「仕事中に失敗を思い出してしまって、なかなか力を発揮できない…」
この記事を読んでいるあなたも、こうしたお悩みをお持ちではないでしょうか?
発達障害を持つ大人の中には、一般の職場で働かれている方も多いでしょう。しかし、「発達障害の特性や過去の失敗経験から自己肯定感が下がってしまって、働く自信が持てない」という方もいらっしゃるでしょう。
できれば自己肯定感を上げて、自信を持って働きたいですよね。
- 発達障害と自己肯定感の関係
- 働く上で自己肯定感が下がることのデメリット
- 自己肯定感を高める方法
について解説します。
少しでも参考になりましたら幸いです。
「自己肯定感」とは?
自己肯定感とは、「ありのままの自分を受け入れ、肯定すること」です。
詳しく説明すると、自分のダメなところも含め他人と比較することなく、自分自身が今の自分を認め尊重すること、自分の価値を認めることを言います。
きちんと自己肯定感を持つことは、物事を前に進めるための原動力になります。
また、似た言葉として「自尊心」があります。これは自己肯定感とは異なるもので、自分自身を大切な存在だと感じ、自分の考えに自信を持って行動していく態度のことです。
自尊心が低いと、自分の行動に自信が持てず、周囲の反応をうかがって判断することが増えます。ただし自尊心には「他からの干渉を排除する態度」、いわゆる「傲慢な態度になる」という意味も含まれます。
「自己肯定感が低い」とはどういう状態?
「自己肯定感が低い」という状態は、ざっくり言うと、他者との違いや自分のダメな部分ばかりが気になって、ネガティブな気持ちになってしまうことです。
自己肯定感の低い方に多く見られる特徴には、下記の5つがあります。
- 他人との比較や劣等感の意識が強い
- 過去の失敗へのこだわりやトラウマがある
- 承認欲求が強く、他者に依存してしまう
- いつも「できない」と思ってしまう
- 周囲への依存度が強い
このように、自己肯定感が低いと何でも自分が悪いと思ったり、常に自信がなくビクビクと日常を送ってしまうことが多くなります。
また、怪しい勧誘に引っかかってしまう危険性も高まるでしょう。
発達障害と自己肯定感の関連性
発達障害のある大人は、自己肯定感が低下しやすいと言われています。
理由その理由としては、
- 過去の失敗体験や叱責された経験を引きずりやすい
- 周囲との違いから馬鹿にされる、非難される経験をしやすい
- 大人になって発達障害に気づいた場合、自分の努力不足を意識する機会が長くなりやすい
といった事情があるようです。
また発達障害の特性である、「こだわりの強さ」や「コミュニケーションにまつわるさまざまなミスの生じやすさ」、「得た情報を一時的に保ちながら処理する脳の働きの弱さ」により、失敗体験が幼いころから多かったという場合もあります。
その結果「なぜ、周りと同じようにできないのか?」と親や先生から言われることが多く、「自分は他の人のようにできない、ダメな人間だ」と考えるようになってしまいます。
その経験は日常的に起こり、就職を目指す年齢になる頃にはすっかり自信をなくしてしまっていることが多いのです。
自己肯定感が仕事に及ぼす影響とは?
「自己肯定感が低いことによる仕事上のデメリット」は4つ考えられます。
- 他人の言葉を素直に受け止められなくなる
- 自分を信じられず、辛いときに挫けやすくなる
- 疑い深くなり、他者を敵視しやすくなる
- 周囲の評価を極度に気にしてしまう
「自己肯定感が高いことによる仕事上のメリット」は2つ考えられます。
- 課題や失敗に対応し、克服できる
- 職場の雰囲気が良くなる
それぞれ、具体的に見ていきます。
自己肯定感が低いことによる仕事上のデメリット
1. 他人の言葉を素直に受け止められなくなる
自己肯定感が低い方は、他人の言葉を素直に受け止められなくなります。「褒め言葉は悪く、批判や悪口はより悪く」捉えるようになってしまっている方も多いでしょう。
例えば「あなたの真面目なところは素晴らしい」と言われたとき、自己肯定感が低い方は、それを褒め言葉とは受け取れず「本当は融通が利かない奴だと思っているに違いない」とか「何も褒めるところがないから、適当を言ったに違いない」など、自ら悪い方向へ考えてしまうことがあります。
2. 自分を信じられず、辛いときに挫けやすくなる
自分を信じられないことにより、辛い時に「できない」「もうだめだ」と思って手を止めてしまう可能性が高くなるでしょう。ノルマが厳しい職場では、目標が達成できないことで劣等感を抱くこともありえます。
また、大きなプロジェクトを任されるなどチャンスがやってきたときも、喜びや期待を感じるより先に、失敗してしまう自分の姿を想像してしまい、責任のある仕事を避けようとするでしょう。
3. 疑い深くなり、他者を敵視しやすくなる
他人も信じられない状態のため、常に「自分の惨めなところを見られないか」警戒するようになります。
その結果、好意をもって接してくれる方を突き放してしまい、相手から恨まれてしまうことにつながります。また失敗した際、原因を他人のせいにすることもあるでしょう。
4. 周囲の評価を極度に気にしてしまう
あまりにも他者の評価を重視してしまい、主体性がとぼしくなります。その結果、自分で決断するべき状況でも、周りの目が気になり適切な判断が下せなくなります。
また、他者からの評価を基準にしているので、頼まれ事を断れず安請け合いしてしまうことも多くなるでしょう。
自己肯定感が高いことによる仕事上のメリット
1. 課題や失敗に対応し、克服できる
自己肯定感が高い方は課題が明確に認識できているため、克服方法や対処方法を冷静に考えられます。よって、「苦手なことや不得意なことを得意とする人に任せる」「スキルアップに取り組む」など、自ら行動できます。
また、何か問題が起きても自然と問題解決のアイデアが生まれ、すぐに行動に移すことができるでしょう。失敗してもそれを受け入れ、改善点を見つけて努力できます。
2. 職場の雰囲気が良くなる
各々高い自己肯定感を持っている職場では、お互いを尊重し、課題解決に向けて前向きな議論を行うことが可能になるでしょう。
また各人の個性や長所が生かせる環境が構築され、成果につながるほか、企画でアイデアが出しやすくなり、コミュニケーションが活発になって雰囲気が良くなる効果が考えられます。
自己肯定感を高める7つの方法
では、自己肯定感を高めるにはどうすればよいのでしょうか。7つの方法について、具体的に見ていきましょう。
- 自分の本当の気持ちを聞き、受け入れる
- 自分自身を客観的に見る
- 自分自身をほめる
- 短所を長所に置き換える
- 自分に「YES」を言う
- 困ったら人に頼る
- 体調管理・服薬について見直す
1. 自分の本当の気持ちを聞き、受け入れる
まずは、自分自身の気持ちと向き合うことから始めましょう。どんな思いが浮かんでもその思いを聞くことが重要です。否定はせずに心に浮かんだ想いや考えを、まずは受け入れてみましょう。
2. 自分自身を客観的に見る
「そもそもなぜ自分はダメなんだ?」と自分自身を客観的に見ることで、極端な思考をしにくくします。
発達障害の特性のある方は客観視が苦手な傾向があるので、最初のうちは少し難しく感じるかもしれません。ですが、日々の中で何かが起こったとき、すぐ行動に移さず、その問題について俯瞰して考えてみましょう。
客観的な視点を養っていくと、時間はかかるかもしれませんが、だんだんと自分のダメな点も受け入れられるようになってきます。それと同時に自分の良い点も見えてくることでしょう。自分の良い点が見えてきたら、その良い点を仕事や日常生活に活かしましょう。
3. 自分自身を褒める
自分を褒める癖をつけましょう。まずは、普段自分が「あたりまえ」だと思っていることを褒めるところから始めましょう。
例えば朝起きられたことを「仕事や学校だから起きてあたりまえだ」と考えるのではなく、「眠いし行きたくないのに、それでも朝起きてえらい」と褒めてみてください。どんな小さなことでも構いません。嫌なこと面倒なこと、苦手なことを頑張っている自分を褒めましょう。
仕事でミスをしてしまった時も「ミスをしてしまったけれど、人のせいにせず自分のミスを認め、次はどうしたら失敗しないかを考えている自分って素敵だよね」といった具合に褒めます。
他の人と自分を比較しないようにすることも大切です。「あの人は期日より随分早く仕上がっているのに、私は期限ぎりぎりで仕事が遅い」と、仕事自体はきちんとできているのに、他の人と比べることで、「できない」に気持ちがすり替わってしまうことがあります。他の人と比べず、自分の仕事が期限内にきちんと完了している(=できた)ことを、認めてあげましょう。
4. 短所を長所に置き換える
これはリフレーミングと呼ばれる方法です。
例えば、
- 「せっかち」⇒「時間管理に厳しく段取り上手」
- 「おとなしい」⇒「真面目、努力家」
- 「頑固」⇒「自分の意見がある」
など、自分の短所だと思うことを長所に置き換えてみましょう。
5. 自分に「YES」を言う
これは、信頼できる他者との間で「大丈夫」という体験を積み重ねる方法です。
しかし、信頼できる方が自分のそばにいない場合は、単純に自分が好む音楽、映画、本や漫画など、自分を受け入れ生かしてくれる存在で、自分自身を確かめていくと良いでしょう。
6. 困ったら人に頼る
発達障害の特性のある方は、なんでも一人でやり遂げようとするがんばり屋さんが多いので、判断に迷ったときは、人に頼ることから始めましょう。
人に頼ることは恥ずかしいことではありません。
7. 体調管理・服薬について見直す
健全な気持ちは、健全な体から生まれます。疲労や不安などを溜めている状態では、身を守るために警戒心や緊張が高まってしまうからです。
ですので、日ごろの睡眠環境や食事、服薬などについて医療機関と相談して安定した精神状態を保つようにしましょう。
自己肯定感を高める際のポイント
それでは、「自己肯定感を高める7つの方法」を実践する上でのポイント2つを見ていきます。
- トレーニングを継続する方法
- 注意点
トレーニングを継続する方法
ここまで、自己肯定感を高める方法をご紹介してきましたが、これを継続していかなければ本当に自己肯定感を持てたとは言えないでしょう。そこで、継続的なトレーニング方法につい
て2つご紹介します。
- ノートに自分を肯定する出来事や言葉(=褒め言葉)を、毎日つづっていく
- 同じ目標を達成するための仲間をつくる
仲間を作ることにより、同じ立場での意見交換ができて、身近にロールモデルがいるというメリットのほか、仲間の頑張りに刺激を受けてモチベーションを上げられるといった利点もあります。
自己肯定感を高める際の注意点
これまで、自己肯定感を上げることのメリットやその方法をご紹介してきましたが、注意しなければいけないこともあります。
そもそも自己肯定感と、自信のある・なしは全く関係がありません。これに触れないまま自己肯定感を上げる方法を試しても、「自己肯定感が低い自分はダメ」「高い自分はOK」と、新たな「○×」が加わるだけです。
前向きなことはもちろん良いことですが、いきすぎると怒りや悲しみといった、ネガティブな面や感情を抑圧することにつながります。
その時に自分のネガティブな感情にフタをして頑張ってしまうと、心身の悲鳴に気づけず体調を崩すこともあります。
ネガティブな感情を抑圧すると大きなしっぺ返しが来るばかりか、本当の自己肯定感とは程遠い状況になってしまうのです。
まとめ|発達障害と自己肯定感
- 自己肯定感とは、「ありのままの自分を受け入れ、肯定する」こと。
- 発達障害の方は、過去の失敗経験を長く引きずりやすいため、自己肯定感が下がることが多い。
- 自己肯定感が低いまま働くと、辛いときに挫けやすくなったり、他者を敵視しやすくなる。
- 自己肯定感を高めるには、小さなことからでも継続して自分をほめることが有効。
いかがだったでしょうか?この記事では発達障害を持つ方が、自己肯定感を高く持って働くことができるよう解説してきました。
どんなに対策をしたところで、過去の原因を変えることはできません。自己肯定感を高めたいのであれば、その過去を「今に活かす」以外に方法はないということを覚悟しておきましょう。
上記のようなポイントを実践していけば、自己肯定感を高めて長く働くことができるでしょう。
この記事が少しでも参考になりましたら幸いです。