近年、障害者雇用促進法の改定の影響などもあり、障がいをもっている人と同じ職場で働いている方も増えています。
その中でも、発達障害のひとつ、アスペルガー症候群の人と一緒に働いている方にとって、
「仕事をする上でミスが目立つけど、どうすればいい?」
「アスペルガー症候群の人にとって働きやすい職場環境って?」
などの不安や疑問を抱いている方もいらっしゃると思います。
- 大人のアスペルガー症候群の特徴
- アスペルガー症候群の人との職場での接し方
- アスペルガー症候群の人が働きやすい職場環境
について解説していきます。
少しでも参考になれば幸いです。
大人のアスペルガー症候群について
アスペルガー症候群は、発達障害のひとつです。近年は「ASD」、「自閉症スペクトラム症」とも言われています。発達障害は脳機能の偏りが原因と言われていますが、詳しいことは未だ解明されていません。
また、アスペルガー症候群には共通する特性はあっても、人それぞれ程度が異なるので、診断が難しいとされています。社会人の複雑なコミュニケーションに躓き、精神的に疲れてしまう人も多く、その状態になり初めて病院に行き、診断されるといったパターンもあるようです。
アスペルガー症候群の特徴
アスペルガー症候群の特徴については、以下のようなものがあります。
- 他者とコミュニケーションを取ることが苦手
- 話し相手の言葉や表情などから情報を読み取ることが難しい
- 暗黙のルールなどが理解できない
- 言葉をそのままの意味で受け取ってしまい、冗談が伝わらなかったり傷付いたりする
- ストレートな物言をしてしまい、相手を傷付けてしまうことがある
- 強いこだわりがある・興味が限定されている
- イレギュラーなことに対して、臨機応変に対応することが難しい
- 感覚過敏で眩しさや騒音に対して強いストレスを感じる
特に、他者とのコミュニケーションを取ることが苦手という特性から、働く上で意思疎通がうまくいかず、誤解や齟齬が生じてしまい、トラブルが起こってしまう場合があります。
アスペルガー症候群の特徴については、以下の記事でも詳しく解説しております。
アスペルガー症候群の人との職場での接し方
上記では、アスペルガー症候群の特徴について紹介してきました。では、職場でどのように接すれば、双方にとって仕事がやりやすくなるのでしょうか?
主にここでは、2つのポイントについて解説していきます。
- 曖昧な表現で会話をすることを避ける
- 失敗を強く責めないようにする
順に見ていきましょう。
曖昧な表現で会話をすることを避ける
アスペルガー症候群の人は、曖昧な表現や暗黙のルールなど、しっかりと言語化されていないものに対して理解することが苦手な側面があります。
よって、日常会話から仕事の指示など、具体的な内容を明言する会話を意識しましょう。
例えば
↓
「スケジュール調整したいから、30分後に私の席に来て」
のように、伝える側は「一段落したら・少ししたら」などの意味を込めていても、アスペルガー症候群の人は、「手が空かないから話しかけられない……」と思ってしまい、齟齬が生じてしまう可能性があります。
このようなことを防ぐためにも、曖昧な表現は使わずに、具体的な数字や行動を意識して言葉にすると、お互いの齟齬を少なくすることができるでしょう。
他にも、言葉の意味をそのまま受け取ってしまったり、冗談や言い回しが伝わらなかったりする場合もあるので、その都度正しい認識をしているかどうか、確認することが大切です。
失敗を強く責めないようにする
アスペルガー症候群の人は、自分の意図しないところで責められてしまうことや、相手を傷つけてしまうことが少なくありません。その影響から、自己肯定感が低かったり、言われた言葉を必要以上に重く受け取ってしまったりして、精神的に落ち込みやすくなっている場合があります。
よって、仕事でのミスや、職場でのコミュニケーションのトラブルなどが起きてしまっても、その人を強く責めることは避けましょう。
起きてしまった失敗は、「何が原因だったか」を追究することで防ぐことができます。感情的に個人を責めることは避け、システムの見直しや、アスペルガー症候群の特性を知るなどの対策をして、職場環境を健康的に保っていくことが重要になります。
アスペルガー症候群の人が働きやすい職場環境
上記では、アスペルガー症候群の人との接し方について解説してきました。
ここではさらに、双方が働きやすくなる職場環境について、主に4つ解説していきます。アスペルガー症候群の特性に対して、対処法を知っておけば、仕事をスムーズに進めることができる可能性が高くなります。
- 対人関係を複雑にしない
- マルチタスクを振らない
- 図形や文章を用いて視覚的に分かりやすくする
- 感覚過敏に対する対処法を取り入れる
順に見ていきましょう。
対人関係を複雑にしない
アスペルガー症候群の様々な特性から、コミュニケーションに対して苦手意識をもっている人が多いので、対人関係は複雑にしないことを心がけましょう。
アスペルガー症候群の人は、仕事をする上で関わる人数が多いほど、トラブルが起こりやすくなってしまいます。また、双方にストレスが蓄積されてしまう可能性もあるので、対人関係はシンプルに「~の案件は○○さんに相談をする」といったルートをつくっておくといいでしょう。
ただし、その人ばかりに大きな負担がかかってしまうと、カサンドラ症候群と言って、対応している側が精神疾患になってしまうこともあります。相談役の人をつくる場合は、その人の悩みなどを積極的に聞いて、しっかり対策を取ることが大切になります。
カサンドラ症候群については、以下の記事でも詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
マルチタスクを振らない
アスペルガー症候群の人は、マルチタスクが苦手な方が多いとされています。その為、仕事を任せる時は、マルチタスクを振らないようにしましょう。特に、自分のやり方や会社が提示している手順などのルーティンがある場合、急に振られた仕事に対応できない可能性が高くなります。
また、自分の興味の有無を優先してしまうなどして、優先順位をつけることが苦手な場合もあります。そのような時は、「今やってる仕事は一回止めて、この仕事からやってもらえる?」としっかり言葉にして伝えることを意識しましょう。
図形や文章を用いて視覚的に分かりやすくする
アスペルガー症候群の人は、聴覚から入る情報よりも、視覚から得る情報の方が理解しやすい場合があります。その為、会議中の話し合いや仕事の説明をする時は、図形や文章を用いて視覚的に分かりやすくすることが効果的です。
ただし、個人差があるので、「アスペルガー症候群だから○○○をすればいいだろう」という考えから、本人に聞かずに対策をするのは避けましょう。しっかりと「どうすれば分かりやすくなるのか」を聞いてから、実行に移すことが大切になります。
感覚過敏に対する対処法を取り入れる
アスペルガー症候群の特性から、感覚過敏の症状を抱えている人が多いとされています。感覚過敏の症状をそのままにしてしまうと、仕事の効率が落ちてしまい、また、大きなストレスに繋がってしまいます。よって、感覚過敏に対する対処法を積極的に取り入れて、働きやすい職場環境にすることが重要になります。
感覚過敏の具体的な症状と対処法については、以下のようなものがあります。
視覚過敏
- PCの画面や職場の電気が眩しく感じる
- 太陽の光などが苦手
- 色が多用されている資料や情報量が多い画面に対して混乱する
●対処法
聴覚過敏
- 大きな音や突然聞こえる音がストレスになる
- 些細な音(時計の秒針や会話など)が、ものすごく気になる
- 特定の音が極端に苦手
●対処法
感覚過敏の症状も個人差が大きいので、そのひとnその人に合った対処法をしていきましょう。
まとめ
- アスペルガー症候群は発達障害のひとつ。近年はASD、自閉症スペクトラム症とも言われている。発達障害は脳機能の偏りが原因と言われているが、詳しいことは未だ解明されていない
- アスペルガー症候群の特徴として、話し相手の言葉や表情などから情報を読み取ることが難しいなど、他者とコミュニケーションを取ることが苦手という特性がある。他にも、言葉をそのままの意味で受け取ってしまい、冗談が伝わらなかったり傷付いてしまったりする。また、強いこだわりや興味が限定されていることもある
- アスペルガー症候群の人との職場での接し方は、曖昧な表現で会話をすることを避けることや、失敗を強く責めないようにすることを意識する
- アスペルガー症候群の人が働きやすい職場環境にする為には、対人関係を複雑にしないことや、マルチタスクを振らないことが大切。また、図形や文章を用いて視覚的に分かりやすくしたり、感覚過敏に対する対処法を取り入れたりすることも効果的
いかがだったでしょうか?
アスペルガー症候群の人との接し方は、知らないと思わず怒ってしまったり、仕事をする上での困りごとが多くなってしまったりする場合があります。よって、アスペルガー症候群の特性を知っておくことや、その人に合った対処法を考えておくことがとても重要になってきます。
どうしても部署や会社内で対応できない場合は、外部の「発達障害者支援センター」のような、発達障害についての専門機関なども積極的に利用して、ストレスを溜めない職場環境を目指していきましょう。
発達障害者支援センターについては、以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。