障がい者が安定して働くためには、障がい者雇用で就職するという選択肢があります。
しかし、この記事にたどりついたあなたは、

「障がい者雇用で契約社員として働いているけれど、今後のキャリアが不安…」
このような疑問や不安を抱えてはいませんか?
- 障がい者雇用の実態
- 障がい者雇用で正社員になれない理由
- 障がい者雇用で正社員になるメリット・デメリット
- 契約社員から正社員になる解決方法
- 利用できる就労支援サービス
について、詳しく解説していきます。
障がい者雇用の実態を正しく把握して、自分に合った働き方を見つけて将来のキャリアを築くためのヒントとして利用してみましょう。
正社員雇用は難しい?障がい者雇用の実態とは
障がい者雇用は、民間企業や国、地方公共団体等に対し、雇用する労働者のうち、一定の割合以上で障がいがある方を雇用するよう、義務付けられている制度です。障がい者雇用促進法に基づき、障がい者の職業安定を目的として法定雇用率が設定されています。2024年12月時点で、法定雇用率は2.5%です。
障がい者雇用で働くには障がい者手帳の取得が必要ですが、一般雇用よりも障がいの状態や特性に対して合理的配慮を受けながら働けるという特徴があります。
厚生労働省が発表している「令和6年度障がい者雇用状況の集計結果」によると、障がい者雇用で働いている障がい者は全国に677,451人と発表されています。どのような雇用形態で働いている方がいるのか、下記の表にまとめました。
雇用形態 | 労働者の割合 |
---|---|
正社員(期間の定めなし)対象 | 53.2% |
正社員(期間の定めあり) | 6.1% |
正社員以外(期間の定めなし) | 15.6% |
正社員以外(期間の定めあり) | 24.6% |
無回答 | 0.5% |
雇用形態 | 労働者の割合 |
---|---|
正社員(期間の定めなし) | 53.2% |
正社員(期間の定めあり) | 6.1% |
正社員以外(期間の定めなし) | 15.6% |
正社員以外(期間の定めあり) | 24.6% |
無回答 | 0.5% |
上記の表の通り、障がい者雇用では正社員で働くことがメジャーであることが伺えます。
また、2024年からは法定雇用率の引き上げに伴い、民間企業は「従業員40人あたりに1人は障がい者を雇用すること」を義務付けられているため、障がい者を正社員で採用する動きも活発になりつつあるのです。
もっとも、障がい者雇用であっても正社員登用されるには、
- 体調が安定しており、安定した出勤が可能であること
- 仕事を問題なくこなすスキルや協調性があること
などが求められるため誰でも正社員になれる訳ではなく、体調面やライフワークバランスなどから、あえて非正規社員として働いている方もいらっしゃいます。
ですが、あなた自身が「障がい者雇用で正社員になりたい」という目標を持って就職活動を進めていけば、正社員登用は可能だと言えるでしょう。
障がい者雇用で正社員になれない理由3選
先述の通り、障がい者雇用において正社員は最もメジャーな雇用形態です。ですが、企業の採用基準や本人のパフォーマンスによっては「希望しているのに正社員になれない」というケースもあります。
この項目では、障がい者雇用で正社員採用が難しくなる3つの理由について見ていきましょう。
体調が安定せず長時間の就労が難しい
障がい者雇用であっても多くの場合、正社員になるためにはフルタイムで働けることが求められます。
そのため、病気や障がいによって体力や集中力が続かなければ、
- 長期間の安定したフルタイム勤務が難しいのではないか?
- 業務能力に支障があるのではないか?
- ストレスなどが原因となり短期離職のリスクが高いのではないか?
などの懸念により、正社員登用が難しくなるケースがあります。
このような事情から、一度パート・アルバイトや契約社員など、非正社員の形態で採用して、「安定して働けるか」「仕事内容が本人に合っているか」「長く働いてくれそうか」などを確認してから正社員登用を検討する企業が多いのです。
正社員での就職や正社員登用を目指す場合には、あなた自身の病気や障がいについて理解を深めると共に、体調を自己管理できていることが求められます。
スキルや経験が不足している
一般的には、パート・アルバイト・契約社員などと比較すると、正社員になるための条件は厳しくなります。
そのため、企業によって求められるものは異なりますが、
- 業務に必要な最低限のスキルや基礎知識
- 社会人としての一般常識
- コミュニケーション能力や協調性
などに不足があれば、正社員になることは難しくなるのです。
正社員で採用することは、給料を上げたり社会保険費用を支払ったりという形で負担が増加することにも繋がるため、少しでもいい人材を雇いたいという企業側の本音があります。こういった事情から、正社員登用にはより厳しい条件が設けられることが多く、慎重な判断を行う企業が多いのです。
障がい種別ごとに正社員を目指す難易度が異なる
先述している厚生労働省の「令和6年障がい者雇用状況の集計結果」から、障がい者雇用で働く方の障害種別ごとの人数をまとめると下記の表の通りになります。
障害種別 | 雇用者数 |
---|---|
身体障がい者 | 368,949人 |
知的障がい者 | 157,759人 |
精神障がい者 | 150,717人 |
障害種別 | 雇用者数 |
---|---|
身体障がい者 | 368,949人 |
知的障がい者 | 157,759人 |
精神障がい者 | 150,717人 |
身体障がい者は働く上で必要な配慮が明確であり、社内設備のバリアフリー化などによって企業側が受け入れる体制を整えやすいという点から採用に結びつきやすい傾向があります。
一方で、知的障がい者や精神障がい者は必要となる配慮が分かりにくく、受け入れるためには個人の状態や特性に沿った対応が求められるため、企業側の負担が増加しやすく採用されにくい傾向があります。
このような事情から、障がい者雇用で正社員を目指す場合には障がい種別ごとに難易度が異なる点は理解しておくべきでしょう。
障がい者雇用で正社員になる3つのメリット
障がい者雇用で正社員になることには、メリットが3つあります。
これらは、安定した生活基盤を築き、自立を目指すうえで重要な要素です。
- 安定した雇用で収入を得ることができる
- 各種の福利厚生を利用できる
- 障がいに対して、合理的な配慮を受けることができる
順番に見ていきましょう。
安定した雇用で収入を得ることができる
「契約社員」ではなく「正社員」だと、企業側も簡単に解雇することはできません。解雇する場合には、客観的に合理的な理由が必要なので長期的に1つの場所で働くことが可能で、安定した雇用を得ることができます。
また正社員は、パートやアルバイトと比べて給与が安定しており、収入が一定していることが多いです。また、ボーナスや昇給の機会もあるため、長期的な収入の向上が期待できます。
各種の福利厚生を利用できる
正社員には、多くの場合、下記のような福利厚生が提供されることが多いです。
- 社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)
- 退職金制度
- 住宅手当や家族手当
基本的に、社会保険は適用されることがほとんどですが、退職金制度や手当など、企業によっては利用できない場合もあるので、募集要項や面接でしっかり内容を把握しておきましょう。
企業によっても異なりますが、福利厚生が充実している企業で働くことは、経済的に大きなメリットとなります。
障がいに対する合理的な配慮を受けることができる
障がい者雇用の合理的配慮とは、障がいのある方がその能力を発揮し、平等に働けるように職場環境や働き方を調整することを指します。
具体的には
- 勤務関係の調整
- 業務内容や働き方の変更
- 拡大鏡など、補助機器の提供
- 支援者やカウンセラー、通訳の配置
- 職場内での障がいについて理解を深めるための研修
などの配慮があります。
障がいのある方に合理的な配慮を提供することは、法律で定められている義務ですが、実際は企業の判断によるところが大きく、配慮を受ける環境が整っていない企業もあります。
しかし、障がい者雇用で正社員になる場合、合理的配慮を受けやすくなる可能性が大きくあがります。合理的な配慮を受けることができれば、無理なく長期的に働くことが可能となるでしょう。
障がい者雇用で正社員になる3つのデメリット
障がい者雇用で正社員になる場合、先述したようにメリットが大きいですが、デメリットがないわけではありません。
具体的に3つ紹介してきます。
- 仕事の選択肢が限られてしまう
- 障がい者手帳が必要
- 特別扱いされることに居心地が悪くなる場合もある
順番に見ていきましょう。
仕事の選択肢が限られてしまう
障がい者雇用枠での就職は、一般雇用に比べ求人の数が少ない傾向にあり、職種や業務内容が限定されることがよくあります。限定されてしまう理由としては、どこの企業でも障がい者雇用を実施しているわけではないことにあります。
障がい者雇用制度は活発になりつつありますが、まだまだ一般の認知が低いのが現状です。また、障がい者雇用の業務内容は、障がいがある方でも働けるようにと簡易作業が設定されていることが多くあります。
そのため、障がい者雇用の求人で自分が働きたいと思っている職種や業務内容が見つからないという場合もあります。
障がい者手帳が必要
誰でも障がい者雇用枠で就職できるわけではありません。障がい者雇用枠で働くには障がい者手帳を持っていることが条件になります。
障がい者手帳を持っていない場合、後述する就労支援サービスを受けることができても、就職は一般雇用となってしまう点に注意しましょう。
特別扱いされることに居心地が悪くなる場合もある
障がい者雇用で就職することは、障がい者であることを周りに知られるということです。
障がい者であることを公表し、周りから合理的配慮を受けられることは大きなメリットですが、時には配慮や特別扱いをされすぎて居心地が悪く感じてしまう場合もあります。
ここで知っておきたいのが、企業側は本人の希望無しに勝手に障がい者であることを周りに公表することはないということです。面接や上司との面談でどこまで障がい者であるということを公表するか、どの程度の支援が必要なのか相談することもできます。
職場の方にきちんと理解してもらい、自分に必要な合理的配慮を受けられるよう、自身の障がいの状態や特性などについてわかりやすく伝えられるようにしておきましょう。
契約社員から正社員になるための4つの解決方法
この項目では、障がい者雇用を利用して正社員として働くために押さえておきたい4つのポイントを解説します。
正社員募集をしている求人に応募する
当然のことにはなりますが、最初から正社員を募集している障害者雇用の求人に応募して採用が決まれば、そのまま正社員として働くことができます。
注意したい点として、障がい者雇用の求人には正社員以外にもパート・アルバイト・契約社員などのさまざまな雇用形態での募集があることが挙げられます。あなたが応募した求人は「どの雇用形態での採用が前提となるのか?」については、間違いが無いよう確認しましょう。
また、面接時の流れで、
「仕事に慣れるまでは契約社員として働かないか?」
などの質問がされる場合もあります。そのため、事前にこのような質問に対する回答を用意しておくことや、将来的に正社員になれるのかという点を面接時に確認することが大切です。
正社員登用制度の有無を確認する
正社員登用制度とは、パート・アルバイト・契約社員などの非正規雇用で働く労働者を正社員として採用する制度のことです。特に障がい者雇用の場合、正社員登用制度の無い会社は、
- 障がい者に任せる業務が固定化されていて、正社員で任せられる仕事が無い
- 福利厚生、社会保険料などのコストが発生するため正社員で雇用できない
などの理由により、あなた自身の努力や希望に関わらず正社員での雇用を想定していないケースが多くなります。
そのため、非正規雇用から正社員を目指そうと考えている方は、正社員登用制度の有無を確認することが大切です。
安定した就労を目指す
先述している通り、正社員で働くには体調を整えて、安定した就労ができるようになることが大切です。
この点は企業側も非常に重視していることが多いため、
- 遅刻、早退が多い
- 体調不良による欠勤が多く、一度休むと長期的な休養が必要になる
- 体調の変化によって業務に支障が出てしまう
などの課題を抱えている場合は、焦らずこれらの解決から取り組む必要があります。
また、「働く上での困りごとや体調変化を周囲に相談できるか?」という点も自己管理の一環として評価されるポイントです。そのため、あなた自身が病気や障がいに対する理解を深めると共に、問題が発生したらどのような配慮が必要になるか整理しておくよう心がけましょう。
知識や技術を身に付ける
正社員として就職する場合も、契約社員などから正社員を目指す場合も、業務に関連する知識や技術を身に着けてスキルアップする必要があります。
雇用形態を問わず、向上心を持って努力している方は、企業にとって貴重な人材です。
もっとも、障がい者雇用では社内で発生する雑務や定型業務に従事することが多くなりますが、新しい業務に挑戦する姿勢を持って社内でできる仕事の幅を増やすことが正社員採用の近道となります。
正社員を目指すのにオススメの3つの就労支援サービス
障がい者を対象とした就労支援サービスは、大きく下記の3つに分けられます。
- 就労継続支援
・就労継続支援A型
・就労継続支援B型 - 就労移行支援
これらのサービスは、いずれも病気や障がいへの配慮を受けながら、訓練を通して就職に必要な一般知識・マナー・技術などを身に付ける訓練を受けられます。障がい者雇用を含む一般企業への正社員就職を目指すことが可能です。
適切な支援サービスを利用することで、段階的に正社員を目指すのも1つの選択肢となるでしょう。
就労継続支援
就労継続支援とは、障がいや難病などのために一般就労が困難な方を対象として、働く機会や場所を提供する就労支援サービスです。障がいによる困りごとや体調に合わせて自分のペースで働くことができるほか、就労を通したスキルアップを目指すことができます。
就労継続支援は次の2つに区分されます。
就労継続支援A型
就労継続支援A型の主な特徴は、利用者と事業所が「雇用契約」を結び、「賃金」を受け取る形で働くことができる点にあります。A型で働く時間は一般企業よりも少ない傾向にありますが、一般企業と同様の雇用契約が適用されるため最低賃金が保証されています。そのため、「障害者雇用を辞めて就労継続支援A型で働く」のも現実的な選択肢の1つとなるでしょう。
就労を通して経験を積むことで、一般企業への就職を目指すための訓練や実習を受けることが可能です。
就労継続支援A型については下記の記事で解説しています。
就労継続支援B型
就労継続支援B型の主な特徴は、利用者と事業者が「雇用契約」を結ばず作業を行うことで「工賃」を貰う点にあります。「工賃」は「賃金」とは異なるため最低賃金は保証されておらず、令和4年度の工賃の平均時給は「243円」です。雇用契約が結ばれていないので、週に1回や1時間だけ通うこともできます。
B型では主に、軽作業や手工芸などの作業が行われています。
A型と比較すると障がい福祉サービスを受ける場所という意味合いが大きく、B型の利用を通して働く感覚を身に着けて、A型へ移行したり就職を目指したりする、就労のための準備段階と位置付けられています。
就労継続支援B型については下記の記事で解説しています。
就労移行支援
障がい者の就労を支援する就労支援サービスには、就労継続支援のほかに「就労移行支援」もあります。就労移行支援は、障がい者雇用を含む一般就労に向けた就職活動の支援に特化したサービスである点が特徴です。
利用にあたり賃金や工賃は発生しませんが、最大2年間を目安として、
- 就職のために必要な知識やスキルを身に着ける訓練
- コミュニケーション講座や障がいに対する理解を深めるための面談の実施
- 履歴書の添削や面接練習などの就職活動の対策
などを受けることができます。正社員での就職を目指す場合は、先述している就労継続支援A型・B型よりも、就労移行支援を利用する方が近道となるでしょう。いずれの障がい福祉サービスも、障がいがある方の働きたい気持ちをサポートするという点は同じであるため、あなたに合った支援を選択することが大切です。
就労移行支援については下記の記事で解説しています。
まとめ
- 障がい者雇用では、期間の定めのない正社員として働く方の割合が53.2%と最も高いが、パート・アルバイト、契約社員などの雇用形態で働く方も多いのが現状。
- 障がい者雇用で正社員になれない理由としては、「体調が不安定で長時間の就労が難しい」「スキルや経験が不足している」「障がい種別毎に正社員を目指す難易度が異なる」などが考えられる。
- 障がい者雇用で正社員になるメリットとしては、「安定した雇用での収入」「障がいに対して合理的な配慮が受けられる」などがある。デメリットとしては、「仕事の選択肢が限られる」「特別扱いされることに居心地が悪く感じる」などがある。
- 契約社員から正社員になるための方法としては、「正社員募集をしている求人への応募」「安定した就労を目指す」「知識や技術を身に付ける」などが考えられる。
- 障がい者を対象とした就労支援サービスとして、「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」「就労移行支援」が利用できる。
障がい者雇用であっても、正社員には「安定して長期間働くこと」が求められるため難しいと感じることもあるでしょう。正社員で働くためには、体調を安定させる・スキルを覚えるなど「正社員で働くための力」を自身が身に付ける必要があります。
その時は、就労支援サービスなどを利用して、段階的に正社員を目指すという選択を考えることも大切です。