「公務員は安定しているはずなのに、なぜかうつ病になる人が多い……」
そんな不安や疑問を抱えていませんか?
安定した職業というイメージとは裏腹に、いま地方公務員の間でうつ病を発症する人が増えています。特に、市役所や区役所などで働く方々は、住民対応・長時間労働・複雑な人間関係といった要因が重なり、知らず知らずのうちに心の負担を感じやすい環境に置かれているのが実情です。
現役の地方公務員やそのご家族に向けて、
- 地方公務員で増加する、うつ病の休職者の実態と原因
- うつ病の予防法
- 公務員がうつ病になったときの対応
- 公務員がうつ病で休職するときに使える制度と支援
- うつ病からの復職方法と役に立つ支援
以上の点を分かりやすく解説します。
「最近つらい」「職場に相談しづらい」「このまま働き続けられるか不安」―― そんな思いを少しでも軽くし、明日へ踏み出すために、ぜひ最後までお読みください。
地方公務員はうつ病が多い?増加する休職者の実態

「安定している」と思われがちな地方公務員ですが、実際はメンタル不調に悩む人も少なくありません。最新の調査データをもとに、地方公務員におけるうつ病の現状と背景を、調査結果をもとに詳しく解説します。
メンタル不調による休職者の推移
地方公務員のメンタル不調は、他の労働者よりも高い傾向があると言われています。
実際に、メンタル不調による休職者が、10年以上前よりも2倍近くにまで増加していることからも、地方公務員の間でメンタルヘルスの問題が深刻化し、うつ病を含む精神疾患の発症率が高まっている実態を示しています。
地方公務員の負担が大きい理由|国家公務員との違い
地方公務員のメンタル不調は、他業種や国家公務員と比較しても同程度かそれ以上と指摘されることもあります。その背景には、国家公務員とは異なる地方公務員特有の事情が関係しています。
具体的には、以下のような点が挙げられます。
- 幅広い住民対応
地域住民と直接関わる場面が多く、多様な相談やクレームへの対応が精神的ストレスに直結しやすい。 - 責任の重さ
業務が住民の生活に密着しているため、一つひとつの仕事に対する責任が重くのしかかる。 - 自治体ごとの格差
人員配置や業務量は自治体によって異なり、特定の職場に負担が集中しやすい。
このように、民間企業や国家公務員とも違う、独自の業務負荷が地方公務員のメンタルヘルスに影響を与えているのです。職種を問わずメンタルヘルスの重要性が叫ばれている昨今、地方公務員における対策は急務となっています。
地方公務員にうつ病が多い4つの原因とは?

地方公務員にうつ病が多い理由には、職場の環境や事務の特徴が大きく影響しています。ここでは、具体的にどのような要因がメンタルヘルスに負担をかけているのかを解説します。
長時間労働や業務の多様化による負担
「公務員は定時で帰れる」というイメージとは裏腹に、多くの地方公務員が長時間労働に苦しんでいます。
人員が限られているにもかかわらず、社会の変化に伴って業務内容は増え続け、1人当たりの負担が重くなるばかり。その結果として、うつ病のリスクが高まっているのです。
恒常的な残業や休日出勤が当たり前になっており、こうした過剰な労働が慢性的な疲労やストレスを蓄積させています。
職場の人間関係や上下関係の影響
地方公務員が抱えるもう一つの大きな問題が、職場の人間関係からくるストレスです。
特に、年功序列や階級意識(ヒエラルキー)が強く残る公務員の組織文化は、風通しが悪くなりがちで、「何かあっても相談しにくい」という環境を生んでいます。「上司の言うことは絶対」「波風を立てたくない」といった空気が、結果的に多くの職員を追い込み、ストレスの大きな一因となっています。
業務の責任感とプレッシャー
地方公務員の仕事は住民の生活に直結するものが多く、「絶対に失敗は許されない」という強いプレッシャーが常に伴います。たった一つのミスが、住民の生活に大きな影響を与えかねないため、業務への責任感は自然と強くなり、精神的な負担を増幅させるのです。
実際に、ささいなミスや住民からの苦情への対応が引き金となり、うつ病を発症する公務員が少なくないことが見受けられます。公共サービスを支えるという仕事の重大さが、心理的なストレスを増幅させているのです。
「弱音を吐けない」閉鎖的な組織文化
公務員の組織には、問題を内々で処理しようとする、閉鎖的な文化が根強く残っている場合があります。
- 「税金で働いているのだから頑張らなければならない」という無言のプレッシャー
- 「弱音を吐くべきではない」といった価値観
これらがメンタルヘルスに問題を抱えていても、それを周囲に相談しづらい状況を作り出しているのです。公務員の組織的文化が、問題の早期発見と適切な対処を難しくしています。
うつ病の予防法3選|セルフケアと働き方の工夫

地方公務員として働く中で、うつ病を防ぐためには、日頃の小さな意識や習慣が大きな差につながります。
ここでは、ストレスの兆候に早めに気づき、自分自身をケアするための具体的な方法をご紹介します。
ストレスサインに早めに気づく
うつ病の予防には、自分の心と体の変化にいち早く気づくことが重要です。日常生活の中で次のような変化が見られたら、心の疲労が蓄積しているサインかもしれません。
- 睡眠の変化:寝付けない、夜中に目が覚める、寝ても疲れが取れない
- 食欲の変化:食べられない、過食傾向など
- 感情の変化:気分の落ち込みや焦り、イライラが続く
- 身体の変化:常にだるい、頭痛や腹痛が続く
- 思考の変化:ミスや物忘れが増え、集中力が低下している
一つでも当てはまる状態が続く場合は、決して無理をせず、産業医や保健師などに早めに相談しましょう。
セルフケアと働き方を見直す
うつ病のリスクを下げるためには、意識的に心と体を休ませ、ストレスを溜め込まない工夫が必要です。ここでは、「日常生活」と「働き方」の両面で今日からすぐに実践できるセルフケアをご紹介します。
日常生活でできるセルフケア
- 睡眠・食事・運動など規則正しい生活リズムを保つ
- 趣味やリラックスできる時間を意識的に作る
- 深呼吸やストレッチ、散歩などでこまめに気分転換する
働き方の見直しポイント
- 残業を減らし、業務時間を管理する意識を持つ
- こまめに休憩を取り、集中力をリセットする
- 仕事とプライベートを明確に切り分けるように心がける
このような工夫を積み重ねることで、日々のストレスに強い心身を維持することができます。
一人で抱え込まない意識を持つ
メンタルの不調を感じたとき、責任感の強い人ほど、「自分さえ頑張れば」「周りには迷惑かけられない」と、一人で抱え込んでしまいがちです。
しかし、その優しさが、かえって自分自身を追い詰めてしまうこともあります。
気持ちの負担が大きくなる前に、信頼できる家族や友人、同僚に「ちょっと話を聞いてほしい」と打ち明けてみましょう。また、日常的にコミュニケーションを取る習慣を持っておくことで、困ったときにも相談しやすくなります。
公務員がうつ病になったときの対応|診断・休職・配置転換も含めて解説

前章では、うつ病を予防するためのセルフケアやストレスへの気づき方など、日常的にできる取り組みを紹介しました。しかし、どれだけ注意していても、心身の不調が重なり、うつ病を発症してしまうことはあります。
ここでは、うつ病と診断されたあとに地方公務員として取れる選択肢や制度の具体的な使い方、職場や生活との向き合い方について、具体的に解説していきます。
医療機関を受診する
体調不良が長引く、意欲が出ない、眠れないといった症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。専門医による診断は、支援制度の利用や職場への対応を進めるうえでの出発点となります。
まずは、以下の点を押さえておきましょう。
- 医師による診断が、制度利用や職場調整の前提になる
- 「一時的な疲れ」と放置せず、早めに心療内科や精神科を受診する
- 診断書があれば、休職や、勤務調整の申告が可能になる
つらい気持ちを一人で抱えず、まずは専門家の力を借りることが、回復への第一歩です。
心療内科と精神科については、以下の記事でも詳しく解説しております。
休職制度を活用して心身を回復させる
うつ病と診断された際は、無理を続けるよりも一度立ち止まり、休養を取ることが重要です。
地方公務員には、法律に基づく休職制度が整っており、安心して治療に専念できる環境が用意されています。
ポイント
- 診断書を提出することで、一定期間の休職が認められる
- 条件に応じて、休職中も給与の一部や療養手当が支給される場合がある
- 制度の詳細は自治体ごとに異なるため、事前の確認が必要
復職・配置転換・転職の選択肢を検討する
症状が落ち着いた後は、職場復帰や働き方の見直しを検討する時期です。職場環境が原因と考えられる場合には、配置転換や転職といった道も視野に入れることができます。
ポイント
- 復職:段階的な勤務(短時間・軽作業など)での再開が可能なケースもある
- 配置転換:精神的負担の少ない部署への異動を申し出られる自治体もある
- 転職:抜本的に環境を変える方法だが、公務員の立場上、手続きや制限に注意が必要
どの選択をするにせよ、大切なのは「無理をしない」と決めることです。
通院や服薬を自己判断でやめない、自分の心身の状態を日々チェックするなど、復帰後もセルフケアを続ける意識が、あなた自身を守ることに繋がります。
うつ病からの復職などについては、以下の記事でも詳しく解説しております。
公務員がうつ病で休職するときに使える制度と支援
うつ病と診断され、「しばらく仕事を休んで治療に専念したい」と思っても、制度の内容や手続きの流れが分からず、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。ここでは、地方公務員がうつ病で、休職する際に使える制度と、実際に利用するためのポイントについて分かりやすく解説します。
病気休暇・休職制度
うつ病と診断され、「しばらく仕事を休んで治療に専念したい」と思っても、制度の内容や手続きの流れが分からず不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
地方公務員には、治療に専念するための制度が整備されており、医師の診断書をもとに「病気休暇(通常90日以内)」を取得することができます。病気休暇の期間を超えて治療が必要な場合は、「病気休職(最長3年)」に移行可能です。休職中も給与の一部や手当が支給され、経済的な負担を軽減しながら治療に専念できます。
制度を利用したいときは、まず職場の人事課や健康管理部門に相談するのが一般的です。自治体ごとに手続きの流れや必要書類に違いがあるため、具体的な手順は職場で確認しましょう。診断書の提出が必要になるケースも多く、「どこから相談すればよいかわからない」と感じた場合は、信頼できる上司への相談も選択肢の一つです。
制度を利用することは、自分自身の心と体を守る大切な選択です。「周囲に迷惑をかけるのでは…」と遠慮せずに、安心して支援を受けるようにしましょう。
公務災害補償制度
もし、うつ病の原因が明らかに職場のストレスや長時間労働、人間関係にあると感じる場合は、「公務災害補償制度」が利用できる可能性もあります。これは、公務が原因で心身の不調が起きたと認められた場合に、治療費の補償や手当が支給される制度です。
公災に認定されると、以下のようなメリットがあります。
- 療養費の補償:治療にかかる費用が補償される
- 休業補償:休職中の手当がより手厚くなる場合がある
- 職場復帰への配慮:職場側も、より手厚い復帰支援を行う義務が生じる
ただし、申請には医師の診断書に加え、業務と病気の因果関係を証明する客観的な証拠(勤務記録、メール履歴、業務の内容の記録など)が必要です。
精神疾患の公務災害認定は、勤務実態の証明や業務との因果関係の立証が必要なため、認定までに時間を要する場合がありますので、早い段階で人事担当や労働組合に相談することをおすすめします。
復職を目指すときに知っておきたい支援とステップ

休職を経て、体調が少しずつ回復してきたとき、「仕事に戻れるだろうか」「また悪化しないか」と不安になることは自然なことです。
ここでは、地方公務員として復職を目指す際に活用できるサポートや、スムーズに職場に戻るための準備についてご紹介します。
段階的な復職で、少しずつリズムを取り戻す
復職といっても、いきなりフルタイムで元通りの働き方をする必要はありません。多くの自治体では、短時間勤務から初めて、徐々に通常勤務へと慣らしていく「段階的な復職制度」が設けられています。
復帰の前には、主治医や産業医との面談を行い、復職可能と判断される必要があります。本人の状態に応じて、業務内容を調整したり、残業の免除など、個別に配慮されることもあります。 無理せず、自分のペースで戻ることが大切です。
リワーク支援を活用して、不安を軽くする
一部の自治体では、医療機関や外部支援機関と連携して「リワーク支援(復職支援プログラム)」を実施しています。
これは、生活リズムの立て直しや、軽い作業を通じた「働く練習」などを行うもので、「本当に戻れるか不安…」という方にとって心強いサポートです。リワークを利用することで、自信をもって職場に復帰できたという声も多く聞かれます。プログラムの内容や利用方法は自治体や連携先によって異なるため、詳しくは担当部署に確認してみましょう。
ただし、すべての自治体でリワーク制度が整っているとは限りません。利用できない場合は、近隣の精神科リワークプログラムなどの活用も選択肢となります。
リワーク支援については、以下の記事でも詳しく解説しております。
復職後も「無理をしない」姿勢が大切
無事に職場に復帰できた後も、再発を防ぐためには無理をしないことが何より大切です。復帰直後は、周囲との関わりや業務の進め方に不安を感じることもあるかもしれませんが、まずは「休職前と同じようにできなくてもいい」と自分を許してあげましょう。
定期的に産業医との面談を受けたり、カウンセリングを利用するなど、復職後も継続的にサポートが受けられる体制を整えている自治体もあります。
気になることがあれば早めに相談し、必要な配慮を受けながら、少しずつ職場に慣れていくことが大切です。
まとめ
- 地方公務員のうつ病による休職者は年々増加しており、深刻な課題となっている
- 長時間労働や住民対応、人間関係など、地方公務員特有の職場環境がうつ病の原因となっている
- ストレスサインに早く気づき、日常生活や働き方を見直すことが予防の第一歩
- 症状が現れたら、自己判断せず医療機関を受診し、休職制度や支援制度を活用してしっかりと休養する
- 復職に向けては、段階的な勤務再開やリワーク支援を活用し、無理なく職場復帰を目指すことが重要
地方公務員として働く皆さんが、心の健康を守りながら安心して業務に取り組めるよう、早めの気づきと適切なサポートの活用が何より大切です。
ひとりで抱え込まず、周囲や制度を頼りながら、自分らしい働き方を見つけていきましょう。心のケアは決して後回しにせず、あなたの笑顔と健康を守るための最優先事項です。


