近年、運動とメンタルヘルスの関係が科学的に研究され、多くの専門家が「適切な運動はうつ病の改善に役立つ」と指摘しています。
しかし、うつ病の方の中には

「身体に負担をかけて、逆に悪化しないの?」
と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
健康のために筋トレを行ったのにも関わらず、うつ病が悪化したら元も子もありません。
そこで、
- 筋トレがうつ病に与える3つの効果とは?
- 筋トレでうつ病が悪化する人の特徴3選
- 筋トレでうつ病が悪化する人と改善する人の3つの違い
- うつ病の人におすすめの筋トレメニュー3選
- 筋トレが難しい方におすすめの運動メニュー3選
について解説していきます。
この記事を読めば、筋トレとうつ病の関係性を正しく理解でき、 自身の状態に合わせて適切な運動を選択できるようになります。
ぜひ最後まで読んで、より健康的な生活を送るためにお役立てください。
筋トレがうつ病に与える3つの効果とは?
筋トレを適切な方法で行うことで、うつ病の症状を改善させる効果が期待できます。
ここでは、筋トレがうつ病に与える3つの効果をご紹介します。
脳内の幸福ホルモンを増やす
筋トレをすると、セロトニン、ドーパミン、エンドルフィンなどの「神経伝達物質」のバランスが改善され、気分の安定につながります。 これらの神経伝達物質は、別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、
- ストレスの軽減
- ポジティブな気持ちの増加
- 気分の安定
につながります。
世界各国の医学界でも、筋トレや運動によるうつ病改善の研究が進められており、実施された実験の結果にも表れつつあります。筋トレは正しく行うことで、脳内の神経伝達物質のバランスを整え、気分の安定につながるのです。
自己肯定感を高める
筋トレは、小さな成功を感じやすいのが特徴です。
- 昨日より重いダンベルが持てた
- 筋トレを3日継続できた
- 筋肉が付いて体が引き締まってきた
このように筋トレを通して得られる小さな達成感の積み重ねが、「自分は成長できる」という実感につながり、ポジティブな自己イメージを作ります。
また、前述したように筋トレをすると神経伝達物質が分泌されます。特にセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質は、自己肯定感を上げるための一助となります。 筋トレを通して小さな目標を達成することで、それをより実感することができます。
睡眠の質を向上させ、うつ症状の軽減につながる
筋トレには「睡眠の質を向上させる効果」があり、これがうつ病の改善に寄与します。
うつ病の多くの人は、不眠、中途覚醒、朝の倦怠感など、睡眠の質の低下に悩まされています。睡眠の質の低下は、自律神経や脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、うつ症状の悪化の一因となってしまいます。
一方で、適度な筋トレを行うと、疲労感から入眠がスムーズになり、深い睡眠が得られます。深い睡眠が得られると、脳内の神経伝達物質のバランスが保たれ、うつ症状の軽減につながります。そうすれば、さらに効率良く筋トレを行うことができます。
このように、筋トレとうつ病の改善は、お互いに関連しあうものなのです。
筋トレでうつ病が悪化する人の特徴3選
「筋トレはうつ病に良い」と聞くと、「早速始めよう」と思うかもしれません。 しかし、一部の人にとっては筋トレをしたことで、逆にうつ症状を悪化させてしまうこともあります。
実際に、
- 筋トレを始めたら気分が沈むようになった
- 以前より疲れやすくなり、落ち込みがひどくなった
という声もあります。
なぜ筋トレがうつ病を悪化させることがあるのでしょうか?ここでは、筋トレでうつ病が悪化してしまう人の特徴を3つ解説します。
過度なトレーニングをして自分を追い込んでしまう
過度なトレーニングは、身体の疲労や精神的ストレスを増加させ、うつ症状を悪化させる原因になることがあります。 特に、「もっと頑張らなければいけない」というプレッシャーを感じると、筋トレそのものがストレスになってしまい、かえって心の負担が増えてしまうことがあります。
うつ病の方がトレーニングを始めるときは、高い目標を立てずに軽い筋トレから始めてみましょう。 少しでも筋トレができたら、自分を褒めると効果的です。
疲労が回復する前にトレーニングをする
疲労が回復していないのにも関わらずトレーニングをすると、睡眠の質が低下し、うつ症状の悪化につながる可能性があります。 特に、夕方や夜遅くの激しい筋トレは交感神経(日中に優位になる神経)を刺激し、寝つきが悪くなる原因になります。
うつ病の方がトレーニングをする時は、午前中から夕方にかけて行うのがベストです。 どうしても夕方や夜遅くにしかトレーニングできない方は、体に負担の少ないストレッチやヨガなどの運動を行うと良いでしょう。
短期間で結果を求めてしまう
「筋トレをしているのに気分が良くならない」「頑張っても変化を感じられない」と感じると、挫折感や自己嫌悪が生じ、うつ症状が悪化することがあります。
筋トレは即効性があるものではなく、効果を実感するまでに時間がかかることが多いです。
しかし、うつ病の方の中には「すぐに結果を出さなければ」と焦ってしまい、変化が感じられないと「自分はダメだ」と思い込んでしまう人もいます。「筋トレをしてすぐに効果が出ない=自分に合っていない」と決めつけないことが大切です。
長期的な視点で取り組むことで、徐々に改善が見られることが多いので、焦らず筋トレを継続させることが大切です。
筋トレでうつ病が悪化する人と改善する人の3つの違い
「筋トレはうつ病に効果がある」という研究がある一方で、「筋トレを始めたら余計に気分が落ち込んだ」「やる気がなくなってしまった」という声も少なくありません。
では、筋トレがうつ病改善に効果があった人と逆に悪化してしまった人の違いは何なのでしょうか?
両者の違いは、主に3つのポイントに分けられます。
- 無理のないペースで続けられるかどうか
- 目的が「健康維持」か「完璧主義」かどうか
- 一人でやるか、誰かと一緒にやるか
順に解説します。
無理のないペースで続けられるかどうか
「毎日やらなければ」と頑張りすぎる人は悪化しやすく、「自分のペースで無理なく続ける人」は改善しやすいです。
うつ病の人にとって重要なのは、「運動を継続すること」です。週1〜3回の軽い運動から始めた人は無理なく続けられ、気分の安定につながります。
うつ病の方が筋トレをするときは、頑張りすぎずに自分のペースで無理なく続けていきましょう。
目的が「健康維持」か「完璧主義」かどうか
筋トレを健康のために無理なく続ける人は改善しやすく、短期間で結果を出したいと焦る人は悪化しやすいです。
筋トレを始める目的が「少しでも気分をよくしたい」「健康維持をしたい」という人は、トレーニングが長続きしやすく、結果的にうつ症状の改善につながります。
しかし、「すぐに効果を出さなければ」「筋肉をつけないと意味がない」と考えると、運動自体がプレッシャーになり、精神的な負担が増えます。 完璧主義の方の「やらなきゃいけない」「もっと頑張らないと」という気持ちがストレスを生み、うつ症状が悪化させてしまいやすいのです。
うつ病の症状を改善したいなら、結果より継続を意識して筋トレをすると良いでしょう。
一人でやるか、誰かと一緒にやるか
孤独な環境で筋トレをする人は悪化しやすく、誰かと一緒に運動を楽しめる人は改善しやすいです。
うつ病の方の「孤立感」が、症状の悪化の要因になることがあります。一人で筋トレをすると「孤独を感じる」「やる気が続かない」ことが多く、結果的に挫折しやすくなります。 一方で、ジムに通ったり、オンラインでトレーニング仲間を見つけたりする人は、楽しみながら継続しやすくなります。
しかし、うつ病の症状があると、誰かと一緒に筋トレを行うのは難しいかもしれません。その場合は、無理に誰かと一緒に筋トレするのではなく、自分のできる範囲で筋トレを継続するのが理想的です。
うつ病の人におすすめの筋トレメニュー3選
筋トレがうつ病の改善に役立つと聞いても、「どんな運動をすればいいのか分からない……」と悩む方も多いのではないでしょうか?
うつ症状があると、強度の高いトレーニングは負担が大きく、逆に悪化してしまう可能性もあります。
ここでは「無理なくできて、続けやすい」ことを重視した、うつ病の人におすすめの筋トレメニューを3つ紹介します。
スクワット
スクワットは、下半身を鍛えるだけでなく、全身の血流を促し、気分の安定に効果的な筋トレです。
スクワットはシンプルな動作ですが、「足・お尻・背中・体幹」など広範囲の筋肉を使うため、効率的に体を動かせます。 また、適度な負荷で心拍数を上げることで、セロトニン(幸福ホルモン)の分泌が促進され、気分の改善につながります。
やり方
- 肩幅より少し広めに足を開く
- 背筋を伸ばしながら、ゆっくり膝を曲げる(90度を目安に)
- 膝がつま先より前に出ないように意識する
- ゆっくり元の姿勢に戻る
- 10回× 2〜3セットを目安に行う(週に2〜3回できるとベスト)
スクワットの参考の際は、以下の動画がオススメです。
プランク
プランクは、体幹を鍛えて姿勢を改善し、呼吸を整えることでリラックス効果も期待できる筋トレです。
うつ病の人は姿勢が悪くなりやすく、呼吸が浅くなりがちです。プランクは、背筋や腹筋を鍛えて姿勢を整え、深い呼吸を意識することで自律神経を安定させる効果が期待できます。
やり方
- 床にうつ伏せになり、肘を肩の真下に置く
- つま先を立てて、体を一直線に保つ
- 30秒〜1分キープ(最初は短時間からOK)
- 呼吸を止めずに、ゆっくり深呼吸を意識する
プランクの参考の際は、以下の動画がオススメです。
軽いダンベル運動(アームカール)
ダンベルを使った簡単なトレーニングは、筋トレ初心者でも無理なく取り組めて、達成感を得やすいというメリットがあります。
ダンベル運動は、軽い負荷から始められるため、疲労がたまりにくく継続しやすいです。また、「前より重いダンベルが持てた!」という小さな成功体験を積み重ねやすく、自己肯定感を高めるのにも役立ちます。
ここではアームカールという腕のトレーニングを紹介します。アームカールをすることで、男性はたくましい腕になり、女性は引き締まった美しい腕を目指せます。
やり方
- 軽めのダンベル(1〜3kg)を両手に持つ
- 肘を固定したまま、ゆっくりダンベルを持ち上げる
- ゆっくり元の位置に戻す(反動を使わないように)
- 10回× 2〜3セットを目安に行う(無理のない範囲で)
ダンベルを持っていない方は、500mlのペットボトルで代用することも可能です。
アームカールの参考の際は、以下の動画がオススメです。
筋トレが難しい方におすすめの運動メニュー3選
「筋トレがうつ病に良い」と分かっていても、実際にやってみると
- 体が重くて動けない
- やる気が湧かない
- 継続するのがしんどい
と感じることもあるかと思います。
特に、うつ症状が強い時は「何かを始めること自体がハードルになる」こともあります。
ここでは、筋トレが難しい方でも無理なくできる運動メニューを3つを紹介します。「これならできるかも」と思えるものから、気軽に試してみてください。
ウォーキング
ウォーキングは軽い有酸素運動であり、脳内のセロトニンを増やし、気分を安定させる効果があります。 歩くことで全身の血流が良くなり、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が抑えられるため、うつ症状の軽減につながるのです。
また、屋外で歩くことで日光を浴びることができ、体内時計を整える効果も期待できます。
やり方としては、無理のない範囲で家の周りや公園を歩く(5分でもOK)と良いでしょう。スマホで好きな音楽やポッドキャストを聞きながら歩くと、気分が上がるのでおすすめです。
また、ウォーキングは、朝から昼にかけて行うのが良いです。理由は、朝日を浴びることで幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが活性化し、気分が向上するためです。
一方で、うつ病の症状から気分が乗らない日もあるでしょう。そんな時は、外に出て日光を浴びるだけでもOKです。無理のない範囲で継続していきましょう。
ストレッチ
ストレッチは、体のこわばりを解消し、リラックス効果を高める運動で、特に寝る前に行うと睡眠の質が向上します。
うつ病の人は、無意識に肩や首がこりやすく、体が緊張しがちです。ストレッチをすることで、副交感神経(リラックスを促す神経)が優位になり、ストレスが軽減されます。
特に、寝る前のストレッチは、副交感神経が優位になり睡眠の質が高まるのでおすすめです。
やり方
- 仰向けになり、両膝を胸に引き寄せて深呼吸(30秒)
- 両腕を広げた状態で、膝を左右にゆっくり倒す(左右10秒ずつ)
- 肩を回して、首や背中のこわばりをほぐす
- ゆっくり深呼吸しながらリラックスする
スマホでお気に入りの音楽したり、動画を見たりしながらストレッチを行うと、気持ちも落ち着くのでオススメです。
ヨガ
ヨガは、体をゆっくり動かしながら呼吸を整えるため、交感神経と副交感神経のバランスが整いやすくなります。
また、瞑想のような効果があり、「今、この瞬間に集中する」ことで、ネガティブな思考を減らすことができます。
やり方(初心者向けの簡単ヨガ)
- あぐらをかいて座り、ゆっくり深呼吸(5回)
- 両手を上げて背筋を伸ばし、そのまま左右に倒す(左右10秒ずつ)
- 手を前に伸ばしながら、ゆっくり体を前に倒す(30秒)
- 目を閉じて、ゆっくり呼吸を整える
ヨガのやり方は、この動画でわかりやすく解説されておりますので、参考にしてみてください。
また、適度な運動はうつ病だけでなく、ひきこもりの改善にもつながります。以下の記事でも、運動について解説しておりますので、参考にしてみてください。
まとめ
- 筋トレは脳内ホルモンの分泌を促し、自己肯定感を高め、睡眠の質を改善することで、うつ病の症状を緩和する可能性がある
- 一方で、過度な負荷や無理なトレーニングは逆効果となり、ストレスや疲労の蓄積がうつ症状を悪化させることがあるため注意が必要
- 筋トレでうつ病が改善する人は、無理なく継続できる範囲で運動し、完璧を求めずマイペースに取り組んでいる
- 筋トレが難しい場合は、ウォーキング・ストレッチ・ヨガなどの軽い運動から始めることで、心と体に負担をかけずに運動習慣を作れる
この記事では、筋トレとうつ病の関係について解説しました。
うつ病の改善には運動の継続が大切ですが、気分が乗らない日は休むことも大切です。焦らず、自分に合った運動を見つけて無理なく取り組んでいきましょう。