者からは、
「仕事と生活を適切に自己管理するのが想像以上に難しい」
という声が挙がっています。このような自己管理の負担がうつ病の悪化につながるリスクがある点は、在宅ワークのデメリットと言えるでしょう。
職場から孤立しやすい
在宅ワークでは、連絡手段がメール・チャット・通話などに限られるため、人との関わりやコミュニケーションの機会が減少します。うつ病の方は「1人の方が楽」と感じることが多い傾向にありますが、時間が経つにつれて孤立感が強まり「誰にも必要とされていない」という感覚を抱えることもあります。
在宅ワーク特有の環境がうつ病の原因となる「テレワークうつ」という言葉がある通り、
- 日常的なコミュニケーションが無くなり、誰とも話さない日が続く
- 仕事の困りごとは自分から相談しなければならず、助けを求めるハードルが高い
- 仕事の努力や成果が、どのように評価されているのか分かりにくい
などの要因が積み重なると、うつ病が悪化するリスクが高まります。
人との適度なつながりを維持できなければ職場から孤立しやすい点は、在宅ワークのデメリットといえます。
うつ病の方にオススメの在宅ワーク4選
うつ病の方が働くために大切なのは「できることから始める」ことです。
この項目では、うつ病の方にオススメの在宅ワークの仕事を4つ紹介していきます。紹介する在宅ワークの中には、クラウドソーシングサービスを利用して仕事を行う場合があります。
これは雇用契約ではなく、請負契約として業務を行うことになります。個人の能力、やる気次第で高収入を目指すことも可能ですが、雇用契約ではないため、得意な分野、スキルが無ければ安定した収入は難しい点に注意が必要です。
在宅での軽作業
在宅での軽作業は、特別なスキルや資格が不要で未経験歓迎の求人が多いため、うつ病の方でも気軽に始めやすいでしょう。単純作業が中心となるため複雑な判断は不要であり、黙々と作業できる点も負担が少なく働きやすいポイントです。
在宅軽作業には下記のような仕事があります。
- 商品へのシール・ラベル貼り
- 郵便物の仕分け・封入
- 製品部品の組み立て・検品
- ハンドメイド雑貨の作成 など
これらの作業は「納期までに完成させること」以外は求められない場合がほとんどであり、自分のペースを維持して働くことができます。仕事の成果が目に見えるため進捗管理がしやすく、順調に進めることができれば達成感も得られるでしょう。
ただし、在宅での軽作業の多くは1つあたりの作業単価が低く歩合制であるため、給料が最低賃金を下回ることが多いです。安定した収入にはなりにくいでしょう。
オンライン事務
オンライン事務とは、名前の通り企業から依頼を受けてインターネット上で事務作業を行う仕事です。パソコンとインターネット環境があれば在宅で働くことができます。
オンライン事務には下記のような仕事があります。
- Excelやスプレッドシートへのデータ入力
- 顧客や問い合わせに対する返信メールの文面作成
- WordやPowerPointでの書類・資料作成
- 請求書の作成、経費精算の補助などの経理サポート など
基本的にはWordやExcel、PowerPointなどのパソコンスキルや、チャットツールが使える方が良いでしょう。
事務職が未経験の方でも、「データ入力」「書類作成」などの簡単な仕事から始めて経験を積むことが可能です。また、事務職の経験者であれば優遇されやすく、スキルアップに応じて高単価な仕事を受けることもできるため、安定した収入が見込めます。
ただし、オンライン事務にはうつ病の方にとって負担になりやすいマルチタスクや正確性、コミュニケーション能力が求められる場合もあるため、無理はせず、できる業務から始めることが大切です。
ライティング
ライティングとは、さまざまな文章を作成する仕事であり、在宅ワークが可能なフリーランス向けのクラウドソーシングサービスで募集されているものが多いです。
ライティングの仕事としては下記のような種類があります。
- ブログやニュースサイトに掲載する記事の作成
- YouTube動画やゲームのストーリーを作成するシナリオライティング
- 広告用のキャッチコピーやPR文章を作成するコピーライティング
- 商品のレビュー投稿やサービス体験談の執筆
- SNSの投稿やメールマガジンでの情報発信 など
ライティングの仕事は雇用形態によっても異なりますが、クラウドソーシングサービスで募集されている案件の場合、「1文字0.5円～」など、作業時間ではなく文字数などの作業量で単価が定められている場合があります。
ライティング案件は多岐に渡るため、あなたの趣味や知識を生かせるジャンルの執筆業務と出会えればストレスなく働けるでしょう。また、ライティングは未経験でも始められる仕事ですが、質が高く専門的な文章が書けるようになると収入アップに直結します。
ただし、ライティングはうつ病による判断力・集中力の低下の影響を受けやすい仕事です。不安がある場合は、「商品のレビュー投稿」「SNSの投稿」などの短い文章を作成する仕事から始めてみると良いでしょう。
プログラマー
プログラマーとは、さまざまなプログラミング言語を使用して、Webサイト・アプリ・ゲーム・AIなどの開発を行う仕事です。プログラマーは「ブラック企業が多い」というイメージを持たれやすいですが、在宅ワークと相性が良い仕事であり、働き方改革の影響も合わせて労働環境が改善されつつあります。
プログラマーの仕事には下記のような種類があります。
- Webプログラマー
WebサイトやWebアプリなどのプログラミング - アプリケーションプログラマー
スマホアプリやPCアプリのプログラミング - システムプログラマー
組み込み系：電子機器などのシステム開発
汎用系：膨大なデータを扱うクローズドなシステムの開発 - AI/データサイエンス系プログラマー
機械学習、AIシステムや製品の開発 - ゲームプログラマー
ゲームの開発 など
プログラマーであっても、システム開発やゲームなど、社外秘の情報が含まれる場合、在宅ワークが難しい場合もありますが、Webなどの分野であれば、在宅ワークとして働くことが可能です。
ただし、プログラマーとして働くには一定のスキルや知識が必要になるため、うつ病の方には勉強が負担になる場合があります。そのため、プログラマーを目指す場合は就労支援（後述）を利用して、サポートを受けながら勉強を始めると良いでしょう。
うつ病の方が利用できる就労支援サービス
「在宅ワークに興味があるけれど、仕事はどうやって探せばいいの？」
など、うつ病を抱えた状態での仕事探しにはさまざまな不安や疑問が付きまとうため、就職活動が大きな負担となる場合がありますよね。
そこで、オススメしたいのがこの項目で紹介する就労支援です。無理のないペースで仕事に復帰したり、治療と並行しながら働いたりするには、適切な支援を頼ることが大切です。
就労支援の違いについては、下記の記事で詳しく解説しています。
就労継続支援
就労継続支援とは、病気や障がいによって一般企業で働くことが難しい方を対象に、体調に配慮しながら働ける場所を提供している就労支援サービスです。
A型とB型があり、雇用契約の有無や労働時間などが異なります。
就労継続支援A型
就労継続支援A型では、雇用契約を結んで働ける場所を提供しています。労働時間は一般企業のフルタイムよりも短い、平日の4～6時間程度に設定されている事業所が多い傾向にあり、体調に無理のない範囲で働くことができます。
雇用契約を結ぶため、最低賃金が保証されており、令和5年度の平均賃金は月額86,752円となっています。
就労継続支援A型での業務としては下記のものがあります。
- 軽作業（商品の仕分けや梱包、製品の組み立てや検品など）
- IT系（Web制作、プログラミングなど）
- クリエイティブ系（デザイン、動画編集、イラスト作成など）
- サービス業（清掃、農作業、飲食スタッフなど） など
就労継続支援A型は「働きながらスキルアップを目指す場所」としての役割を持つため、事業所によってはプログラミングやデザインなどの専門的なスキルを身に付けることができます。業務内容も事業所によってさまざまです。
また、仕事内容によっては在宅ワークが可能な事業所もあります。無理なく働いて収入を得たいと考えているうつ病の方にオススメの就労支援です。
就労継続支援B型
就労継続支援B型では、雇用契約を結ばずに働く場を提供しています。労働時間はA型のように平日毎日ではなく、体調に合わせて週に1日だけ、1時間だけ働いてみることが可能です。
雇用契約を結ばないので最低賃金の保証はありませんが、工賃が設定されており、令和5年度の平均工賃は月額23,053円となっています。
就労継続支援B型の業務としては下記のものがあります。
- 食品関連（食品製造・販売など）
- 清掃関連（宿泊施設の室内清掃、洗車など）
- 衣類関連（クリーニング、縫製作業など）
- 軽作業（商品仕分け、製品の組み立てなど）
- 農作業 など
就労継続支援B型は、就労の場ですが「多様な人が社会参加するための受け皿」としての面もあるため、「ハンディキャップがある方でもこなせる内容」の仕事として、単純作業や軽作業が多い傾向があります。作業内容は事業所ごとの特色もありますが、食品関連の作業を行う事業所が多いです。
体調に合わせて少しの時間だけでも働きたい方、少しの時間でも社会とつながる場が欲しい方にオススメの就労支援です。
就労移行支援
就労移行支援とは、一般企業への就職を希望している病気や障がいがある方を対象に、就職に必要な知識やスキルを身につける訓練を提供し、就職活動の全面的なサポートを行う就労支援サービスです。就職支援に特化したサービスであるため、原則として労働に従事するわけではありませんし利用しても給料などはもらえません。
就労移行支援から目指せる就職先として下記のようなものがあります。
- 一般事務職（データ入力、書類作成、電話対応など）
- ITプログラミング職（Web制作、システム開発など）
- ライティング（Webコンテンツの作成、記事の執筆や校正など）
- 販売接客業（店舗スタッフ、飲食店スタッフなど）
- 医療福祉関係職（医療事務、介護職など）
就労移行支援の利用は就職先の選択肢を広げることに繋がるため、
という方が多くいます。事業所によっては「Manaby」のように、在宅ワークを視野に入れたサービスを提供しているところもあるので、利用することで在宅ワークが可能な正社員やフリーランスを目指すこともできるでしょう。
就労支援サービスを探すには？オススメのサイト2選
全国には、就労移行支援事業所だけでも3,000件以上の事業所が存在します。あなたの望む働き方を実現させるためには、信頼できる事業所で適切な支援を受けることが大切です。
この項目では、就労支援サービスを探すのに役立つサイトを2つ紹介します。
就労継続ナビ
という時にオススメなのが「就労継続ナビ」です。
本サイトはIT関係の仕事や訓練を行っている就労支援事業所を中心に掲載しており、在宅支援や在宅ワークに対応している事業所が多いのが特徴です。
また、事業所が扱う仕事・訓練の内容以外にも、事業所内の雰囲気や設備が写真と共にまとめられているため、あなたの希望に沿う事業所に出会えるかもしれません。
WAM NET（ワムネット）
という時にオススメなのは「WAM NET」というサイトです。
WAM NETは就労支援事業所の掲載数が圧倒的に多いのが特徴です。表示される地図上に事業所の位置を示すピンが表示されるため、「通いやすいか？」という点は非常に分かりやすいです。利用したいサービスを絞り込んで検索することもできます。
ただし、サービス内容などが詳細に記載されている分、専門的な用語が多く、知りたい情報が探しづらい・わかりづらいというデメリットもあります。気になる事業所があれば個別に調べたり、電話などで問い合わせたりする必要があるでしょう。
まとめ｜うつ病の方にオススメの在宅ワークと支援制度
- うつ病の方にとって、在宅ワークは「通勤が不要で朝の時間に余裕が持てる」「自分のペースで働きやすい」というメリットがあるため、負担なく働きやすい。
- 在宅ワークは「フレックスタイム制」「裁量労働制」などの柔軟に働ける制度が導入されていることが多く、働き方の選択肢が広い。
- 在宅ワークのデメリットとして、「仕事とプライベートの切り替えが難しい」「自分で仕事の進捗管理をしなければいけない」など、自己管理を求められやすい。
- コミュニケーションの機会が少ないため、「気軽に相談できない」などの問題が発生しやすく、職場から孤立しやすいデメリットもある。
- うつ病の方にオススメの在宅ワークとしては「在宅軽作業」「オンライン事務」「ライティング」「プログラマー」などがある。
- 在宅ワークを目指すうつ病の方には、「就労継続支援A型」「就労移行支援」などの就労支援サービスの利用がオススメ。
うつ病の方が在宅ワークで働くメリット・デメリットやオススメの仕事について解説しました。
うつ病を抱えながらでも働くことは可能ですが、負担が多い働き方を選んでしまうとうつ病の悪化や再発のリスクが高まります。そのため、適切な就労支援サービスを頼ると共に、あなたのペースで働ける仕事を見つけましょう。
