あなたは、

「お酒がADHDに効果的な気がしているけれど、飲む量が増えてきて不安…」
このような疑問や不安を抱えていませんか?
実際に、ADHDの特性による症状が、お酒を飲むと一時的に「ふぅ…」っと楽になることがありますよね。
確かにADHDの特性は、お酒を飲むことで一時的に落ち着くことがわかっています。しかし、その飲酒は気づかないうちにあなたを苦しめているかもしれません。
- ADHDの人がお酒で「落ち着く」と感じる脳の仕組みとは?
- 知っておきたいアルコールの影響や依存リスク
- お酒との付き合い方を見直す方法
- お酒以外の「本当にホッとできる時間」を見つける方法
これらを分かりやすくお伝えします。少しでも心が軽くなるきっかけになれば嬉しいです。
ADHDの人がお酒を飲むと楽になる脳の仕組み
ADHDの特性がお酒で楽になると、それに「快楽」を感じることがありますよね。しかし、それはアルコールがADHDを治療しているわけではありません。
以下では、飲酒がADHDの特性を緩和させる脳の仕組みについて見てみましょう。
ドーパミン不足が一時的に解決
ADHDの人は、一般的な人よりもやる気や満足感に関わる「ドーパミン」の分泌量が少なく、物足りなさや退屈さを感じやすい傾向にあります。
アルコールを摂取すると、脳の「ごほうび回路」を強制的に刺激し、ドーパミンが大量に分泌されるため、強い快感や満足感が得られます。その結果、ADHD特有の落ち着かなさや退屈感が一時的に忘れられ、「楽になった」と感じます。
しかし、その効果は一時的であるため、強い快感体験が「また飲みたい」という欲求に繋がってしまうため、普通の人よりも問題になりやすくなっています。
脳のブレーキ役「GABA」が一時的に活性化
GABA(ギャバ)とは、やすらぎや落ち着きを与える神経伝達物質をキャッチする役割がある受容体です。脳のブレーキの役とも呼ばれています。
ADHDの人はこのGABAの働きが弱く、衝動性や多動性を抑えられない傾向を持っていますが、アルコールを摂取するとGABAの働きが強まります。そのため、一時的にADHDの症状が緩和したように感じられるのです。
しかし、飲酒が続くとGABAの働き自体が慢性的に低下するため、結果として以前よりも感情のコントロールが難しくなってしまう恐れがあります。
ADHDの人は注意したい、アルコールの5つのリスク
お酒で一時的に楽になる感覚には、やはり注意したほうがよいでしょう。ADHDの人は、前述の脳の傾向から「アルコールの問題を抱えやすい」といわれています。
ここでは、あなたが自身を守るために知っておいてほしい、大切な情報を紹介します。
アルコール依存症のリスクが高い
ADHDの人は、ドーパミンの分泌が少なめであるために、ドーパミンやそれが大量に分泌されるアルコールに反応しやすい傾向にあります。
他にも、衝動性の高さゆえに飲酒の量や頻度をコントロールしにくい他、安易なストレス対処として、飲酒に手を出してしまう可能性が常に付きまといます。(セルフメディケーション)
衝動性が悪化しやすい
前述の通り、アルコールはADHDの衝動性を緩和させますが、効果は一時的です。飲酒が続くと、脳のブレーキ自体は効きにくくなってしまいます。
そのため、 暴言が増える、浪費が止まらなくなる、危険な行動、や対人トラブルが増加する等といった形で、普段なら抑えられる衝動的な言動が出やすくなってしまう恐れがあります。
うつ病や不安障がいのリスク
アルコールは一時的に気分を高揚させますが、酔いから覚めると反動で気分が落ち込みやすくなります。
特にADHDの人は落ち込んだ気持ちを解決するためにアルコールに頼る、といった状態に陥りやすい傾向です。通常よりも早いペースで飲酒を繰り返し、強く気持ちが落ち込んでいくので、うつ病や不安障がいを発症するリスクが高くなっています。
飲酒という手段を取り続けていると、不安を紛らわせるために飲酒が長期化してしまい、それ自体が精神的な不安定さを助長するという悪循環が起こってしまいます。その結果、ADHD、アルコール依存、他の精神疾患という三重苦に陥るケースも存在します。
ADHD治療薬との危険な相互作用
ADHD治療薬(コンサータ®︎、ストラテラ®︎、インチュニブ®︎、ビバンセ®︎など)を服用中の場合、飲酒は非常に危険です。薬の効果が弱くなるだけでなく、以下のような健康上のリスクまであります。
- 薬の効果が不安定になる、弱まる
- 予期せぬ副作用(動悸、血圧異常、精神症状悪化など)
- 肝臓への負担増大
脳機能(集中力・記憶力)へのダメージ
慢性的な飲酒は、神経細胞にダメージを与え、時には破壊してしまうこともあります。長期的には脳の萎縮などを招き、ADHDの集中力や記憶力の低下をさらに顕著にしてしまう可能性があります。
元々の症状を悪化させてしまうため、リスクが高いと言えるでしょう。
「酒癖が悪いのを改善したい」と感じたら
ここまで読んで、「もしかしたら、アルコール依存症かも」「酒癖の悪さを改善したい」と感じている方もいらっしゃいますよね。
罪の意識を感じていても、自分を責めないでください。そう思えたことが、大切な一歩です。お酒から少し距離を置くために、まず何から始められるか見ていきましょう。
まずは現状チェック。「いつ」「どんな時」に飲んでいるか
客観的に自分の飲酒パターンを把握することが、対策への第一歩です。以下の点を、軽く振り返ってみましょう。
きっかけ:どんな気持ちの時に飲みたくなる?(イライラ、暇、嬉しいなど)
状況:誰かと?一人で?場所は?
量:大体どれくらい飲む?
飲んだ後:どんな気持ちになる?(スッキリ、後悔、など)
メモに残すと、自分の傾向が見えやすくなるのでおすすめです。
精神科や心療内科に相談!
すでに通っている人も、そうでない人も、困ったらまずは専門の医師とよく相談してみましょう。
前述の振り返りを通して、「ADHDでお酒を飲むと落ち着くけど、量が増えて不安」など、正直に伝えれば大丈夫です。
必ずあなたの不安に対処する手助けをしてくれます。
精神科と心療内科については、以下の記事でも詳しく解説しております。
お酒に頼らず「本当の意味でホッとする」ための3つの方法
「お酒を控えたいけれど、どうすればいいの?」と感じているあなたへ。ここでは、持続可能で心と体に優しい「本当の落ち着き」を得るための具体的な方法を3つご紹介します。
一人で頑張る必要はありません。周りのサポートも借りながら、できることから試してみましょう。
お酒の悩みを誰かに話してみる
お酒の悩みを「専門機関に相談するのはハードルが高い…」という気持ちはわかります。でも、まずは「一人で抱え込まない」ことが大切です。
以下のような人や相談窓口に悩みを打ち明けてみましょう。
- 信頼できる人:友人や家族などに話してみる。
- 自治体の相談窓口:保健センターなどに匿名・無料で相談。「アルコールのことで…」と電話してみる。
- オンライン相談/SNS:顔を見ずに相談できるサービスやコミュニティを探してみる。
- 精神保健福祉センター:各都道府県にある公的機関。電話相談も可能。
ADHDの「困りごと」自体を減らす工夫をする
お酒に頼る背景にADHDのストレスがあるなら、その「困りごと」を減らす工夫も有効です。医師と相談の上、薬物療法や心理療法・カウンセリングを受けると、困りごとを和らげる助けになります。
また、環境調整やライフハック等も有効な方法になります。忘れ物対策(チェックリスト、定位置管理)、時間管理(タイマー、タスク分解)、整理整頓(物の置き場所を決める、ラベリング)、集中力対策(イヤホン、作業環境整備)等、各方面で実行できる方法は多種多様です。
自分に合う工夫を取り入れて、日々のストレスを少しでも減らしましょう。
できることから始める
「規則正しい生活を送りましょう!」と言われても、難しいですよね。なので完璧である必要はありません。
簡単なステップから始めましょう。
超簡単なベビーステップ(例)
カテゴリ | 最初にできる事 | もう少し可能であれば |
---|---|---|
睡眠 | 寝る前スマホ時間を5分だけ短くする | 毎日同じ時間にアラームをセットする |
運動 | 座ったまま足首を回す | エレベーターを1階分だけ階段にする |
食事 | 食事にミニトマト3個足す | 1日1杯だけ甘い飲み物を水かお茶にする |
ストレス対策 | 1日1回、意識して息を吐く | 好きな曲のサビだけ聴く、5分ボーっとする |
カテゴリ | 最初にできる事 | もう少し可能であれば |
---|---|---|
睡眠 | 寝る前スマホ時間を5分だけ短くする | 毎日同じ時間にアラームをセットする |
運動 | 座ったまま足首を回す | エレベーターを1階分だけ階段にする |
食事 | 食事にミニトマト3個足す | 1日1杯だけ甘い飲み物を水かお茶にする |
ストレス対策 | 1日1回、意識して息を吐く | 好きな曲のサビだけ聴く、5分ボーっとする |
そして余裕ができたら、お酒が果たしていた「落ち着く」「気晴らし」の役割を、他の健全な方法で代替できないか探してみましょう。ベビーステップと同じように「これならできるかも?」というものをリストアップすることで、あなたに合った方法が見つけやすくなります。
あなたの「ホッとできること」リスト(例)
カテゴリ | 具体例 |
---|---|
体を軽く動かす | 5分だけ散歩、ストレッチ、好きな曲で踊る、その場で足踏み |
五感でリラックス | 温かいお風呂、好きな香りのアロマ、肌触りの良い服、温かい飲み物、音楽鑑賞 |
没頭・気分転換 | 短い読書、簡単なゲーム、動画視聴、ペットと遊ぶ、軽い片付け、料理 |
クールダウン | 深呼吸、窓を開けて外の空気を吸う、冷たい水で顔を洗う、瞑想アプリ |
誰かと繋がる | 友達にLINE、家族に電話、SNSで交流(短時間で) |
カテゴリ | 具体例 |
---|---|
体を軽く動かす | 5分だけ散歩、ストレッチ、好きな曲で踊る、その場で足踏み |
五感でリラックス | 温かいお風呂、好きな香りのアロマ、肌触りの良い服、温かい飲み物、音楽鑑賞 |
没頭・気分転換 | 短い読書、簡単なゲーム、動画視聴、ペットと遊ぶ、軽い片付け、料理 |
クールダウン | 深呼吸、窓を開けて外の空気を吸う、冷たい水で顔を洗う、瞑想アプリ |
誰かと繋がる | 友達にLINE、家族に電話、SNSで交流(短時間で) |
大切なこと
できなくても自分を責めないこと。挑戦しただけで素晴らしい!少しでもできたら、自分をたくさん褒めてあげてください。
よくある質問(Q&A)
最後にADHDとアルコールの疑問について、ポイントを絞ってお答えします。
-
急に飲みたくなったらどうすれば?
強い飲酒欲求は一時的。「波が過ぎるのを待つ」と意識し、気を紛らわす行動(場所を変える、冷たい水を飲む、軽い運動、誰かに連絡など)を試しましょう。事前に「お守りリスト」を作っておくことが大切です。
-
お酒をやめると離脱症状(イライラ・不眠など)は出る?
長期間・大量に飲んでいた場合、離脱症状が出る可能性があります。重い症状が出る場合もあるので、急な断酒にはリスクが伴うことを理解しておきましょう。不安な時は医師に相談してください。
-
アルコール依存症の自助グループってどんな感じ?ADHDでも大丈夫?
アルコール依存症の自助グループは、同じ悩みを持つ人が匿名で集まり体験を語り合う場です。ADHDの有無は関係なく参加可能で、「一人じゃない」と感じられ、回復のヒントも得られるでしょう。気になる方は見学やオンライン参加から試してみるのがオススメです。
-
薬以外でできることは?
環境調整(忘れ物防止など)、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、カウンセリングなど、薬以外でできることはたくさんあります。これらを組み合わせることで、ADHDによる困りごとを減らせれば、仕事や日常生活のストレスも減少して飲酒欲求をコントロールしやすくなります。
SSTについては、以下の記事でも詳しく解説しております。
まとめ:お酒に頼らず「ホッとできる時間」を目指して
- お酒を飲むと、脳内の「ごほうび回路」と「ブレーキ役」が活発になり一時的に落ち着く一方で、リスクも伴う。
- ADHDの人はお酒への依存リスクが高く、衝動性の悪化や心の不調を招きやすい。薬の効果も不安定になり、将来的に集中力や注意力が低下する可能性が高まる。
- 変えたくなったら、現状をチェックして専門医に相談する。
- 悩みは誰かに話してみる。ADHD治療やセルフケアは完璧でなくてもOK。「これならできるかも」から始め、自分を褒めることが大切。
今回の記事では、ADHDとお酒の関係、リスク、そしてお酒に頼らないためのヒントをお伝えしました。
ADHDの方は、アルコール依存症になりやすい傾向があります。もし今、お酒との付き合い方に悩んでいても、自分を責めないでください。「現状を変えたい」と思えたことは、素晴らしい一歩です。
焦らずほんの少し勇気を出して、小さなアクションを起こしてみてください。それが、あなたがもっと楽に、あなたらしく生きていくための大きな力になるはずです。
また、アルコール依存に限らず、ADHDの方は何かに依存しやすい傾向にありますが、中でもギャンブル関係は、アルコール依存と同じく解決すべき課題の1つとされています。
以下の記事でも詳しく解説しておりますので、併せて読むことをオススメします。
あなたらしい、穏やかで心地よい時間が増えることを応援しています。
なお、社会復帰を目指しているものの「ひとりでは改善が難しい」と感じている方には、「atGPジョブトレ 発達障害者コース」のような就労移行支援事業所の利用もおすすめです。
就労支援の一環として生活支援も行っているので、あなたのADHDとアルコールに関する問題についても、相談することで適切なアドバイスをもらうことができます。
障害者手帳がなくても、医師の診断書や自治体の判断などがあれば利用可能です。就労がまだ遠いという場合でも、生活支援目的でのご利用から始められます。無料で見学もできるので、気になる方はぜひ一度、確認してみましょう。