「家族にだけキレてしまうのは病気なの?穏やかだった頃の家族に戻りたい…」
この記事にたどり着いたあなたは、このような悩みや疑問を抱えてはいませんか?
家族とは、多くの方にとって心の支えとなる存在ですよね。しかし、本来は「団らんの場」「安らぎの場」となるはずの家庭に対して、ストレスを感じている方は決して珍しくありません。
家族にだけキレてしまう背景にはさまざまな要因が考えられるため、一概に病気とまとめることはできません。一方で、その原因は「大人のADHD」にある可能性が考えられます。
- ADHDの方がキレやすい理由
- ADHDの方が家族にだけキレる原因
- 家族にキレないようにする方法
について解説していきます。
今回の記事が、「自分がキレてしまうせいで家族関係が悪い…」とお悩みの方の一助となれば幸いです。
大人のADHDとは?キレやすい3つの理由
ADHDとは、「注意欠如・多動症」とも呼ばれている発達障害の1つです。ADHDは生まれつきの脳機能の発達に偏りがあることで発生する障がいであり、病気ではありません。
ADHDの代表的な特性には下記の3つがあります。
- 集中力を持続させられずケアレスミスを誘発しやすい「不注意傾向」
- 落ち着きがない、感情や欲求が変化しやすいなどの「多動性」
- 思い立ったことをすぐに行動に移してしまう「衝動性」
ADHDは生まれつきの障がいであるため、幼少期に診断されることが一般的です。
一方で、本人が大人になってから「仕事でミスが目立つ」「遅刻が多い」「キレやすい」などの困りごとに直面して、病院を受診したらADHDと診断されたというケースも数多くあります。大人になってから診断を受けるという特徴から、こちらのケースは「大人のADHD」と呼ばれているのです。
ADHDの特性は人によってさまざまですが、「多動性」と「衝動性」の傾向が強い方は感情のコントロールを苦手とする傾向があります。
次の項目では、ADHDとキレやすいことの因果関係について詳しく解説していきます。
前頭葉の働きが弱い
ADHDは未解明な部分が多い障がいですが、ADHDの方の多くは脳の前頭葉の働きが弱いと考えられています。前頭葉は「注意力・集中力の維持」「感情のコントロール」「行動の制御」などの機能を持っています。
そのため、前頭葉の働きが弱ければ些細なことでも怒りの感情が湧いてしまい、上手く感情の切り替えができないことで怒りが持続しやすくなります。頭ではキレてはいけないと理解していても感情の処理が追い付かず、衝動的に怒鳴ったり暴言を吐いたりといった行動に移りやすいのです。
セロトニン不足でストレスを感じやすい
ADHDの方は、セロトニンという精神を安定させたり心身をリラックスさせたりする神経伝達物質の分泌量が、生まれつき少ないという研究結果があります。セロトニンが不足している状態では喜びや幸福を感じにくくなる一方で、怒りや不安を感じやすくなるため慢性的なストレスに悩まされてしまう原因となってしまいます。
私たちの体はストレスを感じると交感神経の働きが高まり心身が興奮状態に入るため、思考力や感情・行動の制御力が低下します。そのため、ADHDの方はイライラしやすくキレやすい傾向があるのです。
過去の嫌な記憶を忘れられない
ADHDの方は、過去の出来事を感情と結びつけて記憶しやすい特性があります。ネガティブな感情から影響を受けやすいADHDの方は、怒りや悲しみを感じると嫌な記憶がフラッシュバックして何度も思い出してしまうことがあるため、嫌な記憶を忘れることが難しいのです。
嫌な記憶を忘れられなければ自己肯定感が低下してストレスを受け続けるため、精神状態が不安定になります。その記憶にトラウマがあると、類似した状況を回避したいという心理が働いて衝動的にキレてしまうことがあるのです。
ADHDの方が家族にだけキレる原因3選
ADHDの方が家族にだけキレてしまう背景には、「腹が立つ」という感情の他にも「過去の経験」「苦しみ・辛さ」「家族だからこそ感じる特別な感情」など、さまざまな原因が考えられます。
次の項目では、ADHDの方が家族にキレやすくなってしまう原因を考えていきましょう。
アダルトチルドレンの問題
アダルトチルドレンとは、両親のアルコール依存・虐待・育児放棄などの問題を抱えた家庭で育ったことにより、大人になっても心に傷を負い続けている方の総称です。
ADHDは遺伝する障がいと考えられているため、「ADHDの方は両親もADHDである」というケースは珍しくありません。先述の通りADHDの方はストレスに弱くキレやすい傾向があるため、ADHDとアダルトチルドレンの間には密接な因果関係があります。
アダルトチルドレンの方は、両親から十分な教育や愛情を受けずに育てられたり、家族や家庭にトラウマを抱えていたりすることが多くあります。そのため、自身がADHDでありアダルトチルドレンでもあるという方は、「家族への接し方や愛し方がわからない」「家族といるとストレスを感じてしまう」などの理由から、家族に対してだけキレてしまう原因となるのです。
家族といると安心しすぎてしまう
ADHDの方は、仕事や他人との関わりの中で障がいの特性をコントロールするよう努力しなければいけない場面が多いため、社会生活でストレスを抱えやすい傾向があります。一方で、安心できる家族の前ではADHDの特性を制御しきれず、本当の自分の感情を素直に表に出しやすくなるのです。
ADHDの方は社会生活のストレスから、安心できる居場所である家族に依存しやすいと考えられています。「家族は自分のことを理解してくれる・受け入れてくれる」という信頼感や安心感が、ADHDの方の感情の起伏を大きくさせてしまいます。
つまり、「家族」という特別な関係の中にADHDの方がキレてしまう原因があるのです。
家族に自分の弱い姿を見せたくない
ADHDの方は、障がいの特性から「ミスが多い」「対人関係が苦手」などの失敗や困難を経験することが多いため、「自分は能力が低い人間」と考えてしまい自己肯定感が低下しやすい傾向があります。自己肯定感が低下している状態では、他者の些細な意見や言動でも否定的に受け止めてしまい心が傷つきやすくなるものです。
そのため、家族に対して「劣等感を感じている」「弱い姿を見せたくない」という方ほど、キレることで自分の本音を隠そうとしてしまいます。家族間で本音のコミュニケーションが取れていない場合、気持ちが繊細な方や家族を大切にしている方ほどキレやすくなってしまうのです。
ADHDの方が家族にキレないようにする方法3選
キレることは、自分の意志を相手に明確に伝えられたり気持ちの整理ができたりというメリットもあるため、必ずしも悪いことではありません。一方で、些細なことで何度もキレてしまうと、家庭内の穏やかな空気を壊してしまうことがあります。キレる自分を制御できないことに嫌悪感を抱えてしまいますよね。
次の項目では、ADHDの方にオススメしたい、家族にキレないようにする方法を3つ紹介していきます。
キレずに6秒間我慢する
キレそうになったら6秒間我慢するというのは、アンガーマネジメントの中でも実践しやすく高い効果が得られる方法です。
私たちの体はキレる直前にアドレナリンというホルモンが分泌されて戦闘態勢に入ります。この瞬間にキレてしまうと、頭が真っ白になり怒りが爆発しやすくなるのです。ですが、一度戦闘態勢に入っても6秒間キレずに我慢できれば怒りのピークは過ぎ去ることが分かっています。
相手に反論がある場合、「時計の秒針を眺める」「指を折って6まで数える」などのマイルールを決めておくだけでも、衝動的にキレてしまう事態は回避しやすくなります。
キレたい相手から距離を取る
先述している「キレずに6秒間我慢する」方法も、目の前の家族から不満そうな顔で文句を言われ続けるような状況では、十分な効果を発揮しなさそうですよね。
そのような時に効果的なのが「キレる原因から距離を取る」という方法です。
家族にキレそうになった時、一時的に「自室に行く」「トイレに行く」「外出する」などの行動を取って、キレたい相手から距離を置くようにしましょう。キレたい相手を視界から消すことで、絶対にキレることができない状況を作り出します。
冷静な頭で「キレたい原因」について分析できれば、理性で怒りをコントロールしやすくなるのです。
朝に散歩をする
朝に散歩をすることはセロトニンの分泌を促進させるため、キレる原因となりやすいストレスの発散に繋がります。
朝の日光浴には「体内時計を整える」「免疫力の向上」などの効果があると知られており、生活習慣の改善に効果的です。また、散歩のような適度な運動は「基礎代謝の向上」も期待できます。
朝の散歩は、起床してから1時間以内に15分~30分程度行うのが最も効果的です。
朝の散歩は、ADHDの方が二次障害として併発しやすいうつ病などの精神疾患の予防・改善にも効果があるため、多くの精神科医から推奨されているモーニングルーティーンです。週1~2回の実践でもストレスの解消に繋がるため、気軽に始めてみると良いでしょう。
「キレやすさ」をどうしても治せないなら専門医に相談しよう
先述の通り、ADHDの方は障がいの特性から感情のコントロールを苦手としている傾向があります。そのため、さまざまなアンガーマネジントやストレス解消法を試しても、家族にキレてしまうことを改善できない可能性があります。
このような時は、精神科や心療内科の専門医に相談することが大切です。
ADHDの方が家族にだけキレてしまう状態を改善するには、
- ADHDの特性を和らげるための薬物療法
- カウンセリングを通じた行動療法
- ADHDの特性について家族の理解を促進させる
など、適切な治療と支援を受けることが一番の近道です。
また、家族にキレてしまう原因はADHD以外にも、
- パーソナリティ障害
- 更年期障害
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
などの障がいや病気が関わっているケースが考えられます。
「自分でも原因がわからないけれど、家族にキレるのを抑えられない」
あなたがこのような状況で悩みを抱えている場合は、専門医に相談しましょう。
まとめ|家族にだけキレる原因と解決方法
- ADHDで「多動性」「衝動性」の特性が強い方は感情のコントロールを苦手としやすく、「前頭葉の働きが弱い」「セロトニンが不足しやすい」「嫌な記憶がフラッシュバックしやすい」などのADHDの特性がキレやすさと関係している。
- 「アダルトチルドレンである」など、過去の家族関係の問題や、「家族といると安心できる」「家族の前では強くありたい」などの家族へ抱く特有の感情が、家族にだけキレてしまう原因となることがある。
- キレそうになったら「6秒間我慢する」「キレたい相手から距離を取る」などのアンガーマネジメントの他、「朝の散歩」などのストレスを発散する習慣がキレることの防止には効果的。
- 家族に対してキレることが治らない場合、精神科や心療内科を受診して専門医に相談することが大切。
ADHDは障がいであるため、キレやすさを自覚していても特性をコントロールすることは難しい可能性があります。また、家族に対してキレてしまうからと言って必ずしもADHDに原因があるとは限りません。
ADHDの特性を理解したり家族にだけキレる原因を探したりすることは大切ですが、少しでも辛いと感じたら専門医に相談して適切な治療と支援を受けましょう。