
「周りの人がみんな、私を悪く言っている気がする」
「誰も信じられない…もう、本当に疲れた…」
などを思ったことはありませんか?
もし今、あなたがそんな息苦しさや深い孤独を感じているとしても、あなたの性格に原因があるとは限りません。うつ病のような病気が、一時的にあなたの世界の見え方を変えてしまっている可能性があります。
- みんなが敵に見えてしまう理由
- どうすれば安心感を取り戻せる?
- 味方を探す方法
- 1人でもできることはある?
などを解説します。
この記事が息苦しさを少しでも軽くする役に立てば幸いです。
「みんなが敵に見える」はうつ病による心のSOS?
「みんな、私を避けているように感じる…」
そんな風に感じてしまうと、心が孤立してしまい、本当につらく苦しいでしょう。でも、どうか「自分だけがおかしい」と思い詰めないでください。
その感覚は、自分だけが感じているのではなく、うつ病という病気が引き起こしている、心のSOSかもしれません。
うつ病になると、世界の見え方が変わることがある
「誰も信じられない」
「みんなが私を悪く言っているように聞こえる…」
など、このような強い不信感や恐怖心は、うつ病の症状として表れることがあります。
理由として、うつ病は、単に気分が落ち込むだけでなく、物事の受け取り方や考え方(認知)にも影響を与えます。
まるで、少し色のついたメガネを無意識のうちにかけさせられたように、他の人の何気ない言葉や態度が、自分への悪意や批判のように感じやすくなってしまうことがあります。
うつ病のサインは気分の落ち込みだけではない
うつ病のサインと聞くと、多くの方が気分の落ち込みや、「何もする気が起きない」などといった意欲の低下を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、うつ病のサインはそれだけではありません。
- 人に対して過敏になり、ささいなことで傷つきやすくなる
- 誰も信じられなくなり、強い不信感を抱く
- 集中力が続かない、物忘れが多くなる
- 夜なかなか寝付けない、または寝てもすぐに目が覚めてしまう
- 食事が美味しく感じられない、または逆に過剰に食べてしまう
など、うつ病は心だけでなく、考え方や行動、体の感覚など、生活のさまざまな面に影響が表れることがあります。
「みんなが敵に見える」のはうつ病だけではない
「みんなが敵に見える」という状態は、うつ病でよく見られるものですが、他の精神疾患等によって影響が出ている場合があります。また、過去の出来事など、人間不信の原因となる出来事があり、その結果として「人を信じられない」状態になることもあります。
自己判断せず、まずは専門医に相談し、何が原因なのか見極めることが大切です。原因がわかれば、カウンセリングや投薬治療など、改善に向けた方針を立てることができます。
「本来の自分らしい見え方」は取り戻せる?
「みんなが敵に見える」という苦しい世界の見え方が永遠に続くわけではないと信じたいですよね。
もし、それがうつ病によって一時的にかかっている「色のついたメガネ」だとしたら、適切な治療や対処法によって、少しずつそのメガネを外し、本来のあなたらしい見え方を取り戻せる可能性があります。
この項目では、どうすれば少し歪んでしまった見え方を調整し、安心感や人への信頼感を少しでも取り戻せるのか、具体的な治療法や、その先に期待できるかもしれない小さな希望についてお伝えします。
「本当に良くなるの…?」という不安な気持ちは、あって当然です。焦らず、あなたのペースで進めていきましょう。
薬の力を借りて心のバランスを少しずつ整える
うつ病の治療として、医師の判断のもと、抗うつ剤や睡眠導入剤などの服薬治療を行う場合があります。
これは、うつ病によってバランスが少し崩れてしまった脳の中で、心や体の働きを調整する神経伝達物質の働きを整え、気分の落ち込みや不安感、過敏になっている心を和らげることを目的としています。
定期的な服薬によって心の土台が少し安定すると、これまでどうしてもネガティブに捉えがちだった物事が、少し穏やかに、そして客観的に受け止められるようになるでしょう。
もちろん、お薬には副作用もあるため、心配に感じる方もいるでしょう。治療に使われる抗うつ剤などは使用すると副作用が出る場合もありますが、一時的なものが多いです。
また、依存性について心配される場合もあるかもしれませんが、医師の指示通りに時間や使用量を守って服用すれば強い依存性が出ることは稀です。薬は、つらい症状を和らげる助けになります。
もし不安や疑問があったときは、小さなものでも遠慮なく医師に伝えましょう。よく相談しながら、あなたに合った方法を一緒に見つけていくことが何よりも大切です。
考え方のクセと向き合ってみる
「認知行動療法」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは、ご自身を責めたり、物事を一方的に悪く考えすぎたりする、知らず知らずのうちに身についた「考え方のクセ」に気づき、それを少しずつ、よりしなやかで楽なものに変えていくお手伝いをする心理療法です。
「みんなが敵に見える」という感覚も、そうした無意識の「考え方のクセ」が影響している可能性があります。カウンセラーとの対話を通して、「どんなときにそう感じやすいのか?」「もしかしたら、他の見方もできる?」と、探ってみましょう。
自分を追い詰めるのではなく、自分を少し楽にする考え方を見つけるための、練習のようなものなので、すぐに変わらなくても大丈夫です。ゆっくりと進めていきましょう。
治療にかかる時間
うつ病に限らず、心の病気の治療には時間がかかります。期間は人によってそれぞれですが、数か月から年単位で考えるのが一般的です。
時間はかかりますが、焦らず治療を進めていけば、少しずつではありますが症状は和らいでいきます。
不安な気持ちも良しに伝え、あきらめずに進めていきましょう。
ただし、うつ病は再発の可能性がある病気です。良くなったと思っても薬などを急にやめたりせず、無理のない範囲で生活習慣を整えるなど、再発予防を心がけましょう。
治療を続ければ自分の「見え方」が変わるかも
適切な治療を続け、心の状態が少しずつ落ち着いてくると、「みんなが敵に見える」という強い緊張感や恐怖心も、和らいでいくことがあります。それは、周りの人が急に優しくなったり、これまで敵だと感じていた人が突然味方に変わったりする、ということではありません。
むしろ、あなたの心の状態が変化することで、以前は脅威に感じていた他の人の言動が、それほど気にならなくなる、あるいは「もしかしたら、悪気があったわけではないのかもしれない」と、違う角度から受け取れるようになる、という形で変わる可能性があります。
あなたのことを本当に気にかけてくれている人がいることに、ふと気づく瞬間が訪れるかもしれません。そのとき「ありがとう」が言えたら、良いと思いませんか?
自分の味方になるかもしれない、医師・病院の選び方
うつ病の治療は、信頼できる専門家と一緒に、二人三脚で進めていくことが、回復への近道となります。「みんなが敵に見える」と感じているときだからこそ、「この人になら、少しは話せるかもしれない」と思える医師との出会いは、何よりも心強く感じるでしょう。
「誰も信じられないのに、お医者さんなんて…」
などのように感じる気持ちも、とてもよく分かります。
信頼できる医師に巡り合うのは、簡単なことではないかもしれません。それでも、少しでも自分に合ったサポートを探してみませんか?
まず「自分の話を聞いてくれるか」を大切に
まずは何よりも「この先生は、私の話をちゃんと聞いてくれそうかな?」という点を、大切にしてみましょう。
うつ病の治療経験が豊富で、あなたのつらい症状に深い理解のある医師や医療機関を選ぶことは、安心への大切な第一歩です。医療機関のウェブサイトで医師の経歴や専門分野を確認したり、うつ病の治療プログラム(例えば、認知行動療法など)があるかどうかを調べてみたりするのも1つの方法でしょう。
しかし、情報が多すぎて、かえって混乱してしまうこともあるのではないでしょうか。
迷ったときは「みんなが敵に見える」といった、言葉にしにくい特有の苦しみにも、じっくりと耳を傾け、あなたに合った治療法を一緒に考えてくれそうな先生を選んでみましょう。
相性の良い医師を選ぶための3つのポイント
治療を無理なく、そして効果的に続けていくうえで、医師に対する「話しやすさ」や「安心感」は、本当に大切です。
「みんなが敵に見える」という、とてもデリケートでつらい悩みを打ち明け、納得して治療を進めていくためには、あなたが「この人になら、少しは頼れるかもしれない…」と、ほんの少しでも思える医師であることが、何よりも重要です。初診の際に、「なんだか、ちょっと違うな…」と感じたら、無理に我慢し続ける必要はありません。
- あなたの不安や疑問を、急かさずに最後まで聞いてくれるか
- 分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれるか
- 威圧的な態度がなく、あなたが安心して心の内を、少しでも話せる相手かどうか
これらを意識して、自分に合った医師を探してみると良いでしょう。
医師に伝えること
初めて病院を受診した場合、病院を受診した理由、現在の困りごとは何かを質問されます。
どう答えればいいか不安になると思いますが、正直に「みんなが敵に見える」と話して大丈夫です。医師はそのような症状がある事を理解しています。むしろ、正直に話すことが適切な診断と治療への第一歩となります。安心して話してみましょう。医師はあなたの味方です。
病院に行く前に:心の余裕があればやっておきたいこと
初めて精神科や心療内科を受診するときは、誰でも緊張します。また、頭が真っ白になってしまって、一番伝えたかったことを言いそびれてしまった…ということも、よくあるでしょう。
もし、ほんの少しだけでも気持ちに余裕があれば、
- 「みんなが敵に見える」と、いつ頃から感じているか
- どんなときに、特に辛く感じるか
- 日常生活で、他に困っていることはないか
などを、箇条書きでもいいので、簡単なメモに書き出しておくと、少し落ち着いて医師に伝えられるでしょう。医師にとっても、あなたの状態をより深く理解するための、大切な手がかりとなります。
くれぐれも無理はしないように、書けなくても、全く問題ないので、できるときだけやってみましょう。
【1人でできる】心を軽くするための小さな工夫3選
専門家による治療と並行して、あなたの日常生活の中で、ほんの少しでも心が楽になるような、小さな工夫ができるかもしれません。
- 「なぜ、こんな敵に見えるのか?」を考えてみる
- 「少しだけホッとする空間」を意識して作ってみる
- 小さな「今日できたこと」を心の中で褒めてあげる
ここでご紹介するのは、あくまで「もし、できそうなら試してみてね」という、ささやかなヒントです。すぐに効果が出なくても、試す気力がない日があっても、絶対に自分を責めないでください。気持ちに少し余裕があるときに、ほんの少しだけ、試してみると良いでしょう。
1.「なぜ、こんなに敵に見えるのか?」を考えてみる
気持ちが少しだけ落ち着いているときがあれば、「どんなときに、特に周りの人が怖く感じるんだろう?」「何がきっかけで、みんなが敵に見えてしまうんだろう?」と、自分の心に、そっと優しく問いかけてみるのも方法の1つです。
例として、紙とペンがあればできる方法を紹介します。
- 周りが敵に見えたとき
- そのときの気持ち
- 周りの状況
などを、思うままに書き出してみましょう。簡単にでも大丈夫。
心の動きが目に見える形になることで、何か気づきがあるかもしれません。
これは自分を追い詰めるためではなく、自分の心を少しだけ客観的に見つめるための、ほんの小さな試みです。少しでも辛くなったら、すぐにやめて心を落ち着けましょう。
2.「少しだけホッとする空間」を意識して作ってみる
「みんなが敵に見える」と感じているときは、周りのさまざまな刺激(人の視線、物音、たくさんの情報など)に対して、心がとても敏感になっているかもしれません。
そんなときは、ご自身が少しでも「ここは安全だ」「なんだか落ち着けるな」と感じられる空間や時間を、意識的につくってみてはいかがしょうか。
- 好きな音楽を、少し小さな音でかけてみる
- 肌触りの良い、ブランケットにくるまってみる
- 温かい飲み物を、時間をかけて味わってみる
これらのようなことを試してみて、ほんの些細なことでも、「あ、ちょっとだけホッとするな」と思える瞬間が、一日の中に一度でもあったら息苦しさが少し薄まるのではないでしょうか。
3.小さな「今日できたこと」を心の中で褒めてあげる
うつ病のときは、「今日も何もできなかった」「自分はなんてダメなんだろう」と、どうしても自分を責めてしまいやすくなります。しかし、自分を責めてばかりではうつ病の症状も悪化してしまいます。
うつ病から抜け出すためにも、自分を褒めて、自己肯定感を上げていきましょう。
自分を褒めることは難しく感じるかもしれません。褒める内容は小さなことで良いのです。
例えば、
「一杯の水を、ちゃんと飲めた」
「少しだけ、窓の外の景色を眺められた」 など
このような、ほかの人から見たら「当たり前」かもしれないことでも、今のあなたにとってはとても大きな、そして尊い一歩かもしれません。そんな小さな「できたこと」に気づいてあげて、心の中でそっと、「よくやったね」「えらいね」と声をかけてあげてください。
病院には行きづらい…病院以外の相談先
人間不信の原因がうつ病かもしれないとわかっても、病院に行く勇気が出ない、病院で治療できるのか不安がある、という方もいらっしゃるでしょう。
この項目では、うつ病について、病院以外でも相談できる機関を紹介します。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターでは、心の健康相談や精神医療に関する相談が可能です。「こころの健康センター」など、名称が異なる場合もあります。
精神保健福祉センターは、各都道府県・政令指定都市に設置されています。対面や電話での相談が可能です。ただし、対面での相談は予約制となっている場合も多いため、事前に確認しましょう。
精神疾患についての具体的な相談や、社会復帰などの相談ができます。また、近隣の医療機関などを紹介してもらうことも可能です。受付時間や開所日時などは施設によって異なるため、お住まいの都道府県の施設を確認してみましょう。
精神保健福祉センターは、本人だけでなく、家族や周囲の方も利用できます。
各都道府県の精神保健福祉センターは、下記から調べることができます。
地域の保健所
地域の保健所では、心身の健康に関する相談を受け付けています。精神疾患と分類される、うつ病についての相談も可能です。
保健所は全国に設置されており、施設によって管轄している地域が異なります。対面や電話で相談ができます。医師や精神保健福祉士などの専門家も配置されているため、医療や福祉に関するアドバイスを受けることが可能です。
また、保健所での相談は、本人以外にも、家族や関係者の方も利用できます。
保健所の開所時間は施設によって異なりますが、平日の午前9時前後~午後5時30分前後となっているところが多いようです。土日祝日や年末年始などで閉所している場合もあるため、利用を検討している場合は、事前に電話等で予約・確認を行うと良いでしょう。
地域を担当する保健所は下記から探すことができます。
電話相談・オンライン相談
対面での相談が苦手な場合、電話やオンラインでの相談が可能です。
運営主体はNPO法人などさまざまですが、相談員が話を聞き、必要に応じて情報提供を受けられます。電話番号や受付時間、対象地域などは各相談窓口によって異なります。1人で悩まずに相談することで、問題解決の糸口が見つかるかもしれません。アクセスしやすい窓口に相談してみましょう。
相談したい分野が定まっている場合は、下記から探してみると良いでしょう。
どこに相談するか悩んだときや、相談方法を絞って探したい場合は、下記からの検索がオススメです。
まとめ|心を軽くする対処法と人間不信の克服方法
- 「みんなが敵に見える」と感じるのは、性格の問題などではなく、うつ病によって「色のついたメガネ」をかけさせられたように、見え方にフィルターがかかっている可能性がある。
- 適切な治療とサポートを受けられれば、時間はかかるが世界の見え方が変わる可能性がある。
- 信頼できる医師に巡り合うのは難しいが、「話を聞いてくれる」医師の存在は大切。自分に合う病院・医師を見つけたら、一緒に治療を進めていこう。
- どんなに小さなことでも、自分を大切にする時間や「ホッとする」と感じられる時間を意識して見つけよう。心を楽にする手助けになるかもしれない。
- 病院には行きづらい時は、地域の保健所や、精神保健福祉センターなどで相談ができる。対面での相談が不安な場合、電話やメールでの相談ができる所もある。
あなたは決して一人ではありません。そのことを、どうか忘れないでください。
この記事が、暗闇の中にいるように感じているあなたの心に、少しでも温かい光を届け、次の一歩を踏み出すための小さな勇気や安心感につながることを、心から願っています。