「ADHDでも安定して働き続ける方法はないのかな…」
この記事を読んでいるあなたも、こうしたお悩みをお持ちではないでしょうか?
ADHDは不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達障害です。最近では大人になってADHDと診断される方が増えています。
大人の場合、ADHDの「集中力が続かない」「興味のない仕事はできない」といった特性から、うまく職場に適応できずに苦しんでいるケースが少なくありません。
- ADHDの方が抱える仕事での悩み
- ADHDの方が仕事が続かない原因と対策
- ADHDの方が仕事を長く続ける方法
について解説していきます。
ADHDの方が抱える仕事での悩みを知り、仕事を安定的に続けていける方法を探っていきましょう。
仕事が続かないADHDの方が抱える困りごと
ADHDとは、主に不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達障害の一つです。具体的な症状は人によってさまざまですが、大人の場合、仕事においてさまざまな困難を感じるケースが多いです。
ADHDの特性と仕事への影響
ADHDの方に多く見られる特性と、それによって起こりうる仕事への影響についてまとめました。
- 集中力が続かない
- 衝動的に行動してしまう
- 時間管理が苦手
- 忘れ物が多い
- 人間関係をうまく築けない
- モチベーションが維持できない
- 同じ作業が続かない/ミスが多い
- 指示を待てない/順番を間違える
- 遅刻が多い/締め切りを守れない
- 必要な書類や持ち物を忘れる
- 協調性がない/コミュニケーションがうまくいかない
- すぐ飽きてしまう/目標達成が難しい
ADHD特有のこうした特性によって仕事にさまざまな影響が及び、「働きづらさ」を抱えることになるケースは少なくありません。
働きづらさが続くと、仕事を辞めるきっかけにもなります。その結果、転職を繰り返すようになってしまう方が多いのです。
ADHDの方が転職を繰り返すデメリット
ADHDの方が転職を繰り返すことで、どのようなデメリットが発生するのでしょうか。
まずはこちらをご覧ください。
ADHDなどの発達障害者を含む精神障害者全体の平均勤続年数は、約5年です。労働者全体の平均勤続年数は約10年であるため、その半分です。
特にADHDなどの発達障害者は20代で平均2回、ひとつの職場あたり2~3年おきに転職しているといわれています。このため20代で3回以上転勤していれば採用側からは「この人は転職回数が多い」とみなされます。
転職回数が多いと不利?転職を繰り返す大人のADHD・発達障害に向いている求人とは
採用を繰り替えすデメリットをまとめると、
- 次の採用がされにくい
転職回数が多いために、採用側は「すぐに辞めるかも」と判断して、採用を渋る可能性がある - 短期間で転職を繰り返すと、職歴が浅く見える
職歴が浅いと今後のキャリアアップや昇給に不利にはたらく可能性がある - 周囲から不信感を持たれる
周囲から「責任感がない」とみなされる可能性がある
以上のことが挙げられます。
転職を繰り返すと今後の就職活動に影響します。そのため、なるべく短い期間での転職は避けるべきですが、ADHDの方にとってはそれが難しいこともあるでしょう。
そこで、次の章ではADHDの方が仕事を続けられない原因と対策について解説します。
ADHDの方の仕事が続かない原因と対策
ここまで解説したように、ADHDの方は仕事上でさまざまな困りごとを抱えます。そのため、適切な対策をとらなければ退職を繰り返すことに繋がり、今後の就職活動にも悪影響が及んでしまうのです。
とるべき対策は人それぞれですが、まずは自分が仕事を続けられない原因を整理することが重要です。
ここでは、下記の4つの原因ごとに事例と対策を解説します。
- 自己理解不足が原因の場合
- 不注意が原因の場合
- 多動性が原因の場合
- 衝動性が原因の場合
順にみていきましょう。
自己理解不足が原因で仕事が続かない
あなたが今取り組んでいる業務は、自分の特性に合ったものですか?特性上向いていない仕事を無理して行っている場合、安定して働き続けることは難しいでしょう。
これを防ぐためにも、まずは自己理解を深めることが重要になります。自身の特性についての理解が足りないと、続けられる仕事を見つけることも困難です。
ADHDには次の3つの各特性があります。
- 不注意
ケアレスミスが多い、指示を聞き逃す、予定を忘れる - 多動性
じっとしれられない、落ち着きがない - 衝動性
考えなしに行動する、すぐ怒る
自分がどこに該当するのか見つめなおすことから始めてみましょう。
- 原因(自己理解不足で仕事が続かない)
- 自分の特性を理解していない 苦手な仕事を無理に続けようとしている
- 自分に合った仕事を選んでいない 得意な分野 特性を生かせていない
- 例
- 集中力が続かないのに、事務仕事で長時間集中が必要な仕事をしている
- 細かい作業が苦手なのに、工場で細かい作業を任されている
- 対応策
- 自己理解を深め、自分に合った業務に変更してもらう
- 特性が強みになる職業を探す(詳しくは後ほど記載)
不注意が原因で仕事が続かない
ADHDの方は注意が散漫になることがあります。これでは仕事に長時間集中ができません。また不注意のために、仕事に必要な書類や持ち物を忘れてしまい、周りに迷惑をかける可能性があります。
これが続くと仕事を長く続けられない原因になります。
- 原因(不注意で仕事が続かない)
- ケアレスミスが多い
- 指示を聞き逃す
- 予定を忘れる
- 例
- ミスが多くて上司に怒られた
- 重要な書類を提出期限に間に合わない
- 予定を忘れて遅刻した
- 対応策
- ミスを減らすための工夫をする
- チェックリストを使う
- スマホのリマインダー機能の利用
多動性が原因で仕事が続かない
ADHDの方は「同じ作業を続けるのが苦手で、すぐに別のことに興味がいく」多動性の特性があります。ずっと同じ環境の作業を続けるのが苦手なために、仕事が続かない可能性があります。
- 原因(多動性で仕事が続かない)
- 同じ作業を続けるのが苦手
- じっとしていられない
- 落ち着きがない
- 対応策
- 短時間集中して、休憩を挟む
- 興味のある仕事を選ぶ
- 集中しやすい環境をつくる
衝動性が原因で仕事が続かない
ADHDの方は「衝動的な行動を取りやすく、計画することが苦手」です。思い立ったらすぐに行動してしまうため、衝動性が原因で長く続けられない場合があります。
- 原因
- 考えなしに行動する
- 計画することが苦手
- 例
- たまたまみた求人に応募して、仕事を辞める
- 対応策
- 行動する前に考える
- スケジュールを立てて計画する
このように仕事が長く続けられない原因はさまざまです。自分の特性に応じた対応策をとることが大切です。
ADHDの方が仕事を長く続けるポイント
自身の特性を理解して対策をとること以外にも、ADHDの方が仕事を長く続ける上で重要なポイントがあります。
- 自分に合った仕事を探す
- 周囲のサポートを求める
- 休職制度を利用する
- 医療機関や支援制度を頼る
順に解説していきます。
自分に合った仕事を探す
自分の特性がわかれば、苦手なことを仕事に選ぶのは避けられます。仕事を探す際は、次のような「自分の特性が強みにできる」仕事を選ぶことを意識すると、長く続けられる可能性が高まるでしょう。
- 自分の特性を活かせる仕事の例
- 集中力が高い 分析や研究
- アイデアが豊富 企画やデザイン
- コミュニケーション能力が高い 接客や営業
また、自分以外のADHDの方が実際にどんな仕事についているのかを知ることも大切です。次の表をご覧ください。
ADHDの方は、その特性を持ちつつもさまざまな職種で働き、活躍しています。下記は、アンケートデータの中で多かった仕事内容です。
職種 | 仕事内容 |
---|---|
事務職 | PC仕事や軽作業、運送業での配車や電話対応、書類の作成や整理、経理業務、資料コピーなど |
営業職 | 物件の案内、商品の売り込み、代理店への営業など |
接客業 | 飲食店・コンビニ(レジ打ち、注文を伺う)、店内の掃除、洗い物、盛付けなど |
デザイナー | アパレル、ロゴ制作、Webデザイン、写真の色調補正・加工・合成など |
広告宣伝 | カタログ制作、Web管理など |
金融 | 管理業務、仕事の設計など |
こちらは一例ではありますが、ADHDの方が行う仕事で多かったものを記載しています。自分に合っている仕事が分からない方は、まずこうした例を参考にしてみるのもよいでしょう。
周囲のサポートを求める
安定して働ける環境を作るためには、職場の上司や同僚に自分がADHDであることを伝え、理解や配慮を求めることが大切です。
今の仕事がきついと感じた際は、辞める前に一度周りに相談してみましょう。業務内容の調整など特性に対する配慮を受けることにより、働きづらさが緩和される可能性があります。
配慮を求める際は、「自分は何が苦手で、何ができないのか」を具体的に伝えることがポイントです。そうすることで、より効果的なサポートが期待しやすくなります。
休職制度を利用する
仕事を辞めたいと思っても、すぐに辞表を書くのは待ってください。
まずは、勤務先の有給休暇制度や休職制度を確認することが大切です。少し休むことで、本当に今辞めるべきなのか、状況を冷静に判断できるようになります。
休職制度の利用方法は、正社員や非正規などで雇用形態によっても異なるため、申請前に確認してみましょう。一度休職することで、仕事のモチベーションが戻る可能性があります。
医療機関や支援制度を頼る
仕事が影響で体調不良が続いたなら、医療機関に相談するのもいいでしょう。企業によっては、休職手続きに医療機関の診断書が必要な場合があります。
まずは心身の不調に向き合い、治すことを優先させましょう。
また、障がいのある方に向けた支援制度に頼るという選択肢もあります。支援を受けることで、障がいへの配慮がある環境で働くことや、自分の特性とのうまい付き合い方を知ることに繋がります。ADHDの方が安定して働き続ける手助けになるでしょう。
ここからは、発達障害で悩む方におすすめの支援制度を紹介していきます。
仕事を続けられないADHDの方が利用できる支援制度
最後にADHDの方が利用できる支援制度を紹介します。制度をうまく利用して自分の特性に合う仕事を探してみてください。
就労移行支援
就労移行支援はADHDの方も利用できる支援です。働くためのに必要な知識やスキルを身につけて、就職後もサポートしていただけます。
自分のADHDの特性に合った就職活動を行うことで、長く安定的に働くことが可能になります。
就労継続支援A型
就労継続支援A型では、発達障がいや病気により一般就労が難しい方を対象に、就労の機会の提供や訓練をするサービスです。一般企業へのステップアップとしてこちらの制度を利用してみるのもいいでしょう。
まとめ|ADHDの方が仕事を長く続ける方法
- 自分の特性を理解し、自分に合った業務や職業を選ぶ。特性を理解することは、ADHDの特性を把握し、強みや弱みを仕事に活かせる。
- 周囲からの支援を受ける。上司や職場に相談することで働きやすくなる可能性がある。休職制度を利用することや医療機関に行くことも良い。
- 就労移行支援や就労継続支援といった支援制度の利用も検討すること。支援を受けて、長く続けられる仕事をみつけよう。
いかがだったでしょうか。上記のポイントを理解して、自己理解を深め、周囲の理解やサポートを受けましょう。そうすれば、ADHDを抱える方でも仕事を長く続けることができるでしょう。
この記事が参考になりましたら幸いです。